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26――夕暮れにもの思う
黄昏の空に飛行機が飛んでいる。
主翼でちかちか灯るライトが、星みたいだと、ふと思う。
夏の午後七時。古い家のベランダからは、まだ星は見えない。
紫の空に飛行機を見つけ、つい、その灯に星を重ねる。遠い空のナビゲーションライトは、流れ星のよう。
ベランダから見える街並みは、子供時代の風景と変わっていた。
古い建物はなくなり、新しいマンションが建設されていく。ベッドタウン。
深い郷秋に駆られ、飛行機のライトに向けて祈った。
――私の好きな景色が、全部なくなりませんように。
家族に呼ばれ、夕飯の時間だと気づく。煮しめの香り。
窓を閉めるとき、太陽が西の山に沈むさまを見た。
それは昔と変わらない光景だった。
お題元Twitter@Tw300ss様『夕』




