表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/47

19――現代(8) 暮秋の章

■ルームメイトの弱点(お題元Twitter@140onewrite様)

 私のルームメイトは小説を書く。

 けどキスシーンを書かない。


「ねえ、ちゅうしよ。させよ。このふたり、ホレタハレタの仲でしょ」

「いやだ。キスシーンなんて書いたら、次の行で世界を滅ぼしたくなる」

「フランス映画なら、濃厚に舌からめて手は服の下よ」

「黙れ」


 照れ屋。

 私のことも『ルームメイト』だしね。フランス映画してるのに。



■キャラメル味が好き

 オータムカラーのブラウスを着ていった、デートの日。

 キャラメルの香りにつられて映画館に寄ると、恋愛映画でも観ようかと、年上の彼に誘われた。

「この映画?」

「ああ」

 私は、肩を抱き合う海外スターのポスターと、Tシャツ姿の彼とを、交互に見た。

「柄にもなくどうしたんですか? 今ならキッズ映画もやってますよ?」

「お前ひどいな。……このラインナップなら恋愛ものだろ」

 ハロウィンの時期だからか、映画館はホラー映画やパニック映画のリバイバルが多い。

 あとキッズ。休日の朝にやっているテレビ番組の、劇場版。

「キッズ観るか?」

「捨てがたいですが、甘いほうで」

 一緒に観られるならどれでもいい。

 そう言いたかったけど、怖いの無理。

「だよなあ」

 ポスターのゾンビだけで顔がひきつる私を見て、彼が笑った。



■ダリアの褒美

 下校中。4Mはある皇帝ダリアの花と話をした。

 ――学校はどうだった。

 ――逆あがりができました。

 皇帝ダリアは褒美をくれると言った。


 家に帰ったら「そんな空想にふけるから電柱にぶつかるんだ」って、お父さんに怒られた。

 でも今晩は私が大好きなグラタンだから、たぶんそれが皇帝からの褒美。

 全部が絵空事じゃない。



■楽しむ

 雑念は波となって押し寄せる。

 私は波に溺れぬよう、いつかの水泳選手の言葉を思い出す。


『多くはメダルが獲れたかどうかしか見ない。だからいかに成長したかは自分で楽しめ』


 波は引いて泡となる。

 私は一歩踏み出した。泡は消えてゆく。

 理想に体がついてゆく瞬間を、楽しむだけ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ