23――現代(9) 祝祭の章
■毎月22日はショートケーキの日
『ねえ。1/22はカレーの日……』
「それは去年も聞いたし今日も残業だ」
『……あと、ショートケーキの日なんだって!』
「は?」
『カレンダー見てよ。15日のいちごの日が上に乗るから、22日は毎月ショートケーキの日! だから今日の夕飯はカレーと苺ショートに決定ね!』
「毎月ケーキ食べる気か?」
■やってられない
「デート楽しかったぁ。さびしいけど帰らなきゃ。じゃあねっ」
彼氏がぎゅっと、私を抱きしめた。
「……あーあ、シンデレラの気分」
『化粧くずれてきてるから帰りたい』つってんだよ。すっぴん見られるのイヤだから、とっとと離せや。
あーなーんで自分こんなに化けの皮ぶ厚いんだろ。気づかねぇ彼氏サイコーに可愛いわチクショー。
■冷凍レモン
恋人に話しかけられても、カクテルが作られる様子から、目が離せなかった。
皮ごと凍らせたレモンをすりおろし、砂糖ひとつまみ。冷えたグラスに入れたら、ジンと炭酸水を注ぐ。
私は隣の彼より、レモンサワーに心を奪われていた。ごめんと思いながら飲むサワーは甘く、ほろ苦かった。
■すくすく育て
春の雨が降ると、毛むくじゃらのタケノコが、地面から生えてくる。
タケノコはすぐにタケノオトナになる。生えてきたと思ったら、その一週間後には、僕の背をぬいているんだ。
僕はタケノコがうらやましい。
あやかりたいから子供の日には必ず、笹に包まれたちまきを食べている。
■満開(お題元Twitter@140onewrite様)
花屋へ行った。
「遺影の前に飾る花を」
「洋花は入れてもいいですか?」
「はい。うんと、華やかにしてください」
ばあちゃんは派手好きで大の花好きだったから。
私は純白のカラーとバラの花束、そして鮮やかなプリムラの苗を五つ、両手で持って帰った。
彼女の命日は、家も庭も陽気な花いっぱい。




