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【旧版】Crystal Asiro【クリスタルアシロ】  作者: wiz
SS 『とある世界』での旅 その2
44/58

ファッションベイビー

『見た目が重要視』される常夜の国。

そこではある『話題』が持ち上がっているようだ。

 常に日の光が無い街に、クリスタルはルーグはたどり着く。

店先や街灯やネオンが眩しく輝いているため、その闇夜を押しのけている。

あちこちでファッションに特化した店が並び、街の大通りではファッションショーも開催され、大盛況だ。

 メイクの店もさることながら、特に目につくのが『整形』の看板が並ぶ店の数。

値段もクリスタルの国と比べても遥かに安い。


「さて、このままホテル行くか?」

「先に服をこの国仕様にしよう。この旅装束では悪目立ちするからな。」


 クリスタルとルーグは幾つかの店で服を新調し、腹ごしらえをする為にバーに寄る事にした。

_________


 賑やかなバーのカウンター席に座り、二人は赤ワインとつまみを頼む。

二人で今後の観光ルートの計画を立てていると、声をかけられた。


「貴方方、『ファッションベイビー』についてどう思われますか?」

「あ? いきなり何だ?」

「『ファッションベイビー』? 何故いきなりそんな質問を?」


 声の主は、隣席の酔いの回った女性だ。

女性はウィスキーのロックを片手に話し始める。


「今この国では、遺伝子操作され外見を美しくした『ファッションベイビー』が流行しております。私はそれを止めさせる団体で活動しているのです。」

「確かこの国では『見た目が全て』と言える程に、皆外見を整えていますね。ファッションセンスもそうですが、整形が当たり前である点には驚きました。」

「あんた、何故それを止めさせたいんだ? 見た目が重要視されているのは、ここでは良い事だろう?」


 クリスタルの質問に、女性は声を少々荒げ口早に話す。


「遺伝子を操作してまで外見を変えるのは、これは生命への冒涜ですよ! 親から受け継いだ優秀な遺伝子までもを変えてしまう・・・・! これは由々しき事態ではありませんか!!?」


 そう言い、女性はグラスを空にする。

クリスタルはどうでもいい様な話を聞かされた態度を取っている。

そしてワインのグラスを傾け、女性に問う。


「それなら、親から受け継いだ優秀な外見を『整形』という形で変えるのはどう思う? それも自然摂理に反していないか?」

「『整形』はこの国の『文化』です! 『自らの外見を思うようにしたい』という個人の自由意志です!」


 鼻息を荒くし反論する女性。

今度はルーグが質問をする。


「その意見では『ファッションベイビー』も『整形』も同じではありませんか? 『ファッションベイビー』が続けば、それは『文化』になります。貴方は『新しい文化』となり得るものを否定するのですか?」

「それは・・・・ッ!! ですが『整形』は自由意志の元に行われます! 『ファッションベイビー』はその人物の意志関係なく行われる、残虐な『整形』ではありませんか!?」


 その言葉にクリスタルが反論する。

実に興味なさげではあるが。


「生まれた『ファッションベイビー』が外見を気に入らないのなら、それこそ『整形』すればいいんじゃないか? それなら個人の自由意志を奪わないだろう?」

「この・・・・ッ、余所者風情がッ!! 話になりません!!!」


 ギャーギャーと騒ぎ立てつつ女性はバーを出る。

代金の支払い忘れに、店員が女性を慌てて追いかける。

それを見つつ、クリスタルとルーグは話を始める。



「ルーグ、お前は『ファッションベイビー』賛成派? 反対派?」

「俺は反対派かな。 クリスタル、お前は賛成派だな?」

「お、よく分かったな。」


 お互い赤ワインを飲みつつ、小魚入りナッツをつまむ。

クリスタルは小魚を、ルーグはナッツをよく食べている。


「で、『ファッションベイビー』の何が反対なんだ? いいじゃねぇか、見た目悪く生まれる訳でもないし。『整形』も出来る訳だし。」


 クリスタルの意見に、ルーグは唸りつつ考え、答える。


「個人的には『遺伝子を無理に操作する』のがどうかと思ったんだ。遺伝子操作は障害を持ってしまう恐れもあるだろう?」

「まぁ、それは分かる。が、障害の話は置いておこう。それは実験をしっかり行えば良いだけだからな。で、さっきの女との違う意見はあるか?」


 クリスタルが小魚を食べつつ質問する。

同じ『反対派』だったが、ルーグは女性の味方をしなかったからである。

ルーグはナッツを食べてから答える。


「『ファッションベイビーが新しい文化となっても構わない』事だ。さっきの人は認めようとしなかったが、俺はリスキーではあるが『新しい文化』にしてもいいと思う。」

「ほう。その心は?」

「遺伝子操作の技術進歩の可能性があるだろ? 何年とも操作を続ければ、障害を持たずに生まれる『ファッションベイビー』も多くなるはずだ。優秀な遺伝子だって残せる。」

「確かにな。だが、お前の悩みである『遺伝子を無理に操作する事』については解決していないぞ?」

「それなんだよなぁ・・・・。」


 ルーグは頭をガシガシと掻く。

彼も彼なりに悩んでいるようだ。


「こればかりは感情論だ。そしてその感情は、ファッションベイビー自体の感情が重要視される。生まれる前から感情が分かればいいが、そうは出来ないだろう。」


 クリスタルがワイングラスの中身を空け、おかわりを頼む。

そしてそのついでに意見を言う。


「俺は『整形』という手段があるから『ファッションベイビー』賛成だな。この国では安価に『整形』という手段がとれるからな。」

「じゃあ『整形』が高価なら、反対だったのか?」

「そうではないが、大きな要素ではあるな。」


 クリスタルはルーグからワインを分けて貰い、一口だけ飲む。


「高価だったら、ファッションベイビー以外に外見の自由が無くなるだろう。そうではないから、構わないと俺は思う。『整形』を先にするか後にするかの違いだ。」


 頼んだスパークリングワインが届き、クリスタルはそれを少しずつ飲む。

パチパチとした音と刺激が心地よい。


「それと、さっきお前が言っていたが『遺伝子操作』によって優秀な遺伝子を残せれば、それを活用できるだろう。頭の良くなる薬だの、肌が紫外線に強い遺伝子だの、色々な奴に活用してやればいい。」


 クリスタルはつまみの小魚を食べる。


「ま、そもそも親の意志でデザインされる『ファッションベイビー』なんて、愛玩動物とさして何も変わらないと思うがな。」

ここまで読んで頂きありがとうございます!

今回のお話はいかがでしたでしょうか?


今回はディベート形式のお話でございました。

テーマはタイトル通り、『ファッションベイビー』です。

今回は久しぶりに難しいテーマでしたので、かなりお読みになるのが難しかったと思います。

せっかくなので、この様な頭を使うお話も書きたいものですが、人気があるかどうか・・・。


次回はとある転生世界でのお話です。



また厚かましいですが、創作の励みになりますので、良ければブックマーク・評価をお願い致します。

感想・レビューもお待ちしております!


改めて、読んで頂きありがとうございました!

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