49――四十九
不意の事故で幽霊になった。
回覧板を回す途中で車に突っ込まれるなんて、うん、いまいちな人生だった……。
しかし楽天家だったのだろうか。地縛霊にはならなかった。私、案外、ついているのかも?
せっかくだから無料でぶらぶらしよ。仕事で行けなかった博物館に映画。ライブもいいな。
◇
幽霊一週間目。
視力や聴力が生存時より落ちているので、施設巡りも飽きてきた。なので、人間観察に勤しもう。
お気に入りは部屋でひとりでスマホしている人達。他人がひとりの時にどんなサイトやアプリを見ているのか。壁抜けすればすぐ覗ける。楽しい。
「なんか寒気がするな……」
霊感ありそうな人が、よく言っている。ごめん。
◇
幽霊一ヶ月目。滝が見たくて旅に出た。しかし思いのほか辛く、だれてくる。
霊は基本、乗物に乗れない。車やタクシー使って移動する霊たちもいたけれど、どうも才能と年月が必要らしい。恨めしや。
私は葉桜の下、歩道をとぼとぼ浮くしかない。遠くの景色が霞んでいる。空気は温かいのだろうか。
◇
幽霊?日目。和歌山の滝に到着。本当は南米の滝が良かったけど、海を渡れそうにないしこれでいい。
滝が岩にぶつかり、飛沫が舞う。霊の私は濡れることはない。水がどれだけ冷たいのかも、今の私にはわからない。
……五感が恋しい。
これ、引際かも。
未練もあって彷徨っていたけれど、もういいや。しにきろう。
来世があれば三大瀑布へ行こうっと。




