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【旧版】Crystal Asiro【クリスタルアシロ】  作者: wiz
第3章 『神の世界』
32/58

歓迎される者、されない者

クリスタルとルーグが視察に来た記念で『歓迎会』が開催される。

様々な物が贈られる中、一人だけ仲間はずれがいる様子。

 クリスタルとルーグがライトの元を訪ねて来た翌日。

ライトの領域では盛大に二人の歓迎会が行われていた。

色彩豊かな花束が白い陶器に入れられ、(おごそ)かな神殿を鮮やかな雰囲気に変えている。

銀製のテーブルには様々な果物が並び、出来立ての料理が並ぶ。

どれも湯気を立てており、出来立てである事が伺える。

しかし、そこにはクリスタルの好物はない。


「・・・・肉は無いのか。」

「まぁ、生き物だったモノを食べる風習が無い領域だからな。そこは仕方ないだろう。」

「ごめんね・・・・。僕自身もお肉は触るのも苦手だから・・・。」

「ソレなラ、アタシの領地で食べていきなサいよ。食べ物の殆どがお肉だかラ。」


昨日の深夜に神殿に到着したレフトが、クリスタルを誘う。

今回のレフトの衣装は、露出の低い赤いドレスの上に、黒を基調とした絹のストールを羽織っている。

普段の彼女の衣装と比べるとかなりスマートな印象を受けるデザインだ。

レフトの誘いにクリスタルは揺れる。


「お前の所の肉、見た目は変わってるが旨いんだよなぁ・・・・。」

「クリスタル、先にここの歓迎会な。俺達は『正式な視察』をしに来たんだからな? 観光じゃないからな?」

「ちょっとくらい許してくれよ、ルーグ母ちゃ~ん!」

「誰が『母ちゃん』だ!」

「皆、二人とも! そろそろ歓迎会始めるよ!」


 ライトの言葉に、その場にいる者達は一斉にライトを見る。

出席している者達は様々な容姿をしている。

人型ではあるものの、目の数や皮膚の色が明らかに人間ではない者。

人の大きさの巨大蜂に、人間の手足を付けたような姿の者。

人の数倍あるであろう巨体なクジラの姿の者。

様々な者、もとい『神』が揃っている。


 ライトが少量の赤ワインの入ったグラスを掲げる。


「では、レイレード王国から来た国王クリスタルと側近ルーグの歓迎会を開催します!」


 そう宣言し、ライトはグラスの中身を空ける。

それに合わせて皆もグラスの中身を飲み干す。

中身を飲み干したグラスを皆で掲げ、歓迎会の開催宣言は終わりを告げた。

 その後各自食事や談笑を楽しむ。

クリスタルとルーグ、そしてライトとレフトも例外ではない。


「ここのバケット、本当に旨いよな。小麦が違うのがわかる。」

「ルーグ、お前またパンばっかり食ってんじゃん。ワインでも飲めよ!」

「ソうよ、たまには果物とかメインで食べたラ?」

「まぁまぁ、三人とも。僕としては何であれ『僕の領地で取れた食べ物が美味しい』って言ってくれて嬉しいよ!」


 そんな談笑を行っていると、人の手足を持つ巨大蜂が現れる。


「レイレード国王様、ルーグ閣下様。ようこそ我らが『善神の最高神』である創造神様の領地へお越し下さいました。」


 四本ある手のうち二本でドレスの裾を上げ、優雅に挨拶をする。

そして残りの手には、大事そうにラッピングされた手のひら大の何かが収められている。

その品物をクリスタルに差し出す。


「我が領地は『虫の領地』でございます。これは我が奉仕種族が作り上げた蜂蜜にございます。お口に合えば良いのですが、どうぞお試し下さい。」

「そうか、お前は『虫の神』か。では遠慮なく頂こうか。」


 クリスタルが品物を受け取り、その場で丁寧に包装を解く。

中には赤みがかった蜂蜜が瓶に入っている。

蓋を開ければ、ふわりとしたリンゴの香りが広がる。

クリスタルはそれをスプーンで取り、口に運ぶ。


「お、旨いな! リンゴの風味がするのが良い。ハーブティーに入れても良い品物だな。」

「お褒めに与り、光栄にございます。」


 虫の神は頭を垂れる。

その背中にある羽根がブンブンと羽音を立てている。


「喜んでくれて何よりだ。是非量産出来るなら、うちと取引させてくれ。」

「ありがとうございます。お気に召されて嬉しい限りでございます。生産体制が整い次第、是非取引させて下さいな。」


 何処かご機嫌な様子で席に戻っていく。

四人で渡されたリンゴ風味の蜂蜜を味見していく。


「これは旨いな。アップルティー風味のハーブティーが出来るんじゃないか?」

「美味しいね! 多分リンゴの花から採取したんじゃないかな?」

「こレはいいわね! アタシも欲しいわ!」



 その後もクリスタルとルーグは様々な贈り物を貰う。

ライトも『善神の最高神』として供物を贈られる。

 唯一、レフトは誰からも物を贈られるどころか声をかけられていない。

レフトと話をしているのは、クリスタルとルーグとライトの三人だけである。

そして、何処からかひそひそ声が聞こえる。


「またあの邪神が来てますよ。何故創造神様とあんなに距離が近いのでしょうか?」

「あんな恰好をして、色仕掛けでもしてるのでは?」

「さすが、『邪神の最高神』の考え方は我々とは違いますな。醜くはしたない。」


 声をたどれば、出席している善神達の一部から聞こえる声であった。

それにルーグは顔を(しか)める。


「まだ『善神』と『邪神』の壁は大きいな。自分が有利だと思い込んで話をしているな。」

「ソういうのいちいち気にシていラレないわよ。アタシ、ここに来る度いつも言わレルもの。」

「『善神』と『邪神』の壁は大きいな・・・・。」

「出来るだけ僕とレフトは一緒に活動して、レフトへの偏見をなくそうとしているのだけれどもね・・・・。」


 楽しいはずの歓迎会は、四人だけは浮かれ気分で会話が弾む様子はなかった。

ここまで読んで頂きありがとうございます!

今回のお話はいかがでしたでしょうか?


今回はレフトへの『善神達』からの目線をお届けしました。

正反対の特色を持つ『善神』『邪神』。

これに関しては次回お話をさせて頂きますね。



厚かましいですが、創作の励みになりますので、良ければ評価をお願い致します。


改めて、読んで頂きありがとうございました!


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