第46話:封印
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「お前も、死にかけてるんだろ?」
「……」
「腹いせに、最後の力を振り絞ってこの星を攻撃した―――違うか?」
「………」
「これ以上この星を攻撃しないなら、お前を若返らせてやる。どうだ? 悪くねぇ話だろ?」
「カイトとやら……妾を信じると申すか?」
「……あぁ」
「ほぅ? 妾は若返ってすぐお前を殺し―――星を滅ぼすやもしれぬぞ?」
「ないね」
「なぜじゃ? なぜ、そう断言できる?」
「だってさ、レーテお前………寂しかったんだろ?」
「………バカなことを」
「お前はバカじゃないだろ?」
「あたりまえじゃ!」
「なら、もといた宇宙を滅ぼし……この宇宙に、そしてこの星に流れ着いてまで、同じことを繰り返すわけねぇよな?」
「…………」
「……いいから百年、オレに寄越せよ」
「百年?」
「あぁ。滅ぼすにしても、その百年でこの星を―――文化を知って見極めてからでもいいだろ? それに、お前に損はないだろ? 百年くらい、欠伸のひと時に等しい長命なお前にとってはな」
「…………百年経って、面白くなければ?」
「その時は好きにしろ。ただ、百年後はわからねぇぞ?」
「……なぜ?」
「英雄ラグナを超える―――お前を倒せる猛者が生まれてるかもよ?」
「はっ! たわごとをぬかすでないわ!」
「いや、どうだろうな?」
「………」
「オレの知りあいによ、そんな可能性を秘めたヤツがゴロゴロいるぜ?」
「………ほぅ」
「どうだ? 面白そうだろ?」
「………あぁ、悪くはない」
「じゃあ決まりな?」
「………よかろう。妾を若返らせよ。その対価に、平穏な百年をくれてやろうぞ」
「じゃ、取引成立ってことで!」
「いや、まだじゃ」
「なんだよ?」
「我を若返らると謀って……老化させる可能性もあろう?」
「それは……オレを信じてもらうしかねぇ」
「提案じゃ。妾の呪いを汝の魂に刻む。妾も、己の魂に呪いを刻もう。どちらかが約束をたがえたなら、等しく我らに死をもたらす呪いをな」
「つまり……オレが破ったらオレが死ぬし、お前が破ったらお前が死ぬってことか?」
「うむ」
「いいぜ。好きにしろ」
「潔し。お主、なかなか悪くない。矮小な童にしては……じゃがのぉ」
「だろ? でもオレを呪うのは難しいかもよ?」
「ほぅ?」
「なにせオレ、呪いが効かない身体と魂らしいぜ?」
「………ククククク……案ずるな。妾はレーテ。かつては神の座にあったもの」
「そっか、自信があるんなら安心だ。しっかりと呪ってくれよ?」
「任せるがよい」
「………まって……カイト」
「クロノ? どうした?」
「……ごめんよ………僕はここまでみたいだ」
「え?」
「………どうやらその精霊は、力を使いすぎたようじゃのぉ」
「………カイト、ごめ、ん」
「―――っ⁉ おぃクロノ! しっかり! 頼むから、目を開けて―――」
「―――喚くでない! 見苦しいのぉ」
「レーテ……お前、クロノを救う方法を知ってるな?」
「なぜそう思うのじゃ?」
「お前にとっても、クロノの力は必要だろ? なのに、そんなに落ち着いていやがるってことは……」
「……察しの良い童よのぉ。よかろぅ……教えてやろぅ」
「助かる! で、どうすればい?」
「なぁに……汝の時間を食わせてやれ」
「え?」
「時の精霊は、時間を喰らうのじゃ」
「………どうりで」
「………カイト、ダ、メだよ」
「ごめんな。オレ、クロノは忘れっぽいだけだと思ってた。だってほら、メモを見たりしてたしさぁ」
「………ダ、メだ、」
「でもきっと、記憶を失う―――……自分の時間を喰らってたんだよな。オレのために……時を操る力を使うために………。ありがとう」
「カ、イ……ダメ、、」
「レーテ! どうしたらいいんだ?」
「貴様のそれは―――神体。模造品だが……神威をまとっておる」
「らしいな」
「神体に蓄積された経験―――時間を譲渡すればよい。そう命じて、汝の血をクロノの額にでも塗れば済む。接続が構築されて……汝の力が譲渡される」
「……ダメ、だ、、」
「いいんだクロノ。ほら! オレの時間、たっぷり食べて」
「………ダ、メ」
「―――っ!? なんだこれ………身体が熱ぃ」
「……カイトっ」
「ちょ、なんか変だオレ………オレ、オレの体、がっ……」
「―――カイトとやら―――お主……」
「模造神体のコントロール権、簒奪……成功」
「カイ、ト?」
「いや……その者は既にカイトではない。気配が異なるのぉ」
「………カイト本人による神体及び魂への不正アクセスを確認。『創造神のギフト』が自動発動―――カイトを厳封空間に隔離―――本体にも封印を展開……」
「「!?」」
「百八層の次元封印―――周囲の全てを隔離―――霊子、有子、原子、緑子の全てを遮断。存在値ゼロへ移行―――完了」
「なっ、ふざけるなっ。妾を離せっ!」
「隔離完了まで、残り五秒」
「くそぉぉぉぉぉ! 創造神めぇぇぇぇ―――っ」
「―――隔離完了。解除まで残り―――……」
================<再生終了>
映像を映してたダイヤが曇り始め………光を失う。
記録はここまで、か。
「……そっか、戻してたんだね」
時の帝位精霊クロノの力を借りて。
兄さんは、時を戻してたんだ。あの日、あの時に……。
「ん? どういうことだ?」
「時、だと思う。クロノの力が尽きかけてたって言ってたし。だよね陸人?」
「そうそう。つまり、クロノが時を操作したってことだと思う」
「なるほどな」
「うん。時の操作―――あのタイミングなら、止めただけじゃすまないんじゃない?」
「ルルルに同意。多分、この星の時を数分戻したんだ」
「それって、アイギスの盾の時かよぉ?」
「多分ね」
俺らを守ってくれたあの時。
記憶には残ってないけど、俺たちはレーテの不意打ちを受けて、死にかけてたに違いない。
………いや、多分、俺たちだけじゃない。数人の時を戻すくらいで、あの帝位精霊が力尽きることはないだろうし。
だからきっと、星全体の時を戻したんだ。つまり、星全体が、壊滅的なダメージを受けてた可能性がある。
「その後、兄さんは、深海に居たレーテに取引を持ちかけたわけだ」
「………そうじゃ」
……なるほど。
その時にも、星の時を止めてた可能性がある。レーテの攻撃で、星の破壊が進まないように……。
ホント、ズルいよ兄さん。
生まれ変わっても、どこにいても、ヒーローなんだから。一人で巨悪に……レーテに対峙してさ。で、交渉してさ………星の破滅を防いでさ。
RPGなら勇者もんだよ?
勇者だよ勇者。わかってるの? 勇者って、世界中から祝福されて、お姫様とかと結婚できちゃって、子孫が末代まで栄えるような伝説上の人物だよ? そんな勇者レベルの偉業だよ。
なのに、さ……。その偉業をさ。人々だけじゃなくて、神様たちにすら知られてなかったなんてさ……。人知れず、神知れず、星の未来を守ってたなんてさ……。
バカなの? ホント、カッコ良つけすぎだって。
…………もっと、自分のことを大事にしてよ。
そんで、頼むからさぁ。
もっと、もっともっと、俺を頼ってよ。兄弟だろ?
兄さんとこの世界を楽しめないなんてさ、俺が転生した意味半減じゃんか。や、半減どころじゃないよ。九割減だよ。
「陸人?」
「あ、ゴメン。考え事してた」
絶対に、文句言ってやる。絶対に、絶対にだ。
………そのためにも、封印を解かなきゃ。
「楊妃」
「なんじゃ?」
「兄さんの封印は―――創造神のギフトによる防御プログラムが自動発動したもの」
「そうじゃ」
「封印は二種類の同時展開型。周囲の空間ごと兄さんをこの世界から完全に断絶する封印……」
「うむ」
「そして兄さんの本体―――体を直接封印するもの。それがこの、紫水晶だな?」
「正解じゃ」
「そして楊妃―――お前はレーテだな?」
「……………ほぅ?」
美少女がニヤリと浮かべた残忍な笑顔は、視界にいる生者を瞬殺するような冷たさを携えてる。
「いや、正確には違うのかもしれないけど……」
「えぇ。もし楊妃さんがレーテなら、カイトの封印を解ける者を探す必要はないんとちがいますか?」
「えぇ、カグヤさんと同意見です」
レーテが楊妃なら、こうして自由の身になってるってことだから。兄さんの封印を解ける者を探す必要はない。
「つまりコイツは、レーテの従者ってことか?」
「ハルルに半分同意」
「半分?」
「うん。楊妃はレーテの分身体って可能性もある」
「「「………なるほど」」」
「で、正体は? 話してくれるのか?」
「………バレたのなら隠す必要もない。正解じゃ。妾はレーテの分身体ぞ?」
「つまり本体はまだ、深海に眠っていると?」
「それは秘密じゃのぉ」
クソ。口を滑らせてはくれないか……。
「でも、兄さんとクロノの力を借りて、若返る必要はあるわけだな?」
「さきほど見た通りじゃ。カイトと妾は、その契約に合意しておる」
「確認したい。契約合意後、クロノが力つきて………兄さんが時を食べさせた」
「うむ」
「それにより『創造神のギフト』が自動発動し、お前はそれに巻き込まれたと」
「うむ。隔離空間に幽閉されたわけじゃ」
つまり、兄さんとレーテは同じ空間に居たわけだ。
けど、兄さんの体の封印があって。レーテの攻撃から守られてきたと。
「では、なぜ俺らとのバトルを望む?」
「カイトの申した未来とやらが、気になってのぉ」
「未来? 英雄ラグナを超える武人が現れるってアレのことか?」
「うむ。あのラグナを超える武人など、この宇宙におるはずもない。しかしのぉ、興はそそられる。そんな未来が本当にやって来るのなら……」
「「「―――っ」」」
美少女の笑みひとつ。
それでこの空間の重力が………ヤバい。
身体が重い……。
「おっと、すまんすまん。つい、血が滾ってのぉ」
「………つまり、俺らと戦って……この星の民が強くなる可能性を占うってことだな?」
「そうじゃ」
「もし、可能性を感じなければ?」
「百年、待つ必要もあるまい? 妾とともに滅ぶのも一興ぞ?」
「わかった」
「では、取引成立じゃな。カイトを汝らに渡そう。封印を解く術を探るがよい」
ん?
なんか変じゃないか?
「ところで楊妃さんは、なんでカイトの封印を解きたいんです?」
そこだ。
そこがまだ、不明だった。
若返るだけなら、クロノが居ればいい……。
「時の帝位精霊は、どうやら静止した時空にて浅い眠りについておるようじゃ。そやつが呼びかけるまで、姿を現さんじゃろうて」
「……そっか」
ありがと、クロノ。起きたらたっぷり、礼を言わせてね。
「さてと………お主らと戯れるのも、そろそろ飽いたのぉ」
「じゃあ、お暇しよう。でもその前に確認したい。戦いの場所は? 時期は?」
「確か希望とかいったか? この星最大の都市で、武術大会が開かれるのじゃろ?」
「………わかった。お前のエントリーは、俺の方で進めておこう」
「世話になるのぉ。ではまた会おうぞ」
「―――っ!?」
揺れた着物が紫の濃霧へと変質し……俺たちの視界を奪っていく。
「……クソっ、追い出されたか」
もとの部屋に戻された。
てかハルル、その拳で殴り掛かる気だったろ? 相手の実力を測るために……。
「まったく。楊妃が機嫌損ねたらどうすんだよ」
「ねぇよ。アレは、根っからの戦闘狂だぜ?」
「ハルルに同意するぜぇ……ククク」
え? ジェイも殴りかかろうとしてたわけ?
「はぁ、ったく。油断も隙もないんだから」
この脳筋コンビめ。
「「痛っ」」
取りあえずチョップで許してやろう。軽めの、ね。
「じゃ、帰ろ―――」
あ、そうだ。
その前に……確認しなきゃ。
『………ロココさん、聞こえる?』
『……はい。アポロン様の召集に応じて、既に守護神のみなさま、土地神のみなさま、ガイア様に正神教の神々が、封印解除に関する会議を始めておられます』
『ありがと。とっても心強いと、みなさんにお礼を伝えてください』
『承知しました。どうか、陸人様もお気をつけて』
『うん』
これで、兄さんは大丈夫だろう。なにせ、偉大なる天界の神々が総出で動いておられるのだから。
それにこれ、創造神からの封印―――自己防御システムらしいから。少なくとも、ギフトを送った本人なら、その解除方法を知ってるはずだ。なんとなく、嫌な予感はするけども……。
「リク……どうした? 信託でも授かったか?」
「うん。兄さんの封印解除に向けて神々も動いてるって」
「それは心強ぇなぁ」
「うん、俺もジェイに同意。だからカグヤさん、大丈夫ですよ」
「……………ありがとうね、みんな」
カグヤさんに、四枚のハンカチが差し出されて。自然とみんな、笑みがこぼれた。
「それにしても、さすがだよねぇ」
「ルルル、どういうこと?」
「や、カイトだよカイト。本当に、神々にも愛されてるんだねぇ」
「ルルルに同意するぜぇ。どうせまた、うんまい飯でも食わせて、神々を虜にしたんだろうよぉ」
うん。鋭すぎだよ、ジェイ。でもまさか、神々が桜餅の虜だとは思わないよね………。
「……それはねぇだろ?」
「でもよぉハルル、カイトの飯はうんめぇからなぁ」
「だよねぇ。僕……あ、俺も、カイトの美味しいご飯が食べたいなぁ」
まったく。
兄さん。封印、解けない方がいいかもね。
俺は文句言う気まんまんだし。ルルルとジェイは、飯つくれ攻撃するだろうし。ハルルはきっと、黙って殴るだろうし。カグヤさんの涙を、止めなきゃいけなくなるだろうし。
それに、イルルもいる。
あの大親友はきっと……ちょっとやんちゃな笑顔を浮かべてさ。
きっと、こう言うんだ―――「おっせえぞバカ」ってね。
もちろんいっぱい、涙を涙を携えながら………。
今日もありがとうございました!
更新が遅れて申し訳ありません。。
ちょっとひくほど、働いてました……。みなさんもご自愛ください!




