『神』という存在
歓迎会がお開きになった、その日の夜。
四人は集まって飲み直す事にした様子。
『善神』と『邪神』。この区別は何から来たものなのだろうか?
歓迎会が終わり、四人はライトの自室へ集まる。
夜が更け始め、涼しい風がカーテンを揺らす。
空には星の瞬きのみが見え、窓の外から他の神殿の明かりは見えない。
四人は飲み物やつまみのチーズを取り揃え、今回の出席者のレフトへの冷遇の話を始める。
「あんな露骨な態度はないだろう。何が『善神』だ。」
「公式の場で、意図的に聞こえる様に話していたな。」
「うん・・・・。どうしてなんだろう・・・・。」
苛立っていたり落ち込んだりの様子の三人に、レフトは気にも留めていない調子で言葉をかける。
「別にアタシは気にシてないかラいいのに、ソんな事考えなくても。実際アタシは必要上、色んなモノを壊シてルもの。」
「それでもレフトが冷遇されているのは僕は嫌だよ! 『善神』も『邪神』も、他者からの認知の差でしかないのに・・・・。」
「・・・・いつも気にシてくレて、あリがとうね。ライト。」
ライトは眉を下げて寂しげに話す。
そんな様子のライトを見て、レフトも内心感じていた思いを乗せて礼を言う。
実際、ライトは『善神』達がレフトへ行う冷遇に、相当心を痛めている。
その冷遇を無くすために共に活動し、レフトの良い面を引き出し、皆に見て貰うように努力している。
『土地を広げるために岩を壊す事』も、『害となる生き物の細胞を壊して死なせる事』も、『戦を終わらせる為にその種族を絶滅させる事』も、レフトは行ってきた。
それが皆が求めていた事だったから。
それでも皆は『破壊神は完全悪である』と認知している。
そしてレフトの功績を、ライトの功績と勘違いしている。
『土地を創り』、『害ある生物から守り』、『争いを鎮める』。
ライトはそんな存在であると思われている。
ライトはそれが何より悲しかった。
二人の様子を横目に、クリスタルが脚と腕を組みつつ吐き捨てる様に話す。
「一口に『戦神』と言っても『戦に勝利をもたらす神』なら『善神』、『争いを巻き起こす神』なら『邪神』となる。そして認知が変わればその分類は逆転する事もある。それ故にこの冷遇は馬鹿馬鹿しい。何時いかなる時も、自身の立場が変わる可能性がある事を分かっていない。」
「自分も邪神になるかもしれないのにな。それなのに『善神の方が優れている』と思い込んでいるし、一方の邪神も同様にそう思っている。厄介極まりないな。」
この神々による『自分たちの方が優れている』という考えは、昔神々で戦争を起こした原因である。
戦争は終結したものの、実情冷戦状態である。
ルーグも苛立ちをあまり隠せておらず、ため息をついている。
そしてふと立ったかと思うと、ルーグは『モノを腐らせる善神』から貰ったワインを開ける。
芳醇なブドウとアルコールの香りがする。
それをその場にいる全員のグラスに注ぐ。
「気晴らししようぜ。ほら、レフトも飲めよ。」
レフトは差し出されたグラスに少し驚く。
このワインは、あくまでも『クリスタルとルーグ宛』のワインだったためだ。
「あラ? 貴方達宛のワインじゃなくて? アタシにも分けていいのかシラ?」
「俺が『友人』を仲間外れするかよ。ほら、いいから受け取れ。」
そんなルーグの言葉に、少し戸惑うレフト。
暫くして、少し遠慮がちにグラスを受け取る。
そして少しほほ笑んで礼を言う。
「・・・・あリがと。」
「気にするな。お前を『悪い神だと思っていない』メンバーしか、ここには居ないんだから。」
「そういう事だ。遠慮は要らん。いいからワイン飲もうぜ!」
「そうだね! ほら、レフトも飲もうよ! ね?」
三人の言葉に、レフトは内心下がっていた気分が良くなっていったようだ。
いつものレフトらしく、テンションを上げてグラスを掲げる。
「・・・・じゃあ、皆で一緒に飲むわよ! 頂きまース!」
「頂きます!」
「ん、なかなかに旨いな。」
「ちょっと、クリスタル! フライングするなよ!」
「キャハハハ! お酒は良い物ね!」
「フフッ、そうだね!」
先ほどの雰囲気は何処へやら、四人はワインを飲み談笑を始める。
今、この場だけは、『創造神』も『破壊神』も、ただただクリスタルとルーグの『仲の良い友人』である。
それだけでも、ライトもレフトも救われている。
ここまで読んで頂きありがとうございます!
今回のお話はいかがでしたでしょうか?
今回は『神』という存在をピックアップしたお話でした。
信者に対して良い事を行えば『善神』。
誰かに対して悪い事を行えば『邪神』。
さて、皆さまが信仰される『神様』は、実情はどちらなのでしょうかね?
次回はお話に度々上がっていた『奉仕種族』にまつわるお話です。
厚かましいですが、創作の励みになりますので、良ければ評価をお願い致します。
改めて、読んで頂きありがとうございました!