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6―――白詰草を踏む子供

 小学校からの帰り道には、美波(みなみ)が好きな場所があります。白詰草の群生が広がっている、川辺です。

 美波はいつも少しだけ寄り道して、春の小川のせせらぎを聴きながら、遊んでいました。白詰草で花冠を作るのも、四つ葉を探すのも、四年生の美波は大好きでした。幸運のお守りになる四つ葉は、まだ一本も見つけられませんでしたが。

 ところがこの場所で、最近、困ったことが起きていたのです。


「北川君! 白詰草をいじめないでくれない?」

 ある日、美波は胸を張って、同じクラスの北川君に声をかけました。

 北川君は、運動好きで体が大きな男の子です。びっくりした顔で、白詰草から運動靴をどけています。

「ここは私のお気に入りの場所なの。だからもう毎日、白詰草を踏むのはやめて」

 美波が怒ると、北川君は、高い声を出しました。

「見てたの!? ……俺が白詰草を踏むところ」

 悪びれない様子に、美波はいらだちました。

「毎日見てたわ」

「……しまった」

 北川君は体を小さくしました。美波はますます胸を張りました。

「とにかく、白詰草に謝って」

「ごめん」

 北川君は白詰草ではなく、美波に頭をさげました。

「怒らせたのは謝るよ。でも、これにはちゃんとした訳があるんだ」


 それから北川君は、白詰草の群生に手を入れて、ごそごそしました。

 そして「あった」と一本、幸運のお守りを手にしました。

「四つ葉だ!」

 美波は、北川君が持つ四つ葉の白詰草に、目を輝かせました。

「四つ葉のクローバーは、踏まれたりして傷つかないと生まれないんだ。……このあたりはあまり人に踏まれない場所だから、俺はわざと踏んでいたんだよ」

 北川君がぼそぼそした声で言いました。

「北川君、詳しいんだね」

 美波は感心しました。

 いつも運動に夢中な北川君が、植物が好きそうなのは意外でした。

 なんだか仲良くなれそうです。


「この四つ葉、あげるよ」

「いいの?」

「だっていつも、ここで探してただろ」

 今度は美波が高い声を出しました。

「見てたの!?」

 毎日見てたよと、返されました。

以前、ネットプリント配信したもの。エブリスタさんにも投稿しています。

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