ギャンブルが全て
『神の世界』を視察した後、クリスタルの『悪癖』により二人は旅に出かける。
たどり着いた先は、『ギャンブルが義務』の世界であった。
クリスタルとルーグは『神の世界』を離れ、旅衣装に着替えて旅をする。
理由は当然、クリスタルの『悪癖』である。
「あれだけの物を見たら、旅したい!」
そう駄々をこねられ、部下であるルーグは何もできず従うしかない。
ルーグはライトに、『クリスタルと旅をする』旨を国へ伝達するよう頼みを入れ、そのまま旅をする事になった。
ライトもレフトも「いつも通りだね」と二人を慣れた様子で見送る。
ドレスなどの荷物も、ライトが国へ送ってくれるだけ有難いものだが。
そしていつも通り、クリスタルが作る『次元の切れ込み』に入り、旅が始まる。
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クリスタルとルーグが最初にたどり着いた先では、あちらこちらで客引きの声が聞こえてくる。
その内容は、他の世界と比べて変わったものである。
「今日のディーラーはサービス精神旺盛だ! 一日一回のギャンブルにどうだ!」
「時代はスロット! 今日は大盤振る舞いさ! 持って行け泥棒!!」
「古き良きギャンブル、丁半はいかがでしょう?」
客引きの内容、その全てが『ギャンブル』にまつわるものである。
普通の飲食品などの店もあるが、値段表記は『寿命:3分』といった表記である。
「ちょっといいか」とクリスタルがポーカーの客引きに声をかける。
「おい、ここは『ギャンブル』流行ってんのか? 俺達、さっき旅で来たばっかだから、よく分からん。」
「おいおい、それは最高に良い場所に来たじゃねぇか!」
客引きは演技でもするかの様な口調で話し始める。
「ここは地位・名誉・金なんかが『ギャンブルで手に入る世界』だ! ギャンブルは義務であり、生活だ! 人生の全てなのさ! 何だって手に入る!」
「『ギャンブルが義務の世界』か・・・・。それはそれで面白いな。」
ルーグの言葉に客引きは「でしょう!」と言い、二人を店内に誘う。
「さて、この世界に来たからにはギャンブルしないとダメだぜ? お二人さん、まずはポーカーでもどうだ?」
「その前に質問。値段表記が『寿命』って書いているのは何だ?」
「『寿命』はこの国では『金』と同じ意味なのさ。だから皆文字通り『命』をかけてギャンブルするのさ。で、やっていくかい? ポーカーをよ!」
客引きは自身の店にクリスタルとルーグを誘う。
「久しぶりにやってみるか。ルーグ、お前はどうする?」
「俺もちょっとはやるか。クリスタル程ではないが、まあまあ強いし。」
「お、これは期待出来るな! さぁ、運試ししていきな!」
二人は誘われるがまま、店内に入っていく。
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「いやぁ、流石『ギャンブルが全て』なだけあるな! 当分資金には困らんな!」
「お前のギャンブル運、本当に凄まじいからな。何回ロイヤルストレートフラッシュ出せばいいんだよ・・・・。店員の眼が死んでたぞ。」
「そういうお前も、ストレートフラッシュくらいは何度も出してただろ?」
「まぁ、そうだが・・・・。」
二人は店の帰り、ホテルを探しに道を歩く。
その路地裏から、何者かの声がする。
「助けてくれ・・・・、誰か・・・・。」
その声は、非常にかすれている。
ルーグはクリスタルを庇い、路地裏から彼女を遠ざける。
程なくして声の主が現れる。
みすぼらしい恰好で、ガリガリに痩せている、髪や髭も伸ばしっぱなしの老人である。
「誰か、俺に『ギャンブル運』を、生活を分けてくれ・・・・!」
そんな老人にクリスタルが問いかける。
「『ギャンブル運』がなく、生活が出来なくなった住民か。ま、哀れだな。そんなに『ギャンブル運』が欲しいのか?」
「生活が出来ないんだぞ・・・・! 俺はもともと凄腕だったのに、こんなになってしまった・・・・。認められるものか・・・・!」
クリスタルが老人を見下す。
そして挑発するような口調とニヤリ顔で老人に話を続ける。
「ほう・・・・? 『ギャンブル運』がそんなに欲しいのか?」
「当たり前だ・・・・! 貰えるなら、なんだって引き換えてやる・・・・!」
「『なんだって引き換えてやる』、か・・・・。」
さらにクリスタルは老人に問い詰める。
「本当に『何でもいい』んだな? 『ギャンブル運』のためなら。」
「あぁ、何でもいい・・・・! 頼む・・・・!」
老人の手に、力が入る。
爪が食い込む、血が垂れる。
それを見たクリスタルはニヤリと笑い、ルーグに命じる。
「ルーグ、契約書を。コイツと取引しようじゃないか。」
ここまで読んで頂きありがとうございます!
今回のお話はいかがでしたでしょうか?
今回は『ギャンブル』で全てが決まる世界です。
契約をする事になった老人の末路は、果たして・・・?
次回は契約後の老人の様子、そして『対価』が分かります。
また厚かましいですが、創作の励みになりますので、良ければブックマーク・評価をお願い致します。
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改めて、読んで頂きありがとうございました!