第63話:視察という名の免罪符
偽ダンジョンに乱立する、多種多様なエッチぃお店。
ナンバーワンアルファを目指すためにも、市場調査は必要不可欠なのである。
そう。これは言うならば視察。視察なのである。巨悪を根絶するという高尚で尊い使命なのである。
「……にしても、店の数多すぎじゃね?」
西側の区画をハルルが、東側の区画をオレが担当。手分けしてるものの……ゴールが見えない。
そして、なかなか情報が集められない。
なにせ今日のオレは、看板をチラチラ見て、そそくさと店の前から立ち去る不審者なのであるからして。
べ、別に?
ビビってるわけでは? 全然ないのだけれども?
なんとなく? 緊張する的な? 正しく恐れてる的な?
だって、料金が書いてないんだもん。
普通、書くでしょ? 店の前に、本日のおすすめ定食唐揚げ特盛で五ジェムとかって。
かろうじて、看板にプレイの内容とか、お勧めのアルファの肖像画っぽいのが紹介されてる。若い竜人族に王女様扱いしてもらえる、とか。ヒュム族の少年少女が商人役を演じてくれる、とか。魔人族のダンサーが………とか。海人族の男女が目の前で………とか。獣人族の尻尾で………が………して……になっちゃう体験ができる、とか。
とか。
とかとか。
とかとかとか。
読むだけで赤面しちゃうような内容が、サラリと書いてあるから不思議だ。
でも、これらのお店は、まだマシかも。情報収集しやすいって意味で。
それすら、書いてない店もある。
そういうのが………困るわけなのである。
「ここも、何も書いてない」
でも、客は入っていく。常連さん限定なのかも。
「おや? お兄さん、興味ありそうな顔してるねぇ~」
「お、オレ?」
「そうそう! あ、お兄さんイケメンだねぇ。モテるでしょ?」
「べ、別にぃ?」
「うちは凄い評判いいんだよ? アルファはどれも美男美女で経験豊富! お値段も良心的でサービス環境抜群!」
「ほ、ほぅ?」
サービス環境とは……なんぞ?
「ちょっと兄さん、今から話すことは絶対に内緒にしてほしいんだけどねぇ」
「なんでしょう?」
急に肩組むの、やめてほしいんだけど?
「お兄さんだから話すんだよ?」
ほぅ?
「面白い話?」
「そうそう。今、売り出し中のアルファがいてね。ちょうど今日は、まだ客がついてないんだよねぇ」
「そ、それで?」
「うちとしても、そのアルファに経験を積ませたい。どうだい? 今なら三割引きでそのアルファに接客させるけど?」
「さ、三割っ」
いいの?
「いや、うちとしても損だよ? でも損して得取れって言葉もあるしねぇ。どうだい?」
「ち、ちなみにそのアルファって、その、ど、どんなプレイ、を?」
これは視察! 仕事! 使命! 仕方なしのやつ!
「あぁ、それを話してなかったねぇ。実は―――ごにょごにょごにょ―――って感じまで、OKだよ?」
「ごっ、ごにょごにょまで⁉」
「そうさ! ごにょごにょのごにょごにょまでいけるよ! 交渉次第さね!」
「ご、ごごご……ごにょごにょのぉ……ごにょごにょ……まで、だと?」
「あぁ! サービス環境は満点だし、このチャンスを見逃す手はないと思うがねぇ?」
「そ、その……サービス環境、とは?」
いかに?
「えっろぃ道具使いたい放題、しかも設置済みの大型機器は十二種類あるが……それも使いたい放題」
ふぐっ。えっろぃ道具とは……なんぞ? そんなのあるの? 世界は広いの? 大きいの?
「縛られたい、踏まれたい、なじられたい、お仕置きされたい、罵倒されたい、宙づりにされたい、多くの人に見られたい………ドエムの要望で、うちの環境に満たせないことはねぇと自負してるぜ?」
ち、違うのであるからして?
オレは決して、そんな特殊性癖の持ち主ではないのであるからして?
「どうする?」
「とりあえず、入館料だけでもいいですか?」
こ、これはあくまでも視察なのであるからして。実際にプレイに興ずる気は、まったくないのであるからして。
リピートしちゃうけどこれはあくまでも視察なのであるからして。高尚な使命なのであるからして。仕方なしなのであるからして。このお店に入るとしてもそれはもう仕事なのであるからして。世界を救うためのアレなのであるからしてぇぇぇ……。
「若いのに慎重なんだねぇ。でも、気に入った! 百五十ジェムにまけとくぜ!」
「あざっス!」
それなら払える!
「さ、パンフレットだ! 詳しいことはこれを見てくれ!」
グイグイグイっと背中を押されて、気が付けば暗幕の中。
「さぁお客様、こちらへどうぞ」
扉を開けてくれた笑顔のお兄さん……すっげぇいかつい。怪力猿人系の獣人族っぽいな。
「…どうも」
重たそうな扉が、中から開かれる。最初の部屋は、五十人は入れそうな……大きめのホール。
壁面に並ぶ八つの扉。その先に個室があるんだろう。
ホールの中央にはステージがあって、ロープで天井から吊るされてるお兄さんが見える。
「放置されるが快感の人もいるのか」
世界は広いなぁ。理解できない性癖をまた一つ、知ってしまった。
まぁ、ステージはスルー決定。
「ご思案なさる間、どうぞこちらの席をご利用ください」
「ども」
皮製品の高級ソファーとは……贅沢な。
「お困りの際は、私めにお声掛けください」
「どうも」
礼儀正しい。ムキムキで厳ついけど。スーツがピチピチだけど。
フロアに居るガンマは、三人か。
客一人につき、付き人が一名とは……手厚い体制だ。高級店って感じ。
「ちょっと緊張してきたかも」
手汗がヤバい。つい無意識にローブの端で拭いちゃうくらいに……。爺やが見たら怒る案件だけど、今は許してほしい。
どうやら、ちょっとどころではない。とんでもなく、緊張してるっぽい。鼓動がうるさいくらいだし……。
考えてみれば、こういうエッチぃお店に一人で入るの、初めてだし。前回、逆光のバブルの店にはほら、ハルルが一緒だったし……。
……やべ。意識したらますます緊張してきた。
てかお金は? いつ払えばいいの? 帰る時でいいの?
「よろしければ、こちらをどうぞ」
「あ、どうも」
冷たいお茶とおしぼりか。確かにサービス良好だな、ここ。
「ふむ」
お茶がうまい。なかなか上手に淹れてある。
おかげでちょっと、落ち着いてきた気がする。
ここはパンフレットでも読んで、時間を稼ごう。冷静になるための。
「ふ~ん……」
どうやら、性的に虐げられたい人向けのお店らしい。アルファと提供できるプレイが詳しく書いてある。
でもオレ、そういう性癖はないんだよなぁ。まぁ、視察だから。なんでもいいけど。
「お客様、お代わりはいかがでしょう?」
「あ、大丈夫です。ご馳走様でした」
「いえ。ところでお客様、失礼ながら当店を初めてご利用ですね?」
「はい、そうなんです。全然わかんなくて」
「失礼ながら……なにやらご満足いただけない―――そんな顔をしていらっしゃるように見えました」
「鋭いですね。あんまり、こういうの趣味じゃないみたいで」
ま、まぁでもこれは……あくまで視察なのだから。別に、趣味に合わせた店に行く必要はないのであるからして。
「もしよろしければ、裏メニューもございます」
「裏?」
「えぇ。特別なお客様にだけご紹介しております」
「特別って―――」
「―――お客様のお召し物、失礼ですが鑑識眼のない私にもわかるくらい……たいへん貴重な材質がふんだんに使用されておりますね?」
「あぁ、そうかもです」
爺やセレクションだけど。刺繍が金で、ボタンはミスリルだったかも。ま、よくわかんないけど。なにせ爺やったらいっつもオレに王族っぽい恰好をしろってうるさいから。これも高級品なのかも。
「そのような高価なお召し物を……無頓着に扱われておられる。そのクラスのお召し物が、お客様にとっては普段着ということなのでございましょうね」
服でこっそり手汗拭いたのも、見られてたのか。
ヤバい。ダンジョンじゃないからって、油断しすぎてたらしい。こんな至近距離で、じっとり見られてることに気が付けないとは……。
「どうでしょう?」
「ご謙遜を。お手の装飾品もたいへん高価なものとお見受けいたします」
このバングルは、確かにある意味で高価かもしんない。
でもオレ、借金五十億の男ですよ?
「いかがでしょう? 二階のVIPルームへご案内できますが」
「わかりました。お願いします」
視察なのであるからして。
せっかく百五十ジェムも払ったわけだし。情報収集を丁寧に行わないと……勿体ない。
「では、こちらの扉からご案内いたします」
オレ、VIPルームへの階段に近い席へと、さりげなくエスコートされてたっぽい。こういうところも、サービス精神? なのか?
「では、足元にお気をつけて」
「どうも」
扉の奥は、思い切った成金趣味の世界らしい。
緩やかな階段は、高級そうな毛皮マットでデコレーションされてる。
灯ろうはクリスタル製で、無造作にまき散らされた薔薇の花弁が、とっても悪趣味。
「この先がVIPルームでございます」
「わかりました。では……失礼しま~す?」
………マジか。
「これは?」
「えぇ。ここでは全員、全てのお召し物を脱ぐことになっております」
「なるほど」
変態の巣窟か。
「いかがなさいますか?」
「脱ぎます」
別に、どうということはないし。
なにせ我が家の父は……名高い裸族なのだから。早朝の街中なのに全裸で発見されるお方なのだから。オレもそういう家庭で育った身として、裸は別に、恥ずかしくないし。
「では、お召し物はこちらに」
「わかりました」
それにしても鍵付きの箱とは……入念な。
途中で服を着ないようにするためかな。
「じゃあこの鍵、よろしくお願いします」
「確かに。鍵はお帰りの際に、お返ししますので」
「わかりました」
「では、ごゆるりと」
目礼を返しながら、改めて、部屋全体を見渡す。
広々とした部屋中に、お香が漂う。全体的に薄ら暗いなかで、部屋の中央ステージだけが、異様に明るい。ステージ上には、おそらく防弾性の強化ガラスで作られた……大きな牢がある。照明のおかげで、よく見える。全裸の少年少女が、みんな一様に……怯えた顔をしているのが。
ガンマの方は、十メートル間隔に並んだソファーに、優雅に腰かけてる。ニヤニヤと笑ってる奴もおかしいと思うけど……ここではマシな方なのかも。なかには性的興奮も隠さずに……体を動かしてる気持ち悪いガンマもいるのだから。
ソファーは、十個。つまり十人限定ってことらしい。
そしてオレが、十人め。急なキャンセルでも出て、あと一人、金持ちを探してたってところか。残念ながら借金キングだけどな、オレは。
つまり、ガラスの向こうは怯えながら、こちら側は期待をあふれさせながら、最後の客席が埋まるのを、待っていたらしい。
これから始まる、何かのために。
「……さて、皆様。最後の椅子もようやく埋まりました。今宵も骨の髄まで、快楽に溺れましょう」
ガラス牢の隣に立つエルフ族の青年。
スリムながらも鍛えられた体躯を自慢したいわけじゃ……なさそうだ。全身を覆う大蛇の入れ墨を、見せつけたいんだろうな。
入れ墨の醜悪さと、わざとらしいお辞儀、ニヤついた顔には、不快感しかわいてこない。
「不肖ハロルド……今宵もこの大役を担えますこと、たいへんな光栄に存じております」
芝居がかった礼に、無機質な拍手が届けられていく。
「さっそく……今宵のひな鳥をご紹介しましょう」
拍手が、大きくなる。
「まず、皆様の右手側から……トラ型の獣人族カリン、十八歳女性。病に倒れた母の治療費を稼ぐために奴隷になりました」
ため息と笑いが、フロアから零れた。
「ヒュム族ゾゾクア、十五歳少年。父親は大のギャンブル好きでしてね。お察しの通り、借金をこの少年で払ったのですよ」
フロアから嘲笑が起こる。
「そのお隣。同じくヒュム族ミホコト、女性十六歳。父親は大のギャンブル好きで……おや? どこかで聞いた話だと思ったら……ゾゾクア少年と同じ父を持つようです」
嘲笑が……大きくなった。
「そして最後は、エルフ族ロングル、十八歳少年。ケガを負ったところを、親切な旅の商人に保護され、治療を受けたところまではよかったのですが……。高額の薬代を請求されたようでして。薬代を払えず、ここに至っております」
爆笑がなぜ起こるのか、理解できない。
「さて、お待たせしました。本日、ひな鳥を狩るハンター役はこちらでございます」
狩る?
ハンター役?
「さぁ! ご覧ください!」
ガラス牢の隣に、檻が運び込まれた。
その中に居るのは―――
「野生のギガントハウルベア! 体長二メートルの雄! 食事は三日与えておりません! しかも薬で性的興奮も最高潮に達しております!」
―――クソ野郎どもがっ。
「たす、けて」
エルフ族のロングルが、ガラスを叩く。
「助けて! お願い! 誰か! お願いっしま、す……」
それ見て、獣人族のカリンも、必死に扉をたたく。無言で、涙を浮かべながら……。
ヒュムのゾゾクアはへたり込み、ミホコトは弟を庇おうと抱きかかえている。
理解、できない。
ガンマどもはなぜ、今、笑ってるんだ? 興奮してやがるんだ?
「さぁさぁさぁ! ギガントハウルベアは……ひな鳥を殺すのか? それとも犯すのか? こうご期待!」
ダメだ。
我慢、無理。
この場を征したいとこだけど、武器が手元にない。全裸になれってのは性的な趣向を満たすだけじゃなくて……武装を解除させる目的だったってことか。
でもオレには魔法が…………いや、待てよ。もっといい手がある。
『おぃ、引きこもり神。手を貸せ』
『……膝を見ろ。間もなくクロノが到着する』
『サンキュ』
どうやら、お互い同じアイデアにたどり着いてたらしい。
ポワンっと登場したモフモフ兎―――クロノを、こっそりムギュっと抱きしめる。
「無理させてごめんな? でも頼むから……力を貸して。時を止めてくれ」
「わかったよ!」
クロノのウインクと共に、世界が灰色になっていく。
「アーサー、ガウェイン」
「主よ」
「ここに」
顕現した二人の顔も、怒りに満ちてる。唇を嚙み締めた……鋭い視線を、とても誇らしく思う。
「精霊憑依―――……モード聖騎士」
「「はっ!」」
金色の衣に、空中に浮かぶ金色の武具。
戦斧を選んでガラス牢に歩み寄れば、あとは一瞬。斧が触れた途端、防弾ガラスは飴細工のように粉々になって、床に舞い落ちた。
幾つかの破片が客席に飛んだが、気にする必要はない。ガラスが皮膚を切り裂いたところで、死にはしないだろう。
「憑依解除」
光の衣と武具が一瞬で、帝位精霊の姿に戻っていく。
「……主よ、お願いしたきことが」
「我からも」
「わかってるよ。アーサー、子どもたちを王城に連れて行ってあげて。ケガの手当と食事、必要ならば住処と仕事を与えるように、リクに伝えて」
「は! 直ぐに!」
頼もしい。本当に有能だ。正義感にあふれてるところも……誇らしいよ、友として。
「ガウェイン」
「はっ」
「この男……ハロルドの入れ墨について、調べてもらえる? ひょっとしたら犯罪組織につながってるかもしれない」
「承知しました」
ふむ。
ガウェインなら、同じ入れ墨を持つ者を、探し出せるだろう。光になって。光の速度で。
「自慢の入れ墨に傷が入っちまったな」
ガラス片が幾つか、体に刺さっている。
どれも浅いが……傷は全身に広がっていて、傷跡が残るだろう。
「まぁ、自業自得だ」
これまで、ここで無念に殺された子どもたちのことを思うと不十分なくらいだし。
「さてと。オレも何が起こったかわからない風を装ってから、脱出しないとな」
オレが子どもたちを逃がしたと疑われたら、偽ダンジョンでの活動に支障が出る。
「ありがとう! 助かったよ!」
「お安い御用だよ!」
おでこをクリクリっと重ねたら、クスクスっと微笑んでくれて。スゥっと静かに……姿を消した。
それから、世界に色が戻って。
ギガントハウルベアが檻から出たところで、ようやく悲鳴が追い付いてきた。
消えた子どもたち、割られたガラス牢、傷だらけの自分たちに、ステージ上で雄たけびを上げる魔獣。情報量が多すぎて、みんなパニックだ。
「途絶えることのなき意志を持ちて、ここに優を示す。苛烈なる火、凍てつく風も我が熱を挫くこと叶わず。我が強健さに屈し、汝の名を明かせ。汝の歩みを明かせ。弱さを照らす光に怯えよ…」
支えるものの魔法。シールドを展開して、魔獣が客席に歩むのを妨げてやる。
「今のうちに、逃げろ」
バタバタと尻もちをつく金持ちどもの姿に、ため息しかでない。
「早く!」
パクパクと口を開くも、うまく話せないようで。頷きながら、階段の下に降りて行った。全裸のままで。
「お前は檻に戻れ。いいな?」
吠えて暴れて威嚇しても、オレは動じない。
「グルルっ」
「戻れ」
「………グル」
野生の勘で、分が悪いと悟ったらしい。渋々、檻の中に帰ってくれた。
「ハロルドさん、さっさと檻の鍵を閉めて」
「は、はい!」
バタバタと、そしてガチャガチャと施錠したハロルドは、そのままそこで、へたり込んだ。
「あ、バカ!」
「え?」
「逃げろ!」
魔獣は、隙を見逃さない。
鉄格子の隙間から振り下ろされた爪が、ハロルドの背中を切り裂いて。
半身を翻したせいで、致命傷にはならなかったものの……大ケガを負った。入れ墨は、無残にも引き裂かれている。
「治癒魔法をかけてやる。だから、情報を寄こせ」
「わ、わかっっ……うぅぅ」
気絶した、か。
想像を絶する痛みだろうから、仕方ない。
「傷跡は残るだろうけど、勘弁しろよ」
命を救ってやるだけでも、喜べ。
「お前の罪は、いつか、神々が裁くだろうぜ」
せいぜい、悔い改めろよ。
「あ、忘れないうちに入館料―――百五十ジェム払っておくな」
ハロルドの手元に、置いておく。
「なけなしの金だけど……仕方ない」
情報料だと思って、払うものは払っておかないと。
「ん、んんっ」
「痛みが引いてきたか。これでもう、大丈夫だろ」
魔法のおかげで、止血は済んだし。傷もだいたい塞がってる。
「あ、あなた……が?」
「あぁ。また来るから、礼はその時に。これを飲め。よく眠れる」
睡眠薬を口にねじ込んでやると、直ぐに意識を失った。
「まぁ、そこそこの成果ってことで。今日は帰るか」
子どもたちの行方を捜す店主たちから、質問攻めにあう前に。
+++ +++ +++ +++
「……って感じで、大活躍してきたんだけど? 疲れてるんだけど?」
宿屋の部屋、別々にしてもらえばよかった。でもオレ、金ないしなぁ。
「……これ絶対、入っちゃダメなやつ」
扉の前で、察する。
ギシギシと揺れる音。
大きく喘ぐ声。それと連動する、体がぶつかり合う音。
これはもう、ハルルの御立派様が顕現されてここぞとばかりに大暴れしておられる気配が、むわむわと漂っているのであるからして。
「………どっかの公園で寝るか」
女将に、今日は満室だって言われちゃったし……。そもそも、持ち金ないし。借金キングだし。
「百五十ジェム、払わなきゃよかった」
安い宿代くらいにはなったのになぁ。
「はぁ」
明日の朝には、終わってるといいけどなぁ。
「終わってなかったら、ポセイドン先生に歌ってもらおっと」
ハルルの耳元で。
今日もありがとうございました!
ぼちぼち頑張りますので、また遊びに来てやってください!
追記
誤字修正(0509)(0514)(0516)




