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22――「粒あんとカスタード、ひとつずつ」
「ずっと思っていたの」
ガラスの向こう。鉄板でふつふつ焼けていく円筒の生地に、粒あんが放り込まれていく。
「大判焼が食べたいって……!」
僕の彼女は余裕がない顔で、意中のお菓子を見つめている。
「あれ、今川焼だろ?」
「私の家では、大判焼って呼ぶの」
あとは回転焼など。あれがいかに多くの名を持つお菓子であるか、彼女が熱く語った。
「青森のおばあちゃんは、おやきって呼ぶ」
生地が返され、上下で重ねられる。余分な生地と粒あんが横にはみ出て、そのまま焼かれる。ガラスが湯気で曇る。
「ま、名前はなんでもいいよね!」
彼女が財布の小銭口を開け、ぴたりと止まった。
お金にも余裕がない彼女のかわりに、僕は焼きたてをふたつ買った。
お題元Twitter@Tw300ss様『余り・余』




