第28話:友と伴に
「――――大天使ウリエル」
「へ?」
今、大天使って言った?
「我は神の光、神の炎であり、地の元素を統べる者」
ジェイが天に掲げた右手に、炎の渦が宿っていく。
神々しく眩いルビーの輝きに瞳を奪われ………あ、すげぇ。
その渦どんだけデカくなって……しかも黄金色に変わんのかよ⁉
「顕現せよ断罪の剣―――神剣フレイムタン」
うわぁ………かっけぇ。
なんだよジェイその剣―――くっそカッコいいじゃん。
それに背中のオーラは……天使の羽?
しかも二対四枚って……伝承にある大天使の羽だよな。
…………マジかっけぇ。
「―――っ⁉」
スライム⁉ どうした? えっ……………………マジで?
そのカードは―――嘘だろ?
「これも……神剣フレイムタン?」
ジェイのと同じだ。カッコいい………鏡のように美しい深紅の刀身に馬をモチーフにした柄。
しかも超軽い!
「なるほどなぁ。こうなるのか」
「へ?」
ウリエル? なんて言った?
「よし! カイト、天に剣を掲げるんだ」
「わ、わかった」
ニヤリと笑ったジェイにつられて、オレもついニヤリ。
このドキドキは、イタズラ実行前の感覚にそっくりだ。
多分……なんかすっげぇことが起こるって予感。
「爆鎖連炎―――【炎馬之舞】」
静かに唱えられた呪文。
輝くフレイムタン。
そこから巨大な炎が浮かび上がっ………マジか。すっげぇ………。
炎のユニコーン! クッソカッコいい!!
二匹のユニコーンが天高く歩み出して……次元の穴に飛び込んだ。
遠く……馬がいななく声が響いて――――閃光が―――
「―――うぉっ⁉ 爆発……した?」
とんでもない轟音――――それになんて巨大な炎の竜巻なんだ。
これ、次元の裂け目を通ろうとする敵、全滅確定だよな。
ヤバい。
ヤバいじゃん!
神剣フレイムタン……ヤバすぎてヤバい!
陸人なんてもうキラッキラした目で見てるし……てかそれ感動の涙だよな?
「さてと。次元の裂け目の敵はこれで燃やし尽くせる。しばらく侵攻も防げるだろう」
「そうなの?」
「あぁ」
「助かるよウリエル!」
それマジでありがたい!
敵に増援がないってだけで、こっちの動き方が変わってくるし。
あとは時間だな。
しばらくって、数時間くらい?
「どれくらい防げそうなの?」
「あぁ。十四日、この炎が途絶えることはない」
「は? 十四日?」
「あぁ」
「全然しばらくじゃないじゃん! てかマジでヤバいなフレイムタン」
ふむ。
これはいわゆる―――イケメン武器だな。
まず、カッコいい。つまりこれを持ってるだけでまず絶対にモテる。
さらに! この武器を使ってみせると圧倒的にモテる。
間違いない!
ふっふっふ。
これ……オレの時代そろそろ来ちゃうかもな?
「カイト……それにしても久しいな」
「久しい?」
オレ的には微妙に初めましてなんだけど。
「ウリエルはジェイなの?」
「あぁ。俺とジェイは一心同体。ジェイは大天使ウリエルの現身だとでも思ってくれ」
「ふ~ん」
なるほどね。
普段はジェイ。でも、なにかのきっかけで大天使ウリエルになるってことか。
でもそれって、なにきっかけ?
「ちなみに君とジェイはリンクしている。君の変化はジェイの変化―――逆もまたしかり、だ」
「ウリエル、それってどういうこと? もうちょっとわかりやすく教えてくんない?」
ちょっと状況が複雑すぎる。
リンクっていうのも意味不明だし。
「――――痛っ⁉ なんだよ陸人!」
「兄さんバカなの⁉ ウリエル様だよ、様! てかなに神様にタメ口聞いてんのさ!」
「陸人に同意! おっまえ……なに神様にダメ出ししてんだよ? バカなの?」
あ、ヤバい。
陸人とイルルが激おこだ。
でも、そう言えばそうだな。
大天使ウリエルといえば―――超有名な正神教の神だ。
多くの信者から指示を集める絶大な人気を誇る四大天使がひとり。
「ウ、ウリエル様。失礼しました。ご無礼をお許しください」
「……無理」
「へ?」
てかなにその気持ち悪そうな表情。
せっかくのイケメンが崩れてオレ的には好印象ですけど?
「無理。なんかゾワっとするから止めてくれ」
「ゾワってするって……」
「う~ん……君たちの言葉でなんて言ったっけ」
「オレたちの言葉?」
「あ、そうそう! キモい、だ!」
「へ? キモい?」
「そうそう! だからいいよ、呼び捨てタメ口で。そういう約束だからな」
ニヤリと笑う顔に、裏表はなさそうだし。
神だからって傲慢さも感じないし。偉そうに見下されてる感覚もしないし、イラッともしない。
うん。
信じてもいいかも。
ってことで、遠慮なくタメ口で!
「なんだよウリエル、接しやすいじゃん! マジ助かる!」
イケメンは敵だけど。
ポセイドン先生と一緒だ。仲良くなれそうな、いい感じがする。
それになんか……懐かしい。
てか神様ってマジでいるんだな。
「どうした?」
「や、なんでもない」
ハッキリクッキリ見えてるし。
あんな凄い武器で凄い技使っちゃうし。
これはもう、認めるしかないな。
今まで存在を疑っててごめんなさい。
ん?
神と言えば―――
「ウリエル、オレは神なの?」
―――ここは確認しとかないと。
ジェイがその現身ってことなら、オレもなにかしらの神の現身ってこと?
「いや、違う。君は今、神ではないよ」
「……そっか」
今、神ではないね。
「カイト! ウリエル!」
「あぁ、ラグナ殿――――わかってるさ。行くぞカイト!」
「え⁉」
「大天使ウリエルの名において命ずる。粛清の弓……神弓ミストルティンよここに在れ!」
「うぉ⁉ またかよ!」
ウリエルとお揃いの武器が……カード集すげぇな。
しかもこの弓……かっけぇ。月光のような淡いオーラに三日月のようなフォルム……これもモテる武器だ。
なぁウリエル。
イケメンは武器までイケメンなの?
イケメンが持つから武器までイケメンに見えるの?
それとも武器がイケメンだから使い手もイケメンに見えるの?
弓を構える天使って……ハマりすぎだろ。
超絶カッコいいんだけど。
腹立つ。
はっ⁉
てか、ヤバい。
ヤバいヤバいヤバい!!
これはナナちゃんが惚れるパターン………あ、ほらやっぱり! 今、「私の王子様」って言った。
クソっ⁉
イケメンまじ羨ましいっ。
「カイト? はやく弓の弦を引くんだ」
「わ、わかったよ!」
てかこれ矢がないけど……いいの?
「いくぞ。等比連突――――【波之青鳥】」
「⁉………すげぇ」
ミストルティンから飛び出た青いオーラ……うぉ⁉ と、鳥だよな? オーラが鳥っぽくなった!
しかも大群で………あ、かっけぇ。鳥の飛行編隊みたいになってるし。
群れが敵を追跡して……おぉぉぉぉ! ぜんっぶ討ち落としやがった!
一撃必殺って……威力もヤバいじゃんミストルティン!
これはもう陸人が騒ぐ、いや、騒ぐのを通り越して涙目で拍手おくってる。
弟よ。気持ちはわかるぞ?
「どうだい?」
「いやマジすっっっっっげぇなウリエル!」
「だろ?」
思わずハイタッチ……ってあれ?
神とハイタッチってマズい?
みんなブンブン音がするくらい首を左右に振ってるし。
でも呼び捨てタメ口OKならハイタッチくらい大丈夫じゃね?
それにしても、だ!
「カード集ってすげえ! ありがとうイケボさん!」
ただの高額商品ってわけじゃなかったんだね。
「ん? あぁ、君のそれは特別だからね」
「特別?」
「そうさ。カイトは俺の大切な友神たちと強い繋がりを持ってるし、その力を借りることができる」
「このカード集も、その借りれる力ってこと?」
「あぁ。そしてその繋がりの影響で、カイトとジェイの間にも繋がりが生まれている」
「ほうほう」
よくわかなんないけど、カード集が便利ってことはわかったからいいや。
「君が強くなればジェイも、ジェイが強くなれば君も強くなるだろう」
「ん、そこは理解できた!」
大事なとこだけわかれば、今はいい。
あとは試した後に振り返って、理解を深めればいいだけだしな。
「友よ、おせっかいを一つしても?」
「もちろん!」
「じゃあ―――神弓フェイルノートよここに在れ」
ん? なにこの変わった矢。
左右に矢じりついてるじゃん。
「へ? ちょ、ちょっとウリエル?」
矢じりがオレとウリエルの胸にあたってるんだけど……なにすんの?
まさかお互いの心臓を貫いちゃうの?
「信じろ」
あ、でた。
このやんちゃな感じの笑顔が……やっぱ懐かしいのはなんでだろ。
「……わかった」
左右の矢じりが互いの胸を貫いて……消えた?
痛くないし……血も出てない。
「これで君たちは自分の意志で自由にリンクできる!」
「リンク? 」
「あぁ。それにおせっかいついでにもう一つ」
「なに?」
「神からの助言を授けよう!」
「助言? まさか説教? いや……預言か?」
ちょっとドキドキするんだけど。
結婚できますかオレ?
「カイト、君は既存の冒険者の枠には当てはまらないよ。もっと自由にこの世界を楽しむといい。そうできる力が、君にはあるのだから」
「もっと楽しむ?」
「あぁ。もっと自由でいい。我らはそれを望み、我らはそれを助けるだろう」
「わ、わかった」
具体性に欠ける助言だけども。
でも、なんかしっくり来た。
きっと、大事なことなんだろうな。ぜったい忘れないようにしよう。
「おや……すまない。神威が切れる。俺は再びジェイの中で眠ることにしよう」
「眠る?」
「あ、ぁ。眠るような、ものさ」
「次はいつ起きるの?」
「カイト、に、神威が注が、れると…俺に…も……。ロコ、コさんを」
「わ、わかった!」
イケボさんに力を借りると、オレパワーアップ!
それでジェイも、ひょっとしたらウリエルも目覚める力が溜まるってことだな?
「さ、すが……だ」
ニヤリと微笑んだウリエル―――霧散する羽に……目覚めるジェイ。
ウリエルが眠るとジェイに、ジェイが眠るとウリエルになるってことか。
なるほどなるほど。
ん?
ウリエルいま、ひょっとしてオレの心読んだ?
てことは、イケメン武器モテ考察についても読まれてた?
うわぁ……恥ずかしい。
「はぁ~……よく寝た」
「ジェイ、おはよ」
「おう! で、どうだったよ?」
気になる。
心を読む力、超絶気になる……ふむ。
まさにモテるための能力といってもいいだろう。
「おいカイト!」
「あ、悪ぃ」
「で、どうだったんだよ?」
「ジェイ、お前の中に正神教の神―――大天使ウリエルが眠ってるぞ?」
「は? バカ言ってんじゃねぇよ。神なんていねぇだろうがよぉ」
いやお前、まさかの無神論者なの?
ウケる。
でもまぁ、気持ちはわかるし、そこはどうでもいっか。
「まぁ、信じなくてもいいけどさ」
オレもさっきまで信じてなかったし。
でもまぁ、状況の説明は、しておいてやろう。
「アレ、みろよ?」
「う~わ……なにあの炎の竜巻、やっべえなぁ~」
「「「「「…………」」」」」
わ、わかるぞみんな。
心の中で今、「やっべえのはお前だ!」ってツッコんでるよな?
「なぁカイト。あれって敵の叫び声だよな?」
うん。
さっきからずっとね、炎の向こうからね、敵さんの断末魔がやまない件について。
「えっっっぐぃことするなぁおい」
「……そうだな。お前がやったんだけどな」
「は?」
まぁ、そうなるわな。
信じられるわけないよな、うん。
「おい、カイトがわけわかんねぇ……ぞ? って、あれ? どうした?」
うん。
わかるよみんな。
そりゃ、生暖かい目にもなるよ。
「なんだよおめえら……その目はよぉ」
ちょっと残念な人を見つめる目になっちゃうのは仕方ないって。
ポンポンと、みんなジェイの肩を叩いて……あ、怒った。
「みなのもの!」
「あ、ごめんラグナ! そっちは?」
忘れてた。
前方の敵、ラグナに丸投げだった。
まぁ、心配いらないだろうけども。
ラグナだし。動くラスボスみたいなもんだし。
「うむ。こっちもあらかた片付いておる。世界樹イブ―――内部に入るぞ!」
「よっしゃ! 円陣組むぞ! ヘンゼルさん、世界樹での戦い、留意点は?」
「炎系の技は控えめにな。あと、敵の目的は英知の箱だろう」
「英知の箱?」
「あぁ。伝説のハイエルフ―――イブがそこで永眠したと伝わる」
つまり、ハイエルフの宝? いや、聖地なのかもしれない。
そこを荒らされるわけにはいかないってことか。
「わかりました! 次、パーティプレイの確認!」
新メンバー、それに臨時メンバーもいるからな。
「陸人とルルルが支えるもの、ハルイルコンビが切り裂くもの、ナナちゃんが癒すもので……オレは自由に動く!」
このあたりは、いつも通りの役割分担だ。
あとは―――ヘンゼルさん。
超心強い。
「ヘンゼルさんは唱えるもので呪文攻撃を!」
「わかった」
「なら私も呪文攻撃でいかしてもらいますね?」
ん?
カグヤさんもハイエルフだもんな。魔法はお手のものか。
「カグヤさんお願いします!」
心強い。
うちの弱点の一つだから。唱えるもの―――攻撃魔法に長けたメンバーを仲間に加えたい。
うちいま、切り裂くものばっかだから。
陸人も切り裂くものの適性あるし。
オレもどちらかと言えば切り裂くものの方が得意だし。
唱えるものの方がパーティの華って感じでモテるんだけどね。
てかうち、ほぼほぼ脳筋パーティだな。
「兄さん?」
「すまん、考え事してた。モネとミルルは?」
「モネは支えるもの―――アダマンタイトの杖ですよ。魔法なんかを吸収するですよ」
「よろしく! ジェイとミルルは……切り裂くものだよな?」
「うん! よろしくシテアゲル!」
「おぅ! 任せやがれ!」
「「よっしゃ! ふたりともよろしく頼むぜ!」」
あ、そうそう。
「陸人と三バカは、追い込まれたら竜種のオーラを解放していいけど……」
「わかってる。その際は、私がカグヤと支えるものの役割を担おう」
「ヘンゼルさん、ありがとうございます! カグヤさんも!」
「えぇ。ウチも問題ありません」
「お願いします!」
ハイエルフのお二人、マジで心強い!
あとは……うちのラスボスだな。
「ラグナはどうする?」
「うむ。外で待機しよう。念のためにな」
「じゃあ任せた!」
「うむ! みなのもの、着地するぞ!」
フワリ、いや正確にはズドンと着地したラグナ。
みんな一斉に飛び降りるけど、オレはドキドキが止まらない。
だって……借金二千万ジェムの悪夢が、ふと蘇る件。
大丈夫だよな?
なんか高額なもの壊してないよな?
「兄さん………あれって門だよね?」
「あぁ。砕けてるな」
ひょっとしてラグナ、やっちゃた?
「……やはり敵のねらいは英知の箱のようだ」
あ、よかった。
いや、よくないよくない。
だって巨大な世界樹イブ―――その樹内に続く門が砕かれてるってことは、ヤバい。
「ヘンゼルさんに同意。外はラグナに任せて……あぶない!」
叫んだ瞬間には【エア・シールド】にみんな守られてた。
ヘンゼルさん、マジで速い。
助かります!
お? 陸人もルルルも既に詠唱にはいってる。やるじゃん。
脳筋四人も自己バフ魔法を唱え終わったか。
ナナちゃんも、落ち着いてるな。アネモスを呼び出してるし、楽器も取り出してる。
うん。みんな、マジで心強い。
掃討作戦の成果だ。
「―――次の攻撃がくる! モネ!」
「はい! 任せるですよ!」
シールドの外に伸ばしたアダマンタイトの杖に……炎攻撃が吸収されていく。
それも、とんでもない量の炎が。
モネの精錬技術が凄いってことがよくわかる。頼もしいじゃん!
「カイトよ」
「ん?」
「ここは俺がなんとかしよう。そのままが先に向かうのだ」
「了解!」
背中を預けるのにこれほど安心できる仲間はいない。
背後から敵は侵入してこないことを前提に行動できるっていうのも、ありがたい。
「うむ。カイトよ」
「どうした?」
「今はわからぬかもしれんが………英知の箱に眠るイブはお主にとっても大事な存在だ」
「そうなの?」
「うむ。だから守れ。何があってもな!」
「わかった!」
「うむ。お主らは強い。いいな?」
「………任せとけって!」
っしゃあ! ラグナから認められた。
だって、ラグナから本気でなにかを託されたのは……初めてだ。
テンションあがってきた!
「内部に入るぞ! まず入り口付近の敵を蹴散らす! 陸人、解析結果を!」
「報告! 敵二十体……ランクD相当、弱点は物理……腹部が弱い」
ランクD……ミルルの力を見るにはちょうどいいか。
連携深める機会にもしたいし、な。
「よし! 切り裂くものに任せる! 前方のカエル型獣人……蹴散らせ!」
「「「「「了解!」」」」
「ナナちゃんは念のため、回復の用意を!」
「うん!」
よし。
英知の箱死守ミッション――――発動!
今日もありがとうございました!




