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第38話:歓待

 


 雷に打たれる?

 いや、違ったね。


 息が止まるような?

 いや、これも違うかも。まぁ、近いけど。


 あとは……キュン?

 まぁ、これはアリだけどなぁ。


 オレの答えは………こうだ。

 釘づけになる。

 目も、心も、体も全部、オレの細胞と意識の全てが静止したんだ。

 もちろん、オレが意識して止めたわけじゃない。

 きっと運命の神様とやらが居て、オレの心と体を静止させたんだと思う。「おいカイト! そこから動くな! その人をお前の人生から見逃すな!」―――そう言葉で伝える代わりにね。


 そう。

 恋に落ちた瞬間。

 オレは釘づけになったんだ。

 それは、ナナちゃんに対する好意とは別だってわかった。

 陸人への恋心に溢れた優しいナナちゃんに向けてたオレの感情は、かわいいに対するあこがれと、恋っていいなぁって憧れが混ざり合ったものだったらしい。

 や、もちろん今でもナナちゃん大好きだけど。

 でも、そうなんだよ。

 大好きって表現がしっくりくる。

 自分の全てをかけて愛したい―――そんな愛情表現がしっくりくる相手と、オレは初めて出会った。

 多分オレは、初めて恋に落ちたんだ。


 恋に落ちたその瞬間。

 オレが釘付けになったのは―――。

「兄さん? あ、やっぱりここだったか」

「………陸人」

「はいはいわかったから。もういいって」

「陸人っ」

「大丈夫だって」

「本当か?」

「もう何回も言ったろ? どこもおかしくないよ! むしろ以前より調子いいくらい」

「………そっか」

「だからいいかげん、俺を見て泣くのは止めなよ」

「…………わがっ、た」

 けど、陸人を救えなかったのは…………オレの罪。

 だからこの胸の痛みはずっと、大事にしなきゃいけないんだ。

「それにさぁ、兄さんはオレを救ってくれたんだよ」

「救った?」

 いや、救えてないぞ?

「まずこの星に転生できたことでしょ? あと今回の件もだし……あぁ、転生前にも何度か救ってもらってるなぁ」

「………?」

「ま、そのうちわかるよ。だから今は、大事なことだけ覚えておいて」

「大事なこと?」

「うん。今、俺が生きていられるのは全部、兄さんのおかげなんだって。兄さんの弟で良かった。今も、昔も。そしてこれからもずっとね」

「リクぅ~」

 ヤだイケメン。

 さすが……神々にも愛された男。

「オレもっ、オレも陸人がっ、弟で……よがっだっ!」

「はいはいもぉ~、わかったから! 泣かない! 飛びつかない! 詫びない! はい、リピートアフタミー!」

「泣がないっ! 飛びつがないっ! 詫びないっ!」

「そうそう! ってことで涙を拭いて。ハイ・エルフの皆さんが、今日も、感謝を伝える宴を開いてくれるんだってさ」

「………わがっっだ!」

「…………泣かない」

「泣かっ…………ないっ!」

「そうそうその調子! でさぁ、ここの食事なんだけどさぁ。そろそろ味気ないんだよねぇ」

「……確かに」

 色んな意味で味気ない。

 食事会を開いてもらえるだけでもありがたいんだけど。

 四日目ともなると、ちょっと色んな意味でお腹いっぱい。

 ハイ・エルフの隠れ里―――【学究の庭】。

 通称ガーデンと呼ばれるここは、カグヤさんたちが暮らす里。

 質素で無駄のない家屋と畑が点在する、この標高千メートルほどの里の食文化は……確かに乏しい。

 食材も乏しいし、調味料も乏しい。

 そもそもエルフ族は食事を栄養摂取と考える意識もあるとのこと。

 ま、種族間の交流が活発になってからは、だいぶその意識も変わってきているらしいんだけど。

 この隠れ里では、その意識変革も進んでいないのかも。

 それに、だ。

 味気ないのは食事だけじゃない。

 感謝の宴―――その内容も味気ない。

 ほぼ、会話無し。

 それに、御礼が……ちょっと異文化すぎる。

 普通、御礼と言ったら物とか食事とかを期待するじゃん?

 でも、さっすがハイ・エルフの里。

 御礼と称してオレらに与えられるのは、研究知見。

 なんでも、口承で学問を発展させてきたハイ・エルフたちにとっては、これが最大級の賛辞なんだとか。自らの知見を贈るに見合うくらいの才覚を持つ他者に対する、ね。

 たしかにヘンゼルさんは、超嬉しそうだったけどね。冷静な表情を浮かべながらも、なんども深く頷きながらその知見を暗記してたし。えっと……確か、「この星の再現性の低い非科学的現象に関するメカニズムの考察」って話題には、静かに、それでも熱心に、里のみなさんとの議論を楽しんでた。

 あと、陸人も。

 なにがヒットしたのか、弟は議論に参加しながら力説してたし。「非科学的現象における神とその権能に関する洞察は興味深い!」ってね。

「なるほどよくわからん」―――そう言いながオレとハルイルコンビは静かにお茶を飲み、モネとミルルがルルルにべったりイチャイチャするのを眺めるわけで。キラキラ笑顔で力説する陸人を嬉しそうに見つめるナナちゃんを眺めるわけで。

「え? ここなんて地獄?」―――そんな問いが毎回頭に浮かぶ宴なのだ。

 ちなみにわが家のドラゴンは、優雅に、日向ぼっこという名の酔い覚ましに、日々、興じておられる。一体どこで知り合ったのか、野生のドラゴンと一緒に、だ。

 野生のドラゴンさんも、最初は三匹くらいだったのに。「あれ? ここハイ・エルフの隠れ里? 竜の住処の間違いじゃね?」って驚かれそうな勢いで、野生のドラゴンさんが増えてる気がする。

 いったい、ラグナはドラゴンに何をしたのか。

 ま、わが家のドラゴンは、やはりモテるってことかも。

 あ、そうそう。宴を断ってドラゴンと戯れ全力バトルをしてるジェイのことは、みんな、見て見ぬ振りをしてる。

「……ってことで兄さん、今日は俺らのキャンピングカーにお招きして、俺らから恩返しをするって伝えようと思うんだけど。どうかな?」

「「「そうしようそれがいいそうするべきだ!」」」

 はっ⁉

 ハルイル、いつの間に隣に?

 まぁどうせ、同室のルルルがイチャイチャしてるのに耐えかねたんだろうけど……。

「じゃあ、兄さんとハルイルも同意ってことで。里長に伝えてくるね」

「頼んだ!」

 頼りになる弟だよ、まったく。

 きっと陸人は、ハイ・エルフのもてなしに不満はないと思う。なんだかんだで、毎回、議論に加わるの楽しいみたいだし。

 でも、そろそろオレとハルイルが限界だろうって思って、代案を用意してくれたんだろうな。

「さすが陸人」

「ハルルに同意。マジで気遣いの神」

「イルルに同意。俺らもあんな弟ほしいよな」

「ハルルに同意」

「なに言ってんだよ? お前らにはルルルがいるだろ?」

「…………お前なら、わかるだろ?」

「なにがだよ」

「俺、彼女ができたよ…………なんてニコヤカに二人の女性と両肩を組んで嬉しそうに報告してきたモテモテの弟を持った兄の複雑な気持ちが、だよ」

「ハルルに同意。兄として……圧倒的な敗北感パネェ」

「イルルに同意。マジパネェ」

 わかりみ!

 そこはたしかにわかりみだけど……。

 オレとお前らは違うじゃん?

「ったくなに言ってんだよ。ハルルもイルルもモテるだろ?」

 オレとちがって。

 非常に残念なことに、ハルイルはオレと違ってモテるんだから。

 べっつに、弟に恋人ができてもよくね?

「まぁ、何人かとデートはしたことあるけどな。でも、誰かとちゃんと付き合ったことはねぇ」

「なにせハルルはデート中に振られる男だからな」

「うっせ」

 デート中に振られるって、さすがにハルルかわいそうじゃね?

「それってひどくね? なにがあったんだ?」

「よくぞ聞いたカイト!」

「イルル、バラすなって!」

「いいじゃんカイトだし!」

「そうだぞハルル! オレも兄弟みたいなもんだろ?」

「…………わかったよ」

 ハルルには弟アタックが効果的なのである。

 長男気質ってとこかな。

 ま、オレも長男だから、気持ちはわかる。

「ハルルはバカだから、デート中に気になる相手見つけたら、フラフラとソイツんとこに寄ってくのさ。んで、こう言うわけ―――なぁ時間ない? 俺とデートしようぜ?……ってさ」

「うわぁ」

「な? 引くだろ? 今、デートしてる相手の目の前で他のヤツを誘うか? いや、普通はしないね!」

「……イルルに同意。それはない。マジでチャラい。てかサイテーだなハルル」

「運命の相手かもしんねぇだろ?」

「てか何人いるんだよ、その運命の相手候補」

「知るかっ」

「何人もって……どういうこと?」

「そのまんまの意味。何人にも声かけるんだよ。つまりデートしながら他のデート候補を見つけては次々と声をかけて歩く………十人くらいはざら!」

「………マジでひでぇ」

 さすが三秒で恋をして歩く男。

 てかそりゃ振られるだろ。

 どう考えても。

「うっせーよ。嫁探しに意欲的だって言ってくれ」

「や、物は言いよう過ぎるだろそれ」

「カイトに同意」

 まったく。

 イケメンだから許されてるんだろうけど。

 ヒュム族的に考えたらアウト物件だぞコイツ。

 てか兄がこの残念さなら、同じタイプのイケメン―――兄弟だから割と似ている(イルル)の方に人気が集まりそうだけど。

「そういえば、イルルは?」

 あんまり浮ついた話がないんだよなぁ。

 謎のイケメンって感じ。

「コイツはモテるくせに、必ず断りやがる。百人に断りましたって伝説があるくらいだ」

「ほぅ?」

 ひゃ、ひゃくにんっ。

 いったい、いつの間に…………コイツどこでこの野郎バカ野郎っ。

「な、なぁイルルよ。そ、それってさ、な、な、ななななんて言って断るんだ?」

 こ、後学のためだ。

 これからオレがモテモテになって、お付き合いをお断りする毎日が始まっちゃう場合に備えて、ぜひとも教えて頂きたい。

 クールでカッコいいイルル君と付き合いたい―――そんな熱烈なお言葉に、イルルはなんて返事してるんだ?

「今は無理。百年後にリトライして」

「え?」

「だから、今は無理、百年後にリトライしてって………」

「保存食かっ! しかも歴史的発見レベルの保存食かっ! おま、なんてもったいないことを! マジそこに座れこんちくしょぉぉぉぉぉおおおおお!」

「カイト?」

「百年後? そんなのヒュムなら人生終わっちゃってますけど? てか恋心って長期熟成するもんじゃありませんけど? 新鮮なうちに味わわないともったいない感情なんですけどぉぉぉぉ?」

 百年前に抱いた恋心の現在について綴った恋愛物語なんて聞いたことねぇよっ!

「お、落ち着けよカイト」

「ハルルに同意。落ち着けって」

「おやおや母さん、百年寝かせたの恋愛感情はさすがに味が染みて美味しいねぇ―――えぇお父さんの言う通りですねぇ……ってんなわけあるかっ!」

「や、でもよ、竜人族的には……」

「はいはい出ましたぁ! 竜人族長寿ゆえに恋に急いでませんけど何か発言んんんん! しかも竜人族のイケメンは百年経ってもぴちぴちで(わか)っ若のイケメンですけど何か発言無意識トッピング付きぃぃぃぃぃいいいっ! くそぉぉぉぉぉぉぉ……心身に余裕があり過ぎてマジで羨ましぃ……」

「トッピング?」

「余裕?」

「でもなイルルよ。モテない友からの助言だ。百年の間に世界は変わる。恋心も変わる。今、この瞬間にしか生じない感情を見逃したって百年後にお前が後悔するのは、ナシで頼むぜ?」

「お、おぅ。わ、わかった」

「恋に落ちた瞬間の、あの何とも言えない特殊な感情を……百年長期熟成させても、いいことはないと思うからな?」

「まぁ、それはそうかもな」

 おぉ!

 わかってくれたか友よ!

「てか生々しいな。なんかあったのかよ?」

「よくぞ聞いてくれたハルル!」

 ふっふっふ。

 なにせオレは、恋に落ちたのであるからして。

「とうとう、とうとうこの時が来た。なにを隠そうオレは、恋愛という名の未踏(みとう)の大地に、足を踏み込んだのさ」

「未踏?」

「大地?」

「そうさ! オレ、恋に落ちた!」

 ある意味、お前らよりかはフロンティアを切り開いているのであるからして!

 告白された回数やデートの回数では圧倒的に敗北していることについては……この際、目をつむろうじゃないか。

「誰に?」

「や、待てハルル。俺はとんでもなく嫌な予感がする」

「嫌な予感?」

「そう。とんでもなく嫌な予感……」

「なんだよそれ」

「いいから俺に任せとけ。ってことでなぁカイト、念のために聞くけど…………」

「おぅ!」

「お前が恋に落ちた相手って………まさかその、箱の中身、か?」

 ほぅ?

「………………おぃおぃイルル」

「や、違うよな! 悪ぃ! つい嫌な予感がしてな」

「なに言ってんだよイルル! いくらカイトでもそりゃ―――」

「―――さっすがわが友! よくわかったな!」

「「えっ⁉」」

「お前らも見たろ?」

「お、ぉぅ」

「み、みみ見た見たっ」

「すげくね? まず貴重な世界樹の樹木をふんだんに使用!」

「「た、確かに」」

「どうかなぁ……十年? 二十年? もっとかかるかも。ま、オレの見立てだとこれ、かなりの技量を持つ職人が数十年かけて生み出した至高の逸品!」

「「……………」」

「それに何よりも素晴らしいのがこのボディ!」

「「ボディ?」」

「うむ! まるで透明な小川の流れを彷彿とさせる細やかな髪! ツンツンっとした表情に知性を感じさせる閉じた瞳! ちょっと衣装が質素だけども、ハイ・エルフがモチーフってことならリアリティがあってそこがまた尊い! そしてこのポーズ……等身大のハイ・エルフが座して祈りを捧げているようなこのポーズ……マジ尊ぃ。彼女が祈る先に神が見えそうな……アカン目から汗が………尊過ぎて汗が…………」

「「…………」」

「や、泣いてる場合ではないぞ諸君! 涙を拭けっ! これぞまさに完璧! 至高の逸品! この職人を神と呼ばずして他の誰を神と呼べばいいのかっ! ではさっそく、この素晴らしさを余すところなく褒め称えて、我らが神に―――偉大なる作り手に感謝の祈りを捧げねば!」

「神?」

「祈り?」

「うむ! 二人とも遠慮は無用だぜ? ほら、いいところを十個ずつ、まずは言い合おうぜ?」

「……お、おぉぉぉお俺はちょっとその、あ、アレだアレ!」

「お、おぉ。俺もだ。ちょっとアレを忘れてたから―――そのなんだっけハルル?」

「しゅ、修練! ジェイと約束してたんだった」

「そうそうそれそれ!」

「ってことで悪い、またなカイト!」

「おぅ! 残念だけど、またな!」

「おぅ! またな!」

 …………まったく、仕方ない奴らだ。

 これだから初恋もまだの男はけしからん。

 いざという時に、怖気づいてしまうのであるからして。

 ま、今は心身の修練に励むがよかろうて。ふぉっふぉっふぉ。

「はぁ、それにしても…………尊ぃ」

 いつ、誰が創ったんだ?

 まるで生きてるみたいに綺麗だ。

 くすんだり、カビが生えたりもしてない。

 実に、実に素晴らしい。

 神々しく光って見えるのは、素材が世界樹だからかなぁ。

 世界樹の木材って、超高級で滅多に流通しない。それをここまで…………や、待てよ。

 ひょっとしたら……………………やっぱり、つぎはぎの痕跡がない。一本の樹木を削って作ったってことか。他の木材ならまだしも、世界樹を使ってこんなアートを…………相当なお値段だろう。分割手数料無しでも、支払える人は少ないんじゃないか?

 となると、発注者がいるわけじゃないかも。

 どこぞの芸術家が自主的に生み出したアートって可能性が高い。

 ふむ。

 ふむふむ。

 それならば発見者のオレに所有権が―――ない、か。

 叡智の箱はハイ・エルフの至宝らしいからなぁ。

 もっとも、その所在は明らかではなかったらしいけど。

 だからオレらは、その至宝を見つけ、守り、無事に届け救世主ってこと。だから日々、盛大な大感謝祭を開いてくれてるわけだ。

 本当は早く帰った方がいいんだろうけど。

 まぁ、スライムのゲートを使って、報告書は届けてあるし。

 特に問題ないか。

 なにせ……………帰るってことは、このアートから離れるってことを意味するわけで。

 もうちょっと……お邪魔じゃなきゃあと二年くらい、ここに滞在してもいいかも。

 うん。

 悪くない考えなのであるからして!

「お~ぃ、兄さ~ん?」

 悪くないのであるからして!

「兄さん! 帰ってきて!」

「お、ぉぅ! ちゃんとここに居るぞ?」

「ったくもぉ~、仕方ないなぁ。招待の件、里長が承諾してくれたよ」

「そっか!」

「先方は、だいたい三十人くらいだってさ。数多いけど大丈夫?」

「大丈夫! 庭にテーブルとイスと……バーベキューセットを出して……あとはピザ釜を使うか」

「了解!」

「キャンピング・カーで養殖してる魚―――サーモンが多かったよな?」

「うん!」

「なら魚はサーモンをシンプルに塩バターでいくとして。あと、畑の野菜は……」

「大根、あと、ナスとトマト、ピーマンにジャガイモが食べごろかも」

「おっけ。十分だろ。冷蔵庫の野菜を足してトマトサラダを作って、ナスは炒め煮にするか。ジャガイモはローストと……マッシュポテトかな。大根は大猪の薄切り肉と煮込もう。ピーマンは塩昆布と混ぜて酒のあてにするか」

「ヤバい全部美味そう……」

「だろ? じゃあ、陸人は香草と一緒に野菜を収穫しといてくれるか? オレは肉料理―――バーベキューの仕込みを始めておくから」

「了解!」

「あ、ついでに山菜も採ってきてくれるか? 蕎麦に天ぷらも作ってやるからな? てか他に食べたいもんはあるか?」

「蕎麦最高!」

「了解!」

「そうだ兄さん、叡智の箱なんだけどね」

「ん? どうした?」

「しばらく、俺らのキャンピング・カーに保管しておいてくれないかってさ。セキュリティ的にもその方がいいだろうって、里長が言っててね」

「わかった! すぐ持ってく!」

 っしゃあ!

 どこがいい?

 どこに保管する?

 やっぱオレの部屋かな?

 や、いっそのことこのアートを飾る専用ルームをつくっちゃうか?

 美しい像が更に美しく見えるように細心の留意をしなければ!

 照明でもつけたいよなぁ。

 あ、そうだ!

 アーサーとガウェインに光っててもらおう!

 あとはセキュリティ!

 アイギスの盾で完全防御して、見張りはオレがやろう。

 二十四時間、隣でずっと見守ることにしよう。

 うむ!

 それがいい!

 念には念を入れないとな!

 なにせこれは至宝なのであるからして!

希望(ホープ)】のリーダーとして、里長からの依頼は着実かつ誠実に果たさなければならないのであるからして!

「兄さん。まずは料理から頼むよ?」

「わ、、わかってるって」

 ふぅ~、危なかった。

 完全に部屋づくり始める気だったオレ。

 てか陸人、さすがに鋭い。 

 オレの心まで読めてるんじゃないかってレベルの鋭さだ。

「じゃあ三時間後に里長をお連れしてくれ!」

「了解!」 

 さてと。

 料理の仕込みの前に、叡智の箱の移送をしておこっと。

 安全確保のためにも。

 なにせこの箱をねらって邪神が侵攻してくるくらいなのであるからして!

 …………あれ?

 なんでだ?

 確かにこの像、超高級品だろうけども。素晴らしい逸品だけれども。

 敵が、わざわざこの像をねらったのはなぜだ?

 どんなメリットがある?

「やぁカイト! 元気そうだね?」

「クロノ……」

 偉大なる星位精霊―――見た目はウサギのクロノが、シルクハットをクルクルまわす仕草が可愛すぎてヤバい件について。

「叡智の箱について、知りたいのかい?」

「クロノは知ってるの?」

「あぁ、よく知ってるとも」

「つまりその話、オレだけが聞いた方がいいってこと?」

「そうだね。まずはそれがいいかもね」

 クロノが時を止めてる―――つまり機密扱いってことだよな。

「さて、どっこいしょっと」

「え? そこに座るの?」

「うん。ここが僕の居場所なんだよ」

 ちょこんと叡智の箱―――木造の膝の上に座ったクロノが楽しそうに微笑んで。

「ちょっと眩しくなるかも。気を付けてね」

「わ、わかった」

 クロノの言う通りに……………部屋は淡い光のオーラに包まれて……………………オレは静止した。

 







今日もありがとうございました!


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