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【旧版】Crystal Asiro【クリスタルアシロ】  作者: wiz
第1章 国王と側近
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首脳会談~バーベキューを添えて~

前回二人のもとを訪ねてきた創造神『ライト』、破壊神『レフト』。

その二柱とバーベキューをする事になったクリスタルとルーグ。

二人と二柱の交友関係、そして二柱の『能力』が見れるお話。

 城から大きく外れた位置にある大森林。

森は涼し気な風が吹き、爽やかな印象を受ける。

野生の生き物が多く住まい、あちこちから「チチチ・・・」と鳴き声が聞こえる。

やって来た侵入者から逃げるように、忙しなく小動物が動き回っている。


 ザク、ザクと4人分の足音が響く。

それに伴い軽く荷物と衣服の擦れる音もする。

クリスタルとルーグ、そして創造神ライトと破壊神レフトは開けた場所にたどり着く。

買った食材を置き、クリスタルが宣言する。


「ここをキャンプ地・・・・じゃない、バーベキュー会場とする!」

「待ってまシたぁ!」

「開けてるから、火事になりにくくていいな。」

「ねぇ、動物狩りはしなくて良くない?」


 狩りをする事に喜んでいるレフト。

有事の際の心配が減ったルーグ。

狩りに反対ぎみのライト。


 反応はそれぞれだが、バーベキュー会場にするのには文句はないようだ。

クリスタルがライトの文句に答える。


「狩りたての肉は旨いから仕方ないな! それに、ちょっと鹿が多いんだ。数頭狩っても問題はない。」

「うーん、まぁ、それならまだいいけれども、無暗に狩りすぎないようにね?鹿が可哀そうだもの。」


 生態系に影響が出ると分かり、一先ず納得するライト。

その表情からは、納得しきってはいない事が分かるが。

話を聞いたレフトは、身の丈ほどの大鎌を担いで走り出す。

それに着いて行くクリスタル。

片手には剣を持っている。


「じゃあ2頭程狩ラセてもラうわよ? 行ってきまーす!」

「あ、俺も狩りに行くわ。行ってくる。」

「行ってらっしゃい。ライト、俺達は下準備でもするか。」


 女性達は早速狩りに出かけてしまったため、男性達で準備をする事にした。

___________


 ルーグとライトはまず火おこしをする事に。

しかし、バーベキューセットは荷物にはない。

それでも男性達が平然としているのには理由がある。


「ライト、バーベキューセット『創る』のを『頼む』。」

「了解! ちょっと待ってね!」


 そう軽く言うと、ライトは何もない場所に右手をかざす。

その手から淡い光を放ったその刹那、先ほどまで何もなかった場所に『バーベキューセット』が現れる。


「こんな感じで『創って』みたよ! 大きさ足りるかな?」

「大丈夫じゃないか? ありがとうな。」

「フフッ、お安い御用だよ、ルーグ!」


 そう言って笑うライト。

早速火を起こしつつ、二人は談笑する。


「だが、お前のその『創造の力』は便利だよな。『神頼みすれば創れる』し『自分の創りたいモノも創れる』んだろ?」


炭に火を入れ、うちわであおぎつつルーグはライトに話しかける。


「制約はあるけどもね。」


 ライトも一緒になってうちわで火を起こしている。


「僕は『創造神』。『神』という種族だから『神頼み事をされて初めて相手の望むモノを創れる』。僕自身が欲しいものは、創るのちょっと遅いし疲れちゃうんだ。」


 「それに、」とライトは続ける。火力が少しづつ上がってくる。


「『何かを創る』なら、破壊神であるレフトに『同じだけの価値・素材のモノを壊して貰わないといけない』。その制約がないと、世界がめちゃくちゃになるから。後でバーベキューセットの対価、消して貰わないとね。」


 ちょっと困った風に笑うライト。

ルーグもつられて同じ顔をする。


「ま、等価交換だよな。普通モノ作るのだってそうなんだからさ。お前達は作る工程を無視できるだけ凄いと思うぞ。」

「ありがと! でも、ルーグの『能力』も大概だと思うよ?」

「その『能力』のせいで、厄介な仕事入ってくるがな。それはクリスタルもそうだがな。」

「お疲れ様。火起こしはもう大丈夫そうだね! お野菜切ろう!」


 火おこしが終わった男性達は、ライトが創ったバーベキューセットの中にあるテーブルを組み立て、のんびりと調理の支度をするのであった。

___________


 一方その頃のクリスタルとレフトは、


「レフト! 鹿そっち行ったぞ!狩れ!」

「任セなサい!!」


 本日4頭目となる鹿の首を()ねた。

声も出さずに倒れる鹿の倒れる音に、小鳥達やリス達が逃げ出す。

獲物を両脇に抱えた女性二人は、バーベキュー会場に戻りつつ談笑する。


「とこロでアタシ達来た時、クリスタル達何か悩んでいたわよね? 何かあったの?」

「お前、ここが『様々な差別及び贔屓を厳禁としている』事は知ってるよな? それの対策練ってた。それと『小麦の農薬を何とかしよう問題』があるんだ。質が悪くなってな。」


 クリスタルの言葉に、レフトが鹿の血抜きをしつつ言う。


「前者はアタシ達には関係ないけど、小麦の農薬なラ、ライトと取引シたラ?あの人の治めてル領域、農作物大国よ?アタシの所は農作物系は管轄外だかラ無理だけど。」

「・・・・それいいな。ライトの治める領域ならば、質は間違いない。」


 話に上がった『ライト』、そして話を出した『レフト』の二柱。

彼らはそれぞれ異世界『神の世界』にて、それぞれ国を治める『国王のような立場』である。

しかも、クリスタルにとってはライトもレフトも友人である。


『信頼関係が既にある相手と、新しい取引が出来る可能性がある。』

これはとても魅力的だ。


「さっさと戻るぞ。ライトと交渉しないとな。」

「バーベキューシながラ?」

「バーベキューが接待の食事会だ。いいだろう?」


 レフトの茶化しに、クリスタルも乗る。

二人は嬉々として、バーベキュー会場に戻っていく。

遠くで煙の匂いが漂っている。

___________


「やっぱリ狩リたての肉は美味シいわね!」

「酒持ってくればよかったな。刺身にした鹿肉が旨い。」

「お前ら、野菜も食べてくれ。せっかく焼いたんだからさ。」

「皆ごめんね。焼いてたお野菜、半分くらい僕だけで食べちゃった・・・・。」


 皆でそれぞれ食べたいものを食べつつ食事をする。

久しぶりに『国の代表として』ではなく『親しい友人として』集まってのバーベキューは格別である。


「ライト、今お前に『ワイン創って』って頼んだら、何が対価で消える?」


 クリスタルの頼み事の質問に、ライトは眉を下げて答える。


「君の舌を満足させるワインを『創る』なら、今年のこの国のブドウは不作になるね。」

「え? 不作にシちゃう? アタシ頑張っちゃうわよ? ソうソう、バーベキューセットの対価、消シてなかったわね。今消シちゃうわ。」


 今度はレフトが地面に向かって左手をかざす。

黒い光を手から放ち、何やら鉱石やら黒い油が現れ、その光に吸い込まれる様に消えていった。


「対価とシて、石油と鉱石を無くシたわ。で、ワインはどうスルの?」

「いや、また今度にしよう、城にもワインセラーあるしな。それよりライト、今ちょっといいか? お前の国から欲しい品があるんだが、今その話をしていいか?」

「え? なぁに?」

「お前の国、作物に強い取引しているだろ? 小麦の農薬か、無農薬で質の高い小麦の品種が欲しい。取り引きしたいんだが。」


 クリスタルの『商談』に、ライトが一度箸を止めて人差し指を顎に当てて考える。


「そうだねぇ、安価に取引するなら農薬がオススメかな。無農薬のもあるけど、僕の国のブランド品だから、譲るなら高くなっちゃうよ?」

「そうか、なら農薬をくれ。代わりにそっちからの要望あるか?」


 クリスタルの言葉に、ライトは「確か何かあったんだよね・・・。」と顎に手を当てて思い出そうとする。


「えーと、何だったかな、・・・・あ! 蚕が足りなくなりそうなんだ! 蚕自体か蚕から取れる糸の取引したいんだけれども、どうかな?」

「蚕本体だと輸出すると俺の国でも足りなくなるから、生産に数年待ってもらう事になる。糸だけなら早く取引できるぞ。」

「それなら糸を先に輸入したいな。蚕本体は僕の国でも繁殖頑張ってるけど、今年の繁殖の様子を見て決めさせて!」

「了解。じゃあ城に戻ったら取引の契約書書くか。」

「わかった!」


 真面目な取引の話は直ぐに終わる。

大事な問題は片付けられそうだ。



 そんな国のトップと神の会談を、バーベキューしながら眺めるルーグとレフト。


「凄いシュールな首脳会談だな。大森林の中で行われる首脳会談、ってどんな状況だよ。」

「ソもソも首脳会談なんてやル予定じゃなかったかラ、仕方ないじゃない。焼けていル最後の肉、貰ってくわねー。」

「まだ肉あるから食べてくれ。というか、首脳会談の横で普通にバーベキューやってる俺達も俺達だがな。」

「仕方ないわ。バーベキュー美味シいもの。」

「そして俺の担当だった『小麦農薬問題』の残った仕事が『取り引き先との交渉解除』くらいしか大きな仕事がなくなった。」

「だったラ、クリスタルの仕事手伝えば良くて?」

「側近やっている段階で仕事手伝ってるっつーの。」


 バーベキューをして会話をしつつ、クリスタルご希望のドラゴンの肉が焼ける。


「ドラ肉焼けたぞ。食べる奴は食べろー。」

「俺、食う。半分食う。」

「アタシも食べル!」

「リーフレタスあるから、それにお肉包んで食べてみて! さっぱりするんじゃないかな?」


 その言葉にクリスタルが反応し、ライトの肩を掴んで言う。


「お前、リーフレタス買ってきてるとか、なんで最高なことする?」

「ねぇ、今僕褒められてる?」

「褒められてるな。見た目は怒られてるけど。」

「クリスタルって、よく褒めてルのか貶シてルのか分かラない事スルわよね。」

「それより早くリーフレタスをこっちに寄こすんだ! 食べたい!」

「フフッ、もうちゃんと用意してあるよ! お食べ!」


リーフレタスに肉を挟み、食べる者がいたり。

そのまま肉を食べる者がいたり。

リーフレタスをそのまま食べる者がいたり。

ひたすら肉を焼く者がいたり。


 そうして首脳会談を兼ねた彼らの食事会は、大森林の中で終始バーベキューの匂いに包まれていた。

ここまで読んで頂きありがとうございます!

今回のお話はいかがでしたでしょうか?


前回登場した『ライト』がどのような条件で『モノを創るか』、そして対の存在である『レフト』の立場が分かる内容となりました。

今後、対の存在である二柱の仲がどのようなものを書いていきたいものです。


また『首脳会談』という事で、クリスタルとライトの『取引』の場面もありました。

真面目な話をしていますが、そもそもクリスタルもライトも片手にお皿とフォークを持って話している、実に間抜けな図で話していたりします。

何せ、バーベキューの途中ですからね。


次回は城に戻った四人(正確には二人と二柱)がお泊り会をします。

そもそも四人はどのような関係か。

男性達が話していた際に話題に上がっていた、クリスタルとルーグが持つ『能力』。

それにまつわるお話になります。



厚かましいですが、創作の励みになりますので、良ければ評価をお願い致します。


改めて、読んで頂きありがとうございました!

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