アリアの願い
アリアから『依頼』が入る。
その依頼を聞き、クリスタルは依頼の『対価』を答える。
アリアの『依頼』とは?そしてその『対価』とは?
「私を、『聖女』の役目から解き放って頂きたいのです。」
その言葉に、クリスタルは確認をする。
「要は『聖女』を辞めたい、って事か?」
アリアは頷く。
「この国の『聖女』は、ある日突然先代の聖女からお告げを受け、その後力が目覚めるのです。そもそも『聖女』は国でただ1人しかなれない者なのです。」
ア リアは悲しそうに言う。
「私も先代聖女にお告げを受け、力が目覚めたのです。突然の事で、私は故郷の家族や幼なじみに挨拶も出来ず、聖女の住む事になっている神殿に連れてこられました・・・・。」
「聖女の力は、適当に『お告げ』をすれば移るものではないのか?」
「そうではないようでして・・・・。力によって『次の聖女』が誰かが分かるそうなのです。そして次の聖女が誰か分かると、次第に力がなくなり、聖女ではなくなるそうです。」
クリスタルは足を組みなおし、興味なさげに言う。
「お前が言いたいのは、『意図的に聖女の力を誰かに押し付けて、自分は逃げたい』。そういう事だな?」
「クリスタル! 言い方ってものが___」
「ですが、その通りでございます。私は逃げ出したいのです。」
叱るルーグの言葉を遮り、アリアは続ける。
俯いてしまい表情は見えないが。
「『聖女』の役目は、何時終わるか分からないものです。そのため、生涯聖女である者も多数存在したそうです。私はもう、ただの『アリア』という個人になりたいのです・・・。生涯聖女でいる事は、とても耐えられません!!」
アリアの言葉に、壁に腰かけてルーグが問う。
「どうして『聖女』を辞めたいのかをお聞きしても? 月に一回結界を張るだけで、皆からちやほやされるでしょう? その何が嫌なのですか?」
「私は、どうしても会いたい人達がいます。」
アリアは顔を上げ、クリスタルとルーグを見る。
「故郷を離れ、一度も会っていない家族と幼馴染とまた暮らしたいのです。『聖女』ではそれができません。私はただ、もとの生活を送りたいだけなんです! お願い致します、どうか・・・!!」
アリアは顔を手で覆い、その場で泣き崩れる。
覆い隠したその手から涙が溢れて止まらない。
ルーグはクリスタルを見る。
いつも通り、クリスタルの判断に任せる。
「アリア、お前が分かっているだろうが、『依頼』には『対価』がつく。『依頼』は、最初にお前が言った通り『聖女の力を他者に移す事』とする。そうでなければ、『対価』を支払えない程のものになってしまう。それでいいか?」
「はい! 覚悟の上です・・・・!!」
クリスタルは続ける。
「よく聞け。『対価』は、『お前自身の幸福』だ。」
『対価』の内容に、アリアは顔を上げ目を見開く。
「どういう事ですか!? 『私自身の幸福が対価』とは、どういう意味ですか!?」
「お前は他者に自分の送る予定だった人生を擦り付けようとしている。その身勝手が、そう安い対価で済むと? 擦り付けられた者は、意図的に突然『聖女』にされるんだ。お前が『聖女』になった時とは訳が違う。」
アリアは俯く。
クリスタルの言い分は最もだからだ。
「お前は人生で受けるはずだった『幸福』を、ソイツに捧げる形になる。この条件を飲めば『依頼』として請け負い、動いてやろう。」
「どうする?」と問うクリスタルに、アリアは黙る。
暫くして、アリアはこう答える。
「・・・・お願いします。私の幸福は、家族と幼馴染とまた暮らせるだけで十分です。」
「わかった。では『依頼』を受けよう。」
クリスタルの言葉を聞き、ルーグはアリアの目の前に紙とペンを差し出す。
「これは『依頼同意書』。もう『依頼内容』と『対価』は書かれています。名前を書けば、正式に『依頼』を受けます。」
「・・・・わかりました。」
アリアは少し震える手で、名前を書く。
出来上がった『契約書』をルーグは受け取り、クリスタルに渡す。
内容が間違っていないかを確認した後、クリスタルはアリアに話す。
「これで正式に『依頼』を受けた事になる。『聖女の力』を、どうにかして誰かに移そう。」
アリアは「ありがとうございます・・・・。」と涙声で礼を言う。
その涙声は、『誰かに使命を擦り付けてしまった罪悪感』からか、『使命から解放される喜び』からか。
そんなアリアを見て、クリスタルが続ける。
「依頼開始日、つまり『聖女の力』を移す日は何時がいい? 『大結界祭』前か、後かだが。それによって、どれだけ『対価』を貰うかが変わる。お前はどうしたい?」
「『大結界祭』は、私が行います。その翌日に『聖女の力』を移して下さい。せめて出来ることをします。」
涙をぬぐい、アリアは答える。
「ではそうしよう。ルーグ、依頼者を元居た場所まで送ってやれ。『空間移動』は面倒だからな。」
「了解。ではアリアさん、俺と一緒に戻りましょう。」
「ありがとうございます・・・・。失礼します。」
アリアはクリスタルに礼をし、ルーグと共に部屋を出た。
__________
「さて、どうやって『聖女の力』を移そうか。」
残ったクリスタルは、アリアの『聖女の力』について考察する。
「『聖女の力』、つまりは『魔払いの結界を張る力』。それを移す仕組みを作ればいい訳だな。」
クリスタルは持って来たメモ帳に、魔法式を書き始める。
その間にルーグが戻ってくる。
「ただいま。早速依頼をこなす気だな。」
「おかえりー。今魔法式を書いてる所。アリアに『魔払いの結界の力』を無くす魔法を作っている所。それを逆に応用すれば、『誰か』に『魔払いの結界の力』を付与できる。」
「その『誰か』は、もう決めたのか?」
ルーグの問いに、クリスタルはニヤリとして答える。
「『対価』が決まった時から、ある程度は、な?」
「意地の悪い事で。そのある程度絞られた中で、力を移される『誰か』を俺がアリアの過去を探って決めよう。『記録』の力があるからな。」
「それは任せた。さて、早速『仕事』だ。」
二人はそれぞれ『仕事』をする。
アリアの願いは、どの様な形で叶うのだろうか・・・・。
ここまで読んで頂きありがとうございます!
今回のお話はいかがでしたでしょうか?
今回クリスタルとルーグが「不老不死の集団」としてのお仕事を始めました、
アリアの願いは、どのような形で叶うのでしょうか・・・?
身勝手と分かっても叶えたい『願い』。
それの答えは、次回に持ち越します。
厚かましいですが、創作の励みになりますので、良ければ評価をお願い致します。
改めて、読んで頂きありがとうございました!