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Brand New WorldS ~二つの世界を繋いだ男~  作者: ふろすと
現世編
11/61

6章-3:End_Of_Game, And………

 

 ー途中経過ー


『ヘローエブリワンお久しぶり!K───間違えた、Jだ!もう出番ねーかと思ってヒヤヒヤしてたゼ☆(汗)早速だが頭パンク寸前のおまえ等のために途中経過兼対戦情報をプレゼンするゼ☆とりあえずまずは途中経過だぜ!じゃねえ、途中経過だゼ☆下を見ろオオオ!!』



 ─────────────────


 A

 隈 (クマキヨシ) 敗退

 九重 遥香(ココノエハルカ)    敗退

 マリアナ・ルベール    敗退

 リチャード・ケリー


 B

 寿 海衣(コトブキミイ)    敗退

 三川 (ミツカワオウ)     敗退

 三川 (ミツカワコウ)     敗退

 三川 (ミツカワソウ)     敗退


 C

 空町 君助(ソラマチキミスケ)   敗退

 チェルノワ・エゴール 

 菱野 健吾(ヒシノケンゴ)

 松原 (マツバラカエデ)


 D

 芦屋 道行(アシヤミチユキ)

 桐崎 洋斗(キリサキヒロト)

 黄 鈴麗(ファンリンリー)

 ユリア・セントヘレナ


 ──────────────────



『で!!起こった対戦順にmy beautiful voiceでDIGESTしていくゼ☆えーあーあー、ゴホン!


 マリアナ・ルベール○ vs ×九重 遥

 桐崎 洋斗○ vs ×隈 清

 芦屋 道行        三川 蒼

 松原 楓     ○ vs ×三川 紅

 リチャード・ケリー    三川 黄

 黄 鈴麗○ vs ×マリアナ・ルベール

 寿 海衣○ vs ×空町 君助

 ユリア・セントヘレナ○ vs ×寿 海衣



 そして、諸事情により省略された戦い達だゼ☆

 菱野 健吾○ vs ×黄 鈴麗

 桐崎 洋斗○ vs ×チェルノワ・エゴール

 松原 楓○ vs ×リチャード・ケリー

 菱野 健吾○ vs ×芦屋 道行

 松原 楓○ vs ×ユリア・セントヘレナ

 桐崎 洋斗○ vs ×松原 楓


 とまぁこんな感じで、結局残りCとDの二人だゼ☆って無茶苦茶ハショられてんじゃねーか!責任者出てこいッ!!ってオイ!回線切ろうとするんじゃねぇってちょ本当にやめろよ機材壊れ(ブツッ)





 ー桐崎ー


 対抗戦は佳境に入っていた。


 代表者達には、誰が倒されているのか、どこで誰が戦っているのか、そもそもどれくらいの時間が経ったのかすらわからない。なので代表者達にはこの戦いが終盤にさしかかっていることを知らない。

 そんな中、桐崎 洋斗はジェットコースターの前でボーッとベンチに腰掛けていた。

 先ほどの男(Aクラスの隈 清だとは知らない)に加えてもう二人ほど倒していた。やはり目立つアトラクションの前にいるので本能的に人が寄ってくるみたいだ。

 背もたれに体を預けてくつろいでいたのだが、その意識が街中のある一点に照準を絞った。

「……………………」

 誰か、いる。

 建物の陰にいるのが何となく分かる。

 先制攻撃も考えていたが、相手はあっさりと出てきた。特に隠れていたわけでもなさそうだ。

「よォ」

 髪が妙にツンツンしていてもう少し髪が長けれは某戦闘民族と相違ない。あとは中肉中背、武術をやっている身で見ると良く鍛えられているという印象を受けた。

 そして両手には双剣を装備していた。

「随分とのんびり構えてるじゃねェか。おまえまさかあれか?ずっと逃げてて疲れましたーなんて言わねェよな?」

(一応警戒はしていたんだけど、こんなところに座ってればそう見えるか)

「そんなわけないよ、三人ほどヤった。今は休憩中」

 頭の片隅で考えながらも、ペンチに座ったまま答える。念の為、警戒は怠らない。

「ヘェ、なんだ結構ヤってんのか。俺はまだ二人。中々見つからねーでやんの、参っちまうぜ。周りもだいぶ静かだし、もしかしたら俺たち二人だけかもなァ?」

「さぁ、この遊園地のどこかにまだ隠れてるかも知れないから、速くおまえ倒して探しに行かないとな」

「オイオイ、連れねェことゆーんじゃねェよ。折角だから楽しもうや」

「………………それは言えてる、かな」

 始めるか………という意味も込めて、音もなくベンチから腰を上げる。

「頼むから、あっさりくたばるんじゃねぇぞ?楽しませてくれよ?」

 待ってましたと言わんばかりに悪魔のような笑みを浮かべる。

「お気に召すかは分からないけど、善処する。そうだ、名前聞かせてくれ。これまでずっと聞き忘れてたからな。俺は桐崎 洋斗、Dクラスだ」

「Cクラス、菱野 健吾」

 洋斗は小さく目を細める。それ以外の言葉はなかった。そもそも言葉なんて必要じゃない。

 かなりぶっちゃけて言うと『肉体言語』というやつである。

 ───先に動いたのは、菱野の方だった。

「おらよォ!」

 菱野が氷弾を複数個飛ばしてくる。

(水属性か、それなら)

 洋斗は体に電気を通して身体強化、その瞬発力と反射神経で華麗に攻撃をかわす。

「チッ、そんなに綺麗にかわされると…………」

 菱野は手を頭上に伸ばして───

「怒りを通り越して楽しくなってくるぜ?」

 先ほどより多い氷の弾幕が迫ってきた。

 それはまるで大量の雹。だが、本物の雹には煉瓦造の建物を破壊するほどの力はない。

(これは、さすがに…………………ッ!?)

 かわしきれない。

 とっさの判断で氷の段幕のうち、自分の体を通過するであろう位置に雷撃をぶつける。ぶつかった衝撃で段幕の中に氷のない空間が出来る。そこを脚力で一気に通過し、菱野との距離をつめた。

 距離は2、3m、あと一歩で相手に手が届く距離。

 洋斗は走りながら拳を構え、それに雷撃を込める。

 バチ…………、と青白く光る拳をぶつけんとさらに一歩を踏み込む。

 目の前には、迎え撃とうと双剣を振りかぶる菱野の喜々とした表情。


 ───そして

 その双剣を覆う『真っ赤な炎』だった。


(……………は?)

 一瞬だけ、ほんの刹那の間だけ思考に空白が生まれる。

 だが身体は反射的に、振りかぶっていた拳を迫る双剣に当てる、という対応を見せる。

 雷撃と爆炎が衝突した。

 能力系統としては、どちらも攻撃的な分類である(風は万能的、水土は守衛的とされている)が、雷はどちらかというとスピード重視で火は攻撃力重視となっている。

 何が言いたいかというと。

 単純な威力勝負なら基本火が有利なのだ。もちろんこの遊園地も例外ではない。


 菱野の爆炎は洋斗の雷撃の拳を呑み込んで、拳ごと洋斗を吹き飛ばした。


 洋斗は建物一棟を突き破り、地面を数回はねた後に別の建物にぶつかって止まる。ぶつかった壁は衝撃に負けて崩れてしまう。

「おーい!ものの見事に決まってくれてありがとよー!」

 遠くにいる友達に呼びかけるように大声を飛ばす菱野。対して先ほどの攻撃でも意識が飛ぶことなく瓦礫から上半身をおこす洋斗。全身に能力をまとわせていたことが功を奏したようだ。まだ十分に動ける。

 それにしても。

「ぐ…………ぅ、どうなってんだ…………」

(さっきは氷、次は炎…………?)

「ん?なんだお困りな様子だな。教えてやろうかァ?」

(…………おいおい、まさか…………)


「俺は能力を二種類使えるんだぜェ」


 冗談だろ?と洋斗は思う。だが、三川三兄弟の時と違い実際に自分の目で見てしまっているため認めざるを得ない。

 使える能力が多いと言うことは単純に手数が多いということだ。しかも、能力ごとの相性の関係でとるべき対応策が全く異なる。なのでそのときそのときの判断で対応策を変えなければならない。

 ───要するに。

「…………………めんどくさ」

「聞こえてんぞゴルァ!」

「うおッ!?」

 言葉のストレスを受けて気のままに氷弾を乱射してきたので、横に飛んで回避する洋斗。

 観客からみると心無しかコミカルに見えるのは、たぶん気のせいだ。

「いきなり攻撃して…………くんなっ!」

 横に逃げながら、拳ほどの瓦礫を菱野に向かって蹴り飛ばす。

「アブねッ!!」

 菱野が飛んできた瓦礫に怯んだ隙に再び走り込む。

 そして再びあの距離。

「学習能力ゼロかよ!」

 菱野は炎の剣を洋斗の頭上に振り下ろす。

 ───が

(んなわけあるか!!)

 その剣筋を避けるように横に逃げた。もっとも、菱野にはかなりの速度なので『消えてまた出てきた』ように見えていた。

「…………………は?」

 今度はこちらが空白になった瞬間だった。洋斗は菱野からみて右側の位置にいる。

「ぅらあッ!」

 そのまま腹にフックを入れる要領で雷撃付与の拳を叩き込んだ。

 今度は菱野が遠く吹き飛ばされる。

 この勢いで建物にぶつかった後停止した。菱野の姿が土煙で覆われて見えなくなった。

「…………はぁ……………はぁ………………」

 体勢を整えて息を整える。

(…………………なんだ?今の『コンクリート殴ったみたいな』感触は?たぶんまだ……………)

「痛ってーなオイ」

 声が聞こえた。恐らく先ほどの土煙の中から。

「今のはさすがに効いたぜ。『防御』してなかったらマジでヤバかった」

 声色からしても菱野であることは間違いない。

 そして、

 ドォゥン!と言う爆発音とともに粉塵が強風で吹き飛ばされる。そこにいたのは、

「やっぱ遠くからちまちま攻撃すんのは性に合わねー」

 右手の剣に炎を、左手の剣に氷をまとわせ、仁王立ちしている菱野だった。

「もうここからは全力だ!」

 そう言って菱野はこちらに駆けてくる。それに呼応するように洋斗も走り始めた。

「ぅらあ!」

 あと一瞬でぶつかる距離になったところで、菱野が氷の剣を振り下ろす。

 それを雷付加の脚力でかわし、先程同様カウンターを入れようと拳を握る。

 だが、

 その目はすでにこちらを捉えていた。

 菱野は炎の剣で洋斗を切り上げる。洋斗の胴に斜め一直線の傷が付く。しかし傷が浅かったのか、洋斗は顔をしかめながらもそのまま一歩踏み込んで腹部を殴りつける。

「うぐ………ォ!」

 対して菱野も、数m押されながらも倒れずにこらえていた。殴った腹部は鎧のように氷がへばりついて守っていた。先程の一撃もこれでダメージを軽減したのかも知れない。

 これまでの戦いから一つの考えが浮かぶ。

(こいつ、もうこの速さに順応して…………しかもカウンターまでこなしてきてる!)

 はじめに菱野を殴り飛ばしたとき、不十分ではあったものの致命傷を避けるだけの防御を行っていた。そしてこの時間の中で攻撃を最大限軽くし、さらに洋斗のスピードに合わせてカウンターも繰り出してきた。

(やっぱりこの菱野ってヤツ…………強い)

 そんなことを考えていると、辛い、とか苦しい、とかの感情を通り越して、


 ───こっちまで、愉しくなってきた。


 つけられた胴の傷が熱と共に疼くような感覚が脳に響く。

 沸き上がる興奮で頭が熱くなる。

 揺れる眼球が刹那のスリルを求めている。

 五感が、これからの戦いを毛ほども逃すまいと研ぎ澄まされる。

 決して不快ではない。

 こんな感情、親父や父さんと武術でやり合っていたあの頃以来だ。

 心のどこかで躊躇っていたのかも知れない。


 ───人を殺すことがどういう事かを『知っている』から


 もしかしたら。

 もう、素直に楽になってもいいのかも知れない。

 そのために、この世界に招待されたのかも知れない。

「…………タフだな、意外と」

「ゴホッ……………そういうオマエは力強すぎだろ。体細ェのになァ」

「割と無茶な鍛え方してたからな。まだ上がるぜ?」

「……………さすがに血の気が引いたぜ」

「そっちも中々良い鍛え方してるな」

「まだ上がるぜェ?」

「…………ここは血の気が引くところなのか?」

 力が抜けるように頬をゆるめる洋斗。

 それにつられてか小さく笑う菱野。

 そんな二人が、ぶつかった。

 ───ここからの戦いは互いに一歩も譲らぬ白熱した戦いとなった。

 振り下ろされる炎の剣を雷の脚力でかわす。

 吹き飛ばされながらも洋斗の蹴りを氷の盾で防ぐ。

 切る。かわす。殴る。受ける。蹴る。能力。

 瞬時に切り替わる攻撃と守備の応酬。

 観客は、一年生とは思えないハイレベルな戦いに驚嘆し、魅了され、熱狂した。

 ───しかし。

 そんな死闘は永遠には続かない。

 洋斗には大小様々な切り傷が、菱野には打撲や内出血の痕が刻まれていく。二人の周りに少しずつ紅が飛び散っていく。

(ハハハ、なんだこれ?ムチャクチャ楽しいじゃねーか)

 そんなことを、菱野は一瞬の主導権を争っている最中に考えていた。

 寿家と同様菱野家も代々強者が集う家系であり、さらにこの菱野 健吾は火と水の二種類の能力を生まれ持つ、いわば伝説のような存在となってしまった。いろんな人から戦いを申し込まれ、その度に呆気なく退け続けてきた。

 いつしか勝つことが当たり前になり、さらに強い人を求めるようになった。この戦い好きな性格もそこから来ているのだろう。

 だから、菱野にとって今目の前で蹴りを放とうとしているこの『桐崎 洋斗』と言う存在はまさに運命の類だった。

 このまま、終わらなければいいのに。

 心の本心からそう思っていた。

 だが、

 こういう白熱した戦いに限って、終わりは呆気ないものなのかも知れない。

 洋斗の蹴りが迫る。

 さすがにこれ以上体重の乗った一発を喰らうと危険だ───と判断した菱野は地面に氷の剣を突き立てて大きな氷柱を作り出す。ガゴォ!と氷柱に蹴りがぶつかる音が響き、衝撃に耐えていた氷柱に亀裂が走る。

「はァッ!!」

 洋斗は続けざまに雷付与の蹴りを叩き込んで氷柱を完全に破壊する。

 その先には、炎の剣を構える菱野。

「らあああぁああぁぁあああアアァァ!!!」

 全身の力を込めて一気に剣を振り下ろす。

 それは、洋斗を捉えるにはあまりに大ぶりだった。

 洋斗はその剣の腹に手を当て、受け流すように軌道をそらす。剣は洋斗の頭の上を通過した。

 そのまま一歩、菱野の懐に入り込んで、拳を腹部に入れる。 

 菱野はとっさに氷の盾で防いだ。が、

(…………威力が、ない…………)

 先ほどの腹に響くような一撃ではない、むしろ拳を置いたようなそんな威力。

 その耳が。

 すうぅ、と大きく息を吸う音を聞いた。

 洋斗の拳がわずかに離れた───その直後だった。

「はあアアアアアッッッ!!!」

 四股を踏むようにダンッと地面を踏み込み、

 腰を大きくひねり、

 拳をねじり込むように腕をひねり、

 拳から目一杯の能力を腹部に叩き込んだ。

 ───冲捶(ちゅうすい)

『二の打要らず』と名高い中国武術・八極拳における基本技の一つで、足、腰、肩の力を拳に伝え相手の中段をつく威力重視の技。

 洋斗はこれに、インパクトの直前に脚を踏み込む事で威力を増大させる震脚(しんきゃく)も加え、さらに雷の能力によるアシストもつけた。

 まさに全身の力の全てを叩き込む、会心の一撃。

 拳を通してねじ込まれた衝撃は氷の盾をも貫き通し、菱野の腹に突き刺さる。貫通するように雷撃が走る。あまりの衝撃で反作用をこらえる地面にひびが入り、放射状に衝撃波が飛ぶ。

「ぐ、…………………………ごぼァ!」

 耐え切れず菱野は肺にためていた空気を吐き出し、威力で体が向こう一直線に吹き飛んだ。

 ───。

「……………はぁッ………………ッはぁ………………」

 頭から流れてきた血から守るように片目を瞑ったまま、冲捶後の体勢で息を切らす洋斗。ぐらつきそうになる重心を支えながら、開いている片目で菱野が飛ばされた方向を睨んだ。

 一方で。

 菱野は壁数枚に空いた大穴の先の瓦礫の中で、すでに消えかかっていた。もう少しでほぼすべてが消えるという時に、洋斗と菱野の間にあった建物が崩壊して視界を遮ったことで、洋斗からは菱野の姿は見えなくなった。


「…………ゴホッ!ゴホッ!………なんだよ、アイツ。クソ強ェじゃねーか……………………」

 瓦礫の中で倒れる菱野。消えかかる視界の先には、菱野をここまで殴り飛ばした張本人が見えた。その姿は、

 心なしか、輝いて見えた。

 だが、間の建物が崩壊してアイツの姿が見えなくなる。

「…………………………ちくしょォ」

 悔しい。

 そんな言葉がまだ頭に残っていた自分に、少しだけ笑えてくる。

 菱野は、こぼれた表情を隠さないまま目を閉じた。



 洋斗はゆっくりと構えを解く。先ほどから全く音がない。

(倒した………………………のか?)

 傷も回復しない。相手が再起不能なら別に良いか、とも考え、他の選手を探すために足を運ぼうと一歩を踏み出したとき───。


 プアァァァァァァァァァァアン!


「うおッ!な、なんだ!?」

 甲子園の時みたいな甲高いサイレンが遊園地中に響いた。そしてその音と共に、遊園地の中央部分からパシュ、と何かが飛んだ。まるで花火玉のようなそれは空中で止まり。

 バァァン!と、

 大きく花開いた。

 中から『優勝:Dクラス』と書かれた電子掲示板のような巨大画面とともに大量の花吹雪が派手にまき散らされている。

「…………………………………」

 しばらくスケールの大きさとド派手な演出に呆然としていたが、ここでまず最初に気づくべき事に、ようやく至った。


「優勝……………したのか?……………………は、ははっ」


 余りに突然の事実を前に全く中身のない笑いがこぼれる。

 しかしそれも僅かの間で、洋斗を丸く囲うように金色に光り出した。

 それからまもなく、洋斗の視界は黒く塗り替えられた。



 洋斗はそっと目を開いた。もっとも視界の先も真っ暗だったため、目を瞑っていたときとほとんど差はなかったが。

 時間にしておよそ5秒のラグの後に、暗闇が光によってこじ開けられていく。眩しさで目を細める洋斗。

 聞こえるのはざわざわと言う音を数十倍にしたようなノイズだった。

(………………?)

 長い間横になっていたせいだろう、気だるい体を腕で起こす。そこは開始前と同じ体育館。

(そういえばカプセルの中だったな。リアル過ぎて忘れ「洋斗くーーーーーー~~~ンぐっ!!?」

 物思いに耽っていた洋斗に、華麗なダイビングをかましてきたユリア。

 今まで親父から散々物を投げつけられてきた洋斗が反応しないわけもなく、反射でユリアの顔面を押さえ込んでしまう。ユリアは高ぶっているのであろう、何やらもごもご言いながらも洋斗の手を顔面から引き剥がす。

「ぷはぁ!や、やりましたよ!優勝です!」

「あ、あぁそうだな!」

「もーユリア、洋斗君が困ってるじゃない」

「ははは…………………でも、最後の勝負は凄かったね?」

 ユリアは興奮混じりで、鈴麗は呆れ気味に、芦屋は関心を込めて、それぞれ言う。

「そうだな、すごく楽しかった」

「でしょうね、なんだかスッキリした顔してるわ」


「俺もだ。スゲェ楽しかったぜ?」


 Dクラスの代表者一同が声のした方を見ると、そこに立っていたのは菱野だった。

「あ、あんたさっきの「あんな血がたぎるような勝負は久しぶり、いや、もしかしたら初めてかも知れねェ。またやろうぜ?」

 菱野は、上半身だけおこしている洋斗にゆっくりと開いた手を伸ばす。

「ねえ聞いて「そうだな、けどあれ以上ハードなのは止めてくれよ?」

 洋斗は菱野の手をしっかりと握る。

「いい加減話を聞きなさいよ!!」

 ご機嫌斜めな鈴麗を差し置いて。


 ユリアは、観覧車の女の子に抱きつかれていた。

「…………寿 海衣さんというんですか!改めてよろしくお願いしますね!」

「んみゅ…………うん よろしく ユリアさん。あと…………」

「?」

「みぃ ってよんで?」

「……………………はい、みぃちゃん!」

「それと…………ひざまくら して?」

「ふふっ、良いですよ?」

 ユリアと海衣の周りには、お花畑が広がっていたという。邪魔したら殺されることは、既に周知の事実だった。


 一方で、憤怒の炎が燃えたぎっているエリアがあった。

「あーらあら其方におられるのは、生まれる時代を間違えた野蛮人ではないですか?」

「…………何しに来たんだクソスワベ?」

「…………そのあだ名、今すぐに止めてもらうことは出来ませんの?姉に聞かれたら爆笑されてしまいますわ?」

「…………姉がいたのアンタ?」

「はー、分かってはいましたがやはり脳筋でしたか。私の姉はダイアナ・ルベール、現風紀委員長ですわ」

「え?でも全く似てないじゃない。性格とか口調とか」

「ええ、姉は長女故にかなりチヤホヤされてあんな事に。その反省を生かしてきちんと育てられたのは私です。今やどちらが姉だか分かりませんわ」

「…………アンタも中々苦労してんのね」

「…………あんた『も』、ですか」

「え…………あ、イヤ、別にそういうわけで言った言葉じゃないから今のは!言葉の文よ!」

「………………………」


「「「………………………」」」

「そんな所に正座して何をしておるのだ?蛇に睨まれた蛙のようだぞ?」

「そんなことをする前に言うべき事があるだろう。きちんと仁義を通せ」

「い、いや!別にそんなことをしてくれなくても「「「芦屋さん!!」」」

「3対1な」んて卑怯な」まねして」


「「「ホンットに申し訳ありませんでした!」」」


「……………どうだ?芦屋殿」

「どうだも何も、最初から気にしてないよ!戦いに勝ちたい一心でやったことだろうしね」

「うむ、よい仁義の持ち主だ」

「「「芦屋様ァァァァァ!!!」」」

「ちょ、三倍の涙やら鼻水やらが制服に…………っ!」

 こちらでは、なにやら青春の1ページ(?)が刻まれていた。


「俺の知らないところで何があったんだろ」

「さぁな。それよりも、さっさと行ってやったらどうだ?」

 菱野は、親指で体育館の入口を指し示した。

「マンオブザマッチの登場を待ってるぜ?」

 菱野に言われて洋斗たちが体育館からでると、ようやく爆音の正体が分かった。


 ───それは、地面を揺さぶるほどの大歓声だった。


 ざわめき、拍手、何ともわからぬ笛の甲高い音色、とにかく観戦していた全生徒の活気と興奮から生まれる声が惜しみない拍手と共に洋斗の耳、いや、身体全体を叩いていた。

 それだけ見応えのある試合が出来た、ということなのだろうか。もっとも、実際に戦いにふけっていた洋斗達には知り得ない事なのだが。

 戦いが終わった代表者達は、閉祭式まで予定がない。洋斗たちDクラス一同は、素直に歓声を肌で感じながら、教室に帰ることにした。



 そして、その後あった閉祭式も難なく終わり、

 白宴祭はすべての日程を終了した。





『こちら梟、目標を確認しました。追跡し、好機の到来次第、捕獲に入ります』





 ~~~~~~~~~~~~~~~



「とても楽しかったですねっ!」

「そうだな。また来年が楽しみだ」

 場所は学校からユリア宅への帰り道。

 時刻は大体午後5時前と言ったところだ。十月に入ってから日が傾くスピードが瞬く間に速くなっており、八月同刻にはまだカンカン照りであったのに対して今はもう夜に近い夕方だ。

 芦屋、鈴麗は片づけ手伝いへの強制参加により不在、というわけで洋斗とユリアの二人きりである。

 この二人に対する通りすがりの人たちの視線は果たして、夕日が反射して美しく輝くユリアの髪へのものか、まるで塔のように天にそびえる二つのトロフィーへのものか、はたまたそれら二つを両片手に軽々と持ち上げて歩く洋斗へのものか。

 トロフィーの一つは対抗戦一年生部門の優勝トロフィー、もう一つは全体を通して最も白宴祭を盛り上げたクラスに送られるMVPクラス賞のトロフィーで対抗戦優勝と一世を風靡したメイドカフェによる功績により手に入れたものである。鈴麗の「ユリアの家に置いとけば?広いし、良い運び人もいるしね?」という洋斗の方を見ながらの発言を受けて、一緒に帰るついででユリア宅に一時退避させることになったのだ。面白がられているのは重々承知である。

 さらに、この白宴祭で手に入れたものはそれだけに留まらない。

 ユリアに関しては優勝もそうだが、経緯はどうあれ一人倒していることもあって約束通り坂華木先生から銃を譲り受けていた(倒していなくても何かしらこじつけて渡すつもりだったようだが)。今も腰には銃の入ったホルスターが歩くタイミングに同調するように揺れ動き、夕日を反射してきらめいていた。

 ユリアの方を見やるとかなり上機嫌なようで、油断すると無意識でスキップし始めそうだ。二人は他愛ない談笑に浸りながら道を歩く。

 ───その足が、ふと止まった。

「………………………」

「それで観覧車が………………洋斗君、どうかしたんですか?」

 話の途中で不自然に歩みを止める洋斗に、純粋な疑問を投げるユリア。

「───人が、いない」

「へっ?あ、そういえば…………」

 洋斗に言われてユリアも周囲を見渡す。

 この時間はそこまで人通りの多い時間帯ではないものの、買い物帰りの主婦や学校帰りの学生がまだちらほらといるものだ。だが、この通りに入ってからだれも人を見ていない。通行人どころか、所々でひっそりと開店している店の中にすら、人っ子一人見当たらない。

 ───それなのに、気配が見え隠れしている。

 一つではない。二人を取り囲むように5つ6つの気配がある。

「…………………」

 洋斗は全身に能力を流して、感覚を研ぎ澄ませる。

 その時、

 ヒュ

 と何かが空を切る音を聞いた。

 洋斗の手がトロフィーを離れ、あらぬ方向に向けてかざされる。


 ───その手を、銀の刃が貫いた。


「づ…………ッ!」

 それはカッターナイフに似たものだった。手から流れこんでくる苦痛に顔をゆがめ、叫び声を挙げそうになるのを全力で堪えた。

「え、洋斗く…………洋斗君ッ!?」

 ユリアは飛んでくるものに気づいていなかったようで、洋斗の手に刺さる刃物とそこから滴る血からようやく危険な状況を知ったようで、半ばパニック状態に陥っている。


『これに対応するとは。さすがは『優勝者』と言ったところかな?』


 声のした物陰の方を睨む。

 まるで影が形となったかのようにすう…………、と現れたのは白のワイシャツにブラウンのネクタイ、漆黒のスーツとサングラスと言う格好の男だった。さらにそれ皮切りに周囲から同じような格好の男たちが姿を現す。

「なんだ、お前ら…………?」

「君には関係のないことだ」

 紙に書かれた文章を丸読みするかのように、機械が音声を発しているかのように───


「これより───対象、ユリア・セントヘレナの捕獲、及び周辺人物の無力化を開始する」

 無機質に、無感情に、無慈悲に告げられた。


「!!」

 一人の声により、男達が一斉に動き出す。

  非常に統率のとれた連携で瞬時に洋斗とユリアを取り囲む。そのうちの三人が洋斗に向かってきた。

 その三人に必死に迎え撃つ洋斗だが、相手一人一人が十分に鍛えられた男達で、しかも一人を吹き飛ばせば控えていたうちの一人が攻撃に加わってくるので、全く隙が生まれない。

 強いとはいえ洋斗は人間、戦い続ければ疲労が生まれる。

 洋斗のからだに少しずつ傷が増えていき、傷自体も大きなものとなっていく。



 ───詰まるところ、洋斗に勝ち目は無かった。

「う、づ……………………ッ」

 限界だった。

 すでに身体はぼろぼろだ。もはや立ち上がることすら叶わず、うつ伏せで倒れている。

 視界がかすむ。目が十分に開かない。

「嫌………離し…………さい!」

 その辛うじて見える瞳で視界の先を見る。

 ユリアがもがきながらも男に後ろ手をとらえられている。どうやら耳もイかれたらしい。入ってくるユリアの声が途切れ途切れだった。

「     ぁ  」

(止めろ………………………)

 男がユリアに手をかざすと、力を失ったかのように男にもたれかかる。あれも能力だろうか、ユリアはそれきり抵抗しなくなった。

(……………………止めろ…………………!)

 男がユリアを肩に担ぐ。


 ───ユリアの姿が『不意に母の姿と重なった』、そんな気がした。


 洋斗は引きずるように、ユリアの方へと手を伸ばそうとする。

(助けなきゃ…………………)

 腕に力が入らなかったので、ほとんど伸ばせなかった。


 その小さな願いも叶わず、男達は姿を消した。

 ───ユリアを担いだままで。


(助……………け……………………………)

 また、救うことが出来なかった。


 洋斗の意識は、暗闇の底に沈ん





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