『知能』の境界線
次なる世界にやってきた二人。
自然の見当たらない国にやってきた二人の首には、ある『認定証』が。
見渡す限りの銀の世界。
そこに自然の面影は無い。
クリスタルとルーグがやってきたのは、機械ばかりの世界。
自然を排除したからこそ出来る、どこまでも整理された街並み。
歩く者は、殆どが機械人間、もといアンドロイドだ。
「ここまで来ると緑が欲しいな。目に痛い。」
「何処もかしこも鉄で出来た建物ばかり。うちの国にも『機械文明の区域』があるとはいえ、此処までじゃないぞ。それに、」
ルーグは胸に下げた名札の様な物を見る。
「『知能所有者認定書』って、何だ。」
「入国時に知能指数計られるとはなぁ。」
先ほど入国時にテストを受けさせられ、その後渡された物である。
「知能ある者でなければ、ここでは『人』ではないんだろうよ。学習機能あるアンドロイドばかりしか歩いていないし。人間は殆ど見かけない。」
「そもそも生き物は知能にバラつきがある。それ故だろうな。」
それでも飲食店やファッションショップなどの嗜好品を売る店は多く、入店するアンドロイドも多い。
二人は試しに飲食店に入ってみる。
「いっらっしゃいま___あら! 人間のお客様でしょうか? ようこそいらっしゃいませ!」
「・・・・『人間』のお客様。」
「はい! ここの国では珍しいんですよ! 認定書を持つ程の『知能』がある人間や生き物は本当に稀なんです! 是非ゆっくりなさって下さい!」
席に案内されるその途中、アンドロイドからは様々な視線を送られる。
主に興味本位であろう。
「こちらの席にどうぞ! メニューはパネルからご注文下さい!」
「ありがとうございます。」
「どうもー。」
二人はメニューを見る。
どうやらメニューは普通の様だ。
アンドロイド用の特殊なメニューもあるが。
「『500W電池』とか『帯電補給液』とか、アンドロイド向けのメニューが多いし安価だ。普通の食品は値段が高いな。無い訳ではないのが救いだが。」
「確かに。気になるのは、殆ど生き物の見かけないこの国に『肉』がある事だな。何処から仕入れているんだ?」
一先ずクリスタルは『ステーキセット』を、ルーグは『ベーコンレタストマトのサンドイッチ』を頼む。
「ルーグ、お前ここでもパンかよ! どんだけ食うんだよ。」
「お前だって肉ばっかりじゃん!」
そして程なくして運ばれる食事。
テーブルに専用の機械がやってきて、食事を置いて戻っていく。
「ああいう機械もあるんだな。ああいう機械には『知能』は無い扱いなんだろうか?」
「『学習回路』の違いじゃないか? まぁ、ちょっと話を聞いてみてもいいかもな。」
話を聞く前に、二人はまず料理を食べる。
「この肉、ちょっと変わった味がするな。『人工肉』的な味がするな。」
「さすがは機械の国。そこも人工なんだな。俺のは普通の味だが、ベーコンはちょっと変わった感じがするだけだな。」
二人は食事を食べ、飲み物を注文して今後どう行動するかの方針を考える。
クリスタルは紅茶を、ルーグはコーヒーを飲む。
「何処かで人でもアンドロイドでも、話を聞いてみたいな。それに宿も取らないと。」
「それならホテルとかのフロントが空いているタイミングで、従業員から話を聞けばいい。『興味が湧いたから、詳しく話聞きたい』って言えば、悪い気はしないだろうよ。」
「そうするか。パンフレットでも貰ったりしてもいいだろうな。」
二人は飲み物を飲み終わると、会計を済ませてホテルを探す。
__________
「『知能の定義』についてのご質問ですね? それなら私でもご説明できますかと。」
フロントで部屋を取る際に、従業員のアンドロイドに話を聞けばそう答えが返ってくる。
「お時間が良ければ、説明をお願いしてもいいですか?」
「承りました。今はお客様が混雑しておりませんので、こちらにてご説明させて頂きます。どうぞ。」
「サンキュー。」
従業員は二人をロビーの椅子に案内し、コーヒーを出してくる。
焙煎された豆の香りが辺りに漂う。
「お気遣いありがとうございます。」
「すまないな。助かる。」
「いえいえ、こちらこそ我が国の事について興味を持って頂き、ありがとうございます。ではお話させて頂きます。失礼して、私も座らせて頂きます。」
従業員は二人の正面に座り、話をする。
「まず『知能の定義』ですが、お客様が入国時に受けたでしょうテストにより、知能指数が一定以上あるか否かが定義でございます。我が国の住民では、主に製造されて教育をされたアンドロイドが『知能あり』とされ、『住民権』が与えられます。」
「『知能がある』。それが『住民権』の必須条件な訳か。」
クリスタルは足を組んで、コーヒーを啜る。
酸味が少なく、コクが強い。
従業員はクリスタルの言葉に答える。
「仰る通りです。知能の低いものは『住民権』はありません。」
「では、『住民権』の無い者はどうしているのですか? 特に人間は街で見かけませんが・・・。」
従業員はパンフレットのマップを見せながら説明を続ける。
「こちらの『学習研究所』という場所にて『知能を上げる教育』を受けております。主に人間が大勢いますが、製造から間もないアンドロイドもいます。ここで皆知能を上げる学習を施され、『住民権』を得るために努力をするのです。」
「なるほど、ちゃんと施設があるんですね。見学とかは出来る施設なのでしょうか?」
ルーグの質問に、笑顔で従業員は答える。
「それはもちろん。是非見学をされて下さい。きっと知見が広がるでしょう。」
「そうさせて貰おう。俺はそういう理由で旅をしてるからな。」
「それはそれは! 流石は『認定証』をお持ちになるだけの方ですね。施設は予約なしで見学できます。時間は9時から18時まで開いております。」
「ご丁寧にありがとうございます。まずは泊まらせて貰う部屋に行かせて貰ってから、施設に何時行くかを検討させて貰いますね。」
「こちらこそ、お時間を頂きありがとうございます。では、ごゆっくりお過ごし下さい。」
コーヒーを飲み終え、二人は従業員の見送りを受けつつ部屋に向かう。
従業員は終始嬉しそうにしていた。
ここまで読んで頂きありがとうございます!
今回のお話はいかがでしたでしょうか?
今回は『知能の定義』『住民権』の話題でした。
そして話題に上がってきた『学習研究所』。
ここでは教育が行われている場所の様です。
学校と何が違うのでしょうか?
次回は二人が『学習研究所』に見学をするところからです。
厚かましいですが、創作の励みになりますので、良ければ評価をお願い致します。
改めて、読んで頂きありがとうございました!