7―――現代(4) 新年の章
■トレーナー (お題元Twitter@140onewrite様)
ひつじ雲の下、マラソン大会を眺めていた。
選手は汗臭そうなウェアを着ているが、僕は洗濯したてのトレーナーに身を包んでいる。
足が冷えて、より痛い。
ああ、ひどいフォームの選手が来た。体が左右に揺れている。
「しっかりしろ!」
馴染みの顔に叫んだ。
気負うな。抑えろ。選考会を兼ねているんだ。
怪我した僕のことなんか、忘れて走れ。
■いらないあなた
ずっといっしょだったけど
わたしはあなたなんていなくてもよかった
あなたなんてすててやる
さよならをきめたのはわたし
だけどあなたがいないとずきずきいたい
いらないあなたやっぱり
私の体の一部だった
あなたがいなくなったあとはだれにもうめられない
わすれないありがとう
わたしのおやしらず
■縁起物に願いを
鏡餅に蜜柑はやめろと、先生に怒られた。
「でもプラの付属品より、本物の果物でしょ?」
「鏡餅に乗せるのは橙だ。『代々』栄えるように。……蜜柑だと今の連載も『未完』になりそうで、やだ」
先生がペン軸を強く握る。
私は走って、本物の大きな橙を購入した。先生これで来年は大大大ヒットです!
■初詣 ~延長祈願~
初詣で偶然クラスの女子に会った。
「何、願った?」
「受験合格と無病息災」
「……そっか」
「うん」屈託ない笑顔。
「そっちは?」
「俺は、受験合格と世界平和」
本当は受験合格と恋愛成就だ。
必ず彼女と同じ高校に合格して、去年一歩も進まなかったこの恋を、延長に持ち込むんだ。
■初詣 ~勉強不足~
初詣で偶然、クラスの男の子に出会った。
受験合格と、世界平和をお祈りしたって言っていた。優しい。
あの子と一緒の高校に、行けるといいな。
……考えだしたらそわそわして、落ちつかない。
気を取り直して、勉強、勉強。
※拙作『掌にかかる虹』おまけ話。同じ高校の理由。