『転生者』は特別か?
次にたどり着いた先は『転生者』という者が集まる世界。
『転生者』とは何か?
そしてクリスタルがある事に気が付く。
クリスタルとルーグがたどり着いた先には、大きな街があった。
レンガ作りの民家や店、転移装置などの魔法設備まで整った文明のある街並みは、二人の国の城下町を思い起こさせる。
違いとしては、一部機械文明も混ざっているところである。
ロボットがいたり、汽車が走っていたり、何処か町並みには不釣り合いに感じる。
その違和感は、二人の国では見ない光景だからだろう。
景観の観点から『魔法文明』と『機械文明』の区域は明確に分けられているため、二つの文明が入り混じったこの風景は違和感しかない。
「何だか文明が分けられていないのは変な気分だな。」
「これじゃ『魔法が発展している世界』か『機械が発展している世界』か分からないな・・・・。」
「とにもかくにも、まずは腹ごしらえだ。レストランにでも行くぞ。」
「そうするか。・・・・ん?」
レストランに行こうかとする時、ルーグが民家の張られている紙を見つける。
『誰が真の主人公か!? 挑戦者求む! 主役ギルドのマスター』
「何だこのダサい張り紙は? それに『主人公』って何だ、『主人公』って。」
「『主人公』なんて書き方、まるで小説やゲームの話みたいだよな。」
「ルーグ、皆が皆、それぞれの人生の主人公何だぜ・・・・?」
「何を当たり前の事をドヤ顔で言うんだお前は! だが気になるな。後で誰かから話でも聞こう。」
二人はそんな会話をしつつレストランに入る。
ウェイトレスが出てきて席に案内され、オーダーをする。
「___以上で注文はよろしいでしょうか?」
「お願いします。そうだ、この辺りでこの世界の事情について詳しく知っている方はご存じですか? 我々は先ほどこの世界に来たばかりでして、この世界の事情に詳しくないのです。」
「そうでしたか! 貴方方は『転生者』様なのですね!」
「・・・・『転生者』? 俺達は死んだつもりはないぞ?」
クリスタルとルーグの言葉に、ウェイトレスは「またまた~」と冗談を聞いたかのような反応を返す。
「『転生者』様の中には、一度亡くなられた事を自覚せずにいた方もいらっしゃるとか。詳しくはこの町のギルドでお話を聞くと良いでしょう! 『転生者』様について、詳しくお話が聞けるかと思いますよ!」
「『ギルド』、か・・・・。先ほどの張り紙を出していた場所か。」
「親切にありがとうございます。お仕事の手を止めてしまい、申し訳ないです。」
「そうでした! お客様のご注文の品、直ぐにお届けいたします! 失礼いたしました!!」
慌ててウェイトレスが去っていき、残ったクリスタルとルーグは水を飲みつつ相談を始める。
「『転生者』に『主人公』。いよいよ小説やらゲームの話になってきたな。」
「そもそも『転生者』って、特別なのかもな? ウェイトレスは『転生者様』と言っていた。何か特別な事を起こせる者達の事なのかもしれないな。」
「まずは『ギルド』とやらで話を聞くか。その方が確実だ。」
「了解。その前に宿を探さないといけないがな。」
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宿をとった後、二人はギルドに向かう。
受付は落ち着いており、今なら話が聞けそうである。
二人は暇そうにしている受付に声をかける。
「すまない、幾つか質問があるんだが。」
「お、お客さんか。何か御用で?」
「俺達、他所の世界から来たばかりでして、この世界に疎いんです。街で『転生者』という言葉を聞いたり、ギルドの張り紙に『主人公』と書かれてあったり、この世界がどのような世界かを知りたいんです。」
「そういう事でしたか。では『転生者』から解説を致します。」
受付は姿勢を正し、紙とペンを出して図に表して説明を始める。
「『転生者』とは、『他の世界で亡くなった方で、この世界で記憶を保持したまま生まれ変わった者』です。『転生者』は皆軒並み優れた才能がございまして、この世界では『転生者』は『特別な力を秘めた者』という認識でございます。『主人公』とは『この世界の重要なポジション』という意味です。『転生者』の中でも特別だと言われております。」
「ほう。例えば魔力が強いとか、肉体が頑丈だとか、か? 何かを作り出す能力なんかはないのか?」
クリスタルの質問に受付は頷く。
「その通りでございます。何かを創造する様な力を持つ『転生者』はおりません。しかし、様々な『戦闘スキル』という技を皆さまお持ちで、それらは神にも等しい程のお力がございます。」
「『神にも等しい』、ね・・・・。」
ルーグの呟きに反応し、受付が提案する。
「一度ギルド内での手合わせをご覧になってみて下さい。理由が分かるかと思いますよ?」
「可能であれば、見学をさせて頂いてもいいでしょうか? クリスタル、いいよな?」
「あぁ、構わん。早速見学させてくれ。」
「分かりました。ちょうど今手合わせ中ですので、こちらへどうぞ。」
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案内された場所では、既に手合わせが開始されていた。
戦士同士の剣のぶつかる音が響き、その衝撃がこちらにも届きそうな程だ。
「お、やってるやってる。なかなかの腕前じゃないか?」
「手合わせのほんの序盤ですね。この後の『スキル』が見ものですよ。」
片方の戦士が間合いをとり、片手を上げて大きな声で何かを叫ぶ。
「聖なる炎よ、今ここに! 『ホーリーバーニング』!!」
その叫びと共に、戦士の掲げた手に炎が集まり、相手に襲い掛かる。
その炎に向けて、相手の戦士は片手を突き出し叫ぶ。
「我に歯向かう炎を消し去れ! 『ダブルブラスト』!!」
その叫びに合わせて突き出した片手から突風が巻き起こる。
互いの『スキル』がぶつかり、そして相殺される。
観客からは歓声が上がる。
しかしそれを見たクリスタルは、あくびを一つして踵を返す。
ルーグは手合わせを見て興奮する受付に、「相方が疲れてしまったようですので、これにて。」とあいさつをしてクリスタルの後を追う事にした。
受付には、その声は届いていなかったようではあるが。
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「『転生者は特別な存在である』という認識はわかったが・・・。あの茶番は何だ?」
「クリスタル、俺達基準で物事を測るなよ。俺達は『異端』なんだからな?」
「へーへー。あの妙な叫びも要らないしな。あれは魔法式唱えるより酷かった。俺、あんなのやりたくないわ。」
「あれがこの世界では常識なんだろう。・・・・俺もやりたくないが。」
宿に戻った二人はそんな会話をしつつ武器のメンテナンスを始めている。
クリスタルは細身の水晶の様な剣を、ルーグはシンプルなデザインの紅の短剣を二本。
どちらもクリスタルの作品だ。
クリスタルが話し始める。
「そういえば、転生者の『特別な力』は、何故『戦闘のみ』なんだろうな?」
「分からないな。『空間・世界管理』してみたら、案外分かるんかもな。」
「それもそうだな・・・・。ちょっと調べてみるか。」
クリスタルが以前行ったように、自身の周りにディスプレイの様な物を出す。
そしてこの世界について、あらゆる視点から調べ始める。
暫く調べていたクリスタルだったが、ふと一つのディスプレイに目を止める。
「・・・・ルーグ、ここは早く出て行った方が良さそうだ。」
その言葉にルーグは目を丸くする。
「何があった。」
クリスタルがディスプレイから目を離さずに答えた。
珍しく、その声は酷く真面目である。
「この世界は、間もなく崩壊する可能性がある。」
ここまで読んで頂きありがとうございます!
今回のお話はいかがでしたでしょうか?
今回は『転生者が集まった世界』を題材として書いてみました。
最近流行りの『転生もの』。
これが過剰に集まったらどうなるか、と考えたのがきっかけです。
次回はクリスタルの話の続きからです。
この世界は無事に崩壊を免れるのでしょうか?
また厚かましいですが、創作の励みになりますので、良ければブックマーク・評価をお願い致します。
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改めて、読んで頂きありがとうございました!