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第74話:リニューアル

 



 ふむ。

 初発の動機に戻って考えよう。

 まずオレは……幸せになりたい。つまり、モテたい。

 そのために、とんでもなくハードな修練を頑張ってきたとこある。我が家のドラゴンであるラグナとの、ラスボス感たっぷりな超絶模擬バトルにも耐えてきたとこある。父さんや爺ちゃんとの模擬バトル、偉大なる帝位精霊たちとの模擬バトルだって頑張ってきた。

 もちろん、模擬バトルだけじゃない。パーティのみんなで、ダンジョン踏破をコツコツがんばってきた。

 うん。

 毎日、しっかりと頑張ってたら、結構、強くなれた。冒険者としてランクSに辿り着いたくらいなのであるからして。

 それに、頑張ってたら恋人もできた。

 今はちょっと遠距離恋愛中。お互いに冷静になるための心理的距離確保期間って言うの? だいたい十年くらい……らしい。恋人が言うには、だけど。

 同じ現象を、友はこう語る。「それはもう実質、振られてるじゃねぇか」って……。

 ……………………あり得ない。振られてなんてない。いたずらに不安を煽る親友の声は全力でスルーが必須なのだ。

 だから、恋人の方を信じる。

 ちょっと冷静になるために距離をとっているだけなのだ。

 それに……手紙を送ることは禁止されてはいないのであるからして。

「……ふむ」

 筆まめな男はモテるのである。

 恋人を心配させないために、近況をきっちり報告できる。これぞまさに恋人としての常識を完備している理想的な彼氏であると、自己評価しているくらいなのであるからして。

「えっと……」

 拝啓カグヤ様。お元気でしょうか? オレは元気です。そうそう、今オレは、色々あってエロダンジョンに来ています。

 ……ふむ。

「エロダンジョンに来た理由は、書いておいた方がいいよな」

 ふむふむ。

 ふむ。

「さて、親友ハルルに誘われるまま、海人族のエロダンジョンにやってきました。実はここ、偽ダンジョンだったんです。いつの間にか背負うことになった五十億ジェムの借金返済を兼ねて、エロダンジョンでお仕事することになりました」

 まず、お仕事のお手本を探すことにしたオレらの前に現われたのが、逆光のバブルこと、ポセイドン先生。

 その手法を参考にしつつ、借金返済のために魔法を生み出して、ガンガン稼ぐことに成功したわけだ。それはもう、あっという間に、一晩で億を稼ぐ男に成り上がったわけなのである。

 そんなオレらの稼ぐ力に目を付けたのが、この街の暗黒面―――三頭取(エビルスネーク)。計算通りに、三頭取に取り入ることに成功。オレとハルルの稼ぐ力を手に入れたいとの勧誘が、ライバル店の関係者―――奴隷商なんかからも次々に。日替わりでそれに応じる代わりに、信仰している神ポセイドンへの禊として神ポセイドンのダンジョン踏破を競う祭りっぽいのを行う感じで、制限時間内での到達回を競わせるイベントを開催。その順位がオレらとの契約時間量を巡る優位になる条件だってことにした。この取引に暗黒面の関係者が応じる流れを作ってくれたのが、お美しいディーテ先生たちだった。

 ちなみに、ディーテ先生は、あのトール先輩なんかをお供に、このダンジョン競争に参加中。

 ふむ。

「その一方でオレとハルルは、別の任務を展開ですよっと」

 邪教ネオ・アールブと三頭取。こいつらが結託して展開している偽ダンジョン。通称エロダンジョンって名前の歓楽街。ここでは、街の暗黒面―――奴隷商なんかが暗躍し、奴隷たちに理不尽な―――時に命を奪われるような胸糞悪ぃ性的な接客をさせてやがった。

 過剰なエロい欲求を満たすこの地にて、ネオ・アールブは、偽りの神マルとモルを信仰するように顧客を誘導。信仰の象徴とされた少女と蛇の融合体を現人神化することを画策。この地に根付いていた神ポセイドンに対する信仰心を奪う作戦を展開してやがったわけだ。

 この作戦のシナリオを描いた黒幕が、偽りの神マルとモルの正体―――邪神ジョルダバート。そいつが、少女と蛇を依り代にして、この世界に降臨して、判明した。

 驚くべきは、この信仰心簒奪の作戦は、邪神が描いたシナリオの到達点(ゴール)じゃなかったってこと。

「どうやら敵さんの狙いは、オレだったらしいです。カイト君もびっくりです」

 世界を救い、神々との交流が活発なヒュムを邪魔だと思ったのかもしれない。

 邪神との戦闘開始かと思いきや、強力な助っ人が登場。

 幸いなことに、神アポロンのイケメンヘルプを得られたことと、謎の美女女神ドヤ顔さんのヘルプを得られたこともあって、偽ダンジョンの影御支配者―――ジョルダバートの討伐と幽閉に成功。

 後はポセイドン先生たちが、この地にある本当のダンジョン―――神ポセイドンの信仰地が活性化するように流れを作ればいいのであるからして。

 そのカギを握るのが、三頭取の一人である大神官ドリトル。そして警備隊のエース。

 この二人を利用して、次なる作戦に進むわけだ。なにせこの二人は、命を救われたっておっきな借りがオレらにあるわけなのであるからして。

「もう少しで、ここでの作戦行動も完了する見込みです。またお手紙を書きますね。くれぐれもご自愛くださいませませ」

 ふむ!

「……おぃ、カイトさんや」

「ん?」

「書き終わったのか?」

「おぅ! ちょうど今、書き終わったとこ」

 遠距離恋愛中のカグヤさんも、彼氏の大活躍を知りたいはずなのであるからして。

「アーサー、これをカグヤさんに届けてくれる?」

 光のオーブが顕現して、アーサーとガウェインが姿を見せてくれた。

「承知しました」

「ガウェインには、オレらの護衛を頼む!」

「光栄です、主よ」

「心強いよ!」

 そうそう。ガウェインが幽閉されたって部分は、手紙に書かないことにした。ガウェインのプライドを守るために。

 実際、あの事態はガウェインのミスじゃなくて、邪神が絡んでることを察知しながら無理をさせたオレの判断ミスなんだけど……。そう繰り返し伝えても、ガウェインは自らを責めることを止めない。

「もう傷は癒えた?」

 ガウェイン救出から二日経った。

「はい。ご心配をおかけして申し訳ございません」

 片膝をついた姿勢のまま、頭を下げるガウェイン。

 その気品と優雅さが手伝って、ここが王城の謁見室に見える。ここはハルルが最初に連れてきてくれた街中にあるカフェの、オープンテラスなのに……。

「え? あの騎士さんイケメンすぎない?」

 ふむ。

 さすがガウェイン。登場するやいなや、注目の的。お近くのテーブルのお客様たちがチラチラと視線を送っておられるくらいなのであるからして。

「ヤバい! 異次元レベルのイケメンご降臨なんですけど? てかなんか光ってない? イケメンオーラヤバくない?」

「だよね! マジで私の性癖ど真ん中なんだけど? イケメンの適度なマッチョが短髪で整った小顔を搭載とかもう……ご褒美が過剰投与されすぎて死にそうなんだけど? 今日かまさか私の命日になるとは……至福」

「い、命の危機っ! イケメンの過剰摂取を控えてください」

「過剰摂取上等!尊死上等! てか本望!」

「てかあんた彼氏いたよね?」

「いますけど?」

「イケメン過剰摂取で尊死するってもうそれ彼氏がイケメンじゃないって言ってるのと同じなんだけど?」

「バレたか……。でも仕方ないわね。イケメン欠乏状態に超絶イケメン投与故に尊死するならやっぱり本望です。てか彼氏がイケメンじゃないのが悪いんです」

「酷っ」

「とか言いながら、あんたも彼氏いるでしょ?」

「くぅぅぅぅ……私も尊死不可避っ!」

 ……ふむ。

 さすがガウェインさん。

 イケメン騎士過ぎて、周囲の客がザワザワを通り越してモダモダ悶々し始めるレベル。

「てか……え? え? え? 今気づいたヤバくない?」

 ふむ?

「どうしたの?」

「いや、ちょっと状況整理したいの。ひょっとしてあの座ってる少年が……」

 えぇ。イケメン騎士の召喚主ですよ?

「……接客(アルファ)ってこと? ってことはあの騎士さん、ドエムってこと? 公衆の面前で少年に謝罪することで満たされる羞恥プレイ中ってこと?」

 ふむ?

「いや、さすがに違うでしょ」

 ふむ。

「どう考えても……あの少年が(ガンマ)でしょ? イケメン騎士を支配する優越感で満たされる的な?」

「えぇ~? あんな少年が? 性癖の歪みが早熟すぎ! ヤバくない?」

 ふむっ!?

「コンプレックスでもあるんじゃない?」

「イケメンに? あの年齢で?」

「そうそう」

「うわぁ……救済無理案件だわそれ。ヤバすぎじゃん……」

 ふむぅぅぅぅぅ。

 なんかオレが絶望的な性癖保持者扱いにぃぃぃぃっ。

「ガ、ガウェイン! 光に戻って!」

「承知しました」

 ふぅ~。

「あ、消えちゃった。イケメンマジ眼福だったになぁ」

「やっぱり。あの少年、イケメン騎士に嫉妬して消したのよ」

「うわぁ……男の妬みってやつかぁ」

 ふむぅぅぅぅぅぅ。

 ガウェインが居ても居なくてもこちらがダメージを受ける謎展開っ。

「ちょっ……ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいっ」

「マジで終わってるわね、あの少年……」

 ふむっ!?

「イケメン騎士の次は……イケメン竜人族みたいよ?」

「うわぁ……こっちも性癖ど真ん中すぎて辛い……」

「彼氏にしたい」

「マジ同意」

 え?

 イケメン竜人族って―――

「―――ハルルてめぇ……何してやがる?」

「もちろん……いたずら?」

 いつの間にか片膝を付いて、オレに目礼してやがる。

「……はぁ」

 まったく。ランクS冒険者になっても、この悪いノリは変わらないままとは……。嬉しいやら、切ないやら……。

「てか……そろそろ止めろし」

「おぅ。そろそろ移動しようぜ?」

「ハルルに同意。じゃあ、会計を―――」

「―――済ませてあるぜ? さっき便所に行ったついでによ」

「イケボの無駄遣い……止めろ」

 イケボで便所って言うんじゃねぇですよ。せめてお手洗いって言えよ、貴族のお坊ちゃま。

「ほら! さっさと行こうぜ!」

「いいけども。なんかテンション高くね?」

「へへ! 気が急いちまってな!」

 なるほど。

「……ご馳走様。奢ってくれてありがと」

「おぅ! ほら、立てよ! 行くぜ!」

「はいよ」

 興味に満ち溢れた周囲の視線に笑顔で応えてるハルルのケツを、蹴り飛ばしながら店を出て。

 まっすぐ、神ポセイドンのダンジョンに向かう。

 最近になってリニューアルが完了したダンジョンは、巨大な貝殻を模した塔の造形で。純白の表面にあふれんばかりに注がれている朝陽を、奇麗に反射して。

「……すげぇな」

「……あぁ」

 七色に輝く光が、空に投影している。クジラやイルカ、小さな魚の群れを……。飛んだり跳ねたりしながら、気持ちよさそうに舞う。海神ポセイドンを称える愛の歌にあわせて空を泳ぎ進む生物のパレードを眺めているような……そんな気持ちになる。

「ダンジョンリニューアル記念って感じだな?」

「おぅ」

 ダンジョンの受付がある広場。そこに向かう人々はみな、空を見上げて。

 微笑ましそうにパレードを眺めたり、ハイタッチを交わしたり、愛の歌を口ずさんだり。テンションは爆上がり中って感じだ。

「負けてらんねぇな」

「おぉよ! 準備は? 完璧なんだろうな?」

「ったりまえだろ? 誰に言ってやがるんだ?」

「ですよね」

 冒険者ハルルがダンジョンに挑むんだから。準備に余念はない……よな?

「へへ……体調は万全だぜ? 腰も軽いしよ?」

「……あっそ」

 不要な情報提供をありがとうございました。

「へへ……」

「なんかテンション高ぇな?」

 ずっとニヤニヤしてるし。無駄に声でけぇし。

「わかる? 俺よぉ……すっっっげぇワクワクしてんだよなぁ!」

「ワクワク?」

「おぅ! 初めてなんだって! 今期の神ポセイドンのダンジョンへの挑戦!」

「あ、オレもオレも!」

 ダンジョンは踏破者が出るたびに、ちょっと休業する。ダンジョンの報酬や敵、トラップをリニューアルするために。

「俺様はいい情報を手に入れたんだぜぇ?」

「いい情報?」

「おぅ! 今期のリニューアルがやべぇんだってさ! すっげぇ難易度になったってよ!」

「マジで!?」

「おぅ! ちょうど昨日の夜に出会ってよぉ!」

「出会った?」

「おぅ! 神ポセイドンのダンジョンに挑戦中の冒険者―――海人族のお姉さんに! たから間違いねぇぜ?」

 ふむ。昨夜のお相手だってことですね。

「なるほど。挑戦中の冒険者情報か」

 信頼はおけそうだ。

 気になるのは―――

「―――ランクは?」

 到達深度が深いほど、情報の精度は高いと考えていい。

「パーティランクAだってよ! 現在二十五層まで到達中らしいけど……二十六層で引き返してきたんだってよ?」

「危険に遭遇して?」

「あぁ。さすがに詳細は教えちゃくれなかったけどな?」

 汗水たらして手に入れた最先端の情報を、漏洩はしないだろう。他のパーティが有利になるから。

「まぁ、自分で確認するさ」

 その方が面白いし! 興味がある物事に対するネタバレはよくないことのであるからして!

「だな!」

「とりあえず難易度は期待できるってことで!」

「おぅ! でも俺とカイトとガウェイン殿なら踏破できるって!」

「おぅ! こっちも頼りにしてるぜ!」

「任せとけ!」

 拳をぶつけあって、ガッツリ肩を組む。互いのテンションがシンクロして、ますます高まってく感じがたまんないんだよなぁ。

「あ、でも確か今、先生たちが挑戦してるんだよな?」

「そうそう」

 ディーテ先生とペルシャ先生。それにトール先輩とシヴァっち先輩。

「俺らも急がねぇと! 先生たちが踏破しちまうかもしれねぇ……」

「いや、大丈夫だろ。先生たちは、到達階数を競う他のパーティの様子を確認しながら進んでるはずだから」

 いきなり大量リードを取らないはず。他の挑戦者たちが諦めたら困るから。最後の最後で追い抜くって作戦展開は、確認済みだ。

「そっか」

「そうそう。だからオレらは、何も気にせずに全力で駆け抜ければいい」

 上層から中層くらいまでは、ダッシュで行けるはず。

「ランクAが一時撤退したわけだから……」

「……あぁ。二十六層から下層に入ると思っていいだろ」

「ハルルに同意」

 実際に潜ってみればわかる。

「その奥……深層まで行ってみてぇなぁ」

「……あぁ。今日中に二十六層まで行こう。で、必要なら一時撤退して再挑戦な?」

 また翌日に、二十五層から再チャレンジすればいい。

「オッケー! リーダーに従うぜ!」

「リーダー、ね」

「おぅ!」

 懐かしい。皆と冒険してた日々が……【希望(ホープ)】で一緒にダンジョンに潜る毎日が、本当に。きっとオレの頬も緩みっぱなしだ。




 +++ +++ +++ +++




 若干急ぎ足で……でも最後の方は全力疾走で競争しながら進むこと五分。神ポセイドンのダンジョンへの挑戦者が集う広場に辿り着いた。

 ここで受付を済ませてから、ダンジョンに潜ることになる。

「やっべ! めちゃくちゃテンション上がってきやがったぁぁぁ! 絶対ぇ踏破すんぞ!」

「おぉ! いいぞ兄ちゃん! その意気だ!」

「頑張れよ!」

「ポセイドン様のご加護を!」

「あざっす!」

 両手を天にかざしたイケメンに、周囲から拍手と声援が送られる。ダンジョンに挑戦する若人へのエールって感じかな。

「カイトもそうだろ?」

「おぅ!」

 ハルルにならって、両拳を天に掲げる。

「あ、でも今回はダンジョンの踏破が主目的じゃねぇからな?」

「おぅ! 分かってるって!」

 ニシシっと笑う親友は、ダンジョンに挑戦できるなら細かいことはどうでもいいって感じだ。

「さっさと受付すませようぜ!」

「おぅ!」

 広場の真ん中に広がる大きなテント。

 そこに駆け込むと、海人族の奇麗な奇麗なお姉さんが、ツンツンした視線で出迎えてくれた。

「……あの、ダンジョン挑戦したいんですけど」

「では、冒険者プレートを」

 なぜ故こんなにツンツンしておられるのか。

「照合魔法発動……完りょ、う?」

 ツンツンお姉さんがポカンとしたお顔になって。それからプレートとオレの顔を三度ほど確認された。

「ランクSパーティ……【希望(ホープ)】。カイト様、ようこそ。偉大なる海神ポセイドン様のダンジョンへ」

「よろしくお願いします!」

 ぺこりと頭を下げたオレの隣で、ハルルが頬を掻きながら頭をちょっと下げた。

「ハルル様も、ようこそ」

「ど、ども……」

 動揺した顔の親友。そのつま先を踏んづけてやる。

「……痛ぇよ」

 ふむ。反応も元気がない。

 ツンツンお姉さんも、またツンツンに戻ってしまわれた。

 実に……微妙な空気感。

 こんな空気感の時、絶対に聞いてはいけない質問がある。それは、「お姉さんはハルルとお知り合いですか?」なのであるからして。

 どうせ、どこかで出会って。お互い名前が本名かどうかもわからない素性がふわっとした感じのまま酔っぱらってアレしたお相手なのであるからして。

 お姉さんがツンツンしてて、ハルルが困った感じってことは、どうせこのイケメンが朝起きた時には居なかったとかそういうパターンのアレに違いないのである。

「ランクSパーティの挑戦を、ダンジョンは歓迎しております。ご武運を」

「はい!」

 もう会話する気はないですってオーラ全開の締め言葉に、なぜだか深くお辞儀してるハルルを蹴り飛ばして。

 颯爽と?

 足取り軽く?

 ダンジョンの入り口に向かう。

「おぃ、ハルルさんや」

「……はい」

「……お前、あのお姉さんと知り合いだろ」

 受付が見えなくなって、コソコソっと耳打ちする。

「おぅ。前回、この街に来た時に世話になってた。リースさんって名前」

「それで? リースさんが? あんなにツンツンしてたのは?」

 だいたい想像はつくけれど。

「前回はお忍びで来てたわけよ。で、偽名使ってネオ・アールブのことを探ってたわけ」

「それで?」

「で、リースさんとはその時に、飲み屋で意気投合してよ。ズルズルと二週間くらい世話になってた」

「それで?」

 そんだけなら、あんなにツンツンしなくない?

「で、情報収集にも目途が立ったし、リクから急な招集もあったし……」

 ふむ。

「つまりお前、お別れも告げずにいなくなったってこと? 」

「……おぅ」

「クズ」

 カイト君が勝手に作った、娘と息子の恋人にしたくない男ランキング、ダントツのトップですよ。

「それで? 今回は? 一回も会いに行かなかったわけ?」

「一回、訪ねてみた。そしたら家はもぬけの殻でよ。引っ越したんだって思ってた」

「なるほどな」

 ハルルとの思い出が詰まった家に、居たくなかったってことか。

「海人族は愛を謳歌する民とは言え……一夜の相手じゃなくて、二週間も一緒にいたんだろ? さすがにそれくらい親しい人が急に消えたら……傷つくと思うぜ?」

 オレなら……心が折れて家から出ないと思う。

「……おぅ」

「ダンジョン挑戦し終わったら、侘び入れに行けよ?」

「おぅ」

 まったく。

 テンションが下がった親友の肩にグーパンを一発送って。

 会話しながら走りつつ、出てくる敵をぶん殴るうちに、第三層に辿り着いた。

「エントリーゾーン、終了」

 三階くらいまでは、ダンジョンの初心者向けの演習ゾーン。謎解きや索敵の訓練、バトルの練習を行う学習ゾーンで、半径五百メートルくらいの狭い階層になってる。

「こっから本格化するからな。階が浅いからって油断するなよ?」

「おぅ!」

 重たい扉が、ズモモモモっと開いて。ダンジョンへの挑戦が、幕を開けた。






今日もありがとうございました!

更新が遅くなり申し訳ありませんでした。


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