16――幻想(6) 陽炎の章
■市の対応が遅いから
「え? 通学路に生えてる大きな花が邪魔? 今日も一年生の子が捕まりそうになったって? ……ほっとくとヒト食べちゃうかもね。ねぇおじいちゃん! ちょっと、頼まれてくれない?」
じいちゃんは新聞紙を閉じると、物置から、刃渡り2メートルはある草刈り鎌を持ってきた。
■グランドカバーと絶滅種(第4回54字の文学賞『#54字の物語』参加作品)
「ひげなんて誰も生えてないよ。なんでこんな名前の草なの?」
首長竜のブラキオサウルス、リュウノヒゲに興味津々。
※リュウノヒゲ……細長い草。丈夫で育てやすく、よく庭のグランドカバーに用いられる。
■つきまとうな
《肝試し、行こうぜ》
「やだ」
《最高の心霊スポット、案内するからさぁ》
「……お前のお墨つきなんて、本気で危ない所だろ?」
《誰がダチを危険にさらすかよ。力あるだけでなーんにもしない、つきまとうだけ驚かすだけの、俺みたいな霊がいる所、連れてってやるって!》
「どっかいけ」
■来年、必ず
《高校野球、終わったなぁ》
「……なんで俺、霊とTV観戦してたんだろ」
《決勝チケット、取れなかったから?》
「ちくしょう」
《あ、俺は準決勝、球場の空から見たよ》
「なんだと!」
《でも決勝はお前と見たいから、TV観戦》
「………」
《来年はチケット取れよ!》
「地方大会から一緒に行くか?」
■自由研究 陽炎について
真夏日の路上、景色のゆらぎが『陽炎』です。
熱い空気と他の空気が混ざり、光をゆがめるそうです。
蜃気楼という現象です。逃げ水も蜃気楼です。
海上の不知火は違うそうです。
あれは別名通り『龍神の灯火』。
私はこれを、タツノオトシゴから聞きました。
来年は不知火の自由研究をします。




