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やがて再び神となる少年は恋愛に夢を見すぎている   作者: ゆうと
第Ⅰ章:アカデメイア
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第15話:メモリー

 

「暇だ……」

 ベッドの上に寝転がってグダグダ過ごすのも悪くはないけども。

 暇だ。

 それもこれもアカデメイアの改革のせい。

「どうなったかなぁ」

 開き直ったオレがアイデアを付け足した新たな素案が、今頃、父さんから学長の北斗さんに伝えられているはずだ。

 素案を採用するかどうするかはアカデメイアの裁量。

 だからしばらくの間、学校の先生たちは会議に時間をとるそうだ。

 つまり授業は休み。

 サークル活動も休止になってしまった。

 非常に残念なことに、、、ディーテ先生にも、ペルシャ先生にも会えない日々が続くことになるらしい。

 なんてことだ。会いたいのに会えないなんて。

 それにナナちゃん。

 引率の先生がいないから一緒に授業やサークル活動することもできない。

 つまり、オレのいいところをいっぱい知ってもらう機会が失われたわけで…… 恋愛運が弱点っていうのはこういうことなんだろうか。神様お願いします! なんかいい感じの機会をください…!!

「はぁ......」

 まだある。

 実は一番困ってるのは、、、借金。

 この調子でサークル活動ができないとなると、残り二千万ジェムをどうやって返済したらいいのかわからない。

 ダンジョンサークルは大きな稼ぎになったしなぁ。

 魔物から捧げられたルビーの鉱石、なんと本当に四千万ジェムで売れたんだ。

 ディーテ先生が宝石商に「四千万よね?」って言ったんだ。そしたら即座に「四千万です!」って答えが返ってきた。

 あと、取引のお礼と言って、金の指輪が宝石商から先生に捧げられていたわけだけども。そこは気にしないでおこう......


「クソ、、、星外のモンスターめ」

 まったくもって恐ろしい。オレの人生設計をここまで狂わせるとは……

 どうせならあと百年後くらいに来てくれたら良かったのに。タイミング悪すぎだろ。

「にしても急に暇だなぁ~」

 ベッドに寝転がって天井を眺める。

 陸人は光の精霊ガウェインと【謁見の間】でバトルトレーニングをしてる。

 アーサーの方は今朝から、手当たり次第に書物に目を通してる。この世界のことを理解するためらしい。その方が色々とオレの役に立てるだろうって言ってた。

 そんなアーサーがさっきから読んでるのはオレの愛読書。

『初心者神様の日記』。ヒュム族の新米神様が色々やらかしながら頑張ったっていう物語だ。小さい頃、気が付いたら棚に並んでたんだ。

 実はココに色んな料理のヒントが載ってる。

 あと、陸人が大はまりしてる言い回しみたいなのがたくさんあって。オレら兄弟はよくそれを使って話をするんだ。超絶とか、ヤバいとか、尊いとか、推しとか。アーサーも使えるようになってくれたらいいな。会話が楽しくなりそうだし。期待してるんだ。

 でも、あんまり有名な作品じゃないらしくて。作者も本も知名度が低いみたい。オレ以外にこの本を持ってるヤツに会ったことがないし。作者はRKKって書いてあるけど、詳細は不明なんだよなぁ。

 まぁつまり…… 売れなかった作品みたいだ。オレは好きなんだけどね。新米神様の残念な感じ具合が。

 それにしても、、、

「ん~~!! いい天気!」

 愛読書はアーサーが読んでるし。紅蓮と黄龍は父さんと一緒に出掛けたしなぁ。救星も会議続きらしい。あと、ダンジョン、都市内や周辺施設の様子を確認するために慌ただしく動くことになるとか。

 だから母さんの店も臨時休業になっちゃった。

 つまり、、、やっぱり暇だ。

「蕎麦でもつくるか」

 三バカ兄弟とナナちゃんに食べさせてあげよっかな。イルルは喜んでくれそうだし。ハルルも大量に作れば満足してくれるだろうから。

 レシピ、、、どこやったっけ。

 確かあの棚に……

「そっか。そういえばカード集もこの棚に入れてたっけ」

 忘れてた。

 あのメンバーが神なら、言う通りしておいた方がいいだろうな。怒ってこれ以上神様がオレの恋愛運下げないように......

 この厚めの冊子が持ち運びやすくなるって言ってたっけ。

「えっと、、、【メモリー】? だったよな?」

 おぉ、、、光った。

 それにダンジョンギアみたいな小さなモニターが表紙に浮かんできたぞ。

「ん? 形態の選択??」

 幾つかタイプがあるのかな?

「えっと…… 」

 おぉ! グリフォンがある! 火の鳥に、、、貝!? あと虎にアルマジロ……?

「なっ!?!!!?」

「主よ、、、何か異変でも?」

「や、なんでもない大丈夫だよアーサー! 続き読んでて!!」

「承知しました」

 危ない危ない。動揺しすぎた……

 これってマーメイドだよな? あのマーメイド。

 このカード集がマーメイドになるんだろうか。持ち運びに便利になるってことは自分で行動するってことだよな? 多分。

 つまりマーメイドとの生活が始まるってことか…… ふむ。悪くないだろう。

 いや待てよ?

 マーメイドが常にオレの側にいることになるのか? それって他人から見たときにどう見える??

 まぁ父さんは喜びそうだ。

 でもナナちゃん…… 女子には軽蔑される気がする。いつもマーメイドを隣に連れてニヨニヨ歩くヒュム族の少年と、誰が恋愛をしてくれるだろうか? いやしない...... オレが女子ならドン引きすると思う。もはやちょっとキモいレベルだ。

 でも捨てがたい! マーメイドのいる生活…!

 いや落ち着けオレ! 所詮はカード集だぞ!? 結婚どころか恋愛の相手にもならないんだぞ! いっときの欲望に負けて本当の恋愛チャンスを逃してどうするよオレ!

 でもでも、、、やっぱり捨てがたい!

「んがぁ~!? どうすればいいんだ!!」

 究極の選択ってヤツか。

「主? 大丈夫ですか??」

「、、、、ごめんうるさくして。大丈夫」

 光の精霊アーサー。

 髪を後ろに流したイケメンは、今日は鎧姿じゃない。身軽な部屋着のようなカッコをしている。

 自分で衣装チェンジができるんだろうな。

 腹立つことに、イケメンは何を着ていてもイケメンである。

 それに光の精霊だからか、なんかうっすら光ってるし。「今日も君は輝いて見えるよ!」なんて褒め言葉を毎秒実践してるわけだ。このイケメンめ。

 まぁオレが生み出した姿なんだけど……

「はぁ……」

 やっぱりあの時、光の精霊たちを美少女にしておけば良かった。普段は姿を消していてくれるわけだし。今からでも変更可能か聞いてみるか……

 いや待てオレ! もう皆に紹介しちゃったじゃん。「光の精霊? あぁ。イケメンから美女に変わってもらいましたよ! はっはっは!」なんて言える程オレの心は強くない。

 やっぱりこのカード集に賭けるしかない。

「どれにしようかなぁ」

 発想を変えてみるか。

 常に側にいるわけだよなきっと。

 だったら女子からも可愛いって言ってもらえる。そんな姿になってもらう方がいいよな。

 オレも女子と話す機会が増えそうだし...... うん。いい考え方だ。我ながら冴えてる!

「問題は……」

 何が女子受けするのか。

 オレにはさっぱりわからない。

 だってオレ女子話したことあんまりないし。自分で言ってて悲しくなってきたし......

 ハッキリ言って女子の生態は謎すぎる。

 三秒で男の下心を見抜くってクルドおじさん言ってたし。ロダン兄ちゃんも父さんも、女子にはウソはすぐ見抜かれるって言ってたし。

 仲良くなりたいという下心がバレない、かつ、女子受けが良く会話のきっかけが増える生き物。グリフォンか、火の鳥か、、、いったい何が正解なんだ??

 う~ん......

「兄さん! 」

「うぉ!?!?」

「はぁ、、、、まったく」

「驚かすなよ、、、何だよ急に」

 さっきから何回も呼んでるのにって言いながら、陸人は汗を拭ってる。ガウェインとのトレーニング、頑張ったんだな。このさわやかイケメンめ。

 その間、オレがしていたことと言ったら…… ダメな兄ちゃんでゴメンよ。

「ハルルが誘いに来たよ?」

「ハルル?」

「暇なら料理の作り方教えてくれってさ」

「そういえば約束してたっけ」

 ナナちゃんとペアを組ませてくれた時に。

 あれからナナちゃんとちょっと仲良くなれたし。ハルルには大感謝してるし。暇だし......

「じゃあ行くか!」

 アーサーはすっと姿を消した。どうやら一緒に来てくれるらしい。

「ところでそれ何?」

「ん? カード集だよ」

「何この表示??」

「よくわかんないけど姿を変えてくれるらしい」

「へぇ~。ん? マーメイド?」

「、、、そんな選択肢もあるみたいだな。うん」

 陸人がニヤニヤしながら見つめてる、、、気がする。視線を合わせないようにしよう。

「これオレが決めてもいい?」

「いいよ。オレ的にはどれでも一緒だし」

 クソっ。素直になれない……

 しかし「陸人が選んだってば!」なんて言い訳できるメリットは大きい!

「じゃあこれにしよっと!!」

 背後から光が差し込んできて、、、ボワンって音がした。

 一体、何を選んだんだ? し、信じてるからな陸人。

「はい兄さん!」

「お、弟よ!!!」

 さすが陸人! オレの気持ちをわかってるじゃないか!

 二十センチくらいのマーメイドが陸人の肩の上で微笑んでる。ちょっと小さいけどかわいい! 両手を差し出したらちょこんと飛び乗ってきた。

「おぉぉぉぉ、、、、ってあれ?」

「ごめんね兄さん。長くは持たないらしいや」

「……コレなに?」

「選択肢にない生物だけど。文字入力してみたらできた!」

「文字入力?」

「やっぱちゃんと最後まで見てないだろ? どうせマーメイド辺りで止まってさ」

「いやぁ、、、そんなことないけど?」

 図星だ。

 と、とりあえず口笛を吹いてごまかしておこう…… 下手だけど。

「兄さんそういうとこだと思うよ。モテないの」

 陸人のツッコミは聞こえなかったことにする。これは自分を守るために大事な方法だって、父さんが教えてくれた必殺技だ。

 陸人のなんとも複雑な表情で、、、兄としては複雑な心境だ。

「で、、、コイツは何?」 

「それ擬態型粘動性生物。例のスライムだよ! 何にでも擬態できると思うよ?」

 時間や大きさの限界はあるみたいだけどと、陸人は楽しそうに笑った。

 陸人が言うには、やっぱり最初に仲間になるモンスターはスライムって相場が決まってるらしい。まぁ陸人が言うならそうなんだろうな。

「よ、よろしくな?」

 プルプルと震えた青いスライムは嬉しそうに微笑んで。 

 それからオレの腕に巻き付いた。どうやら手首部分を覆う籠手に擬態してくれたっぽい。

「そっか。生物じゃなかったら長時間いけるのかもね」

 手首の籠手をツンツンと陸人が突いても、スライムは元の姿には戻らない。

 それにけっこう強度があるのかも。コツンコツンって硬い音がするし。


「お前ら遅いぞ!!」

「あぁ、、、ごめんごめん」

 ハルルが待ちきれないって感じで居間に入ってきた。イルルとルルルもいる。

 まぁもう第二のわが家みたいなもんだよな。オレも「ただいま~」って言いながらハルルの家に勝手に入ることあるし。

「じゃあ作るか!」

 恩返しはちゃんとしないと。

 それに暇だし今。 

「そうそう。アカデメイアの調理室借りたぞ?」

「マジで!?」

 ハルル、グッジョブ!!

 あそこはデカいし、道具も揃ってる。教えるならあっちの方がやりやすい。

 マジでやるじゃんハルル!

 入学前の校舎見学で見て以来、オレも一回使ってみたかったんだよ!

「あの、、、私も一緒に行っていいかなぁ?」

 ハルルの後ろから聞こえるその可愛い声は……

「ナナちゃん!?」

「ダメ?」

「全然ダメじゃないよ!!」

 ワタワタと勝手に両手が動く。

 よかったスライムにしてくれて。

 もしマーメイドだったら…… 色んな意味で今この瞬間、オレの人生終わってた気がする。

「カイト君、あのね、、、」

 モジモジしてるナナちゃんも可愛いい。

 あ、そっか。あの約束だね??

「おい陸人! 一緒に行くだろ?」

 ナナちゃんとの約束。陸人とご飯食べる機会をつくるって。

「ん~、、、どうしよっかなぁ」

 またガウェインとトレーニングしたいとか言い出した弟。

 ストイックにもほどがあるぞ......

 ほら、ナナちゃんがちょっとシュンってなってるじゃん。その寂しげな顔も可愛いけども。

「ふ~ん、、、そっか。せっかく蕎麦でも作ろうって思ってたんだけどなぁ」

「行く! ちょっと待ってて。汗かいたから着替えてくる!」

 ガバリとシャツを脱いで着替えに行った弟の背中を、ナナちゃんが嬉しそうに見つめてる。

 ちょっと、いやかなりモヤモヤするけど、、、ナナちゃんが幸せならそれでいい。

「カイト?」

 こういう時、ポンポンっと肩を叩いて来るのは決まってイルルだ。

「大丈夫だって!」

 ニシシっと笑うと、無理すんなよって真顔で言ってくれる。

 でもそうだよな。

 ちょっとくらいイタズラしてやっても罰はあたらないか。

 よし!

 陸人の蕎麦に、あの辛くてツ~ンとする調味料をたっぷり入れてみるか。

 ワサビって言ってたっけ。ロココさんが冷蔵庫に入れてくれたはずだし。

 あまりの辛さに蕎麦を吹き出すがいい!

 鼻水とか吹き出してナナちゃんに笑われるがいいぞ弟よ…!

 兄の器の小ささを思い知るがいい…!



今日もありがとうございました!


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