急ぎ伝えよ、次男は童貞(閑話)―――その壱
イルルのお話。本編にチラッとでてきたエピソード。行方不明になったカイトを探し続けるため、北辺の冷たい海辺で暮らし始める頃のお話です。
最初はただ…………眺めてた。凍える海のうねりを。
砂浜に座して、冷てぇ風に身を晒して………。カイトが消えたと……受け入れるのに時間が必要だった。
それからは………潜り続けた。海に。毎日。
潜っては………陸に上がり冷えた体をたき火で温めて………また潜る。
悪天候……波のきつい日は浜辺を歩いて……カイトを探した。せめて、アイツの身につけてた服の切れ端くらい見つけたくて………ここに確かにいると信じられる何かを………どうしても見つけたくて………たまんなかった。
………………期待は、裏切られ続けた。
ある日の夕方、心が軋む音がハッキリと聞こえて……。それが日に日に……デカくなって………。時々、頭が割れそうな音量に膨れ上がる………。
そんな時は決まって、カイトを想った。胸に手あてて、ただ、優しい過去に浸った。音は小さくなり、頭痛が和らぐから。
しんどいのは、それが上手くいかない時。気が………狂いそうな時。意味のない叫びと嗚咽に感情が支配されて…………膝から崩れ落ちる。
そのまま………地を殴り、掻きむしり、叩き潰す。
意識が飛んで―――眠りに落ちるまで。繰り返し何度も、何度も、拳を痛めつけた。
……役立たずの拳を。
幻聴も、悩みの種のひとつ。
遠くから………カイトが、懐かしい声音で俺の名を呼んだような気がして。声のした方へ……感覚を頼りに駆けては………海に飛び込み…………絶望を繰り返す。
疲れて眠りに落ちると、久しぶりに遊びに来たと言わんばかりの表情で………夢でカイトが笑いかけてくる。
………………頭の片隅で、理解できる自分が…………憎い。幸せに浸りながら、これは夢だ―――……妙に冷静な自分が夢の中に居て。絶望を抱えながら、黙って……カイトの笑顔を受け止める。夢でもいい、覚めないで―――……そう…繰り返し念じながら。この夢から覚めぬよう……間違っても目覚めないように……怯えて動かない。そんな馬鹿な自分が毎回、人気のない脚本よろしく登場してくる。
悲劇だ。
現実は……紛うことなき悲劇。
日々………希望は、目減りしていく。
もう絶望の淵に体が落ちている。
それでも……淡い希望の光に指先でしがみついて………体を持ち上げる。食いしばって、食いしばって、心を奮い立たせて………日没を迎える。今日も悲劇だったと、現実を受け止めながら。
ただただ欲した手がかり一つ……布の欠片さえ未だ姿をみせないのだから。
絶望しても……腹は空く。
食いたくと無気力になる自分を、毎日、説得してる。カイトを探す体力を得る必要があると……叱りつけながら。
気乗りしないまま………海の幸に手を伸ばして。拒む胃に詰め込んでは吐き戻し………泣き崩れる。
どうしても食べれない時は……カイトに頼った。パーティメンバーに配ってくれてた、カイトお手製の非常食。濃い目の味付けで……カリの実を潰したスパイシーな干し肉。俺の好みに合わせてくれたんだと、すぐにわかった。
こんな時でも、カイトの飯は美味い。
ただ………カイトと食う飯は……もっと美味かった。
些細な事実が、全身を揺さぶって。後悔が……頭を塗りつぶす。
一緒に………同行させてもらえるほどに、なぜ、俺は、強くなかったのか。
もっと強くなっていれば、今頃、こんなことにはなってなかった。カイトも俺も、笑って飯を食ってた。
ああしてたら………こうだったら………際限なく繰り返される―――たらればの思考は、いつだって己を呪う言葉になって………心を痛めながら……眠りについた。
そんな様子を見かねたのか。いつの頃からか………野宿に必要な物資―――……衣服や毛布が、枕元に置かれるようになった。里の知り合いが差し入れてくれているんだろう。
必要なものは、それでなんとかなった。
長くここを離れる気には……どうしてもなれねぇから。ありがたい。
…………………………そんな生活が、数か月。
手がかりの一つも得られぬ日々が………心を蝕んで……。
ついうっかり、指先を離した。淡い希望から。
暗闇に落ちるのは、一瞬。
空腹で無気力なまま……眠気でぼんやりした頭と体が………寒さを心地いいと錯覚して…………ふと、思った。
このまま、ここで死ぬのも悪くねぇな……って。
一瞬…………ほんの、一瞬。
心地よい気だるさと共に……悪魔の誘惑が耳元で炸裂して…………。
……………………腹が、立った。
自分の頬を殴った拳は……力加減なんてできるわけもなくて―――
「―――や、べぇ……」
脳、揺れた………かも。
あぁ………………………あぁ………………バカだよ、な………。
………………………悪かった……………。
も、許してくれって…………なぁ、カイト………。
謝るから、よ。
何度も、何度だって……………。
なぁ……………………………………機嫌、直せよ。一瞬…………気が………迷ったんだ。
あぁ…………ほんの一瞬……一瞬だ。
……あぁ。
……………だな。
お前のことは……わかって……る。
死ぬわけ……ねぇ……………。
ずっとずっと…………生きてる―――……信じて―――
「―――……悪ぃ、カイ、ト……………ちょっと………眠ぃ。膝が………仕事しねぇの……ウケ、る……な?」
…………冷たい波が……心地いい。
服………きったねぇ……………体も……きたねぇ…………母さん……怒る…………よな。
すげ………きたねぇ。……し………修練サボっちまった………………。鈍っちまった………ごめ、ん。
………………冷めてぇ……。
でも…ありがてぇ。
皮膚を刺す冷たい痛みで………思考力……蘇ってきた……………。
指先………から心臓まで………………呼吸を欲して……る。脳が……叫んでんだ………生きろって、叫んで…………。
こりゃあ……いい………。
……………………もっと…………………もっとだ。もっと……長く…………息を………………限界ギリギリまで…………もっ…と……………。
叫ぶ……………体の悲鳴を………忘れねぇように。
……………………………………………………………………………………………あれは?
…………………そこだけ…明るい………………。
光………?
アレ……掴めたら………会える………かなぁ。
カイトに……………また……会うんだ………。手ぇ………伸ばせ………指もっ……動けっ。あれ……………掴んで……俺は………俺は―――
「――――ぶはぁっ………はあっ…はぁっ………はぁっ…………はぁっ…はぁ………ふぅぅぅぅ~………はぁっ……はぁ………ヤベェっ………はぁっ……」
マジで……死ぬとこだった。
血の流れを………肺が必死に取り戻そうと…………頑張ってる。
「よもや………死ぬおつもりか?」
「主のことを諦めるのか?」
「………いや………ちょっ………待って…………。ふぅ~~~………ふぅぅぅぅっ―――……っはぁ、はぁっ……………はぁっ……」
さっきの………光。
指先に触れた………淡い希望の光が―――………命を救ってくれた。
「………礼を言う」
……そうだ。
なんで………気が付かなかった?
………俺は一人じゃない。
カイトが生きてると信じ……必死に探す。こんなにも頼もしい―――力強い仲間が………俺にはいるじゃねぇか………。
光の帝位精霊―――………カイトの守護者。
騎士の装いをしたイケメン青年って雰囲気の……真面目キャラさんたちが。
「アーサー殿、ガウェイン殿。ちょうどさっき、生きようと思ったとこだよ。カイトを探すために」
「……それはよかった」
「……あぁ」
感情表現に乏しい二人が安堵の顔を浮かべる程………俺はヤバいらしい。
「俺に何か用でも?」
ずぶ濡れの全身が………温かい光波の力で………心地よく乾いていく。
光の帝位精霊……マジ有能だな。
「伝言です。氷の星位精霊ニクス様より」
「ニクス様から?」
「えぇ。‘そこは心地よさそうだ。さっさと我を召喚しろ’、とのことです」
「………マジで?」
「マジです」
さすが氷の星位精霊………。凍てつく大地が心地よさそうとはなぁ。
「でも俺、召喚下手だけど。てかここダンジョンじゃねぇし……ギアもコアもねぇけど?」
「ご安心を」
「えぇ。ただ祈り、名を呼べ………とのことです」
「偉大なる神がそれに応じ、精霊たちの住処に至る門を開くだろうと」
「オッケ。わからんけどわかった」
祈って名を呼ぶ、ね。
「………太陽と闇を贄に開くは精霊の社。欲するは氷の力……ニクス様お越しください!」
どう?
てか……これで来るの?
精霊ってツンデレじゃねぇの?
だからギアとかコアが必要なんじゃねぇの?
そもそも召喚しにダンジョン潜んなくてもいいの?
「………お越しください!! 頼んます!」
………いやいや。
おかしいおかしい。
さっさと来ないのはおかしいって。
呼び出せっつったのはお前の方だろが?
「そろそろっ! 限界っつーか………はやく!」
…………マジか。
来ねぇの? なんも起んねぇし……。
「…………」
おいおいおい………。
精霊の住処とこことを繋ぐ門的なアレが出てこねぇ。
「ニクス様………超ワガママじゃん」
呼べと言っておきながら、出てこないとか。
あれっスか?
ツンデレのツンのみ?
―――はっ!?
「まさかまさかの………かまってちゃんでっ―――……痛っってぇよ? なんだよ誰だよこの野―――ろぅ…………」
ガシガシ膝裏を突くこの痛みは―――………間違いない。
「ニクス様………いつからそこに?」
「さっきから後ろに居たけどな」
「………マジです?」
「嘘などつかん。我の気配に気が付かぬとは………竜人族の名折れだぞ」
「それ、精霊が言っちゃいます?」
「ん? 右膝も突いてほしいのか?」
「いえ、勘弁してくださいよっ……と!」
ペンギンって名の………動物のフォルムだっけ。
だいたい三十センチほどの大きさ。
ついモギュッと抱えたくなる愛くるしさは………悪くねぇ。
「イ、イルル殿……」
「それは無礼が―――」
「―――え? やっぱマズい?」
慌てるアーサーとガウェインって、始めて見た気がすんだけど。
「まぁ、よい。しかし…………我を抱っことは。畏れ知らずとはこのこと」
「ま、いいじゃないっスか」
見た目で得してるって思ってください。
「お主……風呂に入れ。匂うぞ。ついでに髪を切れ。アーサー、スパッといけ」
「承知しました」
「………なんか……すいません」
海水で汚れを洗い流すのは………無理だよなそりゃ。
「以前と同じ髪型……ベリーショートに」
「………どうも」
三秒で顔剃りまで終わってる………。有能だな、マジで。
あとは、風呂だな風呂。
「けど………ここにはねぇしなぁ」
これまでも、海か川で全身の汚れを洗い流してたくらいだし。
てか……やべぇ。
考えだしたら………ウズウズしてきた。
温泉、いいよなぁ。入りてぇなぁ…………………。
「それでしたらいったん、里に戻られますか?」
あぁ、それもアリか。
「ガウェイン殿が運んでくれるの?」
「えぇ。瞬く間に辿り着くでしょう」
「それはありがてぇ」
あんま長い間、ここを離れるのも嫌だからなぁ………。
徒歩だと……全力で走っても往復二日とちょっとかかっちまう。
光速で移動できるなら、用事を済ませて一時間以内に、ここに戻れるだろう。
「では、私とニクス様はここで待機しております。またすぐ、ここに戻って来られるのでしょう?」
「あぁ。もちろんそのつもりだよ、アーサー殿」
ニシシっと笑うと、精霊の頬も嬉しそうに緩んだ。
この気高い帝位精霊は、やっぱりカイトのことが大好きらしい。
「なにを言う。我はイルルと一緒に行くぞ?」
……………は?
なに言いだすんだこのペンギン…………。
「………竜人族の里っスよ?」
「なにか問題でも?」
「いや、知ってるでしょ? うちの里、竜人族の脳筋ばっかっスよ? 星位精霊が来たなんてわかった日には………無限にバトル申し込まれるっスよ?」
アホばっかだから。
親父より上の……爺ちゃんの年齢層は特に………アホだ。
精霊を倒して名を挙げる………それが竜人族の誉れだと思ってやがる世代だから。
「なに、案ずるな。我はこのまま人形の振りでもしておこう」
「いやそれ無理あるでしょ」
神気でバレバレだから。
そんな強烈な神気放つ人形なんて……もはや怪談話だから。
仮に上手くいったとしても、だ。
いや、わかってる。格闘好きの脳筋種族が強烈な神気を見逃すはずねぇし。ま、ほぼほぼ無理ゲーなんだけども。
………仮に、仮に上手くいったとして、だ。
俺………人形抱えて帰郷したって都市伝説残すの………無理。
「では、どうしろと?」
「ここでお留守番?」
「それは選択肢にない。我が汝といるのは決定事項だ」
いや初耳ですけど?
「では、我らの能力……謁見の間を使って里に入ってはいかがでしょうか」
「そう! それがあった! あの便利空間!」
カイトが秘密基地っぽいってテンションバカ上げしてた能力!
「ならん。空間に閉じこもっているのは我が性に合わん故な」
その………ドヤ顔やめてもらっていいです?
鋭い口ばしもひっこめてもらっていいです?
俺の顔面突く気配全力におわせすんのも、やめてもらっていいです?
「………なんだ?」
「………ですよね~」
………星位精霊ってそんななの? ワガママすぎじゃね?
……そもそも、こっちに何しに来たのわけ?
「あの、ニクス様。なにか用事があってこちらに?」
「我は当面、お主から離れるつもりはない。いいな?」
それ、用事って言わない。
行動って言う。
だからその目的は?
意図は?
ねらいは?
「…………なんだ?」
「………いえ」
ダメだ。質問に答えた気になっておられる。
「………アーサー? 一緒に里に行っても大丈夫だと思う?」
「えぇ」
「我もアーサーに同意です。ニクス様を害せるものなど………神以外におりますまい」
「いや、そっちじゃなくて」
里の方だよ。
大暴れして壊滅させるんじゃねぇの?
ただでさえ邪竜の適当爆撃で甚大な被害が出てるんだぞ?
里丸ごと氷漬けにされたりしたら………さすがにマズいんだけど?
「……む?」
「ニクス様? どうかしました」
念のため……。ムギュっとした口ばしから………顔を遠ざけておくとしよう……。
「連絡だ」
「連絡?」
「あぁ、偉大なる神の従者からな」
「神の従者?」
「……………えぇ、イルル殿。温泉を用意した、とのことです」
「温泉?」
「ここ………浜辺の後方に………あぁ、アレですね」
「………マジだ。湯気じゃんあれ」
ありがてぇ。
てか、神の従者超有能じゃん!
これで里に戻らなくていい。
つまり、ニクス様のワガママ問題も解消ってことだ。
…………マジでありがとう! どっかの神の従者さん!
「じゃあ、里に戻るのはいったん中止で。とりま、みんなで風呂入りません?」
「ほぅ? この我………氷の星位精霊ニクスに、熱々の風呂を勧めるか」
「マズかったスか?」
氷解けちゃう………体解けちゃう、的な?
「我が体を芯まで温もらせる湯など期待できぬが………。いや、神の従者殿の用意した温泉となれば………うむ。試す価値はあろう」
…………ただのこだわり強めな客じゃねぇか。
「……じゃ、行きましょっか。アーサー殿とガウェイン殿も、行きましょう」
「では、お言葉に甘えて」
「えぇ」
イケメンの精霊二体、そしてヌイグルミのようなペンギン一体と………湯を共にすることになるとは。
人生ってのは不思議なもんだな。
大和おじさんが精霊の召喚に久しぶりに成功して以来………状況は変わった。
でも、精霊と竜人族は、まだまだ仲が悪ぃ。
ガキの頃から、ずっとそう聞かされてきたし。相性最悪なのは、仕方ねぇ。
これに関しちゃ、竜人族が全面的に悪ぃ。
………でも今は………どうだ?
今この瞬間は………。
ひょっとしたら俺、この星の歴史で初めて、精霊との混浴を成し遂げた竜人族ってことになるんじゃねぇの?
………死ぬ程どうでもいい歴史的イベント爆誕笑た…………なんて言って………カイト……はしゃぐだろうなぁ。
「ほぅ? これは……なかなかよさそうだな」
「………そっスね」
十人くらいなら、軽く入れそう。
湯も綺麗だし。純白の濁り湯に………金粉と桜の花びらが………浮かんでは水中に消えていく感じは………悪くねぇ。
てか癒し効果高めの演出…………最高っ。
「イルル殿、これは―――」
「―――ヒヒイロカネの原石っぽい。アーサー殿もびっくり?」
「………多少は」
露天風呂っぽく、大きめの岩がゴロゴロと円形に並び……湯をせきとめてるわけだが………。
その岩が、ヒヒイロカネの原石だ。
ここで転んで頭打ったら…………死ぬな。頭かち割れるわ、こんなの。
「これだけありゃ、大貴族が一生……何世代もバカ騒ぎして暮らせるだろうに………」
持ち運べるほどの力を持ってれば、だけど。
デカすぎてピクリともしねぇだろうからまぁ…………盗まれる心配はねぇか。
「ではみなのもの、さっそく入るとするか」
「「えぇ」」
「いやいやいや―――………おぃおぃおぃ。まずは湯船から湯をすくって、体にかけるんスよ。汚れをさっと洗い流すために。で、体と頭を丁寧に洗う。入浴するのはそのあ………と?」
そういや、アーサーとガウェインは光なんだっけ。
「その鎧って、脱げるの?」
「鎧を脱いで………別の服に着替えた姿になら」
「えぇ。我らの姿は、主がイメージしたものなれば」
つまり、裸にはなれないってことか。
「ニクス様は? 実体あるっぽいけど?」
「あぁ。我は今、実体があるっぽい状態だ」
自分で言っといてなんだけど…………っぽい状態ってなに?
「イルルよ。我は湯が待ち遠しい。作法があるなら、早う始めるがよい」
「……ご協力どうもっス。なら、体洗ってから入りましょう。よければ俺が洗いますよ?」
「苦しゅうない」
ちょこちょこと椅子に向かうペンギン……可愛すぎか。
「アーサーとガウェインはどうする? その姿のまま入ってもいいけど………」
…………なんとなく、違和感あるよなぁ。
やっぱ、裸だろ。
風呂は。
「では、模倣してみましょう」
「あ、変身できんの? 俺の裸見たら、形状をマネできる的な?」
「えぇ、可能です」
「よっしゃ。じゃあ、脱ぐからちょっと待…………待て待て待てよ俺……。やべぇ、タメ口だった今」
帝位精霊は偉大で気高い。
敬意は大事だって、カイトが言ってたっけ。
「構いません」
「そうなの?」
「えぇ。イルル様は主の大事な御方であり―――」
「―――主を探す仲間ですので」
「じゃ、タメ口でいかせてもらうわ! 二人もタメ口でいいぜ!」
「「善処します」」
「おう! ってことですいませんニクス様。桶は…………あったあった…………これでよし! 桶に湯を入れたんで、そこで足湯でもしててください」
「足湯……興味深いではないか」
「気持ちいいっスよ!」
告げながらガバリと服を脱ぐと………やっぱちょっと臭ぇ。服、汚ねぇし。ボロボロだし………捨てちまうか。
「イルル殿、それでは拝見しても?」
「おう! 部位を簡単に説明するぜ! まず下から………足の指と足首…………ふくらはぎに膝………ここが太ももで………この辺が股関節な。で、これが腹筋と胸筋、それに後ろのが背筋………この肩甲骨と腕の動きが連動して………こんな感じな?」
「わかりました」
「腕は―――……大丈夫か」
ま、腕はいろんなヤツのフォルム、見たことがあるよな。
「………ん? どうした?」
視線が………。
あぁ、そっか。
「その真ん中にあるのは?」
「生殖器だよ。生殖行為や排せつに使う器官。棒と袋二個あって………玉が一つずつ収納されてる。あ、今から大事なこと言うから。絶対に覚えてほしいんだけど……」
「わかりました。なんでしょう?」
「いいか? 棒は下向き。これが標準姿勢だから」
常時上向きにしてると………変態だからな?
「わかりましたが……。アーサー?」
「あぁ、ガウェイン………」
「どうしたんだ?」
「………主のとは、少し違うようなのです」
なるほど。
温泉かどっかで、カイトのを見たことがあるのか。
「竜人族はヒュム族より体がデカいからな。ここもデケェ傾向にある」
「………いや、体の大きさに生殖器のそれが比例すると仮定すれば、その点は理解できるのです」
「あぁ。アーサーの言う通り。大きさではなく……先端の形状が異なるのです」
「あ、そっか。アイツのまだ半分………」
………アレだったっけ。
「ま、そこは気にするな。カイトも体が大人になればこうなるはずだ。でも………いいか? カイトに確認はするなよ? とりあえずこっちをマネしとけば問題はねぇんだから」
「わかりました」
「そうしましょう」
「そうそう! いい感じいい感じ!」
客観的に見ると、アレだな。
俺の体、けっこう成長したんだな。修練サボってた割に………筋肉もいい感じ。
だけど………まだまだ細ぇなぁ。
全体的に細ぇ。太ももやふくらはぎなんて、親父の半分あるかないかってとこだ。
………まぁ、背もまだ伸びてるし。
筋肉は身長止まってから太くしていけばいいや。
「イルルよ。足湯はよいのだが……もう湯船に入ってよいのか?」
「あ、すいません。すぐに!」
ご機嫌ナナメだ。
息子に口ばしアタックされたら………死ねる。
「そうだ………二人はどうする? 光だから汚れてねぇだろうし、そのまま入浴してもいいけど……。実体化できるんなら、生命体のマネしてみっか?」
「「ぜひに」」
「じゃあ、そこ座れ。シャンプーとヘアトリートメント、洗顔、ボディソープ。この四つが扱えればいい。まず、シャンプーからな? 髪の毛を洗うためのや~つ」
「「や~つ?」」
「そう! こんな感じ」
泡立てて……もむようにペンギンの頭を撫でる。ニクス、とさかっぽいのはあるけど……髪の毛はない。
「ほぅ? なかなか心地よいではないか」
「でしょ? トリートメントとボディーソープ、連続でいきますよ!」
「苦しゅうない!」
まさか星位精霊のお背中を流す日が来るとは………。
「二人は――――……え?」
「なにか?」
「どうしました?」
「いや………そっか。そうだよな」
俺がニクス様を洗ってやってるから。それをマネして、アーサーがガウェインを洗ってやってるわけね………。
「今日は互いに洗いあうってことでいいけど。一人で自分の体を洗うのが基本だからな?」
「わかりました」
「そうします」
じゃないと………絵面がアレだから。ナナが見たら………笑顔で昇天しそうな感じになっちゃってるから………。
「あっ!」
「「なにか?」」
「そこは……ゴシゴシ擦るんじゃなくて………そっと……優しめに、な?」
「なるほど」
「生殖器はデリケートなんですね」
「そうそう」
色んな意味でな。
「なぁ、アーサーよ」
「なんだ?」
「主が昔、夜中に部屋でゴシゴシ洗っていたように思わぬか?」
「あぁ、そういえば見かけたことがあるな」
「………たまに、そういうこともある」
頻度と回数は、人それぞれだけど。
「ならば生殖器は、たまに部屋でゴシゴシ洗うものだと―――」
「―――違う違う。それ、絶対ダメ。見てもダメ、見たことを言ってもダメ。今度、カイト、いや誰かが部屋でゴシゴシしてたら……そっと消えてやれ」
「「消えていましたが?」」
「いや、実体を消すって意味じゃなくてさ。部屋から出ていって、見ないでおいてやれってこと!」
「わかった」
「承知した。しかし、どういう行為なのだ?」
それ………聞いちゃう?
「…………ま、男のトレーニングだよ」
知らんけど。
てか他にどう説明したらいいわけ?
「トレーニングか」
「ならば我らも―――」
「―――ぶっ!? ちょ、お前ら! すぐ止めてさしあげろ!」
なに始めようとしてやがんだ………。
「「なにか?」」
イケメンが、キリッとした顔で………なんてことを……。
「………いいか? カイトのトレーニングに付き合う必要はないし………今ここでトレーニングを始めなくていい。それはプライベートなトレーニングなんだよ」
「なるほど」
「覚えておこう」
「ま、わかんないことがあったら………今度からは………リクに聞いてくれ」
「「わかった」」
頼んだぞリク。
本件は、俺の説明能力が有する限界をブレイクした………。
「さ、終わりましたよ。ニクス様、先に湯船へどうぞ」
「………ふむ……ご苦労であった」
今、寝てたよな?
なんかフラフラしてんだけど?
「ならイルル殿、次は我らが体を洗ってやろう」
「あぁ。適切にできているか評価してくれ」
「了解! サンキュ!」
カイトともよく、背中流しあったっけ……。
修練の後で……互いの傷を笑いながら………。
「まずシャンプー」
「そうそう。泡立ててから………髪に塗り込んで………頭皮を揉む……。そうそう……上手上手!」
やるじゃん。
やっぱ帝位精霊、マジで有能。
「それからトリートメントな。洗顔は自分でやるから大丈夫」
「わかった。トリートメント役は引き続き、この我が務めよう」
「ならばアーサーよ、我が体を洗うとしよう」
「任せた」
「あぁ」
そんなミッションっぽい行為じゃねぇんだけどなぁ………。
ま、裸の付き合いなんて、精霊にはわかんないか。おいおい、理解していけばいいだろ。
「あ、そうそう。誰かの身体を洗う時は基本、後ろ側の背中が中心な?」
「承知。繊細な部位は己で洗うのが基本であると理解した」
「アーサー、正解!」
しかし………客観的に見て……絵面がヤベェ。
露天風呂で、真剣な顔した全裸イケメンに体を洗わせてるわけで。
マジ、変態趣味のある貴族のバカ息子って感じだ……。
ま、俺は確かに貴族の血筋にあたるけども。
バカ息子ではないと信じたい……。
「力加減は?」
「もうちょい強めで」
「承知」
「あと痒いところはない? って聞くと、ポイント高ぇよ?」
「なら―――痒いところは?」
「そうそう! 首の辺りと……腰の方!」
「承知」
……っとに真面目だよなぁ。
カイトなら絶対、わざと力入れなかったり………わざと一か所だけ洗わなかったりする………。
で、ギャイギャイ騒いで………泡塗れになってさ………。
「イルル殿、これで洗い終えたと思うのだが………」
「あぁ。どうだろう?」
「サンキュ! スッキリした!」
「それは良かった」
「あぁ」
達成感?
二人とも笑顔だし……ハイタッチを交わしてるし。
初めての挑戦を無事成し遂げた………そんな感覚なのかもな。
「じゃあ、湯船つかろうぜ!」
「「おぉ」」
ニクス様は………湯に浮かんでやがる。
空を見ながら漂ってるあたり……かなり、この温泉が気に入ったらしいじゃん?
これは……期待できそうじゃん。
「湯船に入る時の作法は?」
「あぁ。どこか洗う必要が?」
「しいて言えば……足、だな。湯船に来る途中で足の指とかに汚れがついてっかもだから。軽く流すといいぜ」
「「わかった」」
ほんと、真面目だなぁ。
互いの足の裏を目視で確認しあう必要は……ま、いいか。楽しんでるっぽいしな。
「さてさて………」
おぉ………。
ちょっと熱めで………ぬめり感がある。
まったり体にまとわりついて………名残惜しそうに皮膚を下る湯が…………愛おしい。
ガウェインとアーサーも………気に入ったっぽい。ムムッと眉間に皺を寄せた後…………ほわりと頬を緩ませた。
「あぁ~、いい湯だなぁ」
「あぁ」
「素晴らしい」
「だろ?」
「「あぁ」」
自然と笑顔になる………。温泉ってやっぱ…………いいよなぁ。
脚を伸ばせるでっけぇ湯船って………贅沢だわやっぱ。
「イルルよ……体を洗うとは、よい営みだな」
「へぇ~? ニクス様、気にいっちゃいましたね?」
「ま、悪くない。これからも洗われてやろう」
「そいつはど~も」
上からなのは仕方ない……そう思って付き合おう。
ま、実際上だし。星位精霊だし。
なにせ氷系精霊の頂点に位置する偉大なペンギンらしいし。
氷系の精霊って、どれくらいの数がいるのか知らんけど………。
………そういや………精霊ってどうやって増えてるんだ?
「ニクス様、精霊って生殖器ねぇの? どうやって増えるの?」
「ふわぁあぁぁ~~……ねむぃ」
眠そうにウトウトするペンギン………。可愛い路線でも目指してんだろうか?
「二人とも……答えて、やって」
「「はっ」」
そして丸投げ。
これぞまさに上位存在って感じ……。
「イルル殿、精霊は、属性と階層から個が同定されます」
「属性はわかる。光とか闇とかだろ? 階層ってのは……帝位とか星位とか?」
「えぇ、その通りです」
光の帝位精霊………ガウェインの腕が暖色になり………光を放つ。
「帝位精霊の我らは、星の生命体のような実体を有するわけではありません」
「基本的には精神体です」
「なるほど。でも、今、湯船につかってる部分のように、実体を模倣することができる?」
「えぇ。模倣というか………半物質化ですね」
「半物質化?」
「えぇ。例えるなら水が蒸気や氷へと状態変化するように―――」
「―――精神体と半物質体を行き来できます」
「ふ~ん………」
じゃあ、半物質体で性交するんだろうか……。
でもコイツら、生殖器なにそれって感じで俺のを見てたような………。
「さて、ここからがご質問の答えになります」
「えぇ。アーサーと我は帝位精霊……つまり高純度の神気に辿り着きし存在」
「高純度の神気?」
「えぇ。星の生命体は、‘神気が強い’などと表現しますね」
「なるほど」
「基本的に精神体の我らは、肉体的な性交を必要としません」
「そうなの?」
「えぇ。‘いかにして増えるのか?’という問いには、帝位精霊であれば次の四つであると回答可能でしょう。それは―――」
「―――分裂、複製、混合、特殊進化、です」
なるほどなぁ。
「分裂は、一体が複数になるってこと。複製は、自分のコピーができるってことだよな?」
「はい」
「混合は………精神的配合のこと、ですね」
「精神的配合?」
なんか尊くもエロイ響き……。
「精神体の一部を共有し、精神体内で混ぜ合せ……身ごもるのです」
「なるほど」
精子と卵子は不要、生殖器も不要ってことか。
「残った特殊進化ですが……これは一概には言えません」
「属性によって異なる的な?」
「えぇ。属性やその組み合わせによって偶発的に生じる……混合の変形版、です」
「例えば?」
「カイト様の父上に懐いている紅蓮。炎と氷……真逆の属性を有する特殊個体」
「あぁ、あのわんこ精霊な」
可愛いし……もっふもふの毛並みが最高の………。
「えぇ。本来、属性の真逆にある精霊とは交配が不可能」
「なるほど」
氷と炎なら、交わった瞬間に融けそうだもんなぁ。
「しかし……肉体を有する一般の精霊と上位種……例えば帝位精霊との間で………子ができることが、極まれにあります」
「処女受胎?」
「えぇ。肉体的配合はなく、上位種の精神体……その一部が物質に作用し子を生す」
「なるほどなぁ」
「今のは一例ですが……珍しいと言えましょう」
「そっか」
レアモフモフなのか紅蓮は………。
「レアものや帝位精霊についてはわかったけども。普通……上位種以外の精霊は? 肉体的配合で子を生すわけ?」
「多くの場合は、その通りです。しかし―――」
「―――属性によりけり、でもあります。闇の精霊は、身体を構成する要素を相手と交換―――その化学変化によって子を生します」
「そっか」
実体があるか、ないか。
そして属性。
この組み合わせで、子を生す方法が決まってくるってことか。
「………それで? 二人はどうなの? 子どもいる?」
「いえ、おりません」
「私もおりません」
「そっか。恋人は? てか恋愛とかあるわけ?」
精霊のこと、なんにも知らねぇんだよなぁ。
「恋愛という感情や、そうした関係は、我らにもありますよ」
精霊にも夫婦………番っていうのかもしんねぇけど、そういうのが、あるにはあるってことか。
「ただし、それがこの星の民と同じものかどうかは、わかりかねますが………」
「なるほどなぁ」
俺らだって、種族ごとに大きく恋愛観が違う。寿命や文化のせいだろうと思うけど。
「子どもがいないのは……いい出会いがなかったから?」
合コンは………しねぇか。
となると……恋愛? お見合い?
「出会いどころではなかったのです」
「………精霊の子は、とても弱いのですよ」
「そして我らには、安住の地がありませんでした。そのためにみな、力の多くを失いかけていた…………。子を生して育むなど、夢のまた夢だったのです」
過去形ってことは―――
「―――状況は変わったってことだよな?」
「えぇ。天界におわす偉大なる守護神が、その能力と神威を膨大に用いてまで………我らに安住の地を授けてくださいました」
「しかも、その地には神々やその眷属もお越しになる」
「更に偉大なる守護神の皆様からも、加護を授かりし土地なのです」
「神々の神威に溢れ、清浄で豊かな…………平穏なる地を、我らに授けてくださいました」
「へぇ~、いい神様もいるんだなぁ」
「えぇ」
「それはもう」
へぇ………いい感じじゃん。その笑顔、いいと思う。マジで………嬉しくてたまんねぇって気持ちが、溢れ出てる。
「精霊、増えたんだ?」
「えぇ。その地にて力を取り戻し、更に高め………心穏やかに………次々と子を生し……育んでおります」
「まさか……このような時代が来るとは思っておりませんでした」
「そっか。よかったじゃん!」
「「………えぇ」」
なら二人はどうして………なんて聞くほど、バカじゃない。
二人はカイトに恩があるって言ってた。
カイトのために地上に留まり、恩返しを優先してるってことだろうから。
………俺と、同じだな。
子を生すよりも、今、優先したいことがある。
俺はカイトが死ぬまで………だいたい百年もねぇくらいの短い間は………恋愛する気はねぇ。
カイトとバカやって、ちゃあんとアイツが天に昇るのを見送るって決めてる。
そこから後の残された時間………五百年ほどの間で、家庭を築いて………子を生し育めばいい。
なんなら、アイツの子孫も見送るつもりだし。
………だから早く、アイツを見つけねぇとな。
死ぬわけねぇんだ、あのバカが………。お人よしなことに………また誰かを救おうとして………なんかトラブルがあって………帰って来れねぇってパターンに決まってる………。
「イルル殿―――」
「―――あぁ」
誰か……こっちを見てやがる。
この距離であっさり気づかれるなんて…………………コイツら………気配を隠すの下手すぎ。
近隣の集落から来たガキどもってとこか?
「ま、見てるだけならいいさ」
「では、そのように」
視察に来たか、様子見に来たか、遊んでたらここに辿り着いたか………ま、そんなとこだろ。
「それでイルル殿、体を清められた後は?」
「あぁ。風呂もできたし、ここに―――……小屋でも建てるか。カイトを探す拠点として」
「なら、我らと修練を積みながら探すというのは、いかがでしょう?」
おぉ………マジで?
「それは……………すっっっっっげぇありがてぇ! けど王城は? 留守にしていいの?」
「陸人様がいらっしゃるので心配は不要かと思いますが―――」
「―――念のため、アーサーと我が交代で城に残ることにしましょう」
「なら………大丈夫か。じゃあ喜んで! お願いします!」
テンションあがってきた!
まずは……小屋だな。寒さを凌げて眠れるくらいの大きさでいい。風呂は温泉があるし………便所はなんとでもなる。
次は………飯。カイトが配ってくれてた非常食は………そろそろ残が少ねぇんだよなぁ。ま、幸いなことに海があるし。川もある。腹が減ったら魚や貝で凌げばいい。
う~ん………後は………米とか? 食器とか?
ま、必要な物があれば、物々交換してもらえばいいだろう。近隣の集落に行って……魚や貝類なんか渡せば………雑貨類を譲ってくれるだろうし。なんなら、アーサーたちに里に運んでもらえれば……買い足せる。
よっしゃ………。今後の方針も決まったし、生活の目途はついた。
それもこれも……………風呂のおかげだ。
あと、偉大なる精霊たちのおかげ。
………一人で海を眺めては潜り………潜っては眺めてた日々とは………ぜんぜん違ぇ………。
うん。
気持ちが……違う。
心に明るい光が差しこんでる……そんな感じだ。それも疑いようのねぇ……確かな光が。
……っしゃあ。気合入ってきた!
「さぁニクス様! 起きてください! やることいっぱいっスよ!」
「……むっ? 里へ行くのか?」
「もう行きませんってば。予定変更っスよ。ここで俺は生きていきます。カイトを探しながら」
「………ならば我もそうしよう。里へはまたの機会に」
「俺はありがたいっスけど……なんで俺と?」
そこを教えてほしい。
「ここは北の海………主が行方をたったのは海の中」
「??」
「我らは主に恩がある。それを返すために、汝に力を貸そう」
「俺に?」
「あぁ。まずは我が神気に慣れてもらわねばな」
「あぁ、そうい―――うっ」
……ヤバい。
神気に……あてら、れ、た。
「先が思いやられるな。我が多少神気を放っただけでその様とは」
「………っス」
わかりました。
えぇ、わかりましたから………脛を突くのは………止めてくださいっ。
「しばし休め。その後、修練に入る」
「………っス」
…………力は、欲しい。
カイトの隣に並び立つために……。
なにより今は、カイトを取り戻すために………。
かの英雄ラグナが、邪竜との戦いで放った………命を賭けた一撃。星の形状を変えたって……伝説は、今、目前の海中…………星刻海溝………。
「超越者に……」
英雄の……ように。
「その意気やよし。我はニクス………最強の精霊が力を貸そう」
「………頼んま……す」
人のケツに腰掛ける………このペンギンに……今は……頼るしか………ねぇ。
不満は………ねぇ。
この上な……く……………頼りがい……あ、る…………っ。
今日もありがとうございました!
イルルのこの物語はあと2話ほど、続く予定です。ぼちぼちお付き合いください!
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