第56話:恋しかるらむ
「あのぉ~、ちょっとお隣いいですか?」
「へっ?」
なぜかナンパっぽい声のかけ方になっちゃった件……。
「あ、すいません急に話しかけちゃって」
「いえ、、、えっとあの……私、です? なんて……違うか! そんなわけないない。だって私のこと、見えてないし。言葉も聞こえてないし。だから大胆に……ちょっとローブを捲っても……見えてないから大丈夫!」
……すいません。
「あの……見えてます」
とくに太もも、すっごい際どいですから……隠してください。
「え?」
「ローブ、戻してください。見えてるんで………」
「……え?」
「本当です見えてます。胸元と太ももが際どいんで。あ、俺らみんな、見える人なんですよ。ね?」
だってみなさん、神々なのだから。
「……う、そ」
「ホントです。現に会話が成立してるでしょ?」
ニコリと微笑んだ瞬間、排斥者の瞳に涙が浮かんで………クシャリと、綺麗な顔が歪んだ。
「……ごめん、なさいっ」
「いえ、いいんですよ。見える人がいるなんて思わないですもんね」
排斥者に差し出した手を、慌てて引っ込める。
ナナちゃんひと筋……俺はナナちゃんひと筋なんだから。
決して今、グラリときて、肩を抱こうと思ったわけじゃあない……。
潤んだ大きな瞳と、守ってあげたくなっちゃう細めの肩。
獣人族……黒猫型、かな。
愛嬌のある耳と感情表現豊かな細長い尻尾。しかもスタイルが……はっ。俺はナナちゃんひと筋……ひと筋ったらひと筋……。
……際どい太ももには惑わされないっ。
「すいません。人と話すの久しぶりで……取り乱しちゃって」
「いえ、いいんです。こっちこそ驚かせちゃいましたよね。すいません」
「はい! あ、いえ。その……驚きましたけど……嬉しいサプライズ、でした!」
ニコリと微笑んだ笑顔は、愛嬌たっぷりで。
この星の禁忌を犯したような大罪人には、とてもじゃないけどまったく見えない。
かわいい笑顔にコロっと騙されちゃうパターンのアレかもしれないから、注意は必要だけどね……。
「あ、俺はリクっていいます。こちらが―――」
「―――初めまして。私はガイア」
「トールじゃん!」
「ディーテよ?」
先生、いつの間に合流を……。
「初めまして。私はマリア・ヨハンナっていいます。お話できてとっても嬉しいです!」
……大罪人。
彼女が排斥者である事実が、その罪を証明している。
けどやっぱり、悪い人には見えないんだよなぁ。
「あ、ジェイが動いたじゃん!」
「あ、ほんとだ~。キスなんて、ちゃんとできるのかしら? 心配なのよねぇ」
フフフっと笑いながらジェイを見つめるヨハンナ。
その笑顔は綺麗なんだけど……ちょっと寂しそうにも見える。
「知り合いなんです?」
「うん! あ、みなさんもジェイの友だち?」
「えぇ。大親友ですよ」
「はぁ~……よかったぁ」
「なにか?」
「だってジェイったら……友だちなんていなかったから。小さいころからいっつも、最強最強って言ってばかりで……毎日、ケンカしてばっかりでさぁ」
「すげージェイっぽい。で、そこは今もあんま変わってないかも」
「でしょ?」
「うん」
修練大好きだし。
獣人族の力を認めさせるために頑張ってるらしいけど……。竜人族の三バカ兄弟とバトルできるレベルにある時点で、その野望は果たされてる気がしないでもない。
「でも本当に……強くなったんだねぇ。ランクS冒険者だなんて……すごいなぁ~」
「ひょっとしてヨハンナさんは、ジェイの幼馴染?」
「マリア、でいいよ?」
「わかった。マリアね。俺もリクって呼んで」
「トールでいいじゃん!」
「ディーテでいいわ?」
「ガイア」
「うん! トールにディーテにガイア! よろしくね!」
「よろしくじゃん!」
「えぇ、改めて、ね」
「フフフ?」
神々を呼び捨て……。まぁ、知らないから仕方ないけども。
みんなが神だと知った後でも、マリアは呼び捨てにする気がする。
なんかちょっとだけ兄さんに気配が似てるから……そう思っちゃうのかも。
「マリアはここでなにしてるじゃん?」
「えっとね……そうそう。リクの質問からね。私はジェイの幼馴染。あ、私もう死んじゃってるから……正確には、幼馴染だった……ってことになるのかなぁ」
「そっか」
「あ、気にしないでね! 私もあんま死んじゃったって気がしてないから。だってほら、こんなに元気なんだしさ! 見て! 力こぶ……ないけどね? あ、リクはすごいねぇ。筋肉!」
「でしょ? 鍛えてるからね!」
グググっと生み出した力こぶに、拍手を送ってくれた。
「我も凄いじゃん!」
「あ、ほんとだぁ。トールもすっごい腹筋!」
やっぱ兄さんに似ているかも。
自分のことでまわりがショボンとしないように気遣ってる。話のターゲットを自分から俺に変えたしね。
「もっと見るじゃん?」
「え⁉」
「トール……下界じゃホイホイと服を脱がないの」
「わ、わかってるじゃん!」
……確かに。
でもトールさんはきっと、マリアの気遣いに、ちゃあんと気づいてて。テンションが下がらないように盛り上げてくれたんだと思う。
「それでマリアは、ここで何をしてるの?」
「あっ……そうそう! 質問に答えなきゃね! ごめんなさい私ったら……誰かとお話できるのがすっごい楽しくてつい……話すのっ…が…とめらんなく、なっちゃ、て……っ」
震えた肩は……切なさそうに……涙を生んでいく。
「いいのよ? たくさん、お話しましょう? フフフ?」
そっと肩を撫でたのはディーテ先生。心を落ち着けるためだろう……美の女神はマリアに優しい笑顔を授けた。
女神の笑顔に、どんな神がかった効果があるのかはわからないけど……。
彼女にとって、自分だけに向けられた笑顔がどれだけ嬉しいものなのかは……わかる気がする。
「……ありがと」
排斥者。
誰にも認知されず、この世界から排斥されたもの。
孤独で寂しくて苦しい日々を、堪えてきたに違いない……。
周囲に溢れる日常生活を……苦楽を謳歌する人々の賛歌を、ただ一人、ステージの外から眺める。
そんな孤独な観客にしかなれない自分を……自分で抱きしめながら過ごしてきたに違いない。
「落ち着いたじゃん?」
「うん!」
屈託なく笑う。
そんなマリアの笑顔に、トールもニシシっと笑顔で返す。
「無理すんなじゃん?」
「トール、ありがと! もう大丈夫よ」
お兄ちゃん強し……。
トールさんはきっと、万人を妹にしてしまう神権を持ってるに違いない……。
「……ジェイったらこんなに素敵な友だちがたくさんできたのねぇ」
そっと瞳を閉じて……マリアは小さく頷いて。
遠く……ジェイを眺めながら口を開いた。
「……今日はね、踏ん切りをつけに来たの」
「踏ん切り?」
「そう。踏ん切り」
キス祭りに挑むジェイの様子を見つめる視線は……とっても柔らかくて優しい。
「キス祭り、参加したかったなぁ」
楊妃に抱き着かれて……ハグという名のサバ折攻撃にもがくジェイ。
ったく、あの邪竜め。キス祭りだって言ってるのに……。筋力測定して、ジェイを値踏みしてるに違いない……。
「ジェイの恋人を決める祭りだもん。どうしても参加したくて……ここまで来たの」
「……そっか」
「あ、わかってるよ? 排斥者の私が参加できないのは……わかってるの。でもね……雰囲気だけでも……いいの。大事なのは……私が、今日の祭りに参加したって……そう思えることだから。うん……私はちゃんと参加した……でもジェイは別の人を選んだ。そういう物語にするの。じゃないと私、ずっと………ずっと、ジェイのそばを離れられなくなりそうだから」
愛おしい……。
笑顔ですべてが、愛情でできてる。
それを見れば、マリアの愛が余すことなく注がれていると伝わるだろうに。肝心のジェイには、見ることができない………。
「あ、放り投げられちゃった」
楊妃がポイッとジェイを放り投げた。
そのまま空を飛んで……。
意を決したように………ふわりと、こちらに向かってきた。
ジェイが最初に座ってた、舞台の中央に。
「よぉ、リク」
マリアが……瞳を大きく開く。慌ててフードを深めに被って……それからギュッと……自分で自分を抱きしめた。
見えてないと知りつつ、大好きな人から、今の自分を隠したいって気持ちがそうさせたんだろうな。
「ジェイ、どうしたのさ?」
大会はまだ途中だぞ?
「ちょっといいか?」
「いいけど?」
どうやらコソコソっと話したいらしい。
肩を組んできたと思ったら、そのまま舞台の隅まで連行された。
まぁ、離れたとしても神々は耳がいいから、聞こえちゃうんだろうけども。
「大天使ウリエルはよぉ……なんか言ってなかったかぁ?」
「ウリエル様が?」
「おぅ。その……あれだ。俺様の恋についてよぉ」
「いや……別に? なんか気になる?」
「……そっか」
「珍しいじゃん。歯切れ悪くない?」
「……だよなぁ」
頭をボリボリっと掻きながら、空を見上げて。
ジェイは困った様に……胸を撫でた。
「ウリエルがよぉ……騒いでやがる気がすんだよなぁ」
「騒いでる?」
「わっかんねぇんだけどよぉ……胸がざわついてやがる」
ウリエル様には、聞こえてたのかもしれない。
マリアの声が………。
そしてジェイに、なにかを伝えようとしてるのかもしれないな。
「そっか……。それは気になるね」
「……おぅ」
……俺は、どうすべきなんだろ。
ジェイに今、まさにこの場所に、愛しい人―――マリアがいると伝えても意味はない。
排斥者をどうすることもできないし、ジェイには見ることもできない。
ただ、二人の気持ちをいたずらに乱すだけだ……。
「いや、悪ぃ。変なこと言っちまったなぁ」
「変じゃないって」
罰が悪そうな笑顔は、いつものジェイらしくない。
自信たっぷりでふてぶてしい……アイドル業の陰に隠してきた素の顔が、これなのかもしれない。
「多分よぉ……踏ん切り、ってヤツがよぉ……ついてねぇみてぇなんだ」
「踏ん切り?」
「おぅ。故郷に残してきた女が……なんか急に気になっちまってな」
「それで?」
「もう……死んじまってるらしいんだけどな」
「……そっか」
「おぉ。でもやっぱ、好きなもんは仕方ねぇよなぁ」
「……だね」
ジェイ……無力な俺を許して欲しい。
「なら、俺が聞いてやるよ。その人への思い、代わりにさ!」
これが、俺にできる精一杯。
「なるほどなぁ。思いの供養になるかもなぁ」
俺の提案を拒否するかもと思ったけど……胸をもう一度掴んで……ジェイは舞台に腰掛けた。
隣に座りながら後ろに目くばせすれば……トールがニシシっと微笑んで。マリアをジェイの前に座らせる。
「男ってよぉ……バカだろ?」
「否定はしない」
うんうんと、マリアも頷く。
「獣人族は強ぇ。虐げられた過去なんて俺様がぶっ壊してやる………なんてよ。ガキの頃からずっと、言い続けてきた。負け犬根性が染みついた……情けねぇ大人どもみてぇによぉ……俺様はならねぇ。そう……言い続けてきた」
「……うん」
「その度によぉ……大人はキレるか笑うか………。身の程を知れ、獣人が竜人に勝てるわけがねぇって……魔人族に敵うわけがねぇ……ってよぉ」
そうだったねぇと呟いて……マリアは懐かしそうに微笑んだ。
「ホラ吹きの見栄っぱりなぁんて……バカにされてよぉ。歳の同じくれぇのガキどもは、寄ってたかって俺様の心を砕こうとしてきやがった……。五体一、十体一でケンカ吹っ掛けられて……獣人に勝てねぇ獣人が竜人に勝てるかよって………いっつもボコられてたんだぜ」
「そっか」
「ダセェだろ?」
ジェイは多分、今、肯定を求めてる。
「うん。クソダセェなジェイ」
「だよな! でもな……そうなんだよなぁ。アイツだけはずっと、俺様の夢を笑わなかったんだよなぁ。真顔で聞いてくれたんだぜ? ケンカでボコられてよぉ……涙と鼻血まみれになった負け犬がよぉ……泣きながらバカげた夢を叫んでた時もよぉ……ずっと、ずっと……ずっとずっと………隣に居てくれてよぉ。絶対できるって……言い続けてくれたんだぜ?」
「……素敵な人じゃんか」
「だろ?」
マリアさんが両手で顔を隠した。
……なんか申し訳ない。
でもついニヤニヤと見ちゃうよね……。
だってこれ、惚気話だもん。マリアも、嬉し恥ずかし大好き状態なのか……赤面しながら、チラチラっとジェイを見てるし。
「思えば最初っから……出会った時からずっと……ずっとな……。アイツは、ただの一度も…俺様の夢を笑わなかったんだよなぁ。絶対できるって、いっつも笑っててよぉ……。村を出る時もよぉ……足手まといにならないように自分は残るからって………涙目でな……笑ってやがっ…たっ」
一瞬……、でも確かに。
ジェイは瞳に影を携えて……悔しそうに地面を睨みつけた。
「なぁ、リク……」
「……うん」
「なんでだ? 俺様はなんで……アイツの手を取らなかった? なんで強引に村から連れ出さなかった? ウダウダ言うなって……黙ってついて来いって言わなかった?」
「………」
「………そうだ……そうなんだよ。わかってんだよ………クソっ」
ジェイはきっと……戦ってきたんだ。
竜人族の里で修練してる時も。ダンジョンでも……世界樹攻防の時も……。
「結局はよぉ、俺様なんだよなぁ。他の誰でもねぇ……俺様なん、だ」
自分の……過去と。
「誰よりも俺様が……自分の言葉を……信じ切れなかったんだっ」
地面に打ち付けた拳が、痛くないわけがない。
でも……まるで自分を罰してるようで……。見ているオレの方が……痛々しい。
「だからアイツを連れていけなかった……。アイツがひっこめた手を引けなかった………。震えるアイツを抱きしめらんなかった。夢が叶わねぇんじゃねぇかって……最後の最後でビビっちまったからだっ」
ジェイの言葉を否定するように……マリアは首を振って。
そんなことないよって……何度も何度も繰り返しながら……ジェイの頬に手を伸ばした。
「なぁ……聞こえてっか?」
ジェイには見えてないのに……。
まるで目の前にいるのがわかってるかのように……。まっすぐに向けられた優しい笑顔が……マリアの涙をあふれさせた。
「結局、俺様は証明しちまったんだよなぁ? 他でもねぇ……俺様を信じてくれてたお前の前でよぉ。俺は……俺様は……自分のプライドを守りてぇだけの……弱ぇ男だって。口ばっかりの……負け犬だって……。お前の信用を裏切っちまって……悪かっ…たっ」
頬に手を伸ばしても……触れることができない。
ジェイの涙を拭うこともできない。
痛ましい懺悔を否定する言葉を、愛しい人に届けることもできない。
震えるか細い手で…その口を防ぐこともできない……。
「あの世で会ったらよぉ……俺様を罵ってくれよな? で、呆れながらあの……笑顔を………見せてやってくれっ」
コクコクと頷いたマリアは……笑顔を弾けさせた。
涙を拭うこともせず、ただずっと、ずっと……ジェイの顔を眺めてる。
瞬きもせずに……永遠に、この時を記憶しようとするかのように……。
「っとにジェイは……口ばっかりだなぁ」
泣き顔なんて記憶しないで。
「っせぇよ!」
涙を拭って……ニシシっと笑う。
今のこの……ジェイの精悍な笑顔を……心に刻んでほしい。
「……ホレてる女の前で見栄はって……夢が叶わないかもってビビって……ホレてる女にカッコ悪ぃって思われたくなくて…………カッコつけて一人で旅立っちゃうなんて……。ほんと、逆にカッコ悪ぃからな」
「わかってるっつーの!」
「でも……強くなった。だろ? かつての弱かった自分を認められるくらいに」
「……だな」
ギュッと……触れることのできない両手でジェイをハグして……。マリアは愛してると、耳元で囁いた。
「あ~、ヤべェ。やっぱすっっっげぇ好きだわ! なぁマリア……愛してるぜ。ずっとだ。これからもな」
天を見上げて、屈託ない笑顔を弾けさせた。
そのジェイのこめかみに微かに浮かんだ古傷を……マリアが愛おしそうに指先でなぞって………。照れくさそうに、でも嬉しそうに……傷跡にキスを落とした。
……そのキスに気づけるのは、神々だけ。
「ん?」
「どうした?」
「なんか今、ここに触れた気がしてよぉ」
わかるはずはない。
気づくはずもない。
でも今、確かにジェイは……マリアの愛を感じたんだ。
「……きっとそれ、マリアさんだよ」
「そっか。そうだな!」
ジェイの言葉は……マリアの心を震わせて。
潤んだ瞳を携えた……今日一番の笑顔が、ジェイに捧げられてる。
でも……ジェイは気づかない。
そしてマリアも、ジェイに触れることができない。
ハグする仕草も、触れてる振りなだけ……。
何度も、何度も何度も……透けてはジェイの身体を通り抜ける両腕を……俺は見つめることしかできない。
……だから、だと思う。
ガイア様も、ディーテ先生もトールさんも………あの、アマテラさんまでも。
マリアもろとも、ジェイにハグをした。
「なっ!?」
ターニャ様も負けじと抱き着いて……慌てふためくジェイを、みんなの笑顔が包み込む。
まさに今、マリアとジェイの恋は、偉大なる女神様たちから祝福を受けた。
あと、邪竜と……謎の美少年からの祝福も。
「さ、踏ん切りはついたぜぇ! キス祭り、再開すっか!」
いや、悪いけどさ。
多分、祭りは………中止だと思う。
「妾はもう気が済んだ」
「僕もだ!」
「フフフ? 私もよ?」
「ターニャも!」
「あ、ベルもですよ!」
ほらね?
この流れで……参加はないと思う。ジェイには見えてないけども、マリアとジェイのラブラブっぷりを目の当たりにしたわけだから。
そこに水を差す気にはなれないだろう。
「そもそもカイトが目覚めないのが悪い!」
「アマテラさん?」
今なにか、超論理を唱えました?
「ちょっと行ってくるよ!」
「え?」
あ、ダメだ。
謎の捨て台詞を残して……どこかに行ってしまわれた。
「妾も帰るとしよう。満足じゃ」
だからホイホイと空間を割るなよ邪竜……。
「フフフ?」
あ、先生もお帰りですね。
「ちょっくら行ってくるじゃん!」
トールさん? どちらへ?
「ベル、帰るよ!」
「はい!」
ターニャ様とお付きの少年も……。
「あれ?」
「ドンマイ……」
モテモテの大司教。信者のアイドル的存在。
そんな彼が嫁探しキス祭りの最後にボッチになった件……。兄さんがいたら、ザマーミロってニヤニヤ笑う展開だ……。
「誰も居なくなったね」
「……みてぇだな」
会場には、ジェイと俺だけ。
貴賓室に父さんたちがいるけど。
てか……あれ?
「これ、失敗した?」
真実の愛のキス。
大天使ウリエル様に恋愛を促すって目的。
そして兄さんの封印解除を果たすって目的も……達成できなかった?
「ジェイ、俺とキスしてみる?」
「してもいいがよぉ……多分、無意味だぜぇ?」
「……だよね」
………はぁ。
「なんか……悪かったなぁ?」
「いや、ジェイは悪くない」
マリアも、悪くないです。
「………遅くなった」
「え?」
今、影から出てきました?
「うぉっ!?」
ジェイが飛び退くのも、わかる。
なんの気配もなく、足元から登場したのだから。
美人が………。
「ツクヨミ様?」
今、外宇宙の神とダンジョンでバトルしてるんじゃ?
「……圧勝……」
「……流石です」
扇子で顔を隠してるけど、わかります。ドヤ顔してますよね今。
「それで、どうしてこちらへ?」
まさか……キス祭りに参加してくださるんですか?
「………発見………」
「発見?」
どういうこと?
今日もありがとうございました!




