第10話:未知との遭遇
「じゃあ、、、始めるか」
ベルトから武器を取り出す。
ロダン兄ちゃんに指導を受けながら作ったショートソード。ミスリル製だ。
ミスリルの金属属性は【倍化】。オレのショートソードは攻撃威力が五十%も高まっている。精錬が上手くいったおかげだ。
「まずは首から、、、」
ショートソードを構えて間合いを測る。
三つ首のモンスター。おそらく首を鞭のように使う。間合いは三メートルくらいかな。あと口からなんか吐く可能性大。毒の息とか炎とか。
間合いの外で一箇所に立ち止まらない方がいい。グズグズするとブレスの餌食だ。
「行くぞ!!」
近寄らないようにしながら、ダッシュと方向転換を繰り返して様子を見る。
モンスターはオレの動きに素早く反応はできない。体が重すぎるからだ。
「ギギギギギギ、、、」
唸り声を上げたあと。三つ首を高く掲げて。
「やっぱりそうきたかっ」
しびれを切らしたらしい。叫びながら炎を吐き出した。
オレはスピードを上げて転がりながら回避する。
「ったく、、、熱すぎだっての」
熱で地面が赤くなってるし……
けど攻め込むなら今がチャンスか。
さすがにブレスには多少のインターバルがあるだろ。
間合いに入って動きを封じられたら、たぶん殺される。噛み付いたり、叩かれたりして。
つまりスピード勝負。そして硬さ勝負だ。
オレが間合いに入って首を切り落とすのが早いか。
切り落とせるほどショートソードが硬いか。
オレが遅く、ショートソードが相手よりもろければ終了。
「イチかバチか、、、だな」
地面を蹴って間合いを詰める。
相手も首をしならせてオレを薙ぎ払おうと動く。
それを跳び上がって回避して、、、空中でソードを握り締めて、、、振り下ろす。
「くっそ硬ぇな!?」
ショートソードは刺さることなく弾かれる。
「うおっと、、、あぶねぇ~」
左右の頭が噛みつこうと襲い掛かってきた。
けど、大丈夫だ。素早い首の動きがオレには全部見える。それに体も動く。
やっぱりマジでランクSの身体になってるじゃんオレ。
左右の首を交わすように体をひねって。思いっきり地面を蹴って後退する。するとあっという間に間合いの外だ。
「回避は可能、、、あとは攻撃」
しゃもじだ、しゃもじ。
壁に突き刺さるくらい鋭く。無駄を割けて。突き刺す。
「開幕に歓喜せよ。滅びの音は我のもの。滅びの声は汝のもの……【ファウスト】」
バフの効果持続も完了。
あとは度胸、、、、だ。
こいつを倒したらナナんちゃんがオレに惚れる!! ってことにしよう。
「真っすぐ、、、真っすぐ、、全力!!」
思い切り地面を蹴る。二歩めで加速し三歩めには最高速度。
三つ首が持ち上がってオレを叩こうとする。
でも、、、わかる。オレの方が速い。
四歩めで速度を維持して、、、五歩めはトドメの一歩。
「グギャ、、ァァァア!?」
ズブリ、、、モンスターの首筋にソードが刺さる。喚き声をあげるモンスターにソードを押し込んで、、、確信する。
「オレの勝ちだ」
勝利宣言を証明するようにモンスターの身体が霧状になる。
「へへへ。やった!」
「カイト!危な……」
オレの右半身に衝撃が走ったのは、ハルルの叫び声が耳に届いた瞬間。
思いっきり薙ぎ払われて地面に転がって、、、壁に全身を打ち付けた。
「いってぇ、、、」
頭を振って視点をハッキリさせる。
状況が飲みこめた。一体、また一体、、、部屋に三つ首のモンスターが入ってくる。
「カイト! いったん下がれ!」
父さんが叫んでる。
「わかった、、、」
立ち上がろうとして気づく。右手に力が入らない。
「折れたかな......」
肋骨も折れたかもしれない。
この状態で、、、十体の相手は無理か。
モンスターが父さんのシールドを割ろうと襲い掛かっている。
そしてオレの方にも一体。
ズルリと体を地面に引きずりながら歩いてくる。
「逃げろ!!おいカイト!!逃げろって!!」
「立てよ!!カイト、、はやく!!」
ハルルとイルルが叫んでる。
でも体が、、、、動かない。脚の骨も折れてるのか??
『聞こえますか?』
頭の中に素敵な声が響く。
「ん、、、、イケボさん?」
『ロココです』
夢を見そうなのかも、、、痛みで意識がもうろうとしてるのか??
「そうだ。デートの夢ありがと」
『いえいえ』
「オレたちピンチなんだけど、、、助けてくれる?」
『オーダー承りました』
「ありがと」
『禁断型神権【神のサイコロ】の効果発動、、、分神体とのシンクロ確認』
自分の体が輝いていく。
『結果の変更……完了しました』
嘘だろ!? 痛みが消えた。
手も足も動く!
『無傷の状態になるようダメージの結果を書き替えました』
「マジ有能! ありがと!!」
礼を言いながら体を捻る。攻撃をギリギリ回避しながら左にジャンプ、、、一気に間合いを取った。
こっから反撃、、、
「あ、、、ない!? クソっ」
さっき叩かれたときにショートソードを落としたんだ。
ヤバい。武器なしで戦うのはきっつい。あと六体もいるし。
「カイト! これを使うじゃん!!」
「え?」
ドゴン…… 地面が砕ける重い音。
衝撃が走った足元を見ると、、、
「すげぇ、、、」
なんて綺麗なハンマーなんだ。
少し長めの持ち手部分は龍の体のデザイン。
咆哮している龍の頭部分で殴るって感じだ。かっこよすぎる!!
持ち手を握ろうとすると、、、ハンマーの方から手のひらに吸い付いてきた。
「そっちは任せたじゃん! ぶっ叩け!」
「わかった!!」
全力で駆けて、、、四歩めで地を蹴る。
思いっきりジャンプして、、、モンスターにハンマーを叩きこんだ。
振り下ろした瞬間だ。円形をした真紅の紋章が竜の口の部分から発生したのは。
その効果なんだろうか。
叩いてるのに何の反発感もない。まるでふわふわの布地にハンマーを打ち込んだような感覚。
本当、叩いてる感覚はまるでしないのに。
モンスターの身体は紋章に押しつぶされて、、、霧散した。
振り抜いたハンマーが地面にぶつかって。
大穴があいた瞬間、、、振動がフロア全体を襲う。
「…… すげぇ」
いったい何の金属だ?
この輝きはまさか、、、ヒヒイロカネ!?
いやまさかハンマー全部がヒヒイロカネか!? どうやって創るんだよこんなの!! 純度百パーセントで加工するのは不可能っていわれてるレアメタルだぞ......
『カイト様。もう一体出現します』
「えっ?!」
ふと嫌な気配を辿ると空気にヒビが入って。
さっきのよりデカいモンスターが現れた。
しかもすでに三つ首を掲げてブレス攻撃態勢に入っている。
今から間合いを詰めても攻撃が間に合わない距離だ。
『カイト様、【千変の風刃】と』
え?! 風魔法!?
「無理だよ」
今から詠唱始めても間に合わな、、、
『いえ。ただ魔法名を』
「わかった信じる! 【千変の風刃】!!」
モンスターを指差して叫んだ瞬間、、、竜巻のような風魔法が発生した。
竜巻から緑の風刃が次々とデカいモンスターに襲いかかって、、、あっという間に倒してしまう。
「マジか……」
ポカンとしてる父さんと目があった。
いやいや、、、まさか……
首を横に振りながら否定する。
でも、念の為に確認しておこう……
「イケボさん、今のって、、、詠唱破棄?」
これも世界に残された【偉業】の一つ。
呪文の詠唱を破棄して魔法の結果だけを得る。いわゆる無詠唱魔法だ。
またヘンゼルさんが怒るやつじゃないだろうか……
『正確には異なりますが同様の効果があります』
「どういうこと??」
イケボのロココさんが言うには、別世界のオレが魔法を詠唱したとのこと。
この世界のオレはその結果のところをいただいて、魔法の発動させたらしい。
ありがとうオレの代わりのオレ!! そしてロココさんマジ有能!!
「よっし、、、こっちも終わったじゃん!」
「え!?」
オレが二体倒してる間に、、、もう全部倒したのか!?
この人たちとんでもなく強い。
「もう大丈夫じゃん!」
声の主、つまりこのハンマーの主はあの人だ。
なめならかな色白の肌。美しく輝くショートヘアの金髪。大きな瞳にキリっとした金色の眉。あと頬の傷と立ち上がった前髪。たぶん、やんちゃなんだろうな。人懐っこそうな笑顔が印象的だ。
まったくもって、とんでもないハイレベルのイケメンさんである。あの三バカ兄弟よりイケメンかもしれない。
「さすがトールっち!」
「シヴァっちもナイスじゃん!」
トールとハイタッチしている人。シヴァって名前らしい。
健康そうに日焼けした肌、水色のウェービーな髪。おなじく大きな瞳は真っ黒で力強い。こちらもとんでもないハイレベルのイケメンさんだ。
二人とも百七十くらいの身長。細マッチョに違いない。
つまりオレの敵だな、うん。
「フフフフフ。二人とも遅刻よ?」
遅刻ってことは、この二人がサークルの先輩か。
「悪かったじゃん!」
「トールっちが道に迷ったせいだろ?」
どうやら二人とも、ディーテ先生と超仲良しだ。
ディーテ先生はオレの先生なのに......
うん。間違いないくオレの敵側だ。
「それにしてもカイト! すげーがんばったじゃん!!」
ニシシっと笑いながら頭をグリグリ撫でられた。
カッコよかったぞって背中を叩かれて、、、胸が熱くなる。
いい人、なのかもしれない。コミュ力が高いだけかもしれないけど。
「ありがとうございます」
「カイトっちお疲れ~!」
「お、、、お疲れ様です」
初対面でハイタッチを仕掛けてくるとは…… シヴァさんもコミュ力高めだな。
「これ、、、ありがとうございました」
ハンマーをトールさんに差し出す。
するとあっという間にハンマーが小さくなって。ハンマー型のペンダントになった。
「すごい、、、ですね」
「だろ? 大切な仲間、、、いや弟からの贈り物じゃん!」
嬉しそうに笑ったトールさんは、呼び捨てタメ口でいいじゃんって言ってくれて。
シヴァさんも同じでいいって、またハイタッチしてくれた。
イケメンだけど、、、この二人は悪くないかもしれないな。
「あの、、、」
来た!! ナナちゃん、キキさん、そしてララちゃんだ。
オレの活躍に惚れてしまったに違いない!!
「ありがとうございました!」
あれ??
瞳を潤わせながら思いっきりハグを……トールさんとシヴァさんに。ギュウって感じで。
二人の上級生にお礼を言いながら、「カッコ良かったです!」と憧れを全開にしている。
「無事で良かったじゃん!」
三人ともトールに頭を撫でられて真っ赤になっている。
おかしい。
そこで抱きしめられるのはオレだったハズなのに......
惚れられちゃうのはオレだったハズなのに......
イケメンはいつも、いいところを持っていってしまう。
やっぱり敵かもしれない......
「怪我はないのか?」
「、、、うん」
誇りに思う、確かに今、父さんはそう言ってくれた。強めのハグをしてくれながら。
照れくさいけど我慢しよう。きっとオレの涙を隠してくれてるんだろうし。
「さぁ、、、友だちも挨拶したいみたいだぞ?」
ポンポンと頭を撫でられて。
それからグイッと肩を押されて放り出された。
オレをキャッチしたのはハルルで。
「カイトお疲れ!」
「無事で良かった!」
「無茶しすぎだろ」
三バカ兄弟が次々に思いっきりハグしてくれる。
口調でわかっちゃった。皆、涙ぐんでるってことが。
友情も、、、悪くないよな。
オレを助けようとシールドから飛び出しかけた三人。
父さんに殴られて留められた姿は、、、一生忘れられないと思う。
「今日はお前らのハグで我慢しとくか……」
「ウルセーよバカ」
イルルがなかなか離れてくれない。
涙を見せたくないんだろうな。
「カイトが死んだら困る」
ルルル、そんなにオレの事を……
「グゥ〜、グルルルル、、、、、、ぐぅ」
「・・・・」
「ほらな?」
「ぷっ、、、ルルル、、マジ最高!!」
まさかオレの飯がこれからも食えるか心配で泣いてたとは!
感動を返せよ! って言いたくなるけども。
でもおかげで帰ってきたって気がした。オレらの日常に。
今度腹いっぱいになるくらい飯を作ってやるからな。
「大和さんありがとうございました」
「いえ、、、頑張ったのは息子です」
そうだよ父さん! もっと褒めて!
ディーテ先生の評価上げて! 踏み台にするつもりだったことは心の中で謝るから!
「そうだトール君? どっかで会ったことない?」
「な、、、いじゃん?」
「そっかなぁ。昔、君とそっくりな敵と戦ったことがあってね」
「あら? 記憶違いじゃなくて?」
そっとディーテさんが父さんの髪に触れる。
ゴミが付いてましたよって微笑みながら。
「あぁ、、そうですね。そう言われたら、、、似てないか」
父さんがニヨニヨしながらディーテ先生を見つめて。
あっという間にキリっとしたイケメン顔をつくった。「今夜うちの店でご飯でもどうですか」ってお誘い付きで。母さんにぶん殴られたいんだろうか……
でもディーテ先生は残念そうに断った。
「上級生二人と、、、もう少し潜ってみます」
「あぁ、、、なるほど。お供しましょうか?」
「いえ。大和さんには生徒たちをお願いできますか?」
「先生のお願いとあっては断れませんね」
だから今度店に来てくださいって、やはり母さんにぶん殴られたいらしい。
あ、そうだった。
ショートソードを拾っておかないと。
「あったあった」
「へぇ、、、、まぁまぁじゃん」
いつの間にか背後にトールがいて。「ちょっとみせるじゃん」って言いながら、ショートソードを手に取った。
「でも、もうダメじゃん!」
トールが力を籠めるとソードの刃が砕けた。
「はぁ~、、、マジかぁ」
頑張って小遣いをためて。ミスリルの鉱石を買って。
ロダン兄ちゃんの指導を受けながら自分で精錬して作った武器だったのに。
「困ったらコレを使うじゃん?」
「え!? いいんですか?」
手渡されたのは、先ほどのペンダント。
大切な人からの贈り物だって言ってたのに。
「あぁ。いつか返してもらうからいいじゃん」
「じゃあ、、、しばらくお借りします」
ニシシって笑いながら、またも頭をグリグリされて。
それから軽めのデコピン。
「タメ口じゃん?」
「うん、、、ありがとうトール!」
困ったらトールの名前を呼べってさ。三秒で駆けつけるって、謎のヒーローみたいな約束までしてくれた。実際には三秒じゃ来れないだろうけど。
でも、頼っていい先輩がいるって心強い。これぞアカデメイア生活って感じだ。
「ん? 大丈夫か?」
「へ、、、なに、、が、」
不意に地面がグラついて、、、強烈な眠気に襲われる。
「フフフ。疲れたのね?」
耳元でディーテ先生の声がして。つい頬が緩む。
「ゆっくり眠りなさい。いい子ね」
ひゃいっと返事を返すころには、、、意識を手放しかけていた。
ありがとうございました!




