9―――現代(5)
■小説の題名『あの夜、部屋で深雪と』(お題元Twitter@140onewrite様)
彼女にフラれ絶望した俺はカレンダーも変えず引籠り、デジタルが20時19分から20時20分になるのを見守っていた。
そこへ女子高生が来た。涙目の。
『馬鹿……しっかりしなよ』
うるせーよ妹。
「――って妹萌え小説を読んでんのがリアル妹にバレて、冬一番の冷え込み」
「頑張れ」
■妥協案
「三歳の誕生日、何が欲しい?」
「いぬ」
「……無理。ママもう四人の子に恵まれてるから、ペットはパス」
「ぶぎゃー」
「泣かないで。お金もカッツカツなの。泣かないで」
「ぶぎゃー」
「……犬のかわりに好きなもの買ってあげる!」
「おとうと」
「パパ、豆柴を飼わない?」
「君ね」
■1月22日はカレーの日
「昼休みに何」
《ねえ今日、カレーの日なんだって》
「またツイッターから情報を仕入れたな」
《あなたの作ったカレーライス、最高だよね》
「……今日は残業確定」
《じゃあ冷凍庫のカレー解凍しとくよ。サラダとデザート作って、22時まで待ってます》
「了解。カレーって、楽できるところも最高だよな」
※この140字は甘口です。上記ふたりの性別はご想像にお任せします。
■劇と薬(お題元Twitter@Tw300ss様)
「先輩。どうして演劇の『劇』と劇薬の『劇』は、同じ漢字なんですか?」
私は二年生の先輩に聞いた。
「それはだな。芝居には、劇薬のような中毒性があるからだ」
「嘘つかないの」
二年生の先輩の肩を、三年生の先輩が台本で叩いた。
「『劇』は激しいって意味。激しい薬で劇薬。激しく演じるから、演劇ね」
「なるほど!」
「……たぶん」
私は演劇部の台本を開き、これから練習する場面のおさらいをした。
役に成りきれると最高に楽しい。
激しい演技と演出で、お客の心を揺さぶりたい。
練習はきついし遊ぶ時間も減るけれど、部活動はやめられない。
『バカにつける薬はない』なんて言葉があるけれど、今の私にとって、ほめ言葉だ。
■呼び声
出して、と夢で囁かれた。
目覚めると外は晴れていた。
私は朝食の後、クローゼットを探った。
習わしより早い。だけど頼まれたから仕方ない。
奥から木箱を見つけて、そっと蓋を開けた。
「一年ぶり」
二月中旬。うららかな休日。
一人暮らしの部屋で、お雛さまと、再会するのも悪くない。