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第36話:最悪の最善

 



 なんか……おかしい。


 ジェイを一人残すって選択肢を考えた瞬間、まったく嫌な予感がしなかった。

 うん。なんとなくだけど、ジェイは大丈夫だろって感じた。大天使ウリエルが覚醒するか、トールたちが間に合って助けてくれるか……まぁどっちかの可能性が高いって信じたわけだ。

 結果、後者だったし。

 トールとシヴァっちが来たのなら、そしてジェイにウリエルが覚醒するなら、負けるはずないし。

 うん。

 つまりオレの直感は、ちゃんと機能してるってわけだ。

 でも、なんかおかしい。

 陸人を連れて部屋を出たのは……嫌な予感がしたから。

 あの場に陸人が残るかどうか―――その問いかけを聞いた瞬間、背筋がざわついた。それも、ちょっとじゃない。胃の中のものを全部、や、内臓を全部吐き出しそうになるレベルで気持ち悪かった。

 ウリエルが覚醒する可能性があるジェイがいて、トールとシヴァっちが間に合って。結果、あの部屋はとっても安全だったってことになる。

 でも……だ。

 あの部屋に陸人を残していくことを、オレの超直感は拒絶した。しかも全力で、だ。

 おかしい。

 安全なあの部屋に陸人を残していくことがなんで……嫌な未来に繋がるんだ?

 それに陸人を見ると……今も背中がゾワゾワする。

 なんでだ?

 嫌な未来を回避する選択だったはずだろ?

 なのになんでまだ……

「兄さん? なに考えてんの?」

「や、なんでもねぇですよ?」

「マジで? なんか変だよ?」

「女子にモテない禁句について考えてた」

「……あっそ」

 まだある。

 おかしい。

 ケンタウロス二体の他にまだ強敵がいるなんて。

 正直、アイツらと戦うまで、そんな奴がいる予感はまったくしてなかった。「ケンタウロス兄弟がこのダンジョンのラスボスです!」くらいに感じてたし。

 なんでだ?

 なんで感じなかった?

 オレの直感が察知できる想像の範囲をはるかに超える高みにいるヤバい敵ってことか?

「ちょっと待って」

「ん?」

「兄さん……やっぱ変だよ?」

 ピタリと足を止めた陸人の顔に、書いてある。ごまかしはきかないって。

 てかその複雑な表情は……ひょっとして怒ってる?

「……やっぱわかるか」

「あったりまえだろ? なんか俺に言えないこと?」

「や、言えなくはない。まず、陸人をあの部屋に残すのヤバいって感じた」

「ヤバい?」

「あぁ。なんだかよくわかんねぇけど、その決断はマズいって……未来がとんでもなくヤバいことになるって……感じたんだ」

「……じゃあ俺を連れてくるって決断には? 嫌な予感する?」

「さっきも言ったろ? 陸人がオレの邪魔になることなんてない。絶対に、ない。それに、陸人を連れていくことに迷いも後悔も全く全然これっぽっちもない」

「……まったくさぁ。兄さん、ほんと正直だよね」

「……ごめん」

「まだ、嫌な予感してる?」

「あぁ。さっきのよりかなりマシだけど、な」

 さっきのが内臓を全部吐きそうになるレベルなら、今、オレが感じてるのは……胃を吐き出しそうなレベル、だ。

 この感覚がさ、消えないんだ。

 つまんない冗談言っても、前向きな言葉を精一杯吐き出しても……消えてくんないんだよ。

「ならいいや。足……止めさせちゃってゴメン。急いでるのにさ」

「……陸人」

「大丈夫。行こ」

「……おぉ」

 ヤバい。

 やっぱ怒ってる?

「デネブリスさん、お願いがあるんだけど」

「なにー?」

「俺、闇属性に超特化してるんだよね」

「わかってるよー」

「でさ、力が強すぎるせいでまだ上手にコントロールできないんだよね」

「ん、わかった」

「ありがと」

「陸人? なにする……」

「大丈夫。兄さんは黙ってて」

「……わかりました」

 ヤバい。

 やっぱ怒ってる? よな?

 てかまともに兄弟ゲンカしたのって……五歳くらいが最後じゃね?

 だから仲直りの仕方がわからない件について。

 てか、陸人が不機嫌なのが久しぶり過ぎて……ぶっちゃけ焦る。こういう時って、どうしたらいいんだっけ?

「……俺さ」

「お、おぅ! なんだ?」

「兄さんの直感を信じるてるんだ。や、兄さんを信じてる」

「あんがとーな」

 あれ?

 怒ってるわけじゃない? のか?

「でさ。あっちに俺を残さず一緒に連れてきた方がいい理由……」

「あぁ、それな。陸人はなんだと思う?」

「俺が何かの役に立つってことなんだと思う」

「あぁ」

 正直、その可能性は高いと思う。

「でも俺じゃさ、ぶっちゃけランクSS相当の敵とまともに戦える気がしない」

「あせるなよー」

「うん。ありがとデネブリスさん」

「いいよー」

 オレからも、ありがとデネブリス。

 ちょっと空気が和らいできたっぽい。

 てか闇の星位精霊なのにさ、性格は明るく前向きでノリ軽めなのな?

「俺の役目はきっと……敵の隙をつくか何かするってことなんだろうね」

「あぁ……それで闇の?」

「うん」

 なるほど……。

 てかさっすが陸人。

 頭のキレッキレな弟を、兄ちゃんはいっつも誇りに思ってるからな?

「俺がその役目を果たさないと未来が―――星の未来がとんでもなくヤバいことになるって兄さんは感じたんじゃないの?」

「あぁ、そう言うことか……も?」

 あれ?

 ちょっと待てよそれ……。

「陸人、止まれ!」

「……ダメだよ兄さん、急がなきゃ」

「いいから止まれって!」

「………急ご?」

「リク! 兄ちゃんの言うことが聞けねぇのか! 止まれっ!」

 クソっ。

 オレ……バカだろ。

 陸人は怒ってたんじゃないっ。

「………わかったよ。だから腕、離して。折れちゃうよ」

「……悪ぃ。てか整理させろ」

「うん。てかもう、同じ考えなんじゃないの?」

「いいから!」

「……ん、わかった」

「まず……オレの直感は―――嫌な予感を察知する」

「うん。以下、仮定ね。嫌な予感が複数同時に察知された場合―――」

「―――より大きな嫌な予感が実現されてしまうのを回避するよう……行動の選択と決断を無意識に下してる可能性がある」

「兄さんに同意」

「つまりそれって……」

「うん。星の未来がヤバくなる未来を防ぐためには……俺が役割を果たす必要がある」

「役割を果たした結果、リクが………」

「うん。そうなる可能性もあるよね」

 いや、それ以外にないだろ。

 だってずっと……嫌な予感が止まらない。

 陸人を見ると……背中がゾワゾワする。

「なに怖い顔してんのさ! まだわかんないって! だってほら……ルクスさんが追い付いて回復してくれるとかさ」

「や、その程度で済むなら……リク見て嫌な予感なんてしない」

「……ったく正直者だよね兄さん。そこはさぁ、優しい嘘でもさぁ……つけるようになりなよ。ね?」

「リクっ」

「いいから急ご! 兄さんの感じてる最悪の未来を避けることが今は一番大事でしょ?」

「でも、それでも……」

「その最悪の未来が来たら……どのみち俺はだめかもしれないでしょ?」

「それは………そうかもしんねぇけ、ど………」

「それにほら! 最悪の未来が来ちゃうよりさ……俺が役割を果たした方が、俺の未来もまだマシな可能性大でしょ?」

「それは………」

「っ兄さん!」

「―――っ」

「可能性、大だよね?」

「あぁ。そうだな。その可能性は大、だ」

「そうでしょ? だと思ったんだよね!」

 リク、ごめん。

 情けない兄貴で……ゴメンな。

 そんで、ありがと。

 教えてくれて……ありがとう。

「さ! さっさと行こう!」

「おう!」

 ニシシっと笑う陸人に、ニシシっと笑いかけて。

 意識的に心にバフをかける。

 大丈夫。

 明るい未来を勝ち取って見せる。

 オレの全てを賭けて……陸人を守って見せる。

 父さんを悲しませたりしない。

 母さんを泣かせたりしない。

 ナナちゃんの笑顔を奪わせない。

 絶対……絶対絶対、絶対に……だ。




 +++




 あ、ヤバい。

 ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい。

 ひょっとしてアレが英知の箱か?

 だとしたらマズい!

 敵はもうアレに向かってる! 樹璧を登り始めて………

「―――陸人っ⁉」

「竜種解放―――【闇鉞(やみのまさかり)】‼」

「我デネブリスが命ず―――闇よ膨れ……重く停留せよ」

【闇の鉞】―――これは奪う。

 敵の聴覚、触覚、嗅覚に熱感知………それに視覚を刈り取る技。

「兄さん! アイツ、メデューサだ!」

「りょ、了解!」

 あぁ……そっか。

 だから……陸人なのか。

 そしてさすが陸人だ。

 素早い対処と的確な技のチョイス。

 なんであれがメデューサだってわかったのか不明だけど……ま、陸人だからな。何でも知ってる自慢の弟すぎてマジ尊敬。

 下半身が蛇、上半身が美女。髪の毛が無数の蛇で―――その瞳を見たものを石化してしまう。呪いの力を持つデミ・ゴッド。

 けど今、その呪いの力は封じられた。

 なにせ暗闇が敵を包みこんでるんだから。これでアイツの瞳を見ずに済む。

 さらに蛇の特性―――熱感知も奪った。アイツはこちらの動きを察知することもできない。………はずだ。

「この隙に攻撃する―――ロココさん力を!」

『オーダー承りました。少々お待ちください』

 よっしゃ。

 これでいける!

 ロココさんのおかげで神懸ったモードになれれば……SSオーバーの敵だって完封できるはず、だ。

 なのに―――消えない。

 陸人にまとわりついてる嫌な予感の気配が―――。

 なんでだ?

 陸人とデネブリスのおかげで状況はこちらに有利。

 ジェイたちのおかげ………だ。後ろから敵が来る予感も気配もない。

 ならこの不安は―――敵はどこからくる?

 ん?

 あれ?

 これって……ロココさんの仕業??

 や、違うか。

 この感覚、前にあった。

 ますで凍り付いたような―――静寂に包まれた世界。

「クロノ?いるの?」

「あぁ、僕だよ。今追い付いて………時を止めたところさ」

「それって、陸人を助けるため?」

「いや、どちらかと言えば君のため、そして世界のためだね」

 オレと世界のため?

「どういうこと?」

「いいかい。今ここが、運命の岐路さ。最悪の未来を避けるための、ね」

「てかなんでクロノにわかるの?」

「や、正確には偉大なる守護神が持つ予知の神権―――神の力が指し示した時点が、今ここだってことさ」

「なるほど。神、ね」

 まぁ、信じてやらないでもない。

 昔よりは、神の存在を身近に感じてるし?

 あんまり信じてないって言ったら……また恋愛運下げられそうだし?

「君は今、岐路に立ってるよ」

「岐路?」

「あぁ。ひとつは陸人を死なせない道に続いてる。今すぐ彼を連れてここから逃げるといい」

 あぁ、やっぱりか。

 この嫌な予感の正体は―――。

「もうひとつは?」

「今から降臨してくる敵と戦う道だ。陸人を死なせることになるだろう」

「陸人を安全な場所まで運んで、オレがここに戻る道は?」

「前者の道を選択したことになる。つまり……」

「つまり?」

「叡智の箱は敵―――邪神の手に落ちる」

「どうなるの?」

「……世界が滅ぶよ、きっと」

「……そっか」

 クソ。

 なんでだ?

 直感を信じすぎたか?

 最悪の二択しか残ってないじゃんか……。

「なぁクロノ……オレ、どっかで選択を誤った?」

「いや、最善さ。君の直感と尽力のおかげで世界が滅ばずに済む未来が、手の届くところにある。奇跡的な戦果だよ」

 ……そっか、これが運命ってヤツか。

 どうあらがっても避けられない二択。

 でもそんなの……ダメだ。

「ならオレが! オレが陸人の身代わりになる!」

「……やっぱり君は、そう言うんだね」

「それで……オレが犠牲になれば世界と陸人を救える?」

「……残念ながら無理さ。陸人には既に呪いがかけられている。神に手をかけた者にカウンターで貼り付ける……死の呪い」

「じゃあ逃げても一緒ってことじゃない?」

「いや、神罰が下される範囲は数キロほどらしい。邪神が呪いを発動させるキーを押す前にここから逃がせば、陸人は大丈夫さ」

「ならカイトの身体の時を止めてくれよ! あ、そうだ! 呪いを受ける前の状態に肉体を戻してくれればいいじゃん!」

「えっとね。時を止めても、発動したキーの影響は妨げられない。つまり、時を戻した瞬間、陸人は………。あと、時を戻せば肉体は戻せるよ。けどやっかいなことに、呪いは魂に刻まれたんだ。今の僕じゃあ力が及ばない次元の呪いなのさ。残念だけどね」

「……そっか」

「うん。すまないね」

「いや、クロノが悪いわけじゃないし。てかさっき……神に手をかけた者って言った?」

「うん」

「じゃあ………【希望(ホープ)】のみんなもってこと?」

 デミ・ゴットと戦った皆も、呪いを受けてるわけ?

「いや。あのメデューサだけさ。あの個体には邪神が宿ってるらしい」

「宿ってる?」

「そうさ。あの個体はそもそも、遠い昔にここに流れ着いて、大人しく暮らしていたのさ。半獣半人―――邪神が憑依しやすい体をねらって、強制的に憑依したのさ」

 それで、か。

 オレの嫌な予感に最初、メデューサが引っかからなかったのは。

 戦況が不利とみて、途中で憑依したのなら……オレの直感が外れてもしかたない。その時点では存在していなかった脅威なんだから。

「さて、あまり時間は残されていない」

「……うん」

「すまないね」

「や、クロノが来てくれて良かった。考える時間と、これから起こることの見通しをもらえただけで十分ありがたいよ」

 なにより、クロノに罪はないし。

「ところでカイト……君は神様を信じてるかい?」

「ん? 神? オレの信仰心ってこと?」

「あぁ。実は偉大なる天上の神々から、君へのメッセージを託されたのさ」

「メッセージ?」

「そうさ。まず最初はねぇ……ちょっと待ってよ。メモを見るからね。えっとメモは……どこだっけ?」

 ぐぬぅ……愛くるしいウサギさんめ。

 まさか天然キャラ属性にスキルポイント激振りしてるの?

「その胸ポケットから見えてるやつのこと?」

「お! これだよこれ。さすがカイトだねぇ」

「どうも。てかオレの方こそありがと」

 クロノのおかげで……ちょっと気持ちが和んできたっぽい。

「えっとね。「神々はこの星が滅ばぬ未来の到来を願っている!」だってさ」

「それは……そうでしょうとも」

 神様なわけだし?

 星が滅んだら居場所無くなっちゃう的な?

 ん?

 神様に居場所ってるのか?

 まぁよくわからないけど……神様も自分を慕ってくれる信者は大事ってことかな。

「しかし、他ならぬ君が滅びの道を選ぶのであれば仕方ないと、海神様と雷神様は笑っておられたよ」

「そうなの?」

「うん。他の神々も同意見らしい。みんな……笑っておられた」

「マジで?」

「あぁ。実に、実に愉快そうだったよ」

「……そっか」

 つまりオレに、星を救えと強制する気はないってことか。

 ……そっか。

「それにね……」

「どうしたの?」

「君がこの星を救う道を選ぶなら……えっとね「神々は、これから起こる悲しい事態に必ず対処する」ってさ! 既に、天界にいる数多の神々が対処に備え……とある社に集まっておられるし」

「神々が? そんなに?」

「もちろんさ! 名高い守護神様、力のある土地神様、偉大なる大天使様に地獄の大悪魔王殿、それにこの星の創生に関わった女神様まで……勢ぞろいだよ」

 ん?

 あれ?

 今なんか変なの一人混じってなかった?

 えっと……地獄の?

 大悪魔王?

 それ敵じゃないの? ってツッコんだら負けな気がする不思議。

「つまりみなさん陸人のために力を貸してくれるってこと?」

 てか、なんで?

 陸人がイケメンだから?

 それとも転生者だから?

「えっと……正確には君のため、だね」

「え⁉ オレのため?」

 オレ別に……イケメンじゃないよ?

「神々は……君が傷つき悲しむのを見たくないそうだ。もちろん、僕もね」

「……なんで? ぶっちゃけオレ、むしろ神様信じてない派だったし。敬虔な正神教信者ってわけでもないよ?」

「そこは……う~ん……………メモには書いてないね」

「そっか」

 なら仕方ない。

「あとはカイトが信じるかどうか、だね」

「うん。そうみたいだ」

 いつだったか………変顔お面さんと狐お面さんが、夢で言ってたっけ。

『神はいるじゃん! 祈るといい。それが神の力になる』『神が力を増す。それが星の救いになるのさ』ってさ。

 ………そっか。

 祈りが神の力になる。

 その力は神が信者を救う力になる、か。

「どうやら決めたようだね?」

「うん! オレ、神々を信じる! だからどうか、陸人を助けてください!」

 天上に向かって吠えて―――あ、違うな。

 確か……片膝を地面につけて。瞳を閉じて―――心の中で念じる。

 強く、強く念じる。

 その願いが強いほど、そして神への敬意を感じれるほど―――願いが神々の目に留まりやすいって言ってたっけ。

 うちのドラゴンが。

 では………改めまして。

 ゴホン。

 あ~、聞こえますか?

 えっと……偉大なる神々のみなさま。洞窟の女神様も? 本日はオレの弟のために集まってくださっているとか。感謝いっぱいです。

 あ、オレはヒュム族大和が長男、カイトと申します。そして隣でさわやかな笑顔のまま静止してるのが自慢の弟―――陸人です。時が止まってるので、弟のご無礼はお許しください。

 本日のお願い事は、この弟のことです。

 弟はどうやら、この星を救う流れで邪神の呪いを受けたようです。このままでは弟が死んでしまうかもしれません。この星は―――あの邪神はオレが今から戦って食い止めます? ので、弟をどうかなんとかお救いください。

「祈ってるとこ悪いね。カイト、そろそろ時が動きだす」

「ん、わかった。クロノ、ありがとうね。おかげで心の準備ができた」

「いいよ。それに叡智の箱を守ってくれたしね。ありがとう」

「こっちこそ!」

「さ、時を止めてる間に―――」

「うん。叡智の箱をオレの背後に動かしておくよ」

「あぁ。頼んだよ」

 シルクハットを軽くつまんでお辞儀するクロノのカッコ良さと可愛さよ……。

 オレの家で飼いたいなぁ。




 +++




「あれ? 兄さ……ん? なんか……」

「いいかリク、よく聞け」

「でも、お、れ……」

「心配するな! オレを信じろ! 陸人は大丈夫だ!」

「……わ、かっ……た」

 大丈夫。

 オレは冷静だ。

 陸人は神々が救ってくれる。

 てか陸人、せっかくのイケメンが台無しだぞ?

 泣いてるのか?

 か、顔が―――陸人の顔が…………。

 …………クソ。

 大丈夫、だ。

 大丈夫。

 神々が約束してくれたんだから。

 陸人は大丈夫、だ。

 だからオレ、落ち着け。

 落ち着け。

 冷静に……冷静に。

 冷静に…………………………なんてなれるかっ。

「ふむ。実に不届き。我に跪くどころか……蹴りとはな」

「ウルセーよ、人気のねぇクソ神が」

「またも不届き。まぁ構わぬ。そこのゴミと同じ運命をたどるが良かろう」

 あ。

 そうだった。

 手を出したら呪われるんだった……。

「おや? 我の呪いが効かぬようだが?」

「……」

 やっべー。

 良かった。

 マジ良かった。

 冷静に、冷静にならないと。

 相手は憑依体とはいえ、神なんだから。

「小僧……お主ほなんだ? 本当に生命体なのか?」

「……ウルセーよ」

 弟を苦しめやがって。

 マジで許さねぇからな?

「まぁよい。多少面倒だが……神自ら相手になってやろう」

「さっさとかかって来いや!」

 頼みますロココさん!

『お待たせしました。分神体まるまる一体分の神威を注入中………』

 あ、それ大丈夫?

 適量オーバーじゃない?

 あんまり大量だとオレ、こないだみたいに記憶ぶっ飛んじゃう体質みたいなんだけど……。

『やぁ。こうして君と話すのは変な気分なんだけど』

 あれ?

 ロココさんは?

『オレの隣にいるよ。オレはとある種族の守護神さ。ま、その分神体だけどね。君にいつも力を貸してるのはオレってことでいいかな』

 そうなの?

 マジでありがとうございます!

 で、その……あなた様のお名前は?

『それはねぇ……秘密。オレは引きこもりライフを愛しててさ。ぶっちゃけ有名になんてなりたくない。だから名前を隠して神様業することにエネルギーを全集中してるんだよ』

 それはまた………変わったご趣味? で。

 神様なんてみんな、有名になって信者集めまくって大人気を目指す、いわゆるハーレム物語の主人公みたいなもんだと思ってましたすいません。

『まぁ、気持ちはわかるけどさぁ。偏見、良くないよ?』

 すいません。

 で、なにかオレにご用ですか?

 今、神様憑依体の攻撃をかわすので……いっぱいいっぱいなんですけど……って痛っ。かすった今! あっぶねぇ~。

『うん。冷静みたいだな』

 さっきはちょっとあぶなかったですけど。

 冷静になんなきゃ。クロノに悪いですから。

『そうだね。あ、弟のことは安心していい。すんごい女神様たちがすんごいことしてくれてるから』

 なにそれ。

 はっ⁉

 ま、まさか……そんなはずは。

 でも陸人だし……ありうる、か。

 あの~、引きこもりの神様?

『言い方のセンス! で、なんだい?』

『うちの弟、まさか女神様にまでモテモテなんですか?』

『……まぁ「ただしイケメンに限る」レベルだね』

 クソ。

 我が弟ながらイケメンはこれだから困るのであるからして!

『まったくその通りなのであるからして!』

 ですよねですよね!

『うむ!』

 おや? ってことは…………引きこもりの神様もオレと同じ?

 なにやら非モテの気配がしますねぇ。

『今の発言は巨大で鋭いブーメランであると思われます。自分を傷つけるのは止めて差し上げろ(笑)』

 ブーメラン! くっそウケる!

 了解でっす!

『ゴホン。カ―――いや失礼。マスター、おたわむれはそれぐらいに』

『そうだねロココさん』

 そうですよ引きこもり(しん)

 いつなんどきでもロココさんが正しいのであるからして。

『それにも全面同意なのであるからして』

 ほう?

 ならばさっきの非モテも……。

『ブーメラン第二派……来ます!』

 了解でっす!

『あ、わかったってロココさん。それでカイト、君が最近、神懸(かみがかる)ると表現してる現象について、さ。こうなったら仕方ないので伝えておこう』

 ふむふむ。

 なんでしょう?

『その前に、まずカード集からね。あれには神々やその眷属たちの技が封入されている。時間が立てば―――この表現は正確じゃあないけども、ま、繰り返し利用可だ』

 オッケーです。

 それは、なんとなく気がついてました。

『ふっふっふ。なら、これはどうだい? 魔装降臨と天装降臨系のカードは?』

 なんですそれ?

『君が武装したり必殺技を放つためのものさ! ただし、相手が神、すくなくともデミ・ゴッド以上の場合に使用することを勧めるよー』

 わかりました!

 破壊力ヤバめってことですね!

『まぁ、そんな感じだね。そして最後に……神懸りについて、だ』

 ふむふむ。

『君の体に、オレの神威を付与してる状態。ぶっちゃけ、オレが君に憑依してると思ってくれていい。感覚的には、だけどね』

 ほぅ。

『憑依が進みすぎる―――つまり貸し与える神威が巨大になり過ぎるとコントロールができずに、君は意識を失う。で、オレの意識が体をコントロールするって感じさ』

 なるほどわからん。

『ま、こればっかりは慣れだから。何回か繰り返せば互いに感覚がつかめると思うよ』

 オッケーです。

 それなら安心ですね。

『ま、神威を与えすぎると君の体が爆ぜるかもしれないけどさ』

 マジで?

『まぁ、リア充陽キャ爆ぜろの法則ってことで』

 え?

 オレモテると体が爆発する仕様なの?

 マジで?

『おっと。神威の注入が終わるっぽい。コントロール頑張って! 意識が飛んだらオレが頑張るよ!』

 や、ちょっと待って!

『あと、君が望んでオレと代わりたい時には、そう言ってくれ。対処しよう』

 や、だからちょっと待って!

『……………神威注入終了。カイト様、ご武運を』

 了解!

 めっちゃ気になるけど了解!

 ロココさんマジ、あなたがオレの神です!

「…………ってことで、待たせたな?」

「ほぅ? 我の攻撃をかわしながらもなにやら企んでいるとは察していたが……それは神威だな?」

「あぁ」

「さてはお主、どこぞの神の眷属だな? それとも神と取引でもした哀れな子羊か?」

「残念でした。オレはどっちでもねぇよ」

 ぶっちゃけよくわからん。

 オレ、どっちかなの?

『違います』

 サンキューですロココさん!

 確かなのは、引きこもり神がオレに力を貸してくれるってこと。

 それで十分。

 例え相手がお前―――邪神の憑依体でも、十分、戦える………よな?

 ん?

 あれ?

 引きこもり神って……………バトルに向いてなくね?

 そこんとこ大丈夫なの?

 あれ?

 おーい! ロココさ~ん。引きこもり神?

『…………………』

 …………マジで?






今日もありがとうございました!


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