3―――現代(2) 芸術の章
■照れずに行け! (お題元Twitter@140onewrite様)
姉が『演劇部の見学においで』と言うので、来てみた。
「役者ぁ照れるな。んな演技じゃお客さん冷める。寝る! テンションあげて集中して想像して! この時この登場人物が何を考えてるか。ドラマツルギー意識して、しかけに行くぞー!」
メガホン片手に発破をかけている……姉は舞台演出。
どうやら小説を書く僕へ、アドバイスがしたかったらしい。
「悩む暇があったら、立ち位置につけー!」
ああもう、わかったよ!
■浮世絵と彼女 (お題元Twitter@140onewrite様)
日本画鑑賞中の彼女は、俺の声が聞こえない。
美大生の彼女の耳は、絵画鑑賞中、外の音を拾わない。
「この後どうする?」
「………」
「愛してるよ」
「………」
「しかし浮世絵って地味だな」
「は? 浮世絵が世界にどれだけ影響を与えたと思っているの。ついこの間もシャンゼリゼ通りの美術館で北斎展がね――」
べらべらくどくど。返事したと思ったらコレだよ。
■続・浮世絵と彼女 ~日本画鑑賞後の昼飯~
美術館を出ても、彼女は俺にわめき続けた。
昼食の前菜が出てきても、文句と蘊蓄は止まらなかった。
「印象派のモネ、マネ、ルノワールにゴーギャン……そして日本を夢見たゴッホ! ドビュッシーの有名な交響曲だって、浮世絵から着想を得たの。わかった!?」
「ゴッホ以外は全員フランス人を並べたな」
「そうよ!」
「お前こそ今、何の店にいるかわかってるのか?」
「………」
ぐうの音も出せなくなった彼女が、静かにフランス料理を食べだした。
■一期一会 (お題元Twitter@140onewrite様)
高校の帰り道。私は一人で公園のベンチに座っていた。
問題は山積みだと、深い溜息をついた。
「ねえ、これあげる」
ふいに小二くらいの女の子が、緑色のドングリをくれた。
「うまくいく、お守り」
「あ、ありがとう」
女の子は「頑張ろうね!」と。
笑って走っていった。
私は女の子がくれたお守りを見つめた後、それを握って、立ち上がった。
よし。好物のいちご大福でも、買って帰ろう。
■ぜんぶの星に花が咲く
鬱憤は買っただけの本のように、積もっていく。
「そんなに仕事が大事?」とか。
残業続きに言われて心が荒む。
だけど最近、旧友と街で再会したから。
背筋が伸びた友と話すと気力が戻り、昔読んだ本の言の葉を思い出す。
大事なことは目では見えない。
明日から秋。今日こそ正念場を超えて、帰って読書だ。
※中秋の日に投稿。『星の王子さま』よりいくつかの言葉をお借りしています。