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21――洞窟に隠された宝

こんなタイトルでラブコメ。

 私は洞窟にいた。

 天井の鍾乳石から、ぴちょん、ぴちょんと、水がしたたり落ちてくる。私はぬかるんだ足元に気をつけながら、奥へ進んだ。


 この洞窟には宝の地図が隠されている。

 考古学者の私は、この情報をご近所の『牧田(まきた)』という女性から手に入れた。

 その女性は『濡れるのやだ』と言い、私だけを洞窟に向かわせた。

 別に心細くなんかない。


 さて洞窟を突き進んでいくと……あった。

 不自然なまでに、積み重ねられた落ち葉が!

 私は半袖シャツから出た二の腕で、額の汗をぬぐった。

 落ち葉をどけると、青い宝箱が出てきた。私は青い宝箱を抱えて、来た道を引き返す。

 洞窟から外へ出たとき、抜けるような夏空と、彼女の笑顔が、とても眩しかった。


  ◇◇◇

 洞窟……もとい雨あがりの高架下トンネルは、じめじめして気持ち悪かった。

南条(なんじょう)隊員、ご苦労!」

 ご近所の女子『牧田』が、偉そうに背をそらす。髪をお団子状にひとまとめにしているので、首元が涼しげだ。

「隊員って……俺、考古学者って設定じゃなかったっけ」

「そだっけ? ではもっと、考古学者っぽく話したまえ」

 考古学者が自分を『私』と呼ぶかどうかなど、小学六年生の私は知ったことではない。自然ドキュメンタリーの番組に出てくる外国人の学者は、たいていこんな感じなのだ。


「私たちは来年中学生になるのに、こんな遊びに夢中でいいのだろうか」

 この話し方は面倒くさい。

「いいに決まってる。さあ、宝箱を開けよう」

「うむ」


 私たちは宝箱……もといクッキーの缶箱の、ふたを開けた。

 青くて四角い缶箱の中には、ノート紙に書かれた、宝の地図があって――。

「ん? なんだこれ」

 ――地図の下にもう一枚。同じノートの紙が重なっていた。見ると文字だらけ。手紙っぽい。

 とたん、牧田がものすごい勢いで、紙をひったくった。びり、と音がして、俺の手には紙切れだけ残る。

 牧田は俺に背を向けていた。

「どうしたよ」

「ま、間違えて。関係ないの入れちゃった」

「………」


 手作りの宝の地図を探せと、俺をトンネルに向かわせた女子が。

 よくドッジボールで無双している女子が、顔を赤くしていく。

 ……牧田もこんな表情をするのか。

 俺は破れた紙の切れ端を見た。


「牧田……くん、それは」

「なに」

「手紙だろう。よく見せてくれたまえ」

「やだ」

「君は誰かに、恋をしているのでは?」

「なっ……なんで」

 牧田の声が裏返る。


 俺は持っている紙切れを牧田に向けた。

 ちょうど『好き』とか書いてあり、牧田絶叫。


「なぁ誰か好きな奴いんの?」

「うるさい。これはもう少しあとで隠すつも――とにかく忘れろ! ばか!」

 彼女の反応は面白く、実に興味深い。

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