4―――幻想(2)
■お持ち帰りさせてくれる? (お題元Twitter@memo_kiri様)
そろそろ家に帰りたいと言っている男の前に、ごちそうが並ぶ。
「もう帰るから。お持ち帰りさせてくれる?」
眉目秀麗な男は、傍らの姫に問うた。姫は、はい、と頬を染めた。
「料理を土産に欲しいんだ。君じゃない」
男は姫に目もくれず。
龍宮の姫は影で舌打ちをした。
そして『他の女に取られぬよう、うんと爺になれ』という呪いを煙にして、土産箱に詰めた。
■世帯主(40)の異世界ライフは、140字で!
「私はよく歩行者を助けるんですが、今回、トラックの運ちゃんのあなたを異世界転送しました。裁判や刑務所、面倒っしょ」
「帰せ。俺には家族が」
「皆ご一緒っす」
「パパ私、明日から魔法学校に行く!」
「食堂の味がウけてる……」
「ぼく、ゆうしゃなんだって」
「しゃべれるワン」
お前ら順応すんな。
■ハロウィンナイト (お題元Twitter@140onewrite様)
狂った月がハロウィンを滅茶苦茶にした。
赤い月光をサインに、狼男と魔女は本物に変わった。
狼男は力に溺れて、空を飛んだ魔女は、ビルと飛行機にぶつかりかけた。
僕が持っていた玩具の鎌には鋭い切れ味と、残虐性が宿った。
「あなた達の未来をここからお祈りします!」
月の兎がうるさい。僕は天に鎌を振るった。
■はた織りの魔女
若い魔女は黒いドレスを身にまとうと、外にいる縞模様の蜘蛛に話しかけた。
「どう?」と、体を一回転。裾が広がる。
「あなたの糸で布を織るところから……全部、一人で作ったのよ!」
魔女は窓から外に飛び出ると、自分より大きな蜘蛛に抱きついた。
蜘蛛の糸で作られたドレスが、ランタンに照らされた。
■五十年目の葡萄酒(お題元Twitter@140onewrite様)
窓から差し込む月光が、酒瓶を照らした。反射光が洋館の廊下に落ちる。
夜に葡萄酒を運んでいる子供は、小花柄のワンピースを着ていた。
子供は廊下の奥の扉を開けた。そこには肌の白い青年が、出窓で佇んでいた。
子供は青年の側に寄ると、彼を見上げた。
「記念日だから一緒に飲みましょう。……あなたの血を吸って、五十年になる」
青年に葡萄酒を差し出し、吸血鬼が微笑んだ。