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【旧版】Crystal Asiro【クリスタルアシロ】  作者: wiz
SS 『とある世界』での旅 その2
46/58

『転生者』は『主人公』足り得るのか?

「この世界は消滅する可能性がある」。

クリスタルが『空間管理』で見た、世界消滅の原因とは?

そして二人はどうするのか?

「この世界は、間もなく崩壊する可能性がある。」


 その声は、普段の彼女からは聞かない、酷く真面目なものである。

ルーグがメンテナンスの手を止めて問う。


「何を見た。何が原因だ。」

「『転生者』が原因だ。例の『張り紙』を覚えているか?」

「『主人公は誰か』という内容だったな。・・・・まさか。」


 ルーグがクリスタルに近づく。

そんな彼にクリスタルがディスプレイを見せる。

そのディスプレイから音声を聞き出す。

『転生者』と思わしき何名かが討論をしているようだ。


「この世界の『主人公』は、武力で決めるべきじゃないか!? 外の魔物の討伐には武力が欠かせない!」

「武力だけでは討伐出来ない場合はどうする!? 魔法こそが優先されるべきだろう!」

「『スキル』が優秀な者が『主人公』と言えるのではないでしょうか!? 『スキル』は我々『転生者』の象徴です! 『スキル』が優秀では無かったら、何が『転生者』なのですか!」

「ではその『優秀なスキル』の前提は何だ! 何を以てして『スキルの優劣』を測る!?」


 次第に討論は激化していく。

それを二人は黙って聞く。


「これでは優劣がつかない、やはり戦う事しか手立てはないのでは・・・?」

「それは『主人公』にあるまじき行為ではないのか!? ただ優劣を競うだけの為に戦うなど・・・・。」

「だがそれ以外に何かあるのか? この世界のあらゆるダンジョンは全て攻略済み、魔物も最近は討伐し過ぎて数が居ない。この状況下でどうしろと?」

「それに『偽物の主人公』をあぶり出す機会になるのでは? 偽物と戦い、勝利するのが『主人公』たるものでは?」


 議論は次第に『主人公を決める為に戦う』事に集結していく。

そこでクリスタルはディスプレイを閉じた。


「ご覧の有様だな。『主人公』というものにこだわり過ぎて、世界が崩壊しかねん。」

「どうする、クリスタル。世界崩壊するのを止めるか?」


 クリスタルは武器のメンテナンスの続きを行う。


「現段階では『崩壊の可能性がある』だけで、当然『助かる可能性もある』。」

「つまり『世界を助ける誰かを待つ』って事か?」

「察しが良くて助かる。」


 クリスタルの回答に、ルーグは少しため息をつく。


「お前は本当『我関せず』だよな。少しは情をかけてもいいんじゃないか?」

「いちいち他人に情なんてかけていられるか。面倒な。」


 クリスタルはさも当たり前かの様に吐き捨てる。


「だが多少情はかけなきゃ、リターンはないぞ。情をかけるから、何時かはそれが自分に返って来るものだろう?」

「面倒だな。仲間内だけでいいだろ、そんなもの。」

「あっそ・・・・。」


 クリスタルの冷たさに、ルーグは呆れて何も言えないでいる。

とりあえず自身も武器のメンテナンスの続きを始め、有事に備えることにした。

_________


「私こそが転生者の頂点、『主人公』だ!」

「脳筋バカが『主人公』なものか! 優秀な『スキル』を持ってこそ、真の『主人公』ではないのか!?」

「『スキル』や武力だけで解決はしない! 魔法を使いこなす者が『主人公』にふさわしい!」


 そんな討論が、街中の中央広場や酒場、ギルド、宿、露店からでも聞こえてくる。

どれも『転生者』が抗議しており、騒ぎにもなっている。

住民は他所に避難する者もいれば、その抗議に参加する者もいる。

クリスタルとルーグは避難者と共に遠くの街まで逃げることにした。


「いくら『転生者様』とはいえ、やって良い事と悪い事がありますよね・・・・。」

「どうして? まものがいないのに、どうして『てんせいいしゃさん』はたたかうの?」

「幸せな生活が出来るかと思っていたのに・・・・。」


 避難者はどれも『転生者』に落胆している。

その呟きをクリスタルとルーグは聞き、ひそひそと小声で話す。


「なんてザマだ。ここまで住民に言わせるか・・・・。」

「住民は今まで『転生者』が魔物を退け、手助けをしてくれたから、今まで彼らは『転生者』を優遇し尊敬していた。それなのにも関わらず『転生者』は住民を考えず、自身の優劣をつけるために戦争をする。恩を仇で返す様なものだ。」


 二人も住民と同様の気分である。

議論が激化し、最近は街中でも武力や『スキル』などでの争いも起きてしまっている状態だ。


「ルーグ、ここはさっさと撤収するぞ。この世界の事は、この世界の者に任せる。」

「・・・・了解。お前が言うなら従うさ。」


 人ごみを避け、二人は誰もいない路地裏へ周る。

そしてクリスタルが『次元の切れ込み』を入れ、二人で世界を離れる。


 この世界の結末を、『転生者』に任せて。

ここまで読んで頂きありがとうございます!

今回のお話はいかがでしたでしょうか?


今回は『転生者』によって争いが起こってしまう場面でした。

『自身が主人公である』事は、『転生者』にとって魅力的なのでしょうね。

そしてクリスタルとルーグは『何もしない』という選択を取りました。


次回はこの世界のその後の様子からです。



また厚かましいですが、創作の励みになりますので、良ければブックマーク・評価をお願い致します。

感想・レビューもお待ちしております!


改めて、読んで頂きありがとうございました!

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