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やがて再び神となる少年は恋愛に夢を見すぎている   作者: ゆうと
第Ⅰ章:アカデメイア
21/85

第20話:パーティ結成

 


「はぁ~、どうしよっかなぁ」

 星外のモンスターが都市を強襲してから、今日で三週間。

 事態の急変を受けて、結局、オレたちの家族旅行は一時、中断になった。

 様々な種族のリーダーたちが集う連合会談の日程が延期されたからだ。

 ちょっと残念な気もするけど。

 けど、仕方ない。

 家族旅行と連合会談が延期になった理由。それが、星外のモンスター掃討作戦。

 救星からの呼びかけに、多くの冒険者が集まってきた。

 この希望の都ホープに。

 個人でランクA、パーティでランクB以上の有名人ばかりが集まってきている。

 目立つのはやっぱり、【ラグナロク】所属のパーティだ。救星が代表を務めるこの星の最高戦力【ラグナロク】からは、大小合わせて十パーティが参加予定らしい。

 【ラグナロク】の代表といえば父さんたちの【救星】だけど。【深海】や【世界樹】も超有名。そして大人気!

 特に、この二大パーティがゾロゾロと都市のゲートをくぐった時はすごかった。拍手や歓声を送るために、たくさんの人達が集まってきて。半日ほど、メイン通り近辺が人混みでごった返したくらいだ。

 そして、ラグナロクに次ぐ戦力を有するライバル―――【アヴァロン】。

 ここも超有名で、所属するパーティからも掃討作戦への協力者が集まってきた。有名な【花龍】、【赤龍】を始めとして、【アヴァロン】からも五パーティが参加するとのこと。

 この他にも、たくさんのパーティが集まってきている。

 今回の掃討作戦で名をあげようって野心に満ちた冒険者たちだ。

 みんな、なんだかんだでモテるために必死なんだと思う。多分。

 その気持ちは、オレも負けてないと思うんだ。

 でも、戦闘経験ってことになると、まったく勝てる気がしない。

 今回は有名パーティが集まってるわけだし。仮に無名だとしても、腕に覚えのある冒険者たちばかりだろうから。

 そして、オレはため息をついて悩んでるわけだ。


「はぁ~、どうすっかなぁ」

 ゴロンとベッドに寝そべって。

 頭の上に一枚の手紙を乗っけて。ジッと睨みつける。

 マジでどうしたもんかなぁ。 

「兄さん、入るよ?」

「あぁ。いいぞ」

 陸人は部屋に入るなり、ため息をついた。 

 またゴロゴロしてるのかって言いたいんだろうな。

 しかし弟よ。

 わかってほしい。

 兄さんは今、選択の苦しみの最中にいるんだよ。

「で、結局どうするか決めたの?」

「ん~、まだ悩み中」

 今回、オレにも通達があった。

 救星会議の審議結果、つまり正式な通達だ。

 それが、この手紙の正体。

 パーティを組んで今回の掃討作戦に参加する意思はあるか? とのこと。

 ブゥちゃんの討伐、そしてアイギスの盾、ラグナとの共闘による都市防衛の実績が認められたと、通達には書いてあった。

 そして、ランクSの個人がいれば、そのパーティのランクはB以上になるらしい。

 ちなみに、アーサーとガウェイン。帝位精霊が付き添っていると、パーティのランクはAになるとのこと。

 つまり光栄なことに、オレらは選ばれたわけだ。

 今回の作戦にとって、有用な戦力に。

 そしてオレは、モテたい。

 野心いっぱいの冒険者見習いとしては、ぜひ参加したいんだけど。

 問題は、メンバーなんだよなぁ。

 オレと精霊ペガサスの憑依した陸人、アーサーにガウェイン。この時点で、けっこうやれると思う。

 あと、三バカ兄弟にナナちゃんにも加わってもらいたい。

 パーティのジョブバランスを考えると、支えるもの、癒すものの存在は必要不可欠だ。

 けど、個人のランクとしては三バカ兄弟もナナちゃんもCやD。

 つまり、今回の任務は危険すぎるんじゃないかって思うんだよなぁ。

「皆に相談してみれば?」

「そしたら絶対、行くって言うだろ?」

「だろうね」

 陸人が隣に腰掛けてきて。

 当たり前のように、隣でゴロンと横になりだした。

 朝の修練でかいた汗、ちゃんと拭ったんだろうなお前……

「今から独り言、言うから」

「……」

 陽の光が差し込む部屋には、少しの沈黙が流れている。

 陸人にしては珍しい。

 どうやら話しにくいことなのかもしれないな。

「あのさ」

「おぉ」

「ぶっちゃけさ―――」

 陸人は、複雑だったらしい。

 父さんが、ダンジョンでオレと三つ首のモンスターを戦わせたって聞いた時に。

 オレが危ないじゃないかって思う気持ち。

 そして、悔しいって気持ち。

 この二つがごちゃ混ぜになったらしい。

 父さんは、オレの夢を理解してくれてるって。オレを冒険者として独り立ちできるようにするつもりだって。

 救星の勇者に、冒険者としての可能性を認められたオレが羨ましくもあったって。  

「そっか」

「―――うん」

 陸人は毎日、アーサーやガウェインと修練に励んでる。

 その理由が、なんとなくわかった気がする。

「冒険者を目指す以上、いつかは自立しなきゃいけない」

「そうだね」

「自立の時に備えて、一人で困難に立ち向かう時に備えて……」

「……うん。父さんが一緒にいるからこそできる挑戦を、兄さんにさせてくれたんだよ」

 そっか。

 そうだよな。

 将来、オレやアイツらが、自分の身を守れるようになっているために。今の段階から、一緒に、危険な挑戦をしていく必要がある。力を付けていく必要がある。

 互いに助け合いながら、学び合いながら、成長していかないと。

 いつまでも、守ってもらえるわけじゃない。

「はぁ~、すっげぇカッコ悪ぃ」

 いつの間にか、ガキみたいに甘ったれた考え方をしてたってわけだ。

 それに、兄として情けねぇ。

 陸人に言いたくないこと言わせてたし。

 それに、言われるまでちゃんとわかってなかった。自分がいかに、冒険者見習いとして恵まれてるかってこと。

 そして可能性を信じてもら得ることのありがたみも、わかってなかった。見守れながら、だけども。危険な挑戦をさせてもらえるありがたみを―――全然わかってなかった。

 自分だけ恩恵を受けておきながら。

 アイツらの可能性を信じて、アイツらと成長できる機会を見逃すなんて。長期的に見れば、大馬鹿野郎の決断だ。

「よっしゃ! アイツらに声かけてみるぞ!」

 今回は、有名な冒険者やパーティが一緒だ。

 色々と学べることも多いと思う。

 それに考えようによっては安全だ。三つ首と戦った時のオレと同じように。

 だって、高ランクの冒険者がたくさん周囲に居てくれるわけだから。危険な挑戦をするには、この上ないチャンスだと思う。

「うん! 三兄弟とナナちゃんだよね?」

「あぁ」

「よし! さっそく行こう!」

 魔法について、ほぼ万能の陸人。

 癒すもののナナちゃんが、回復役。

 支えるもののルルルが、防御に解析役。

 唱えるもののオレが、長距離攻撃魔法役。

 壊すもののハルイルコンビが、近接戦闘役。 

 状況次第で、オレと陸人は近接戦闘も可能だ。

 パーティプレイの基本構成は、これで満たせる。

 あくまでも最低限のメンバーってとこだけど。贅沢は言えない。

「陸人!」

「ん?」

 先に部屋を出かけた陸人を呼び留めて、ニシシっと笑う。

「その、ありがとうな!」

 言いたくないことまで、言わせたんだと思う。

 オレを奮い立たせるために。

「また蕎麦作ってくれたら、それでいいよ」

 ニシシっと笑い返してくれた陸人は、やっぱり自慢の弟だ。




 +++




「遅ぇぞ!!」

 ゴツンとハルルの拳骨が頭上から落ちてくる。

「いっ、、、てぇ」

 竜人族は硬いんだからな?

 オレはか弱いヒュムなんだぞ?

「まったく。通達が届いてから何日経ってんだって話だ」

「すまん。考えすぎてた!」

 両手を合わせて謝ると、ハルルは溜息をついて。

 そんなことだろうと思ったって、笑ってくれた。

「ホラ。同意書だよ同意書。さっさと寄越せ!」

「えっと、オレらとパーティ組んでくれるってことだよな?」

「当たり前だろ!」」」

 クワっと怒鳴ったハルルがヘッドロック。

 同じくクワっと怒鳴ったイルルが右手を、同じくルルルが左手を拘束してきた。

 体格に優れた竜人族三人による拘束に抗えるはずもない。

 そして、ワキャワキャと両手の指を動かして近づいてくるのは―――

「止めろ陸人! 頼む! 止めてくれ…!」

「無理!」

「ちょ!? ブハハハハハっ、ひ、、ひぃいい!」

 両脇をコショコショされればもう、盛大に鼻水が吹き出すわけで。

 たくさんの涙、それと笑顔と一緒に、ウジウジした気持ちも吐き出されていく気がするから不思議だ。 

「もぅ、悪かったから、勘弁しろって!」

 クタクタになって地面に倒れ込んだ瞬間。

 ムギュっと支えてくれたのは―――ナナちゃんだ。

 この頬に伝わる感触は―――まさかっ!

「ご、ごめん! オレあの、わざとじゃなくてその、でもあの……」

「カイト君?」

「ひゃい!」

「また鼻水出てるよ?」

「……」

 ズビビビビっと鼻をすすると、優しく微笑みながら鼻紙をくれた。

 ナナちゃん、大好き。

「今のってパーティ組む話だよね?」 

「うん。あの、、そのさ。ナナちゃんもさぁ」

「もちろん! 私も入らせて!」

 ブンブンと揺れるオレの両手は、間違いなくナナちゃんと接続されている。

 まさか手を繋いでもらえる日がまたも訪れるとは―――記念日にしよう。マジで大好きです。

「じゃあ、あとすることは?」

「パーティ名を考えないとな?」

「うん。パーティプレートも作らないといけないだろ?」

「どうするの? ねぇカイト君どうするの?」

 三バカ兄弟にナナちゃんがノリノリである。

「おっと! こんなところにアイデアリストが!」

「おぉ。これは参考にしないとな」

「ナイスタイミング!」

「うん! そうしようよカイト君!」

 繰り返し言おう。

 三バカ兄弟にナナちゃんがノリノリである。

 しかし悪くない。ナナちゃん、カワイイ。

「えっと……どれどれ?」

 リストを見ると、本当にパーティ名案がズラっと並んでいる。【漆黒之牙】、【電光石火】、【黒豹】、【竜人祭】、【獅子之牙】、【太陽と月】、【竜人道】―――ダメだこりゃ。

「えっと、却下で」

「なっ!?」」」」

 三度言おう。

 三バカ兄弟にナナちゃんがノリノリである。

 しかし良きかな。ナナちゃんがカワイイ。

「なんか重い。暗い。覚えにくい」

「ならさ。希望(ホープ)はどう?」

 都市の名を冠するパーティか。これなら目立つし、覚えやすいかもしれない。

「オレは陸人のアイデアに賛成。みんなは―――賛成みたいだな」

 コクコクと四人が頷いて同意している。

 デカデカと申請用紙にホープと書いて、みんなで繋いだ手を掲げる。


「そうだ」

「ん?」

 ニヨニヨ笑う三バカ兄弟。

「マー」

「メイ」

「ドゥ」

「―――って何のこと?」

 ナナちゃんまで。とうとうナナちゃんまで。オレをいじりだした。

 でもありがとうございますご褒美です!

「説明しよう!」

 キリっとした表情で、かけてない眼鏡をクイっと持ち上げる仕草をしながら。陸人はノートを開いた。

 謎のパラパラ漫画によって、カード集がスライムになった経緯とオレの苦悩がわかりやすく説明されていく。特に、マーメイドを選びたいって苦悩の部分が。非常に丁寧に―――ってこれなんの羞恥プレイ?

「てかなんで陸人がそこまで知ってるんだよ?」

「え? アーサーに聞いたんだけど?」

 しまった。

 ガウェインには、確かに口止めした。

 けど、アーサーにはしてなかったっけ。

「ふ~ん、やっぱり男の人ってマーメイドが好きなの?」

「いやぁ、どうだろ?」

 首が捻じれてもげそうなくらい全力で、ナナちゃんから視線を逸らす。

「俺は好きだぜマーメイド。エロくてかわいいじゃん? な!」

 肩を組んできたハルルの鳩尾(みぞおち)にエルボーを食らわして。他人の振りをする。

 しかしさすが竜人族。皮膚が硬い。見た目はヒュムと変わらないのに。筋肉か? やっぱり筋肉の質なのか?

 ムギュっと掴んだり撫でまわしたりしてみても、筋肉ってことしかわからない。種族差ってことなんだろうかやっぱり。悔しいなぁ。 

「どうした? くすぐってえぞ?」

「いや、なんでもない」

 ハルルがフンって腹筋に力を入れて。

 オレがそれを叩いて。

 ナナちゃんが―――怒った。

「もう!」

 プクっと両方頬を膨らませたナナちゃん! 女神もひれ伏すかわいさだ。

 わかってるよ。オレやハルルじゃなくて。

 陸人がどう思ってるかを知りたいんだよね?

「で、陸人はどうなんだよ?」

 質問しながらチラっとナナちゃんを見ると、嬉しそうにほほ笑んでくれた。

 良かった良かった。

「俺? 好きだよ!」

 嬉しそうに微笑みながら、陸人は語り始めた。世界中に散らばるマーメイドに関する伝承や物語について。

「――って感じでさぁ。なぜか不幸や悲恋の物語が多いんだよねぇ」

 弟よ。

 違う違う、多分そうじゃないと思う。

 好きって意味が違うと思うぞ。マジで。

「で、陸人とナナはほっといてさ。いるんだろ?」

 ニヤニヤとわき腹を突いてくるハルル。

 どうやら今日は残念イケメンモードだ。

「スライムだよスライム! 見せてくれ! 頼む!」

「し、仕方ねぇなぁ」

【メモリー】、そう呼びかけるとバングルがプルプル震えて。

 美しく透き通った青めのスライムがぴょこんと机に飛び乗った。

「マーメイドの姿になれる?」

 プルプルっと震えたスライムが、ミニョンっと伸び始めて―――マーメイドに変身してくれた。

「うぉぉぉぉ―――ぉん?」

 ハルル。すまん。

 ガッツポーズから流れるように静止するくらい、がっかりさせちゃって。でも気持ちはよくわかるぞ。

「ミニサイズが限界みたいでな」

 そしてあっという間に、プルプルっと、もとのスライムに戻ってしまった。

「ありがとうな!」

 頭を撫でながら礼を言うと、嬉しそうにプルルルルンって飛び跳ねた。

「これはこれで、かわいいだろ?」

「あぁ。まぁまぁな」

 ついニヨニヨと見つめてしまう。

 かわいいんだよな。本当に。

「カイト君、これちょうだい!」

 はわわわわぁってキュンキュンした表情。ツンツンってスライムに触れて、またうっとりとした笑顔になって。可愛さの無限コンボ!

 それに初めて見るよ。ナナちゃんんのこんなキュンキュンしてるとこ。

 オレの胸がズキュンって打ち抜かれたよ今、確かに。

「ねぇだめ? ちょうだい?」

「うん! あげ―――ぐふっ」

「兄さん!」

 鳩尾に肘を叩きんできた弟に、大感謝だ。

 そうだった。これ、時価総額数億ジェム相当はしそうなカード集だった。

 それにアイギスの盾みたいに、オレがモテるための最終兵器だった。

 危ない危ない……

「ごめんね。これは、あげられないんだよ」

「そうなの?」

「うん」

「どうしても?」

「うん」

「絶対に?」

 キラキラとした瞳での至近距離お願い攻撃、効果抜群です。

「……うん! い―――ぐふっ」

 ちゃんと断れたのは、またも鳩尾にエルボーがのめり込んだおかげだ。

 ありがとう陸人。もうちょっと手加減してくれるとありがたい。お前は竜人族なんだから。

「兄さん、スライムが……」

「お? どうした?」

 ピョコンピョコンっと跳ね上がったスライムが、テーブルからジャンプして―――ペチャリと地面に張り付いた。

 まるで床に広がった水たまりみたいになちゃった。

 え? これ大丈夫な感じ? なんか押しつぶされたみたいになってるけど。

「おぉ。良かった。立ち上がった」

 プルルルルンっと体を揺らせて。何事もなさそうに動き出した。

 ちょと本気でドキドキするから、紛らわしいことは止めて頂きたい。

「ん? ハルル、あの剣って、、、」

「あぁ。ブゥちゃんのだ。拾っておいたんだけどな」

 スライムが嬉しそうに近づいて。

 ムニュリって―――え! 飲みこんだ!?

「こら! ペッってしなさい!」

 ムニュリと抱きかかえるとプルプルっと微笑んでくる可愛さよ。

「兄さん、叱らないであげてよ」

「陸人に同意。も~、しょうがない奴だなぁ。大丈夫か?」

 なぜか陸人、それにイルルまでもデレデレしてる。スライムに。

 オレの腕から奪い取られたスライムは、嬉しそうにプルプル震えて。甘えたように体を陸人に擦りつけている。

 アレか。スライムまでもそんな感じか? やっぱりみんなイケメンが好きなのか?

「そういえばガウェインさんは?」

「え?」

 ナナちゃんはキョロキョロしながら、ウフフって微笑んだ。

 かわいい。永遠に見ていたい笑顔がここに。【カメラ】って魔法って、ナナちゃんの笑顔を記録するために使えないのかな。ふむ。要検討だ。

「カイト君?」

「あ、ごめん。光の状態になってもらってるけど?」

 アーサーとガウェイン、神気が強いし。

 何よりイケメンだし。ブゥちゃんとの戦いでナナちゃんから王子様扱いされていたし。

 だから光の状態になってもらうことにしているんだけど……

「あのね、このあいだね……」

「うん」

「ガウェインさんがね、ナナのこと見つめてね」

「うんうん」

「美しいって言ってくれたの!」

「は?」

 キャーもう恥ずかしいって言いながら、ナナちゃんは幸せそうに微笑んだ。

「もうビックリしちゃって! でもガウェインさんカッコいいし、強いし、ナナを守ってくれたし…… 王子様だし」

 ナナちゃんの妄想が止まらない。

 いやひょっとしたらこれ、妄想じゃないのか?

「―――ガウェイン? どういうことかな?」

 呼びかけに応じたガウェインが顕現して。

 片膝をついて隣に控えた。

「王子様!」

「なっ! ナナちゃん⁉」  

 ナナちゃんはガウェインの首筋に、ムギュっとダイブした。 

 なのにガウェインは微塵も動揺した感じがない。

 無表情でそっと受け止めている。余裕すら感じるイケメンっぷりだ。女性に抱き着かれることぐらいたいしたイベントじゃありませんよって感じがもう、もう、、もう、羨ましいっ。

 はっ⁉ これがアレか。陸人の物語に出てきた非モテキャラの天敵―――リア充族か!

 確かにガウェインはイケメンだ。

 綺麗な金色の短髪に、色白でマッチョ。目鼻立ちの彫が深く、彫刻のような美しさを誇るその見た目は確かに、王子様と言えなくはないこともないかもしれない。腹立つ! オレがイメージしたんだけど! 自業自得だけど! 腹立つ!

「それで? 美しいって言ったの?」

「申しました。が、何か問題でも?」

 堂々と、しかもサラリと認められると、なにか問い詰めてるこっちが悪い気がしてくるじゃん。メンタルまでイケメンとは…… 腹立つ!

「主よ。顕現しても?」

「アーサー? いいけど……」

 すっと隣に控えたアーサーが、コソコソっと耳打ちしてきた。

「夕陽のことを美しいと、ガウェインは申したのです」

「夕陽って ――――あっ」

 ラグナに乗ってアーサーが見た景色を、ガウェインも共有してたんだった。その時に美しいってガウェインが言ったって、アーサーから報告があった。

 たまたま、それがナナちゃんの目の前だったってことか。

 ってことはこれ、完全にナナちゃんの勘違いってことだよな。

 マズい。

 なんだかややこしいことになって来た。

「はぁ……」

 まぁいっか。他人の色恋に介入するのは、カッコ悪すぎるし。

 オレにできることはない。

「いいよガウェイン。問題ない。でもそろそろ戻って。神気にあてられるかもしれない」

「承知しました」

「もう行っちゃうの?」

「主の命令ですので。それでは」

 スッと姿を消したガウェインを、ナナちゃんは笑顔で見送った。

 そしてなぜかキリっと、オレを見つめてくる。

「ご、ごめんね?」

 ガウェインを返したこと、怒ってるのかも。

「いいの。カイト君は悪くないってわかってるから」

「ありがとう?」

「うん!」

 ナナちゃんは嬉しそうに微笑んで、陸人のもとで駆けていった。

 愛することを愛する海人族の文化、やっぱりナナちゃんの恋愛観にも影響を与えてるのかもしれないなぁ。

 それにしても、だ。

 オレのモテモテ学園生活、だったはずなのに。

 いつの間にか、オレ以外がモテモテの学園生活へと強制変更されつつある。ひょっとしたら、恋愛運が弱点のオレに幸せはやって来ないのかもしれない。

 はぁ。

 生まれ変わったらイケメンになりたい!

 頼みますねイケボさん!





今日もありがとうございました!

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