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第73話:誇りと忠誠心

 


 ―――絶句。

 口が動かない。体も動かない。

 ただ頭は、別だ。眼前の情報を処理するために、静かにフル回転してる。一体、何が起こっているのかを理解するために……。

 状況は明らかだ。

 右腕を失った太陽神。それを飲み込んだ邪神。

 両者の間に爆発を起こして、距離を取り直す太陽神。

「……くっ」

 右腕を抑えて苦悶の表情を浮かべる太陽神。

「クククっ」

 満足そうにニヤつく邪神。

 邪神が有利で、味方の大ピンチ。

 なのに不思議と……オレに動揺はない。

 そう。理解できないでいるのは……ここ。どうしてオレはこんなに、冷静でいられるのか。

 仲間がピンチを迎える。冒険者をしてると、割とよくある光景。

 でも、めったに焦りはしない。なにせダンジョンでは、相手が強敵であればあるほど、パーティプレイが必須で。唱えるもの、支えるもの、切り裂くもの、癒すもの。各々の役割分担に基づいて、互いに支えあうからだ。誰かがピンチになったら、必ず誰かがフォローする。

 こうして互いへの信頼と実績を積み重ねているパーティ程、ピンチに強く、崩れにくい。

 だから、誰かのピンチに遭遇しても、焦りや動揺は少ない。

 でも、今は違う。

 ひとつは、ソロバトル中だってこと。

 そして太陽神の強さを、オレは知らないってこと。

 なのに……動揺してない。

「……そっか」

 多分、アポロンさんを信じ切ってるんだ。

 その理由はきっと……イケボさんと引きこもり神が、こう言ったから。

「アポロンさんは強い」

 心の声が言葉になったのは、無意識の仕業。

 でも、しっかりと耳に届いたらしい。その証に隻腕のイケメンは、静かにほほ笑んだのだから。

「カイトの信頼に感謝を」

 その言葉に……胸が熱くなる。反射的に胸を握りしめて、コクリと頷いた。

「解せぬ。なぜそこまでする?」

 邪神の問いは、侮蔑の表情を伴っている。もちろん、視線の先に居るのはオレだ。

「カイトは我が魂」

「太陽神アポロンともあろうものが……愚かな」

 太陽神の答えは、邪なる神には不快だったらしい。

「このか弱き生命体が? 汝の魂だと?」

「あぁ、我が魂だ」

 それが偽りのない言葉だと、なぜだかオレには分かる。胸が熱く……疼いているから。

「もうよい。アポロンよ、我が軍門に下れ。古い付き合い故に、汝とその眷属を厚遇してやってもよいぞ?」

 裏切りの誘惑。

 けれどオレに、不安はない。アポロンさんがその誘いに応じることはないと、なぜか分かっているから。

 むしろ、失言だと感じたくらいだ。

「ほぅ?」

「悪い話ではあるまい? 汝の神威を食して理解したが、確かに強くなった。我が従属神の一角に名を連ねることを許可してやろう」

 邪神の皮膚が、赤黒く変色していく。

「吸収完了」

 ニヤリと笑いながら、舌なめずりをして。

「断るならば仕方ない。四肢をもいで食らってやる。我が贄となれることを喜ぶがよい」

 空気の読めない発言を連発している邪神は、気が付いていないらしい。偉大なる太陽神に、燃料を投下してるってことに。

「もう一度、聞かせてくれないか?」

「我が軍門に下れ」

「……ほぅ」

 ゆったりと首を捻りながら、アポロンさんはきれいな微笑みを浮かべる。

「この我に? カイトを裏切れと言ったのだな?」

「あぁ」

「つまり我が忠誠心を侮辱したわけだな?」

「バカな。全くもって理解できぬ。より優れたものに忠誠心を捧げるのは自然なこと」

「カイトより……優れているだと?」

「あぁ」

「侮辱したというのだな? 我が偉大なるボスを……」

「侮辱ではない。事実だ」

「愚かなジョルダバートに教えてやろう。汝はボスの足元にも及ばぬよ」

「ほぅ? そこの小汚く卑しいゴミくずのような生き物―――」

「―――黙れ」

 溶解。

 いや、蒸発って言った方がしっくりくる。

 床、柱、天井の全てが一瞬で消え去ったのだから。結界で守られてなかったら……オレらも同じ運命を辿ってたはず。

「下らぬ」

 指先を鳴らす邪神。

 復元される世界。

 そして―――

「―――転送された? のか?」

 邪神の姿が消えた。

 アポロンさんの姿も……ハルルの姿もない。

 月明りが照らすのは、巨大なソファー、黄金を溶かしたような琥珀色のジャグジー、巨大なベッドと……人を拘束する器具の付いたテーブル。

 そして……全裸の美女と全裸の青年。竜人、エルフ、ドワーフ、魔人族に海人族に……ヒュム。多様な種族の美男美女が、異性間、同性間で繰り広げているのは……愛欲にまみれた行為。その激しさを物語るように鳴り響く……濡れた音。そして皮膚のぶつかり合う音と……行為を強請る言葉の数々。

「ふふふ?」

 いつの間にかエルフの美男美女が一組、オレの腰元にひざまづいて……。愛しそうにキスを交わしながらこちらを見上げて……オレの腰布を剝ごうと動き出した。

 抵抗は……できない。

 男女が二人がかりで……これからオレに何をしようとしているのか。その具体的な行為が頭では理解できてるのに……体が動かない。拒否を拒むように……指先一つ曲げることすら敵わない。

 優しく触れてくる仕草に感応して……心が熱く……強く……その先を望む衝動に支配されて。ニヤリとほくそ笑む自分に気が付いた。

 左手で美女の頬を撫でながら、右手で美男の喉を撫でて。従順な二人に刺激された支配欲そのままに腰布を―――行為を促すように……二人に押し付ける。

 その瞬間に背筋を駆け巡った快楽に……喉が鳴って。ジャグジー、ソファー、テーブル……視界に広がる全ての行為が、頭に血を登らせる。

 さて、この次は何をさせようか―――そう考えた瞬間……興奮と期待感が一瞬で嫌悪感に変換されて。その塊が胸を……胃を駆け巡って……吐いた。

 喉を熱く通過した酸性の液体を……腕で拭いながら。ようやく、幻惑に嵌められてたってことに気が付いた。

 美男美女は消え、邪神とアポロンさんが対峙する部屋に……意識が戻ってきたから。

「バカなっ」

 邪神は分かりやすく動揺して、すぐさまアポロンさんから距離を取った。

「貴様……どうやった? なぜ我が完璧な世界に抗えた?」

 コイツの指パッチン。それを偽りの世界の創造と、アポロンさんは言ってた。

「我はこの地にて、生命体の欲望を見てきた。金、肉欲、名誉、支配欲……薄汚いことこの上ないが……扱いやすくもある」

「そこは同意」

 今回の偽ダンジョンで、オレも痛感した。

「なら……なぜだ? 汝にも欲はあろう? 卑しき欲望がっ」

 感情的になった邪神を前にして、優越感が沸々と湧き上がってくる。

「邪神さんよ。ひとつ賢くなったな?」

 ついつい調子に乗ってしまうのも、仕方ないというもの。

「なに?」

「欲に流されず自分の大事なものを守りたい。そう考える生命体もいるんだよ」

 ピュアな恋愛がしたいとか。浮気して好きな人を悲しませたくないとか。そんな自分になりたくはない……とか。

「大事なもの? なんだそれは?」

「ふっ」

「嘲笑だと?」

「あぁ。ど~せお前には分かんねぇよ。何万回説明してもな!」

「この我を……愚弄したな?」

 怒りの感情をむき出しにした表情を浮かべながらも……邪神は距離を取って動かない。

「ジョルダバートよ。我がボスの偉大さを理解できたであろう?」

 邪神とは対照的な……奇麗な笑顔。

 でも、そこに秘められているのは……快の感情じゃあない。間違いなく怒りの感情だろう。なにせ太陽神は周囲を蒸発させながら……一歩、また一歩と、距離を詰めて。邪神に圧をかけているのだから。

「どうした? お得意の偽りの世界創造は? しないのか?」

「……っ」

「あぁ、悪い。しない……じゃないな。できないんだろ?」

「……世迷言を」

「強がるな。できるならさっさとしてみろ。今すぐに」

 言葉でも一歩一歩距離を詰めて……精神的にも圧をかけていく。

「ボスは、自力でお前の世界を破壊した」

「……ありえぬ」

「お前が下等だと蔑んでいた相手に、神である自らの力が破られたのだ。つまりお前は今、自分への信仰を失いつつある。違うか?」

 ふむ。ひょっとしてそれが……邪神と呼ばれる存在の特性なのかもしれない。

「そんなことはない」

「なら、さっさと創造してみろ」

「……」

「やはり動揺は大きいようだな」

「我は……己への信仰を失ってはおらぬ」

「まぁ、無理もない。生命体を家畜だとみなし、脅し、操り、依存させる。かれらへの敬意を欠いたお前には……まさに自業自得の展開」

 二人の距離は、三メートル程。逃げようとする邪神の動きを……イケメンは見逃さない。ジリジリと……焔の神威を放って囲い込んでいる。

「あぁ、そうだ。自業自得と言えば……しっかりと伝えておかねばな」

「……聞いてやろう」

 時間稼ぎをするチャンスに、邪神は食らいついた。

「我が右腕―――神威は美味かったか?」

「悪くない味だった。さすがは太陽神」

「そうだろ? お前も知っての通り……この世に降臨する際、神々は依り代を必要とする」

「そうだな」

「この体は、ボスが我のために用意してくれた特製品。美味いに決まっている」

「……」

 静かな……それでいて悪寒のするほど激しい殺気。太陽の神は、炎で欠損部位を補った右腕を眺めながら……唇を噛み締めている。

「我がボスからの贈り物。これを傷つけることがどれほど辛かったか……」

「なに?」

「七つの恒星落下。あれはお前を狙った攻撃ではない。わが身を傷つけるためのものだったのさ」

「なんだと?」

「もちろん……お前に腕を食わせてやるためだ」

「ふっ……下らぬ。世迷言を抜かすな。神々の中でも特に誇り高いお前が……自傷行為だと? 我にやられる振りをしたと? ありえぬ」

 邪神の失笑。

「ふっ……」

 それを……太陽神も失笑で返した。

「何が可笑しい?」

「記憶力のない神だなと思ってな」

「なんだと?」

「思い出せ。我はこう言ったはずだ。かつての我とは違うのだよ、我とはな?」

「……バカなっ」

 邪神は動揺し……二歩、後退する。

「我がプライドなど問題ではない。ボスを守るためならば……泥水でも啜ろう」

 悠然と歩んで……更に距離を詰めるイケメン。

「汝は、愚かにも我が神威を捕食して同化させた」

「……」

「我の作戦の内とも知らずに、な」

「作戦?」

「あぁ。汝の体も、生命体を依り代にしている。その体を滅したとしても、汝は逃げおおせるであろう?」

「……まさか」

「やっと気が付いたか。腕を食わせてやったのは神威の譲渡が目的だ。我が同化された神威は……汝の本体との繋がり、全てを補足する。つまり汝の神たる本体を……我はこれから封印してやるつもりだ」

「……あ、アポロンよ。我の頼みを―――」

「―――あぁ、そうだった。自業自得の話が、まだ途中だったな?」

「……た、頼む」

「仕方ない。我が汝の罪を確認してやろう」

 怒りと殺意が……更に高まる。空間の融解が加速して……まるで活火山の噴火口のように次々とマグマを生み出していく。

「まずボスを裏切れと……我が忠誠心に疑念を抱かせかねない言動をとった罪」

 太陽が爆ぜたような光が……空間を覆う。

 視界が戻った瞬間……狼狽える邪神の姿があった。火傷の跡が浮かんで……消えないせいだろう。

「そしてもちろん……ボスからの贈り物たるこの体を傷つけた罪」

「それは貴様―――」

「―――黙れ」

 強烈な光。そして……火傷がひどくなる邪神。必死で指を鳴らすも……世界は創造されない。

「そして……最大の罪っ」

 激怒した神。その凶暴な神威に、星が(おのの)いたように地鳴りを上げる。

「これはどう釈明しようとも許されぬっ」

 空に浮かんだイケメンが……灼熱の太陽に包まれていく。

「偉大なる我がボスを愚弄し……傷つけんとした罪だ!」

「ま、待てっ」

「神権―――【始原之焔牢(ノスタルジア)】!」

「……ひっ、ひぃっ」

 逃げること能わず。

 太陽に包まれた邪神は黒い光を放って……そのまま陽炎に飲まれて消滅した。太陽と共に……。

「太陽が汝の牢となり……全ての罪を浄化するであろう」

 冷たい声音で放たれた言葉に、少しだけ寂しさを感じさせる響きがあって。オレの胸が少し、ギュっとなった。

『カイト様、ご報告です。邪神ジョルダバートの幽閉を完了しました。このまま空間の再建を行います』

『あ、ありがと!』

 さっすがイケボさん! 超有能!

 融解した空間が、あっと言う間に復元されて。床、天井、柱と御簾も見事に元通り。かつての謁見の間、そのものだ。

「ボス……怪我は?」

 片膝をついたイケメンは、オレへの敬意を全開にすると決めたらしい。

「だ、大丈夫!」

「それは何より」

 安心したように微笑むイケメンは、間違いなくオレの敵側の種族なんだけど。ここはポセイドン先生と同じように、特例扱いをして。味方側だとカウントすることにしよう。

「てか、立ってください。心臓に悪いんで」

 イケメンをひざまづかせると……女性の妬みや怒り、嘲笑を買ってしまうのである。まさに不要な敵を作る行為に他ならないのであるからして。

「では、いつも通りに」

「うん!」

 スクリと立ち上がったイケメンの腰の高さと脚の長さに絶望するけど……敵を作るよりはるかにいい。

「ボス、改めて敬意を。人の身でありながら……ジョルダバートの偽りの世界を信念で破るとは」

「あ、ありがと」

 そんな尊敬のまなざしで見つめられると……胸がチクチクするんですけど?

「ボス?」

「いやぁ……何でもないです、はい」

 確かに、信念で打ち破ったところはあると思いますよ。

 ただ……ね?

 若い童貞の個体は……ストレスがね? かかっちゃうって言うの?

 うまくやんなきゃってプライドとぐわぁぁぁっって迸る欲望の狭間で揺れ動く繊細な生き物なのであるからして?

 だってほら……初体験が失敗しちゃったら? かなり尾を引くトラウマになるって? 偉大なる先輩たちが語り継いでくれてるのであるからして?

 さっきみたいな?

 美男美女でスタイル抜群の? イケイケが複数が戯れる中で? 自分の性欲大解放できるはずが? ないのであるからして?

 だってほら……いろいろ不安があるじゃない?

 緊張しすぎて……オレの御立派様が顕現してくれないとか?

 興奮しすぎて鼻から出血するとか?

 自分の御立派様が他の人の御立派様よりご立派じゃなかったら? 鼻で笑われそうとか?

 それにほら?

 そういうナイーブで?

 プライベートなところについて?

 しっかりと情報開示しあえる信頼関係がない中で? 性欲大解放なんて? 童貞にはできるわけないのであるからして?

 つまり……ふむ。童貞属性という非常に繊細であるが故に、ハードルのクソ高い誘惑に対して防御力が異次元レベルを突破するってボーナスステージ状態に突入しちゃって……緊張大爆発で吐いちゃったと。吐いちゃった時に生じた胃酸という体内からの物理攻撃で現実世界にお帰りできた可能性もゼロではないこともないこともないのであるからして?

 で、でもでもでもでもまぁオレは? 童貞じゃないから? そういう可能性は? ゼロだったわけだけども?

 ってことはやっぱり?

 オレの信念の勝利と言えなくも? ないこともないかな? 的な?

『ふっ』

『鼻で笑うんじゃねぇよ!?』

 引きこもり神も非モテ族童貞神なのは疑いようがないのであるからして!

「ボス? ボンヤリしているようだが……気分が優れないのかい?」

「全然大丈夫です!」

 信念の勝利で確定です!

 ふむ!

「てか、アポロンさんは? 大丈夫? すっげぇ大怪我だけど……」

「あぁ、コレか。大丈夫だよ」

 隻腕のイケメン太陽神は、感情の読み取りにくい表情になった。歯を食いしばって耐えてるような……誇らしいものを愛でるような……。

「治すのはたやすい。しかし……暫くはこのままにしようと思う。罰を己に課すために」

「……そっか」

 神様なんだし。治せるならすぐに治せばいいのにって……思わなくもない。

 でもこれは、アポロンさんのプライドの話で。どう折り合いをつけるかは、アポロンさんの問題。余計な口を挟んじゃいけない。

「けど、偽りの世界創造って言うの? アレはちょっと焦った!」

 単なる幻覚じゃなかったと思う。

 きっと、邪神が望む行動をとるように強制される世界だったんだろう。実際、不本意ながらも支配欲や性欲にとらわれかけた。

「偽りの世界では、全てがジョルダバートの筋書き通りに進展する」

「なるほど」

 偽りの世界を創造するってことは……シナリオを書いて人々を操ることに長けてるってことだろう。今回の黒幕は、やっぱりアイツだったんだな。

「……オレも危なかったよ。本当に」

 邪神の期待する役を果たそうと……性欲が大暴走しかけたのは間違いないのであるからして。

「謙遜を。ボスなら苦も無く破ると信じてたよ」

「ん?」

 あれ?

 つまり……それって?

 オレが偽りの世界に放り込まれるって展開は……予想通りだったってこと?

 むしろそうなるように邪神を煽ってたってこと?

「どうしたんだい?」

 ふむ。

「……えっとですね」

 このニコリとほほ笑んだイケメンは、他人にもイケメンであることを無意識に求める傾向があるタイプ? なのかな?

「さっきのって? オレが偽りの世界を破るって前提で動いてました?」

「当然さ。ボスならできると信じていたよ」

 はい、わかりました。

 どうやらこのイケメン神は、自分にできるんだから(ボス)にも当然できるよねって世界線で生きておられる。

 これは……交流に注意が必要なパターンなのであるからして。

 徐々に、ハードルを下げていかねば。オレってダメなヒュムですよって理解してもらわねば。

「しかし、それが必要であるから仕方ないとしても、だ。ボスの手を煩わせたことを恥じるばかりだ」

「必要?」

 オレが偽りの世界を破ることが?

「あ、すまない。今のはこちらの事情だった。忘れてくれ」

 こちらの事情?

 つまり神サイドの都合ってこと?

『引きこもり神? なんか知ってる?』

『残念。オレは知らないんだよなぁ。ちな……神々がなんか嬉しそうに計画してる案件だから止める気はない。止めたいとも思わない。女神様たちがなんかとっても嬉しそうだから!』

『あっそ』

 どうせニヨニヨ女神を眺めてるせいで、神々の計画内容は右から左にスルー状態ってところだろうな。

「それにしても……本当に良かった。ボスに怪我がなくて」

「アポロンさん……」

 やっぱくっそイケメンじゃん。自分こそ……ケガしてしんどいだろうに。邪神が言ってたけど、自分のプライドを曲げた苦しみもあるだろうになぁ。

 そんな時でも笑みを絶やさないとは……異次元レベルでモテるはずだ。

 大人の余裕ってやつを感じさせてくれるって言うの? 

 実際それが、今はすっげぇありがたいし?

 この余裕と安心感をどっかの全裸国王にも見習ってもらいたいくらいなんだけど?

「アポロン様。私からも感謝の意を……」

 意識がはっきりしたらしい。それでもまだフラフラした様子で……ハルルは片膝をついた。

 そのハルルの肩に手を置いて、イケメンは優しく微笑んだ。まるで偉大なる王に忠誠を尽くす従者のようで……腹立つけど絵になる。イケメンマジ滅べばいい……。

「ところでアポロン様……」

「なんだい?」

「双子の神の片割れについて、ご存知ではないでしょうか?」

「そ、そうそう! 双子の神マルとモル。ジョルダバートの他に、少なくとももう一人、神が絡んでるはずなんだよな」

 ひょっとして……逃げた?

 このイケメン神が強すぎるのを見たとしたら……オレだったら逃走するね。全力で。

「あぁ、それならあの()()()()女神の仕業だよ」

 ふむ?

「女神ってあの……桜餅抱えてた?」

「あぁ。天井を見てみるといい」

「天井って……あっ! ない!」

 天井画が消えてる。

「天井に描かれていたのはジョルダバートの眷属だったのさ」

「え? つまりあの女神が? あのパクリ技で? 滅ぼしたってこと?」

 たった一発で?

「恐らく、あの女神の支配する空間に移送したのだろう。何を企んでいるのかは不明だけどね」

 やれやれとほほ笑んだイケメンは、小さくため息を零して。まだまだ差があるなと……寂しそうにつぶやいた。

「それではボス、これで失礼しよう。我ら神々はデミ・ゴッドや神が相手ならば、力を貸すことができる。いつでも呼んでほしい。今回のようにね」

 神威を帯びた状態でカード集を使えば、ご降臨をお願いできる可能性ありってことか。

「ありがと! なるべく自分らで頑張るけど……困ったら助けて!」

「もちろんだ」

 目礼しながら片膝をついたイケメン神は、楽しそうに笑って。それから光の中に……消えた。

「なぁ、カイトさんよ」

「ん~?」

「なんであのすんげぇ強ぇイケメン神が……お前をボスって呼ぶわけ?」

「さっぱりっスわ」

 全く身に覚えはない。

 関係があるとすれは、引きこもり神なんだよなぁ。あのイケメン神はどうやら、引きこもり神に仕えてるらしいし。

「ま、カイトだしなぁ。あんま深く考えても仕方ねぇか!」

 ケタケタと豪快に笑う友は、オレの取扱説明書を理解してるっぽい。

「それで? この後は?」

「あぁ、計画通りに進める」

 ニヤニヤする親友に、ニヤニヤで応えて。失神してるおっさんと警備隊長のエースを見つめる。





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