11――現代(6) 待春の章
■古都大津へおいで(お題元Twitter@140onewrite様)
数日おいでよ。住めば都だし、うち古都だし。
春のびわ湖疎水は、桜が本当に綺麗だよ。水門も明治ので格好いいよ。
朝市で揚げたての鮎の天ぷらを食べたら『川魚は泥くさい』とか言わなくなる。
紫式部ゆかりのお寺も、松尾芭蕉のお墓も、案内するからさ。
春休みは私の田舎においで。
終わった恋を忘れるくらい、久しぶりにふたりで遊ぼう。
■春の祝福
入学式はどんな天気だったかって?
ああ。卒業式の答辞を書いてるの。
六年前の入学式は大雪よ。
あなたは三十九度の熱を出してね。
入学式、欠席。
初めて登校したのは、それから三日後。
その日は暖かかった。
桜が狂い咲くほどに。
これがその桜。
あなただけの入学式は、晴れだった。
■3月27日は桜の日
「暖かい」
「もう春だね」
「うん。この間ふきのとう見たし、木の芽も出てた。タラの芽と竹の子が並んでるの大好き……菜の花には、ずっと旬でいてほしい」
「……生鮮売場?」
「週末、桜を見に行こう。菜の花とブルーチーズのサラダ作るからさ」
「あ、食べたい。ワインの準備は任せて」
■聖母マリアかもしれない
「もっと慈悲深くなりたい」
そう言えるあなたが好きだけど。
「――聖人マリア・テレジアの様に」
そう続けてしまうのは少し残念。
マリア・テレジアは、オーストリアの女帝。
マザー・テレサって、言いたかったのよね?
ま、口では指摘しないであげる。
私は女帝のように慈悲深いからね。なんて。
■Flower ~A figure skater~
拍手が響く中、私は氷上を滑り、花束や贈り物を拾う。
指先まで神経を払い、表情は凛とさせて。
フラワーガールの私も、世界中に映っているから。
拍手と花が降るあの選手と、同じ舞台に立つ将来。
過去を振り返る映像として、また映るだろうから。
今は、氷上で花を拾う姿を魅せる。




