『空間管理』と『時間操作』
バーベキューが終わり、のんびりお茶をする四人。
ライトとレフトの戯れに、クリスタルとルーグが持つある能力が垣間見れるお話。
バーベキューもとい交流会が終わって城に戻り、時刻も夜に差し掛かる時刻。
「あ~! お風呂気持ちよかった! ここ、お風呂かラ見えル中庭がいいのよね~!」
「俺の城だからな。風景はこだわっているぞ。」
城にある女性用の大浴場からレフトとクリスタルが出てくる。
1時間半の長風呂もあり、かなりホカホカである。
バスローブを着てゆったりと歩く女性達を、男性用大浴場から出てきたルーグとライトが待っていた。
その手には牛乳瓶が二つ。
「上がったか。メイドから貰ったから、フルーツ牛乳とコーヒー牛乳か選んでくれ。」
「僕たちはもう飲んじゃったから、二人で飲んでね!」
あまりホカホカしていない様子から、男性達は上がって暫く経っていたのだろう様子がうかがえる。
髪の毛も少しだけしか濡れていない。
「サンキュー。レフト、どっちか選んでいいぞ。」
「あリがとう! じゃあコーヒー牛乳頂戴!」
「ほら。飲んだら適当にメイドに渡してくれ。」
「分かってルわよ、何度も遊びに来てルんだかラ。」
クリスタルとレフトはそれぞれ牛乳を飲む。
それぞれの味の牛乳のフレーバーの甘味、そして牛乳本来の旨味が合わさり、飲むのが止まらなくなる。
牛乳瓶を適当にメイドに渡し、国王とその護衛兼側近しか基本的な立ち入りを禁止しているエリアに向かう。
そんな場所に、ライトとレフトはごく普通に招かれ入っていく。
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自室エリアに入り、クリスタルはライトとレフトを寝室に招き、ルーグはエリア内にある『茶葉保管庫』に向かう。
先に寝室へ入った三人は、ソファに座りルーグを待つ。
クリスタルの正面にライトが、その横にレフトが座る。
「こうして腰かけると、お風呂の湯疲れが実感しちゃうよね。何だか疲れた感じがするよ。」
「わかる。動きたくないよな。」
「アタシは脚が何だかダルく感じルわ。」
ライトの微笑が入った呟きに、ソファに寝転がったクリスタルが同意する。
そしてレフトは戯れのせいか、脚の疲れをとるためか、ライトの太ももに脚を乗っけてくつろぐ。
すると、いきなりライトが自身の膝の上に横座りでレフトを乗せる。
突然の出来事に慌てるレフト。
その顔は若干涙目で真っ赤である。
「ちょっと!? ライト、降ロシて!! 脚乗っけたの謝ルかラ!!」
降りようとするレフトを抱きとめるライトの細腕は、見た目以上に力があるのだろう。
びくともしない。
そして満面の笑みのライトが宣う。
「可愛い彼女がスキンシップとってくるんだもん! 仕方ないよ!」
ライトの言葉にレフトは耳まで赤くなり、とうとう顔を手で隠してしまう。
その様子をクリスタルはジト目で見る。
「いつも思うんだが、お前らのバカップルぶりを何で俺は見させられているんだ?」
「レフトが可愛いからね! 僕にはどうしようもないかな。」
「お願い、降ロシて・・・・。」
未だ笑顔を崩さないライトに、顔を隠したまま真っ赤になっているレフト。
対極なこの二柱、言葉の通りカップルである。
それも、所謂『バカップル』である。
レフトを抱き留めご満悦のライトは言うまでもないが、照れて真っ赤になっているレフトも、ライトが居ない場所ではデレデレである。
先ほどの女性浴場でも、レフトにそれはそれは惚気られたのだ。
レフトは世間でよく言われる、『ツンデレ』な性格なのである。
いちゃつくバカップルの様子を見させられているクリスタルが何も言えずにいると、ルーグがお茶をカートに乗せて入ってくる。
良いハーブの香りが漂う。
今日のお茶は、この国の特産であるハーブティーのようだ。
「また二人でいちゃついてるのか。俺らの寝室では遠慮してくれよ。」
「え~? ちょっとくらいいいじゃない。」
「・・・・もう降ロシて。」
「ライト、そろそろレフトが本気でヤバそうだから、いい加減降ろしてやんな?」
「はーい。」と仕方なく膝からレフトを降ろすと、レフトは脱兎の如くソファの隅に行く。
『ソファ』といっても、ライトの座っているソファのため、実質隣に座っているだけではあるが。
ルーグがそんな様子を横目に、ハーブティー4つと蜂蜜を置く。
「好きなの取っていけ。味は変わらないから。」
「ありがと! 頂きまーす! ほら、レフトの分近くに置いておくね?」
「・・・・あリがと。」
「さっきの反動まだ残ってるじゃん。どんだけ照れてんだ。」
そんな会話をしつつ、ハーブティーを飲み進めていき、ゆったりと談笑をする。
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すっかり夜も更けてきた頃合い、話の最中にクリスタルが何かを感じ取ったように話しを止める。
その様子に三人は察する。
クリスタルに『仕事』が来たのだ。
『国王としての仕事』ではない、『クリスタルという存在であるが故の仕事』だ。
クリスタルが左手を前に出すと、クリスタルの体の周りに『ディスプレイの様な物』が空中に浮かんだ状態で現れる。
『ディスプレイ』には、様々な映像が映っている。
機械文明だらけの街並み。
コンクリートすらないような道を走る馬車。
火の光が明るく照らす、長閑な田園風景。
戦場の跡地の様な、荒廃した土地。
これらの『映像の縁』は、どれも青色だ。
その中でも一つだけある『映像の縁が黄色くなっているディスプレイ』をクリスタルはタップし、拡大する。
拡大された『ディスプレイの映像』は、馬車が行き交う大きな通りを映す。
何かをしたのか、一つの馬車が転倒している。
その横で怒鳴り散らしている中年男性と、それに弁論している青年が写っている。
どうやら青年が馬車を横転させたと思っている中年男性に、疑いを晴らそうと青年が反論しているようだ。
それを見て、クリスタルがルーグに言う。
「ルーグ、『この世界の時間を戻せ』。少しでいい。」
『映像』が写っているのに対して、クリスタルが言ったのは『世界の時間を戻す事』。
普通では意味が分からない事だが、ルーグには伝わったようだ。
「了解。この馬車の横転するちょっと前まで『時間を戻す』ぞ。」
ルーグが『ディスプレイ』に触ると、『ディスプレイの中の映像』が遡っていく。
馬車の横での口論が始まり、始まる前になり、馬車が横転前の状態になる。
そこでルーグは『ディスプレイ』から手を離す。
「この地点でいいか?」
「あぁ、『世界を戻した』際に見たが、馬車は青年のせいで横転した訳ではなかったな。」
「見る限り、馬車が石の上を通ったせいで横転したんだな。」
「なら、『世界を正す方法』は簡単だ。」
今度はクリスタルが『ディスプレイ』に映っている『問題を起こした石』に画面越しに触り、道の端に移動させるような動作をする。
すると、何故か『画面越しで石が移動する』。
クリスタルが動かそうとしていた通り、石はコロコロと転がり、道の端に移動し止まる。
『ディスプレイの映像』はそのまま進み、転倒したはずの馬車はそのまま無事に道を通り過ぎて行った。
先ほど怒鳴られていた青年も、何食わぬ顔で馬車の横を素通りしていく。
そして『ディスプレイの映像の縁』が『黄色から青色に変わる』。
それを見て、クリスタルとルーグは息をつく。
「石が原因で喧嘩するなよなー。危うく『あの世界の存続が危ぶまれるところ』だったぞ。」
「こんな事で『世界滅亡』は勘弁してくれ・・・。」
二人の様子を見ていたライトが問う。
「今回のは何が起きそうだったの?」
クリスタルは『ディスプレイ』を『何処かへ引っ込めて』事の経緯を話す。
「馬車を横転させた疑いをかけられた青年がいたんだが、ソイツが後に世界を滅ぼす事をしかねないらしかったな。だから俺の『空間監視』の能力に引っ掛かった訳だ。」
「それの回避として、さっき俺が『時間干渉』をしてその問題の場面の前に『時間を戻して』クリスタルの『空間干渉』で何とかした訳。」
「なルほど、二人ともお疲レ。」
普段からクリスタルの『空間管理』の力とルーグの『時間管理』の力を使い、『世界の管理』を行っている二人をレフトが労う。
「もう夜も更けてきたね。もう寝ようか。」
「ソうね、いつもの部屋借リても?」
「いいぞー。使え使え。」
「あの部屋、もとは俺の自室なんだがな。」
ライトとレフトは部屋を出て、隣の専用客室に入っていく。
残ったクリスタルとルーグも寝る支度をしてベッドに入る。
「『空間管理・操作』、それと今回は使わなかった『次元操作』。何で俺にこんな面倒な能力があるんだか。」
「それ言ったら俺もだぞ。『時間管理・操作』、『世界の記録』。お互い面倒だよな。」
「それな。疲れたし、明日はライトと取引契約書作らないとならん。もう寝るか。」
「そうだな、まだアイツらと遊ぶだろうし。お休み、クリスタル。」
「お休みー、ルーグ。」
二人は今日も一緒に眠る。
二人の謎は、まだ解決しそうにない。
ここまで読んで頂きありがとうございます!
今回のお話はいかがでしたでしょうか?
対極の存在であるライトとレフトの関係が書けて、個人的には楽しいお話でした。
デレデレ彼氏にツンデレ彼女。
うちのラブコメ担当の二人の仲は今後も書いていくつもりです。
また、今回はクリスタルとルーグのチート能力の内容もありました。
この小説の肝となる能力です。
覚えて頂ければ、この後のお話が分かりやすいかと思います。
次回は四人が行っている、ある事についてのお話です。
厚かましいですが、創作の励みになりますので、良ければ評価をお願い致します。
改めて、読んで頂きありがとうございました!