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【旧版】Crystal Asiro【クリスタルアシロ】  作者: wiz
第3章 『神の世界』
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誕生祭

『誕生祭』当日。クリスタルとルーグは外賓として参加する。

そしてその晩、四人のもとを訪ねてくる影が・・・。

 四人が『エリトラ』から出立して、数日。

『誕生祭』の前日に『エアテール』まで彼らは戻って来た。

深夜遅くにも関わらず、領域には様々な奉仕種族が『誕生祭』のための飾りつけを行っている。

既に領域内は、花飾りや彫刻などの調度品で装飾を施されている。

それを横目に四人はライトの神殿にさっさと帰り、そのまま眠る事にした。



 翌日早朝。

ルーグは早起きをしてクリスタルをモーニングティーで釣って起こす。

普段のモーニングティーとは違う、だが優しい香りがする。


「クリスタル。今日は身支度があるから、早く起きてくれ。」

「んむー・・・・。」

「風呂に入って肌や髪の手入れもしないといけないんだ。さっさと起きてくれ。」

「んー・・・・。しょうがないな・・・・。」


 クリスタルを風呂に誘導し、ルーグ自身も別の風呂に入る。

そして軽く身支度を済ませ、クリスタルが風呂から上がった後の準備を始める。

美容液やボディクリーム、香水や化粧品などの準備をしていると、1時間ほどでクリスタルが風呂から出てくる。


「ちょっと風呂で寝てたわ。」

「それ本気で止めてくれ! 溺れるだろ!」


 そんな会話をしながら、クリスタルの肌の手入れから始め、身支度を済ませていく。

今回は正式な祭典の外賓のため、おざなりな恰好では出席できない。

クリスタルも普段なら嫌がる化粧をする。

その間にルーグはクリスタルの髪の毛を手入れし、サイドで纏めて飾りをつける。


「俺はこれで準備できたな。後はお前か。」

「直ぐに準備できるから、ちょっと待ってろ。」


 ルーグも着ようとしていた衣装に身を包み、髪の手入れとセットを行う。

衣装はクリスタルと揃いではあるが、今回もクリスタルよりも目立たないデザインである。


「さて、会場へ行こうか、国王様。」

「へいへい、側近殿。」


 クリスタルは差し出されたルーグの手をとり、二人で祭典会場に向かうのであった。

__________


「皆、今日は『誕生祭』に集まってくれて、本当にありがとうございます。『誕生祭』のメインは昼過ぎに行われます。それまでごゆっくり!」


 ライトの宣言により、『誕生祭』が開催される。

現在は昼時である。

あちらこちらで果物をメインとした料理が並ぶ。

クリスタルとルーグ、そしてレフトは外賓席に座り、談笑を始める。


「お、このバナナを乗っけて焼いたパン、美味しいな。」

「ルーグ、貴方またパン食べてルの? 他のも食べたラどうなのよ?」

「旨いからな、仕方ない。」


 ルーグとレフトのコントを聞きつつ、クリスタルが席を立ちライトの方へ向かう。


「よう、今回は『豊作』だな。」

「うん! 沢山『生まれてくる』よ!」


 二人は会場の後ろにある、巨大な果実が幾つも生っている巨木を見上げる。

その果実はパステルカラーの果実ばかりで、どれも少しだけ動いている。


「この中からお前の『奉仕種族』が生まれるんだったっけか。」

「そうそう。 この果物の数だけ生まれるから、今年は『豊作』って訳!」

「昼過ぎに生まれるんだったか? また『アレ』が見れるのは良いモンだな。」

「フフッ、楽しみにね!」



 宴は進み、真上にあった日は少し傾き始める。

それを見計らってライトが再び会場の皆に宣言を行う。


「それでは時間になりましたので、これから『誕生祭の儀式』を行います! 皆、大きな樹の方をご覧ください!」


 見やればどの果物も動きを増している。

それを見つつ、ライトは杖を持ち出し『神力』を使う。


「我が眷属よ、今ここに我が魂を分け与えん・・・・!!」


 祝詞の様なものを唱えれば、持っている杖から白い光が天へ向けて放たれる。

その光は千々に分かれ、巨大な果物に吸い込まれるように入っていく。

それと同時に果物が落下する。

果物の下で待ち構えていたライトの奉仕種族達が、それを受け止める。


 程なくして、受け止められた果物の中身が見え始める。

中には『小さな奉仕種族』が、胎児の様なポーズで眠っていた。

動物の姿をした、『生まれたての奉仕種族』達は目を開ける。

そして果物から出され、彼らは『先輩の奉仕種族』に優しく抱き上げられる。

小さな彼らに向けて、ライトが笑顔で話しかける。



「生まれてきてくれてありがとう! 僕はライルート。君たちの神様だよ! よろしくね!」



 『君たちの神様』。

その単語の意味が本能的に理解出来たのだろう、生まれたての彼らは出来る範囲で頭を下げる。

それを微笑ましく見るライトと先輩の奉仕種族。


 こうして、『誕生祭』は終わりを迎えたのであった。

__________


 『誕生祭』の後、四人はライトの自室で酒盛りをしていた。


「今年、総勢148人生まれたんだって? 結構な数じゃないか?」

「そうなんだよ! 近年では本当に多い数だよ!」

「って事は、名前つけるの大変だよな。奉仕種族の名前、全部お前一人でつけてるんだろ?」

「まあね! でもそれも楽しみなんだ!」


 ライトが「どんな名前にしようかな」とクスリと笑う。

そんな風に談笑していると、突然ノックの音が聞こえる。


「誰? 入ってきていいよ!」


ライトが許可を出すと、小さな奉仕種族がよたよたと入ってくる。

今日生まれたばかりの奉仕種族だろう。


「かみさま・・・・? わたくしの、かみさまはどなた・・・・?」


 たどたどしく話す奉仕種族は、見た目は白い鷹の様な姿ではあるが、翼はない。

ライトが奉仕種族に目線を合わせて、優しく微笑んで話しかける。


「僕だよ。君の神様は僕なんだ。よろしくね?」

「・・・・はい、かみさま!」


 奉仕種族はライトに抱き着き、頬ずりをする。

そんな奉仕種族を抱き上げ、ライトは優しく頭を撫でる。


「君にもお名前つけなきゃね・・・・。何がいいかな・・・・?」

「『おなまえ』?」

「そう、お名前。君と他の子を区別するための、僕からの大事な贈り物だよ。早く考えなきゃね。」

「おなまえ、ほしいです!」

「フフッ、そうだね! 何か良い名前はあるかな・・・・?」


そんなやり取りを見て、クリスタル達が提案する。


「何かにまつわる名前はどうだ?」

「他の世界の言葉を名付けるのもいいよな。」

「なラ、他の世界で使わレていル名前はどうかシラ?」

「そうだね・・・・、どれもいいなぁ・・・・!」


 暫く悩んだ末に、ライトが「あ!」と言い出す。


「『エルダ』はどうかな? 他の世界の言葉で『信仰する者』の意味があったはず!」

「『信仰心が強い』って事で、いいんじゃないか? 夜中にここまで一人で来ちまうくらい、信仰心がある訳だし。」

「いいじゃない! 『エルダ』、素敵じゃない!!」

「君はこのお名前、気に入ってくれるかな?」


 ライトは腕の中の小さな奉仕種族に問いかける。


「はい! おなまえくれて、ありがとうございます!!」


『エルダ』は、輝かしい笑顔でそう答えた。

ここまで読んで頂きありがとうございます!

今回のお話はいかがでしたでしょうか?


今回は『奉仕種族の誕生祭』という内容のお話でした。

ちなみに彼らは果物から生まれるため、性別がありません。

そして最後に出て来た『エルダ』。

この子は度々物語に出てくる予定です。


次回は創造神と破壊神の誕生についての昔話です。



厚かましいですが、創作の励みになりますので、良ければ評価をお願い致します。


改めて、読んで頂きありがとうございました!


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