第59話:美しい姿勢と恥ずかしい生き様は正比例?
ふむ。
正直に……ここは正直に、心から懺悔せねばならない。
オレは幼少の頃より、親父の姿を見て育ってきた。救星の勇者とかいう……救いようのないバカ親父の。華麗なる土下座姿を……。
いやマジで戦ってるとことかはカッコ良くて……だからモテモテ族なわけだけども。
いやマジで酔っぱらうとくっそカッコ悪くて……だから土下座王族なわけだ。現に、今も。
まったく、こまった親父だ。
しかし真横で見ると……なんとも美しい姿勢ではある。きっちりと床に貼りついた額に、ピンっと筋の張った美しい肘と腕の角度。
さすが土下座のスペシャリスト……これは見習わざるを得ない。
……え?
土下座親父真横で、オレは何をしてるのかって?
もちろん………親父の姿を見習ってるわけなのである。
文字通り……。
「ごめんなさい……」
「オレも……ごめんなさい」
「「この通り」」
気まずい沈黙。
それを打ち破るのは、わかりやすくも大きなため息だけ……。
これほど緊張感のある空間は、ダンジョンの深層以来だ。
いや、深層よりも重たい空気と……絶望感。
世界樹攻防戦、そのラスボス顔負けのプレッシャーを放っておられるお方たちがいるから。あの超苦戦したデミ・ゴッドとか邪神とかよりも……怖いんですけど?
「どうしましょうか?」
「王妃殿下はどうしはるんです?」
「そうねぇ……。いっそのこと………もごうかしら? 家はほら、子どももいるし。もう不要だし……ねぇ? フフフ?」
……パねぇ。母さん絶っっ対に本気だ。父さんの背中、震えたし。きっと、キュンって小さくなったからだろう。
もちろオレも震えたはず。なにせオレの息子も、キュンって小さくなったから……。
「あら? それはそれは―――」
家はほら……まだ結婚もしてないけどもほら………子ども、いないし? まだまだオレ若いし? 必要だよね?
「―――根本的な解決策ですねぇ。さすが王妃様」
カっ……カカ………カグヤさん? う、噓でしょ?
そもそもオレの息子、実感的にまだ活躍してないんだけど?
体感的にほぼほぼ未経験の冒険初心者なんだけど? 銅の剣装備する手前の手前くらいなんだけど?
『お、おぃ! 引きこもり神! 聞こえてんだろ? てか見てんだろ? 助けておねがいっ』
『……無理。自業自得笑っ』
『テメェ……。オレの守護神なんじゃねぇのかよ!?』
『ノンノン! 私はぁ~ヒュム族みぃんなぁのぉ……守護神なのでぇ~す』
『うっざ』
なんだそれ。
『うざくねぇし? てか悪いことしたんなら罰を受けろし』
『はぁ? てかお前、見てなかったわけ? ぶっちゃけどうだったわけ?』
『すまんな。見てたけど見えてなかったから。なぁんもわっかんねぇっスわ』
『マジ役立たずじゃねぇか……』
守護神交代してくんねぇかなマジで。最悪、洞窟の女神様でもいいやこの際。なんかイラっとするけども……。
「カイト? 聞いているのかしら?」
「はっ、はい!」
聞いてませんでしたっ。
『引きこもり神! 母さん、さっきなんて言ってた?』
『悪ぃ。マジで聞いてなかった』
……マジ無能じゃん。世代交代はよっ!
『はっ!? イケボさんは? あの超絶有能なイケボさんは? こんな時は頼りになるは―――』
『―――残念。あの人はあれだ、今ちょっとお出かけ中。その……デート的な?』
クソっ。デート、だと?
う、ううう………うらやまっ。
「カイト? そういうことでいいわね?」
「はい?」
ヤバい……。全然聞いてなかった……。
『今度は聞いたぞ。カグヤさん、ちょうどいいから里帰りするってさ』
「『え!?』」
マジで?
なんで?
「カグヤさん?」
「ふふふ? また十年後くらいに戻ってきますからね?」
「じっ!?」
十年?
長命種のエルフからすればあっという間かもだけど。
短命種のヒュムからすれば……人生の数分の一なんだけど?
「では、私は早速。カイト、元気でね?」
「え? マジで?」
「ふふふ?」
カグヤさん? 笑顔が怖くていらっしゃいますわよ?
「では王妃殿下、国王陛下、皇太子殿下、後はよろしゅうお願い申し上げます」
さっそうと退室してくカグヤさんの背中に、ぞろぞろと続く従者さんたち。ハイ・エルフのみなさんも、どうやら一緒に里帰りされるっぽい。あ…………今みんな、そろって舌打ちした? よね? 冷ための視線ガンガン注いだよね?
…………ふむ。
なんか今、背中がゾクゾクしちゃって……危険な扉が開きかけたような…………。
けど、清廉で性格きつめなところはハイ・エルフらしくていいと思います。素敵だと思いますとも、ええ。
「……さぁ、カグヤ様」
「えぇ、行きましょ」
そんな素敵なハイ・エルフのみなさんが、城からいなくなるなんて……辛すぎて辛い……。
「カイト……今は耐えろ」
「……わかった」
経験豊富な親父のアドバイス……信じるからな?
「それで国王陛下? あなたはなにか思い出したのかしら?」
「いやそれがまったく……」
これについては、オレも同罪。なにせ、昨夜のことは何一つまったく覚えてないのであるからして……。
「路地裏、全裸、全身キスマーク。酔って意識なし……。あなた学習能力って知ってる?」
「申し開きもございませんっ」
ヤバい。
「……はぁ。父さん、国王なんだからさぁ」
「すまんリクよ……」
……ヤバいヤバい。
「息子が帰ってきた喜びで……。ついつい、飲みすぎちゃいました」
「却下。言い訳にもならないわね」
ヤバいヤバいヤバいヤバいっ……。
「カイト?」
「ひゃい!」
激ヤバいっ。
「父さんのダメなところ……見習っちゃダメよ?」
「ひゃい! もちろんです!」
よっしゃあ!
オレ、許されるっぽい! そんな流れっぽい! 父さんのせいになるっぽい流れ万歳!
「う、裏切り者めっ」
すまん父さん。今は自分が可愛いいのであるからして……。
「カイト、当面はお酒を控えなさいね」
「はい!」
絶対に飲みすぎません!
「じゃあ父さん、一足お先で~す」
「くっそ」
「はぉ~、土下座しんどかったぁ」
慣れないことはしない方がいいよな、やっぱり! 温泉でもはいろっと!
「カイト? どこに行くつもりなの? 話は終わってないわよ?」
「えっ?」
無罪放免じゃないの?
「兄さん、罪はひとつひとつ裁かれるんだよ?」
「嘘だろ?」
てか罪って?
「あ、全裸のこと?」
幸いにも不幸なことにマイサンはまだ成長途中の控えめフォルムなんで、笑って許されるレベルだと思うけど? 親父から察するに今後成長期待大だけど?
「まぁ、全裸は王族的にアウトだけど。兄さんのはまだワイセツ物って感じじゃないし」
あれ?
なんか心が痛いんだけど?
カイト君ガラスのハートなんだけど?
「なら、全裸は見逃してあげましょう」
解せぬ...。
「じゃあ次ね。全身のキスマークのことは?」
とんでもねぇデカ罪、残ってました……。
「申し訳ございません」
この美しく再開された土下座に免じて……どうか……ご勘弁を……。
「……お帰り、息子よ」
黙れダメ親父……。
「覚えは?」
「ございませんっ」
「最後の記憶は? どこまで覚えているの?」
「えっと―――」
―――……父さんと、お忍びで飲みに行ったんだよな。
でも二軒めから……まったく覚えてない。
あれ?
ぶっちゃけ一軒めの二杯めくらいから……覚えて………なくね?
「それで……朝陽がまぶしくて」
気が付いたら、見知らぬ路地裏で。隣に全裸のおっさん―――……国王がいて。おやっと思ったら……オレも全裸でした。
なんで?
なんで全裸なの?
ここは誰? 私は王子? って感じでパニックになってたら、紅蓮が駆け寄ってきてくれたわけで。
さっすがもふもふ有能精霊!
げんなりした顔しつつも、座ってたオレの膝上に乗っかって、下半身を隠してくれたわけで……。
続いて黄龍が空から落ちてきて……。同じくげんなりした顔で、国王の股間に軽めの落雷をかまして……。変な声を上げながら目覚めた父さんに……オレも心底げんなりしたわけで。
なにせ、自分の将来を見たような気がしたから……。このままいくと、オレもこうなっちゃうかもしれないとか……怖すぎ。
「まったく、我が子ながら情けないわねぇ。それで? あなたは?」
「カイトと同じでございまする……」
マジで、土下座が板についてる。美しすぎるよ姿勢が……。
「はぁ。まぁ、覚えてないものは仕方ないわね」
「兄さんは初犯だしね」
「あなたはダメよ?」
「存じておりまするぅ……」
父さん……。
「じゃあカイト」
「ひゃい!」
「あなたしばらくダンジョンに潜ってきなさい。しっかり働いて、戦って、稼いでくるのよ? 人々の信頼を回復するために。いいわね?」
「はいっ! がんばります!」
よし!
実質、お咎めなしだ!
どのみち、ダンジョンには潜るつもりだったし!
「じゃあ、二億ジェムくらいかしら?」
「におっ……」
なんですと?
「母さん。それはちょっと……」
いいぞリク! もっと庇え!
「あら? リクはどれくらいだと思うの?」
「そうだねぇ」
五千万ジェムくらいでお願いしますっ!
「五……」
「五?」
「五!」
「うん。五十億ジェムくらいだと思う」
「ごっ!?」
じゅうお、く??
「ほら、竜人族の里の……北辺。あの辺りの集落に、兄さんの捜索ですっごいお世話になったしさ。今、その辺の復興支援で国庫から五十億くらい支出してるでしょ? その分まるまる兄さんが稼げば、返済の義務なしにしてあげられるし。恩返しにもなるでしょ?」
ごじゅうお、く?
「さすがリクね。そうしましょう!」
か、母様?
本気? 冗談だよね? 笑って? 頼むから笑って?
「じゃあ、五十億の返済計画開始ね! それまでは【希望】としての活動も停止にしましょう。だってほら、あなたの借金返済に、みんなを付き合わせるわけにはいかないものねぇ」
早く笑ってよ。
ねぇ?
ねえってば……ねぇ!?
「うん、それがいいと思うよ」
え? ソレガイイトオモウ? ウソダロ? ハヨワラエヨ? オトウトダロ? ハヨワラエヨォォォォ!?
「じゃあ、決まりね」
ヤバいマジだこの人ら……。
「で、でもさ―――」
「―――兄さん。ルルルは家族がいるし、俺も結婚を控えてるし。ジェイも恋人と世界を旅するって言ってたし。みんなそれぞれの事情があって稼がなきゃいけないんだから。兄さんの借金返済に付き合わせちゃ……かわいそうだろ?」
いや待て。オレまだ五十億のところにいるから。
てか五十億………え? マジで五十億? それいつの間にオレの借金扱いに?
だってそれオレの借金じゃないよね? 違うよね? 国庫支出って言ってたよね?
「と、父さん?」
「すまんな息子よ。くっ……父さんはなんて無力なんだっ」
くそっ。
秒速で息子を見捨てんのってひどくね?
国王だろ?
この国でナンバーワンの権力者だろ?
なんとかしろし!
権力、発動カモンっ!
「カイトの裁きは決まったとして……あなたの償いは、あとでじっくり決めましょうね?」
「お、仰せのままに……」
あかん。
父さんのアレが引っこ抜かれる……。すまんな父さん。息子は無力だ……。
てか、父さんのはもう累進課税的な贖罪だからあきらめてもらうとして。
………………マズい。
このままだと、本当に五十億が…………はっ!?
『お、おい! 引きこもり神! 聞いてるだろ? 見てるだろ? ちょっとなんとか―――』
『お呼びになった神様は、電波の届かないところにいるか、電源が入っていないため、おつなぎすることができません』
おぃおぃマジか……。
あいつマジで役に立つ気ナッシングじゃん……。
ちゃんと守護しろよ! オレの明るい未来を! 面倒見てくれよ!
「じゃあ、そういうことで。いいわね?」
マズい。
このままじゃあ…マズい……。な、なんとかせねばっ!
なんか絶妙にいい感じの減刑に繋がりそうな論理は―――……あった! ふむ!
「待って。オレほら、皇太子だし? 国政にも必要だし? 五十億も稼ぐほどダンジョン籠ってたらマズくない?」
ただでさえ不在期間長かったわけだし。
「それなら大丈夫よ。こないだまでカイト……二年ほど行方不明だったでしょ? そこでリクに白羽の矢が立ったのよ。だから今のところ、リクが第一皇太子なの。ふふふ?」
「ごめんね兄さん。そのうちちゃんと、返上するからさ」
「お、おぅ?」
速報っ。
オレ皇太子じゃなくなってた件について!
いや世界の変化ヤバくない?
ルルルは結婚して子どもが生まれるって話だし?
ジェイは大司教様に成り上がったのに職務放棄して恋愛街道まっしぐらだし?
リクはナナちゃんとアレがアレして結婚秒読みだし?
イルルのおバカ野郎はしれっと英雄候補とかになってやがるし?
ハルルは―――……ふむ。
あいつはほら、暇に違いない。バカだから。だから絶対に手伝ってもらおう。なにせ持つべきものは友なのであるからして! ふむ!
「あ、そうだ兄さん。忘れないうちに言っておくね。兄さんを狙ってレーテが攻めてくる計画になってるから。武術大会で」
「は?」
なんですと?
「でも、そっちは俺とイルル、ジェイでなんとかするよ。兄さんより、俺らの可能性を試すのが目的って感じだったから」
ふむ?
なんか、ややこしいことになってるじゃん。
…………ひょっとして、オレが百年待てとか、百年後には英雄越えしてる可能性ある奴いるとか言っちゃったからかもしんない。邪竜に……。
…………………………ふむ。
「なんか……手伝うか?」
「いや、大丈夫。だから兄さん、さっさとダンジョン潜ってよね。俺らが負けたら、邪竜がさらいに来るよ」
「でも、やっぱオレも一緒に―――」
「―――……いいから」
「「―――っ!?」」
黄龍と紅蓮が後ろに飛びのくレベルの……殺気。
なんだかんだで上位精霊の二体。救星の勇者のお供として名高くも超強い二体。戦闘経験が豊富で、リクと小さいころから仲良しの二体。
そんな黄龍と紅蓮が、反射的に退いて………戦いに備えんと神気を放っちゃうレベルとは……。
「俺らのプライドの話だし。兄さんは手出ししないで。いいね?」
「……わ、わかったから。落ち着け」
オレもびっくりした……。
リク、本気だ。
「……強くなったんだなぁ」
「兄さんがいない間に、ね」
「……そっか」
二年ほどの封印期間中に、いろいろと苦労を掛けたらしい。
でも………体が弱くて、二重症に苦しんでてさ。それでもめげずに頑張ってきたリクの成長は、どう考えてもオレの感情喜び一択なわけで。
「リクを誇りに思うよ」
「ありがと。だからこっちは任せて」
「わかった!」
ニシシっと笑うと、ニシシっと笑ってくれる。やっぱ、どんな時でも信じられる兄弟がいるってさぁ。最高に……最強じゃん!
「さぁ、カイト。土下座はもういいから旅立つ準備をなさい」
「……はい」
しまった。五十億借金化確定判決、覆せず……。
「兄さん、いろいろ落ち着いたら、ちゃんと話そう?」
「いいけど……テーマは?」
「例えば……ナナちゃんのこと、とか。皇太子のこととか……。【希望】のこれからのこととかさ」
やっぱり、リクはいい奴だよなぁ。
もし誤解があるなら解きたいって思うのは……解くために行動できるのは、その相手が自分にとって重要だってことなわけで。
だからオレも、ちゃんと伝えたい。リクが大事だって。
「わかった。けど、特にオレはなにひとつ気にしてないからな?」
ハグを交わすと、余計にわかる。
時が止まってたっぽいオレに比べて、リクはもう、大人の体に近づいてる。背も高いし、筋肉もついてるし、無駄に力強いし……。
「ありがと。でも、兄さんならそう言うと思った。だからこれは、俺のけじめの問題」
「そう言うと思った」
「俺も母さんが大事だからな?」
「あなたは黙って。息子たちの感動的なシーンを邪魔しないで」
「……はい」
ったく。
「親父も、五十億くらい稼いできたら?」
息子にだけ過剰負担って判決には全力で異議を申し立てておきたい。なにせ親父が飲みに誘わなかったら、こんなことにはなってなかったのであるからして……。
「母さんや」
「なによ?」
「カイトがとうとう、俺のことを親父と……」
なんだよ今更。
確かにあんまり面と向かって親父呼びした覚えは、あんまりないけども……。
「昔はぴょこぴょこ歩いてきて……お父ちゃんだいしゅきって言ってたカイトがっ………とうとう……。お父ちゃんから父さんはまぁいいとしても………。とうとう、とうとう親父呼び……」
「そのうち、おっさんって呼ばれるんじゃないの?」
「はぁ!? だ、だめだぞカイト! それだけは許さんからな?」
「はいはい」
確かに、さすが救星の勇者様。
今もって青年のような若々しさと肉体美を誇るところがもうマジで……腹立つ。おっさんって感じじゃ、ないんだよなぁ。見た目は。腹立つけど。
「あ、そうだ。兄さん、部屋にハルルが来てるよ?」
「よっしゃ!」
ナイスタイミング! さすが親友!
「じゃあ、行ってきます!」
ニシシっと笑いながら、母さんと土下座父さんともハグを交わして。紅蓮と黄龍にもワシャワシャハグアタックをかまして。
ダッシュで部屋に戻って。廊下で爺やに叱られて。
逃げるように駆け込んだ私室で、ハルルとハグを交わして。
急いで荷物を詰めて。
それから……王城を飛び出したわけだ。光の帝位イケメン精霊たちと一緒に。
それが…………二時間ほど前。
オレとしては……あそこに行くつもりだった。
王城近くのダンジョン。あのなぜかイラっとする洞窟の女神様のいるとされる……始まりのダンジョンに。
でも今、オレがいるのは、そこじゃあない。
「どうだ? 通称……性癖の……エロダンジョンは?」
「…………ふっ、ふむっ」
ニヤリ笑顔で肩を組んでくる大親友が、失恋したならここだと断言して提案した地。
海人族の―――エッチぃダンジョンに来てしまっているの………なんでだろ?
てか………………え?
「嘘だろ?」
「嘘?」
「オレ、失恋したの?」
「……気づくの、遅くね?」
「………嘘だ」
「や、十年だぞ? 友達に戻りましょうって意味じゃね?」
「嘘だ」
絶対に違うっ。
「………はぁ。お前マジ恋愛偏差値低すぎ。ま、安心しろ! この俺様が鍛えてやるからよ!」
え? マジで? そうなの? ねぇ? そうなの?
『引きこもり神?』
『………すまん、アドバイスも回答も無理。なにせオレのラノベ知識にそのパターンはないのであるからして』
くぅっ………どこまでも役立たず。
や……いかんいかん。お、落ち着けオレ。冷静になるんだオレ。こういう時ほど冷静になって………現状を整理する必要がある。
まず、ダンジョンに潜る。目的は五十億の借金返済のため。
あと恋人は里帰り中。十年後に再会の予定。ただし振られた説あり。
…………………………………………………………………ふぐっ。
「なんだ? 急にしゃがみ込んで……」
ひ、膝が……仕事しない……。ノックダウン寸前っ。
「腹でも痛ぇのか?」
「い、行くぞハルル!」
「おぅ? 便所か?」
「違う! エロダンジョンだよ! 絶対ぇ踏破してやんよ!」
「よ、よっしゃ! そうこなくちゃよ! ガンガンやろうぜ!」
「お……ぅん?」
やる?
「行くぞ!」
「え?」
やる?
やるって……言った?
やるって………何を?
今日もありがとうございました!




