信仰心で生きる種族
早朝、モーニングティーを『奉仕種族』に頼んだルーグ。
『奉仕種族』とは?そして彼らはライトとレフトの仲をどう思っているのか?
歓迎会の翌朝。
日の出の明るさでルーグは目を覚ます。
時計を見れば、時刻は6時前である。
隣にいるクリスタルは未だ寝息を立てている。
釣り目がちなその双眸は閉じられ、何処かあどけなさを感じさせる寝顔である。
そんな彼女を起こさないようにベッドを出て、身支度をする。
そしてクリスタルのモーニングティーを用意するため、部屋を出る。
「おはようございます、ルーグ閣下様。よく眠られましたでしょうか?」
そんな言葉をかけてきたのは、ライトの『奉仕種族』。
その『奉仕種族』にルーグは挨拶をする。
「いつも通り、よく眠れたよ。そうだ、熱湯と茶葉を用意してくれ。モーニングティーを入れたいから。」
「かしこまりました。少々お待ち下さい。」
『奉仕種族』は綺麗な一礼をして去っていく。
去っていった『奉仕種族』を見届け、ルーグは『奉仕種族』という者達について考えを巡らす。
『奉仕種族』という者達は、『神』に仕える種族の総称である。
『天使』や『悪魔』と言った言葉で知られている世界もあるが、こちらの世界では『天使』『悪魔』は『見た目の分類』であり、種族ではない。
見た目の特徴は、その神に対して『奉仕種族以外の信者』の潜在意識を反映している。
またその要素に加え、仕える神の性格や見た目により、奉仕種族も性格も差が出てくる特徴もある。
ライトの奉仕種族は、見た目は猛禽類であるものの、翼らしきものは見当たらない姿である。
また性格も穏やかで生真面目であり、細かな気遣いも出来る者達である。
他の神の奉仕種族は虫の姿をしていたり、手足の短い人間の姿であったり、小魚の姿で空中を泳ぐ者もいる。
そして性格も勇敢であったり、自分を犠牲にしてでも仲間を守ったり、臆病で逃げ足が速かったりする。
神同様、奉仕種族も多種多様である。
「ルーグ閣下様、お待たせ致しました。」
ルーグが廊下で壁に寄りかかり、奉仕種族についての物思いに耽っていた所、先ほどの奉仕種族がカートを持ってやって来た。
カートの上には、まだ熱そうなポットに別置きされている紅茶の茶葉、そして二つのティーカップに砂糖とミルク。
「また、朝食は7時からでございます。それまでどうぞ、ごゆっくり。」
「ありがとう。後一時間あるし、十分間に合うな。ライト達にもよろしく言っておいてくれ。」
「かしこまりました。失礼致します。」
先ほど同様、丁寧に礼をして奉仕種族は去っていこうとする。
その奉仕種族に、ルーグは一声かける。
「ちょっといいか? 君たちはライトとレフトの関係をどう思っている? 本人たちには言わないから、聞いてみたい。」
「それは・・・・。様々でございます。」
言いにくそうではあるようだ。
周りを見渡し誰もいないのを確認すると、ひそひそとルーグにだけに聞こえる様に話をし始める。
「私自身は破壊神様は創造神様と仲良くされるのは、善神と邪神の確執を改善するための第一歩として良いとは思いますが・・・・。仲を良く思っていない者も一定数いるのは確かでございます。当然私と同じ考えの者も一定数おりますが、少数派でございます。」
「そうか・・・・。教えてくれて、ありがとうな。」
「いえ、では失礼致します。・・・・どうか、我らが創造神様と破壊神様をよろしくお願いいたします。」
そう言って、今度こそ奉仕種族は去って行った。
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モーニングティーを飲みつつ、クリスタルは先ほどルーグが聞いた話の報告を聞く。
一気にモーニングティーを飲み干し、クリスタルは頬杖をつく。
「皮肉なものだな。自身の奉仕種族にも、仲を良く思われていないなんてな。」
「そうだな・・・・。それだけこの問題は大きいんだろうな。」
モーニングティーのおかわりを注ぎつつ、ルーグは答える。
「『奉仕種族』は他の信者と違い、とりわけ信仰心が強い。つまりは神にとっては『力』と『寿命』を大きく左右する存在であり、仕える神のみを信じる存在。そんな奴にもライトは幸せを認められていないのは辛いよな。」
「ライトにとってもレフトにとっても辛いだろうな。だが、こればかりは時間がかかる。『善神』と『邪神』は昔から常に争ってきたからな。」
「面倒な話だよな・・・・。さて、今回の視察はどうなるのやら。」
モーニングティーを啜りつつ、二人は友の今後に思いを巡らす。
ここまで読んで頂きありがとうございます!
今回のお話はいかがでしたでしょうか?
今回は度々名前が挙がっていた『奉仕種族』についての解説でした。
いくら主人であるライトの事でも、意見は二分しているようですね。
皆様は、どちら派でしょうか?
次回はレフトの領域への視察の道中です。
厚かましいですが、創作の励みになりますので、良ければ評価をお願い致します。
改めて、読んで頂きありがとうございました!