表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/85

第49話:救い主

 


「「バカなの?」」

 これ、父さんと母さんの反応。兄さんに施されている封印の解除条件について報告したときの。

 つまり今日も今日とて、創造神に対するヘイト急上昇中なわけだ。

 でもきっと、ご本人は気にしてない。楽しければいい―――そんなスタンスの神らしいからなぁ。ホント、腹立つ……。兄さんの人生をなんだと思ってんのかって話だよ……。

「それにしても……キスをなんだと思ってるのかしらねぇ」

「うんうん、母さんの言う通りだ」

 リビングのソファーに腰掛ける父さんにはべったりくっついてる上位精霊の紅蓮と黄龍が、ポカンとした顔になった。二人とも……絵に描いたような「おまそれ言う?」モードだ。

「キスはそんなに乱発するもんじゃあない!」

「……そうよねぇ」

「うんうん」

 父さん……オレも紅蓮と黄龍に同意だよ。そこ自分で築いた地雷地帯なのに……自分で飛び込むの?

 あっ……ほら。母さんの眉間、ピクピクしてる……。

「ふふふっ……ふふふふ?」

「か、母さん?」

「……ホント、キスはだいじよねぇ?」

「う……うん?」

 父さんっ……超逃げてっ……。紅蓮と黄龍は避難済みだよ?

「カイトがあなたみたいになったら……どうしてくれるのかしらねぇ」

「……母さん」

 笑顔が怖いよ……。

「……お、俺は、母さんひと筋だぞ?」

「あら? 飲み屋をフラフラして、デレデレと気分よくご帰宅されてた日々のこと、あなたはもう忘れたのかしら?」

 父さん………。

「誰の口紅だかわからないキスマークまみれの服……川に飛び込んで洗い流そうとしてたおバカさんは、誰だったかしら?」

「いや、そんな昔のことを……」

「あら? 十年ちょっと前なんて、竜人族の私からすれば、ヒュムの先月位の感覚なのよ?」

「……すいません」

 父さん……。

 美しいよ。ビックリするくらい美しい………。なんて綺麗な土下座なんだ……。謝罪を積み重ねてきた歴史の重みを感じるよ。

 しかし……息子としては実に気まずいから止めてほしい。父親の威厳、急速失墜中だから……。そして父さんの背中に乗る紅蓮と黄龍……グッジョブ。おかげで母さん、ちょっとだけ笑ったし。

「リクは―――」

「―――はい!」

「……父さんの悪いところマネしちゃだめよ?」

「うん、よぉくわかってるよ……」

 俺、ナナちゃんひと筋で生きていくから。

 伴侶への土下座姿勢が美しくなるような生き方は、絶対にしないようにするから。上位精霊にフォローされるような生き方は選ばないようにするから……。

「で……そろそろ本題に入らんか? カイトのことが気になるのでなぁ」

 ……黄龍、グッジョブ!

「だよね! じゃあ、本題に入っていい?」

 父さん、微動だにしてないし。息を止めて美しい姿勢をキープしてるんだろうけど……。死んじゃうから、このままだと。

「えぇ、本題に入りましょう」

「そうだな!」

 …………おぉ。さすが、救星の勇者。

 動きが早く、無駄が少ない。立ち上がりがてら、さりげなく母さんにゴメンって告げて……頬にキス……。一瞬で、母さんのご機嫌が戻った。

 勉強になります……。

「俺はさ、イルルの案を採用したらどうかなぁって思うんだよ」

「ほぅ? それはどんな内容なんだ?」

 父さん、切り替え早いよね。その強メンタルは見習いたい。

「真実の愛って話は伏せるんだ。兄さんに、キスで生命力を分け与えるって参加者に説明にするってアイデアなんだけど……どう思う?」

 兄さんへのヘイトが防げる案なんじゃないかなぁっと。

「なるほど」

「……そうねぇ」

 国王の許可が得られなければ廃案……。

 どうかな?

「まず、大臣連中が騒ぐだろう。王族がそのようなはしたないことをなさいますな!……とかなんとか、ウルセーだろうな」

 確かに、煩そう。自分たちは何にもしないくせに……。

「次に、仮に何百人キスしてもカイトが目覚めないなんてことがあれば……民に不信感を抱かれるようにも思うわ」

 ……そっか。確かに、母さんの言う通りだ。

「それから最大の課題は―――」

「―――えぇ。恋人が何百人からキスを受けるなんて……」

「あぁ。カイトを助けるためだと頭で理解はできても……納得はできないんじゃねぇか?」

「……そっか」

 確かに。

 例えばナナちゃんが兄さんと同じ状態だとして、だ。ナナちゃんが助かるためとはいえ、たくさんの人からキスを受けることになったとしたら……俺は、ぜっったいに……心穏やかにはいられない。

 でも、助けるためにはそれを受け入れるしかない…………。

 唇をかみしめて、床や壁に怒りをぶつけて………悔し涙の分だけ心が乾いて……ひび割れて砕ける音を聞きながら……それでも目の前の光景を受け入れるしかない。

 改めて思う………。ホント、最悪だな創造神………。殴ってやりたいよ、全身全霊のワンパンで。

「イルルの案だと確かに、兄さんにヘイトはたまらないかもしれない………」

「あぁ。カイトを愛する人の心を犠牲にして、な」

「……それをカイトが望むとは思えないわね」

「うん。怒るだろうなぁ」

 兄さんは、根っからのヒーロー気質なんだよなぁ。尻尾の生えた戦闘民族の主人公と同じ。自分が傷つくのは平気。でも、自分のために誰かが傷つくのは許せない派なんだよ。

「はぁ~、これもダメかぁ」

 ………振り出しに戻った。

 てかこれ、攻略の糸口すら見つかる気がしないんだけど。

 兄さんの封印が解除される―――つまり利得が得られるようにするためには、誰かが必ず、損失を出さなきゃいけない。まず、‘私のこの愛は真実じゃない’って傷つくたくさんの人と、その人達からのヘイトを兄さんが獲得するパターン。イルル案でも、兄さんの恋人が傷ついて、兄さんも傷つくパターンになる。

「カイトが恋人からのキスで即目覚めれば……問題解決なんだけどなぁ」

 そうそう。

「でもそれ、期待薄なんだよねぇ。その愛が真実かどうかは、創造神の独断と偏見によって決まるわけだから」

「ホント……ぶん殴ってやりたいわねその神」

「さすが母さん……気が合うな」

「………俺も同感」

 全力でぶん殴りたい……。

「だいたいカイトは悪いことしてないでしょ! なんなのよ!」

「そうそう!」

「第一、あの子はいい子なのよ! この星を救おうとしたのよ! それなのに封印されたり、理不尽な解除条件を押し付けられたり………割に合わなすぎじゃないの……」

 母さん……。

「そんなの……あの子がっ………カイトがっ………かわいそうじゃないっの、」

 父さんが、グっと力を込めた。

 母さんの背中に回した腕に………。

 押し出されるように溢れた涙は、父さんの胸に吸い込まれていく………。母さんの冷たい悲しみの終着点は、いつだって父さんの温かい心臓(こころ)

 じゃあ、父さんの怒りは? 悲しみは?

 唇を噛んで怒りの爆発を胸中に留める父さんと視線が重なって―――……反射的に右拳で心臓を打った自分に、自分で驚く。

 深く頷いた父さんは、嬉しそうに笑ってくれて。

 つられて……俺も笑った。

 二度目の頷きで、頬のゆるみが引き締められて………ようやく気付いた。多分、俺………嬉しいんだってことに。

 だって今……父さんに認められたような気がする。

 怒りを分かち合って、父さんを支える力になれるくらいに成長したって……。隣に並べるところまで来たって……そう思えた。

「ふぅ~……ごめんね。取り乱しちゃったわ」

「いいんだよ。みんな母さんと同じ気持ちだ。なぁ?」

「うん!」

「当然じゃ。のぅ紅蓮よ?」

「だね」

「……みんな、大好き。ありがと!」

 上位精霊の紅蓮と黄龍、父さん、母さん、外出中のわが家のドラゴン―――ラグナ。みんな、気持ちは一緒だ。

 だってみんな兄さんを……大好きだから。

「それにしても………やっぱり納得いかないわねぇ」

「あぁ、全くな」

「おかしいでしょ!」

 城の壁に綺麗なまわし蹴りを決める王妃を、デレデレと見つめる国王………。ソファーに座ってる父さんの右肩に、ちょっとだけ蹴りが(かす)った気がするけど……。父さんが幸せそうならそれでいい……のか?

「あぁ~もぅ、あったま来るわね! 仮にも創造神ともあろうものが……世界を救った私たちの息子をここまで虐げていいわけ? いや、いやいやいやいやダメ! どう考えてもダメ! そんなの許されないっ!」

「俺も同感!」

 天界の神々―――守護神のみなさん、それに兄さんの従属神たち。そうそう、正神教の神々もきっと……。みんな一斉に、創造神に千年闘争を仕掛けてもおかしくはない。そう思えるレベルで……理不尽だ。

 なにせ神々もみんな、兄さんが大好きなんだから。

「それで……どうする?」

 紅蓮の尻尾を無意識にモッフモフしながら、父さんが目を閉じた。

「う~ん…………いっそのこと、真実の愛が必要だって、みんなに打ち明けるか?」

「でも……」

「どうせ、いつかはバレるだろ?」

「そうなんだけどさぁ……」

 恋人が傷つく結果になったら、兄さんも傷つく。それはやっぱ、避けれるなら避けたい……。

「なら仕方ないな。千年待つか! 俺も長生きしないとな」

「なに言ってるの。あなたは無理でしょ?」

「お? 母さんだって寿命が四百年ほど足りないだろ?」

「そこは気合で」

「だな!」

 クスクスっと零れた二人の微笑みは………この部屋を包んでた憂いを祓うようにあったかくて……俺まで気持ちが軽くなる。

 良かった。母さんにも、いつもの調子が戻ってきた。

 こういう時、実感する。母さんの立ち直りが早いのは、父さんのおかげなんだなぁって……。

 そう言えばガキの頃、爺ちゃんが一度だけ教えてくれたことがあった。「じいちゃんはとうさんがきらいなの?」って聞いた兄さんに、顔を難しく歪めながら。もちろん、「母さんをとられた」って不貞腐(ふてくさ)れながらだったけど。爺ちゃんも、父さんのことを、ほんのちょびっとだけ……認めてるらしい。その強さと、苦難を乗り越える意志の強さと……家族への愛情の深さを。それを聞いた兄さんは、嬉しそうに爺ちゃんに抱きついてさ……。「そうだよ! おとうさんはね、じいじとおんなぁ~じくらい、おかあさんのことが、だいだいだぁ~いすきだよ!」って嬉しそうに話してさ―――……それを聞いた爺ちゃんは、すっごく幸せそうに笑ったんだ。

 ちょびっと酒に弱くて女性にヨワヨワなところが残念だけど。断言できるね。父さんは、今でも母さんが大好きだって。その証拠は……他ならぬ母さん。幸せそうに、いつだって微笑んでる。父さんの隣で、ね。

「失礼します」

 ドシドシと、がに股で重たい体を揺らしたスキンヘッドの大男―――執事長ドムル。ヒュム族随一のぽっちゃり系武闘家は、身軽でかなり強い……。

「どうした? 急用か?」

「えぇ。正神教の大司教―――ジェイ様がみなさまとの謁見を願い出ておりますれば……いかが取り計らいましょう?」

「すぐ通せ。そして人払いを。周囲に誰も近づけるな」

「しかし我が王よ……その……」

「どうした?」

「ジェイ様のご様子が………」

「なんだ? はっきり言え」

「その………なんと申しましょうか。いつものオラオラ系とは違っておりまして……」

「すぐお通しして!」

「しかし陸人様―――」

「―――いいから!」

「……だそうだ。ドムル、息子(リク)の指示通りに」

「………ではそのように」

 軽やかにムーンウォークを決めながら去っていくドムルが、ジロリと俺を睨む。

 執事長はどうやら、今日も通常運転だ。ドムルは心底、俺が嫌いらしい。竜人族の俺が今、ヒュム族の第一皇太子の地位あることが、とことん気に入らないんだろうけど。どうせ、正統性に欠けるとか思ってるんだろうな。

 ま、気にしてらんないけど。バカバカしくて。

 それに、俺も同意見だし。ヒュム族の第一皇太子の地位にあるべきは……兄さんだから。




 +++ +++ +++



「謁見の許可に感謝を」

「―――っな!?」

「おぃ……おぃおぃおぃおぃおぃ! 陸人っ!」

「大丈夫だから。紅蓮……黄龍も、落ち着いて。この御方が俺たちに危害を加えることはないよ」

「本当、だろうな?」

「うん」

「あぁ、約束しよう」

 ニコリと微笑んだ笑顔は、いつものジェイと全く雰囲気が違う。

 その変化と溢れんばかりのオーラに戸惑ってるのは、精霊たちだけじゃない。

「父さんと母さんは……会ったことなかったよね」

「……えぇ」

「……だな。さすがにジェイじゃねぇってことは……わかる」

 その通り。

「紹介するよ。こちら―――大天使ウリエル様。ジェイの身体に眠る偉大なる正神教の神―――地の元素を統べる古の存在(おかた)

「初めまして。大和(やまと)殿、クルル殿。お目にかかれて光栄です」

「は、初めまして」

「こちらこそ光栄です。偉大なる大天使ウリエル様……」

「ウリエル―――……どうかそうお呼びください」

「「無理です」」

 ……だよね。

 俺も無理だよ。神だけど。

「ウリエル様。それはハードルが高いので……ご容赦ください」

「そうか。まぁ、おいおい慣れてもらうしかないか」

「「無理です」」

 だよね。神をすぐ呼び捨てにできる兄さんとは違うんだよ、兄さんとは……。

「それにしても……お目覚めになられたのは久しぶりでは?」

「あぁ。カイトに施された封印の影響を受けているようだ。なかなか、思うように目覚められなくてね」

「……なるほど」

「あのぉ」

 恐る恐る声をかけた母さん。

「なんでしょう?」

 ニコリと微笑むウリエル様。

「お茶でも召し上がられますか?」

「では、お言葉に甘えて」

 にぱぁっと笑顔を弾けさせたウリエル様に、母さん赤面……。

 それを見た父さん、プチショック状態……。

 このままじゃ、夫婦喧嘩に発展しちゃうかもしれない……。な、なんとかしないと……。

「か、母さん!」

「ん~? なにかしらぁ?」

 心なしか、声が弾んで聞こえるよ母さん……。

 それに……視線が完全に大天使をロックオン。あっ……父さん、とうとう唸りだした。グヌヌヌヌって……。

「母さん! その、あの、あっ、あの、あ……アレだ! ウリエル様は焼肉丼が大好きなんだよ?」

「まぁ! そうでしたか! では、すぐに用意しましょう!」

「おぉ……! 組み合わせの祝福を授かりし焼肉丼……楽しみです」

「ふふふ。では私は、いったん失礼しますわ」

 ニコヤカに、足取り軽く部屋を出た王妃はきっと、自分で調理する気だろう……。

 まぁ、ドンマイだよ父さん。

「さぁ、こちらにお掛けください」

「どうも」

 大きめのソファーと低めのテーブル。どちらもイタリア製らしい。

 もちろん、ロココさんが配置してくれた超高級品で……座る度に緊張しちゃう。汚したらどうしよって、つい思っちゃうんだよなぁ。

 でも、わが家の精霊たちはそんなこと気にするわけもなく。紅蓮はソファーにダイブして丸くなり、黄龍はソファーの背もたれの上でトグロを巻いておられる。

「さて……本題だ。リクは知ってるね?」

「はい」

「知ってるって? なんの話だ?」

「我とカイトとは、魂の絆のようなもので結ばれております」

「魂の絆?」

 父さんに続いて、紅蓮と黄龍が、ピクリと反応する。

「えぇ。カイトの身に起こることはわが身に起こり、わが身に起こることはカイトに起こる。とある神がカイトに施した神権の効果です」

 その名も、禁断型神権―――神のサイコロ。神兄さんが転生の際、大天使ウリエル様と絆を結んだ神権。とある神ってだからつまり、神兄さんのことなわけだ。

「では、ウリエル様も封印されていたということでしょうか?」

「いえ……。此度の封印は、カイトの身体と魂に授けられし創造神の贈呈品(ギフト)。我にはその恩恵(パック)は与えられていなかったようです」

 ………なるほど。

 だからジェイの身体は、封印されずに済んでたってことか。

「しかしカイトの精神に起きた変化―――意識の混濁は、私にも生じておりますが……常に意識がないわけではない。このように、ね」

「つまり……」

「あぁ。カイトも時折、意識の混濁が解けている可能性はある。ひょっとしたら、この会話も聞こえているかもね」

「兄さん……」

 そのポジション、美女お姫様の定位置だよ?

「ウリエル様、それはつまり―――……」

「……―――えぇ。精神的な変化については、私に起きたことが、カイトにも同様に生じた―――そう判定される可能性がある」

「マジです?」

 ニコリと微笑んだウリエル様には、どうやら、確信があるらしい。

「ジェイに真実の愛を探させるがよかろう。見つかれば―――」

「―――兄さんも真実の愛を見つけたと判定されて―――」

「―――封印が解ける可能性はある」

「そっか!」

「あぁ。この理は禁断型神権―――つまり創造神の授けし力によるもの。同じく創造神が授けし封印を解除できる可能性は高いと、私は思う」

 確かに……そうかも。

「でも、その判定は創造神がするんでしょう?」

「……母さん」

 ホッカホカの焼肉丼……超美味そうなんだけど。

 あ、焼肉だけじゃない……。ぶ厚めのステーキが山盛り……。しかも、醤油と大根おろしゾーン、ワサビと岩塩ゾーンとが大葉で区切られてて……最高すぎる。本気出しすぎだよ母さん……。あとで俺と父さんにも作ってくれないかなぁ……。

「お口に合うと良いのですが」

「いただきます!」

 おぉ……体育会系DKのような食いっぷり……。

 丼をかっ喰らう豪快な大天使様のお姿は―――……地上初目撃だ間違いない。

「はぁ~、美味しかったです!」

「光栄です。喜んでいただけてうれしいわぁ」

「母さん……ちょっと離れなさい。大天使様に失礼だろ?」

 確かに。ちょっと近いと思うよ母さん……。それに、その羽、触っちゃダメなやつだから。引っこ抜こうとしないで! 記念にもらおうとしないで!

「あら? やきもち?」

「そうだよ! だから離れなさいっ」

 ……まったく。大天使様の前で夫婦喧嘩って……恥ずかしいから止めてほしい。

「……申し訳ありません。父と母は放っておいて、話を先に進めましょう」

「いいのかい?」

「えぇ」

 多分、イチャイチャしたいだけだから。そのうち勝手に、こっちの話題に合流すると思うので。

「……それで真実の愛の判定だが」

「えぇ。創造神がするんだとか。変な機械を使って」

「おそらく……意識が混濁しているカイトの代わりに創造神が判定を行うという意味だろう。しかし、ジェイには意識がある。ジェイが真実の愛と感じるかどうかに、創造神が介入できない。つまりジェイが本当にそう感じるかどうかによって……それが真実の愛であるかどうかが判定されるものと考えられる」

 口元をハンカチで拭う大天使も、地上初目撃だろう……。

 それにしてもいったい、いつの間にテーブルの上に桜餅が……。あ、そっか。ロココさんか。

「ってことは、あとの問題はジェイ。ジェイが納得して協力してくれるかどうか……」

「カイトのためだ。ジェイも協力するだろう」

「ウリエル様がおっしゃるなら、そうなんでしょう」

 なにせ、ほぼほぼ同一人物なわけだから。

「あとの問題は……正神教の幹部たち、ですね」

 ジェイ、全裸で大空を飛行して温泉にダイブする破天荒な男だけども。

 あれでいて一応、大司教だし。

 正神教のアイドルだし。

 オレが大好きだったアイドルグループのメンバーが、真実の愛を探すキスイベントを開くと発表したら………荒れるな。賛否両論渦巻いて……大荒れの天気になる。

 ジェイの人気が一気にガタ落ちする可能性は……大きい。

 となると、そんなイベントを事務所(きょうかい)が黙って開かせてくれるわけがない。猛反発されるだろう。「パンがなければお菓子をお食べ?」なぁんて言われた市民のように……。

 さてさて、どうしたもんかなぁ。

「そう案ずるなリク」

「なにかお考えでも?」

「あぁ、私に任せておけ!」

「「―――っ!?」」

 ドンっと胸を叩いて……ニコリと微笑んだ大天使様。

 そこを中心に、赤面の輪が広がっていく。

 母さんと俺、そして紅蓮と黄龍も、一瞬で魅了されちゃったわけだ。

 その頼もしい笑顔―――超絶進化爆イケモードの陰で、グヌヌヌヌ状態になってる父さんには……気が付いてないことにしよっと!





今日もありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ