『食事』を知った世界
男性に『食事』を教える二人。
そしてある日、『食事』を覚えた人が増える。
それによって起こる問題とは・・・?
「何だか不思議だ! これは確かに飲み物とは違う味だ!」
「だろ? それが『旨味』ってやつだ。」
食べられる野草とキノコを探し、焚火で料理したものを男性に振舞う。
味付けは手持ちの調味料のみだが、どうやら男性は気に入ったようだ。
「はぁ~。なんだか腹が重たいな。だが悪い気はしないな!」
「それが『腹が満たされる』『腹が膨れる』って感覚だな。食べ過ぎないようにしないと苦しくなるが、程々ならいい気がするんだよ。」
「こりゃいいな! 俺も『食事』してみようかな・・・・。」
初めての感覚にぼんやりとする男性に、ルーグはアドバイスと忠告をする。
「さっき俺がやったみたいに『調理』をして『料理』を作って、『食事』をしてみて下さい。最初は面倒ですが、慣れれば『食事』が楽しみになりますよ。」
「そうしようかな・・・・。これは止められないかもしれないなぁ・・・・。」
「ですが、食料は限りがありますし、そもそも食べると危険なモノがあったりしますので、それはお気をつけて。」
「そうだな、だが暫くは『食事』はやりたいなぁ・・・・。」
どうやら忠告はあまり男性の頭に入っていないようだ。
まだぼんやりと『腹が膨れる』感覚を味わっている男性を見て、二人はその場を離れることにした。
「さて、そろそろお暇しよう。おじさん、『カプセル』ありがとな。」
クリスタルとルーグは男性と別れ、また旅を続ける。
男性は二人を見送り、そしてまた『食事』の余韻に浸っていた。
__________
「最近『飲食店が出てきて』ないか?」
クリスタルとルーグは旅を続けて数週間、今までなかった『飲食店』が現れ始めていた。
『食事屋』という名前で現れたソレは、何処も繁盛している。
「『食事』を体験できる所だよ! 寄ってみてくれ!!」
「『カプセル』にも飲み物にも無い、不思議な『旨味』という物を堪能できるぞ!」
二人は顔を見合わせる。
「どういう事だ? クリスタル、『世界監視』して状況を見れるか?」
「お前も『記録』で見てくれ。どうしてこうなったのかを。」
二人はそれぞれの能力を使い、状況を把握する事に努める。
探していけば、ある人物が見つかった。
「これは、俺達が『食事』を教えた男性が皆に『食事』を教えている。」
「俺もこのままじゃ『人間の数が減る』のがわかった。食料を増やす手段を知らないのに飯食ってたら、食料不足になって飢える人が出る。これは、俺達がどうにかすべきか?」
悩むクリスタルとルーグ。
少し知識を教えただけで、ここまでの影響が出た。
世界を管理する者として、どうにか手を加えて修正をするか。
世界を旅する者として、手を加えずにそのままにするか。
その判断はかなり際どく、難しい。
「出来る範囲の事はすべきだろう。食べ物の生産元に生産方法を入れ知恵しよう。それで様子を見てみるか。」
「わかった。まずは野菜の生産元に種の育て方を教えよう。」
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生産元に種を持って行き、「食料が増やせる」と言い教えて歩く二人。
しかし、何処も反応は一緒だ。
「数か月も増やすのにかかるのか? それならそこら辺から取った方がいい。」
「そんな手間かけられるか!」
「その辺にあるものを、どうして金をかけなきゃダメなんだ!?」
そして猟師にも酪農を教えるも、やはり同じ反応である。
「その辺にいる生き物だぞ? 増やす必要はないだろ!」
「勝手に増えるものを飼育する手間が面倒だ。」
「そんな事やるなら、上手い狩りの方法教えろ!」
そんな反応ばかりで、誰も取り付く島もない。
二人は国を出て、しばらく旅をしつつ相談する。
「何処もダメだな。手間と金を見てばかりだ。これはどうする?」
「この世界の住人が『このままじゃダメだ』って気づいて、生産を始めないとな。『食事を教えた旅人』として、やれるだけはやったさ。後は『何でも屋として仕事』範囲の仕事になる。それには依頼が来ないとな。」
「暫くは依頼が来るか様子見しないか? 誰か気づくかも。」
クリスタルとルーグは、仕方なく旅を続けて様子を見る事にした。
辺りから聞こえる動物の声は、最初来た時よりも格段に減っていた。
ここまで読んで頂きありがとうございます!
今回のお話はいかがでしたでしょうか?
『食事』を覚えたての世界。
生産を知らない者が辿るのは、どのような世界でしょうか?
この世界のお話は次で最後です。
結末をお楽しみ下さい!
次回は誰かがクリスタルとルーグを訪ねてきたようです。
厚かましいですが、創作の励みになりますので、良ければ評価をお願い致します。
改めて、読んで頂きありがとうございました!