表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
JIGSAW PUZZLE  作者: よぞら
That child
28/57

28th piece Heroism

※軽度のいじめシーンが御座いますので苦手な方はご注意ください。

 将来の夢。

 ぼくの将来の夢は生活の役に立つ機械を作る会社では働くお父さんのように人々の役に立つ仕事に就くことです。

 命を助けるお医者さん、安全を守るお巡りさん、悪い人を裁く弁護士さん、世の中には人を助ける仕事が沢山あります。

 沢山勉強して、ぼくも誰かの助けになる仕事を探したいです。


 英仁とのじゃんけんに敗北し頼まれたレクレーション用の教材を取りに行った帰り道、掲示板に張られた作文を見て小学生の時に書いた文面が脳内に浮かんだ。

 あの頃、描いていた未来の自分に少しでも近づけているだろうか。置いてけぼりにされた夢は今も遠い場所にあって叶う事はない。


「将来か。」


 欲しい資格があって大学の文学部にいる。進学校で上位の成績にいた愛路が今の進路へ進むことを選んだ時、教師陣はそろって苦言を呈した。理解ができないとも言われた。

 他者に理解してほしいとは思わない。誰にも干渉されたくなかった。

 ここで考えても仕方がないと愛路は持っていた教材を抱え直して廊下を歩きだしす。


「あんたさ、マジきもいんだけど。」


 聞こえた言葉に体が凍りついた。声や口調は異なるが何度も同じような台詞を浴びせられた経験がある。


「学校来ないでよブサイク。」


 人通りの少ない階段付近、数人の女子が集まっていた。トイレとでも言って数人で抜け出したのだろう。人手不足による抜け穴だ。しっかり管理されている様で大人の眼が届かない場所は多い。何となく通りづらく気配を消すように壁に寄った。

 見ると竜ヶ崎雨音が中心にいるように見えた。複数で囲んで罵声を浴びせるなど陰湿なことだ。その筆頭には原智己がいた。

 集団になれば程度の差はあれ弱い者、外れ者いじめが存在する。小中高と仲間外れや暴力、モノを隠されるなど数々の嫌がらせを経験した。度重なる転校だけが原因とは思っていない。

繰り広げられる目の前の光景に暗黒の学生時代を思い出して鬱になった。


「聞いてんの?」


 もやもやとした気持ちの渦に呑まれそうになったとき現在の状況を思い出した。こんなところで過去に浸っている場合ではない。何とか止めなければならないが注意などしたら事が大事になる。

 それ以前にあの中に堂々と入っていくには相当の勇気が必要だ。小学生といえども束になっている女は怖い。

 ここは穏便に素知らぬ振りをして横を通るしかないだろう。“何してるの?”とでも話しかければ散っていくか誤魔化されて今の状況は打開できるはずだ。

 情けないが雨音自身の為にも荒立てない方がいいように思える。

 緊張に汗ばんだ手で教材を抱え直し、二、三度深呼吸をして意気込むと歩き出した。


「何とかいいなよっ。」


 少女達まで数歩のところで、一人の女子が雨音を押す。いけないと歩調を速めた時、雨音がバランスを崩した。彼女の後ろは階段だ。


「危ないっ。」


 手に持った教材を離して床を蹴る。彼女が落ちる寸前で抱きとめることが出来たが自分たちの体が宙にあった事に気付き青ざめた。

 特有の浮遊感を感じ、全ての景色がスローモーションに映る。


『空、飛べたらいいな。』


 脳内に青空が浮かび、思い出の少女の声が聞こえた。


「ぐっ。」


 ぐるりと視界が回って体は階段に打ち付けられ腰や背中、腕に痛みが走る。雨音だけでも守ろうと頭と背中をしっかり抱きしめながらゴロゴロと下の段まで転がり落ちていった。


「後藤センセー!」


 複数の悲鳴と呼び声を最後に真っ暗になった。


『一度でいいんだ。この空を自由に飛べたらそのまま落ちて死んでもいい。』


 朝日を見た丘で少女は寝ころんで空に手を伸ばした。


『気持ちいいだろうな。』

『俺はご免だ。』


 同じように寝ころんで空を仰ぐと高い空に落ちそうだ。


『アイちゃん高いとこダメなのか?』

『高いところも垂直落下も、ついでに遠心力も嫌だ。』


 車やバスなどの乗り物も苦手で絶叫マシーンなど論外だ。


『軟弱者。』

『うるせぇ。』


 少女の笑い声が高らかに響いた。

 あれは暖かい秋の朝だった。そんなこともあったと苦笑すると背中や腰、頭や腕に激痛が走った。


「……痛ぇ。」


 ふと気が付いて起き上がるとベッドに寝ていた。白いカーテンを開けると保険医と泣きじゃくる雨音が椅子に座っていた。成程、保健室に運ばれたようだ。


「あら、後藤君。」

「えっと。」

「まだ寝てて。軽い脳震盪だと思うけど、念のため病院に行きましょう。4年生の女の子達に聞いたわ。落ちそうななった竜ヶ崎さんを助けたんですってね。」


 正確には落とされそうになっただが、生徒たちに都合よく話がまとまっているようだ。雨音も本当の事を言わないだろう。いじめをうやむやにするのは癪だが、愛路が言えば報復を受けるのは雨音だ。


「先生。ごめんなさい。」


 涙に濡れた声で雨音が謝ってくる。彼女の腕や膝には絆創膏や湿布薬が貼られている。やはり階段から落ちて無傷というわけにはいかなかったようだ。

 小さい頃夢見た通り、少しでも人に役立てる人間になれているだろうか。答えはきっと誰に聞いても分からない。


『Me of the visualized future.』



(◉ω◉)階段から落ちたら痛いですよね。

2回程経験がありますが無傷でした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ