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やがて再び神となる少年は恋愛に夢を見すぎている   作者: ゆうと
第Ⅰ章:アカデメイア
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第12話:家族会議

 


「それにしても美味い!!」

「えぇ、、、本当に美味しいわね」

 陸人はずっと晴れやかな笑顔だ。ニコニコしながら蕎麦と天ぷらを満喫している。

 母さんも陸人に負けてない。ニコニコしながら天ぷらを食べている。美味しい美味しいって言いながら。

 自分でどんぶりを握って、箸をとって、好きな料理に自由に手を伸ばしては楽しそうに笑う。そんな陸人を見つめては、母さんは嬉しそうにほほ笑んでる。

「兄さんそれ食べないの?」

 ひょいっと横から箸を伸ばして。陸人がオレの天ぷらを奪った。

「ちょ、、、待てって! 食うから!!」

「残念でした~」

 ニシシっと笑う陸人はためらわずに天ぷらを口に放り込んだ。

 兄弟ならよくありそうな飯時弱肉強食早い者勝ちバトル。でもオレたちの間では実に久しぶりで。無性に楽しくなってくる。

「ならオレは、、、これも~らいっと!」

 オレも陸人の皿から焼肉を奪ったら、母さんに叱られた。

 陸人と目をあわせて爆笑すると、父さんも笑って。母さんも仕方ないわねって嬉しそうにほほ笑んだ。

「あら陸人。頬にソースがついてるわよ?」

「ん、、、とって」

 そう言いながら手を伸ばしかけて母さんは笑った。陸人もだ。

 もう自分で拭けるんだったと、互いに微笑みあってる。父さんもオレもつられて大爆笑だ。

 食卓にこんなにも笑顔があって。

 こんなにも美味い料理が並んでいて。

 ロココさんありがとう! やはりあなたが神か。一生ついていきます!


「そうだ。冷蔵庫なんだけど……」

「うん。なんかいっぱい入ってるね」

「それがね、、、」

 どうやらそれだけじゃないらしい。

 母さんが言うには、冷蔵庫が大容量になっているとのこと。見た目は全く変わってないのに。食材を押し込むとその分、奥行きが広がるとか。食材を取り出すと、隙間を埋めるように、詰め込んだ食材が奥の方から登場するらしい。

 なんて便利なんだそれ。これで料理の試作を創るときに困らなくて済みそうじゃん。

「なら今度旅をするときはあの冷蔵庫持っていくか」

 なるほど。父さんの言う通りかも。

 冒険者が旅する時に使う【キャンピングカー】って魔法。

 これを使うと、馬車の荷台に不思議な空間への入り口が出現する。広めの草原や庭、畑に牧場、なんと川も流れる不思議な空間なんだ。

 それに家もついてる。お客用の部屋もたくさんあるんだ。

 精霊もこの空間が大好きで。旅の最中も、草原や川なんかでのんびりと過ごしてる。

 そうそう。家内には鍛冶場や訓練場、キッチンやちょっとした舞台なんかも備え付けられている。温泉も!

 この魔法を発動して、自給自足の生活をしたり、鍛冶や薬の調剤をしたり、弟子に稽古をつけたりしながら、国を移動しダンジョンを渡り歩く。

 旅人や商人も旅に加わることもある。あと弟子たちを連れて歩くパーティもあるんだ。

 そうすると一台の荷馬車で二十人くらいが生活することになる。何が困るって、大人数をまかなう食料の保管だ。

 だからやっぱり、この大容量冷蔵庫は旅にうってつけだと思う。

「父さん!母さん! オレ旅に出たい!!」

 モグモグしながら陸人が言うと、父さんは嬉しそうに笑った。父さんも母さんもダンジョンを巡る旅が好きだから。

 でも領主だからなぁ。

「そうだなぁ。たまには皆で都市の外に出かけるか!」

「え? 領主の仕事はいいの??」

「あぁ。俺はボランティア領主だからな」

 そっか。正規の給料をもらっている副領主がいるんだった。

「なら私も店は任せて一緒に行こうかしら?」

 母さんもノリノリだ。

「ちょうどいいことに、近く連合会談が開かれる。竜人族の里で」

 先日の天啓を受けての緊急会談。

 各種族の代表が集まって対策を共有するんだろうな。

「クルドと奥さんたち、ロダンにペルシャ、、、あとヘンゼルも同行することになるだろう」

 そっか。皆、各種族からこの都市に派遣された親善大使だった。

 ロダン兄ちゃんの婚約者、塩龍のカルラさんも行くかも。もしそうなら、救星メンバー勢ぞろいでの旅ってことになる。

「そういえばヘンゼルさんってダンジョンから帰ってきたの?」

「いや、、、まだだ」

 ちょっとだけ心配そうなオレに、父さんはニシシと笑って。アイツは強いから大丈夫だって励ましてくれた。

「まぁ、、、そうだろうけど」

 光の精霊もついてるし。大丈夫なんだろうけど。

 こないだのモンスターみたいなのがたくさんいるかもしれない。もしそうなら、ヘンゼルさんとはいえ心配になる。

「まぁそのうち帰ってくるさ! いつもの無表情でな。シレっと毒を吐きながら」

「そうそう。本当に表情読めないよねあの人。基本ずっとツンツンしてるしさぁ」

 こないだのダンジョンデートも大変だった。

「でも一度、満面の笑顔を見せてくれたことがあってな……」

「マジで!? なにそのレア情報! なにがあったの!!」 

「それは私の話をしているのかしら?」

 ビクっと背筋が伸びる。

 父さんもだ。

「あらヘンゼルじゃないの。いらっしゃい」

「お邪魔する」

 母さんはヘンゼルさんと仲がいい。ぜんぜんタイプが違う気がするのに。すっごく話が合うんだって。

「一緒に食事しない?」

「えぇ。いただくわ」

 すっと父さんの隣の椅子に座ったヘンゼルさん。

 すると陸人の頭がぐわんぐわん揺れ始めた。だから頭撫でるの下手すぎだってば。

「さすがヘンゼル! やっぱり無事だったな!!」

「えぇ。それで質問の回答は?」

「……すいません」」

 父さんと二人で謝る。すると何事もなかったようにお茶を召し上がった。

 謝罪の前後でまったく表情が変わらない。

 もう会話は終わったってことでいいんだろうか??

「それでダンジョンの深層はどうだった?」

「共有に値する情報があるわ。救星を集めましょう」

「わかった。今日の夕方から救星会議を開く」

 さっそく手配するらしい。父さんは紅蓮と黄龍に声をかけた。

 どうやら大変なことになりそうだ……

「カイト。お礼を言っておく」

「ひゃい! な、、、何でしょうか??」

「光の精霊よ。助けられたわ」

「良かったです! アーサー! ガウェインも! ありがとう!」

 名を読んで礼を言うと、アーサーとガウェインがスッと姿を現した。

 二人を皆に紹介すると陸人がポカンとする。名づけたらこうなったと言うと、兄さん大正解!って褒めてくれた。陸人はこの二人が出てくる物語が大好きだからな。

「主のお役に立てて光栄です」

 手を差し出したらポカンとしたので、握手の仕方を教えてやる。

 手を握ってブンブンっと揺らしてね。

 でもそれに何の意味があるのかわからないって顔を精霊たちはしたわけで。一緒に暮らすうちにわかるよって言っておく。

「では我らはこれで」

「いつでも御身の側に」

 現れたときのようにスッと二人が消え去る。神気が強いだろうから、周囲の人たちに影響が出ると思って長時間具現化するのを遠慮したのかもしれないな。

 わが家のメンバーは大丈夫だって、今度教えてあげなきゃいけない。

「そうだヘンゼル。近く竜人族の里で連合会談が開かれる」

「妥当ね。同行するわ」

「それオレも一緒に行きたい!!」

「私も行くわよ」

 陸人は同行したいだろうな。ずっと外出を我慢してたわけだし。外の世界を歩きまわりたいだろう。

 母さんもだ。陸人と旅がしたいんだと思う。竜人族の修練を、もっと陸人に教えたいだろうし。

 さて、オレはどうするかな......

 アカデメイア、ダンジョンサークル、ディーテ先生にナナちゃん。

 どれもこれも魅力的かつ非常に重要。どれも優先順位はとっても高い。

「オレは、、、残ろうかな」

 そう言った瞬間、父さんと母さんがニヤリと微笑んだ。

「これは久しぶりに…… アレだな」

「そうね。アレにしましょう」

「ちょ、、、、まさか」

「えぇカイト。家族会議、しましょう?」

 わが家の独自ルールで進められる家族会議。

 確かに、皆で開くのは久しぶりかもしれない。

「紅蓮と黄龍、あとラグナさんにも入ってもわらないとね?」

「あぁ。そうしよう」

 母さんと父さんはとっても楽しそうだ。

 ヘンゼルさんはオレたちの会議には興味がなさそうで。無言で蕎麦に手を伸ばした。

「……」

 おぉっと。どうやらお気に召したらしい。

 ずっとモグモグ食べていらっしゃる。表情は全く変わらないけど。




 +++




 さて。舞台は中庭。

 救星の上位精霊である紅蓮と黄龍、そしてドラゴンのラグナも参加だ。

「では投票。家族全員で旅に行きたい人!」

 議題のせいかとっても楽しそうな陸人の仕切りで、投票が始められた。

 テーブルの上に描かれた赤い輪の中に、五つの石が入れられた。救星夫婦、陸人、そして精霊二体の石だ。

 赤い輪の線上に1つ置かれている。これはラグナの石。

 そして動かない一つの石が、オレの。

 わが家の家族会議では、賛成と反対に票が分かれた場合、決めかねている人に決定権がある。つまりこの場合、ドラゴンが判定者になったわけだ。

「ふむ。我はどちらでもよいのだがな」 

 決めかねている人が一番冷静に、客観的に物事を判断できるって考え方だ。

 まず、各立場でメリットを述べる。

 次に、判定者がそれぞれのデメリットを伝える。

 それからデメリットを克服する案を、それぞれの立場から述べる。もちろん、変更に伴うメリットの増減についても、、、だ。

 最後に、判定者が決定する。

 その分、決定権を持つ人は、物事が上手くいっても行かなくても、責任を一番追うことになる。

「陸人と思いっきり旅を楽しめば、更に家族の絆が深まるわ」

 母さんがさっそくメリットを述べる。

「それに大変な時期だ。家族は一緒にいた方がいい」

「オレを心配してくれたじいちゃんとかに元気な姿見せたい!」

「俺も他国の精霊たちの様子を見てまわりたい」

「我も紅蓮に同意だ」

 紅蓮、黄龍も意見を述べる。

 賛成派は以上だ。

 次はオレの番だな。

「オレだってランクSだ。ちょっとでも街に戦力は必要な時期だろ?」

 実際、連合会談でランクSがごっそり居なくなる。救星夫婦、クルドおじさん夫婦、ロダン兄ちゃんに婚約者のカルラさん、そしてヘンゼルさんも。

 オレだけでも残った方がいいと思う。

「ふむ。これで終了か?」

 ラグナの問いかけに皆が頷く。

 これで旅に出るメリット、そして出ないことのメリットの提案は終了だ。

「ではデメリットだな。まずは全員で旅に出るデメリット」

 都市の住人に不安を与えるだろうと、ラグナは指摘した。先の天啓を受けて、ランクSが揃って里を出たとなれば、人々がパニックを起こす可能性もゼロではないと。

「そしてカイトが一人残るデメリット」

 これは家族の絆に関わるとラグナは指摘する。どちらかに何かあった際、双方に苦しみ続けることになるだろうと言いながら、ラグナが頭をグリグリ撫でてくれた。

「それでは、デメリットの克服案を述べよ」

 ラグナの問いかけにまっさきに答えたのは陸人だ。

「里を出るのは会議のためだと都市の皆に伝える」

「そしてラグナ殿に協力を得て襲来時にはすぐに戻ると伝える」

「他国と全力を挙げて協力体制を築く意志を見せるために、私たち救星が赴くと添えてね」

「精霊たちの警備態勢、我らとの連絡体制を、俺と黄龍とで整えよう」

「我が思うに、この代案によるメリットの変化はない」

 さすがだ。

 納得できる改善案だった。

「みなの主張は理解した。ではカイトの番だな」

「オレは、、、、ない」

 父さんが連合会談に出かける以上、家族が全員で度に出るか、分かれるかの二択だ。

 誰が何人残っても、ラグナの指摘はさけられない。

「ふむ。そうか」

 よく冷静に考えたと、ラグナが頭をグリグリ撫でてくれた。

 この絶妙な力加減をヘンゼルさんにも見習っていただきたい。

 そもそも超怪力のドラゴンにできて、なぜヘンゼルさんが頭ナデナデを上手にできないのか。謎は深まるばかりである......

「では家族全員で旅に。事前準備は先の通り。旅の責任は我にあるものとする」

 議論が終わったら皆で握手する決まり。

 意見の相違でモヤモヤした気持ちを解消するために。

 オレも家族全員での旅が嫌なわけじゃない。行くと決まったら決まったで、楽しみだ。道中のバーベキューや特産品の買い入れをしたい。あと、自分のつくった武器を売ってみたり、その土地の鉱石なんかを仕入れてみたり。

 アカデメイアを休むことになるのは残念だけど。

 でも決まったからには、思いっきり楽しむことにしよっと。自分から物事を楽しみにいかない人のもとには、いつまでたっても楽しみは訪れてくれないから。


「終わったの?」

 ヘンゼルさんはのんびりお茶を召し上がっておられる。

 どうやらわが家の紅茶がとってもお気に召したらしい。

 茶葉を取り出してブレンドを分析済みのご様子だ。

 喜んでもらえたのなら良かった。

「あぁ! 待たせたな!」

「構わない。それはそうとクルル。蕎麦美味しかったわ。ご馳走様」

 おぉ。

 やっぱり蕎麦がお気に召したようだ。

 今ちょっと微笑んだ。間違いない。

 今度から定期的に蕎麦をつくることにしよう。ヘンゼルさんの来訪に備えて。

「よっし! じゃあ行くか!」

 家族会議の次は、救星会議とは。父さんも母さんも大変だなぁ。

「いってらっしゃい!」

 オレは本でも読むかな。

 あ、思い出した。そうだった。カード集に【メモリー】って唱えておかないと。

「大和。カイトも連れていくわ。陸人もね。いい?」

「ん? あぁ、、、なるほどな。もちろんいいぞ!」

「え!? なんで!?」

 ちょっとオレにも用事が……

「じゃあ行くわよ」

 ……ということになった。

「そうだカイト。会議のお茶の用意もお願いね!」

 ……なぜだか更にそういうことになった。

   






今日もありがとうございました!


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