邪神の領域へ
『誕生祭』まで後一週間。
その間にクリスタルとルーグ、そしてライトはレフトの領域に視察へ向かう事になった。
邪神達が住まう領域に入ってくると、少しずつ雰囲気も変わっていく様子。
視察予定の『誕生祭』までまだ一週間。
その間次の視察予定であった『レフトの領域』へ向かう事にした。
クリスタルとルーグ、そしてライトとレフトは馬車の様な乗り物に乗る。
正確には運んでくれる生き物が馬ではなく、名状しがたきモノなのだが。
そんな馬車に乗りこみ、四人は出発する。
ライトも同伴する目的は、今回も善神と邪神の交流である。
四人は奉仕種族と善神達の見送りを受けて、ライトの神殿を出立する。
青い空に白い雲。
青々とした草原に、遠くに白い大理石で出来た神殿に、果樹園や畑も見える。
道は白い石でしっかりと舗装され、光る石が安置された街灯も等間隔で設置されている。
何処を見ても、この辺りは喉かな風景だ。
四人は『善神の領域』の風景を眺めつつ、談笑をする。
「相変わらず、この辺りの土地は豊かだな。」
「でしょ? 善神の領域全体に僕の神力が伝わっているからね。土地も肥沃だよ。」
「アタシの領域とはまルで雰囲気が違うかラ、見ていて楽シいわ。飼育されているような動物はいないけレども。」
「お前の領域とライトの領域の境目が、俺個人としては面白いな。ごったまぜ感があるから。」
少しの飲み物とお茶菓子を口にしながら、四人を乗せた馬車は長い道を進んでいく。
次第に外の風景は変わっていく。
目立つ特徴として、空の雰囲気が変わっている。
善神の領域では青が眩しい空であったものの、邪神の領域に近づくにつれ次第に空の色は紫に変わり、最後には紅に染まっている。
雲の色もどす黒い色で、今にも雨が降りそうな雰囲気である。
大地の色も緑から紫に変わり、何者かの怨嗟の声が風と共に止めどなく聞こえてくる。
農作物は多少あるものの、手足の本数が違う牛や羊の様な生き物を飼育している。
道をさらに続き、森に入る。
森の中は先ほどよりも酷く怨念の様な声が聞こえる。
果実も生っているが、生き物の顔が描かれているような模様をしている。
ここから怨念の声がより一層聞こえてくるようだ。
「この辺りの植物、面白いよな。変な声も聞こえるし。」
「アタシの領域は、邪神を恨んでいルモノの念が込めラレていルわ。ソレラが風に揺ラレて声みたいに聞こえル仕組みなのよ。」
「確か、皮の薄さが均等ではないし、中身が振動が伝わりやすい構造だったよな。それで風が吹けば声のように聞こえるんだったか。」
「風が吹いてこの声なんだから、雨の日なんてきっと凄まじいよね。」
道を進み、森を抜けていく。
次第に黒い大理石で出来た神殿が散見される。
遠くに大きな城の様な神殿が見えてくる。
その周辺には石造りの街並みも広がり、賑わいが感じられる。
既にガス灯はあちらこちらでつき始め、その雰囲気は独特の禍々しさを感じさせつつも、不思議な温かみを醸し出している。
「見えて来たわよ! アタシの神殿!」
「久しぶりに来たなぁ・・・・! 僕、ここでもまた冷遇されるだろうけども・・・・。」
「俺達がいるし、目立った行動は出来ないんじゃないか? 俺達から『そんな邪神は存在しない』って出来る範囲に通達を出せば、一気に力は弱まるし寿命も縮むからな。」
「最悪俺も『記録管理』で邪神消せるしな。」
クリスタルとルーグの提案に、ライトは苦笑いを浮かべ、レフトは膝で頬杖をつく。
「・・・・貴方達の方がアタシよリも邪神じゃなくて?」
「僕の不安を払拭するための慰めだろうから、嬉しいんだけれどもね? でもクリスタルとルーグの脅しは怖いよ・・・・。」
邪神と善神と、邪神よりも恐ろしい二人を乗せた馬車は、間もなくレフトの領域に入る。
ここまで読んで頂きありがとうございます!
今回のお話はいかがでしたでしょうか?
今回は『善神の領域』と『邪神の領域』の差を見られたお話でございました。
善神の領域の方が過ごしやすいかと思いますが、邪神の領域も観光としてなら見てみたい気がします.
次回はレフトの領域『エリトラ』のお話です。
厚かましいですが、創作の励みになりますので、良ければ評価をお願い致します。
改めて、読んで頂きありがとうございました!