1―――現代(1)8月の章
■最近可愛くなりまして、(お題元Twitter@memo_kiri様)
朝は自分で起きる。
遅刻せず登校し、寄り道せずに下校する。
言われずとも宿題をして、去年のテレビ番組の玩具は弟にあげる。
小憎らしかった息子も最近可愛くなりまして、宝石のような笑顔を振りまいております。
私は思わず、息子に最新のゲームソフトを買い与えました。
「ヨッシャー」
とたんに息子は宝石から砂利に戻りました。
■八月八日は世界猫の日
「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花。寝姿は蓮だが食事の時は獣だ。伴侶であり友であり女神だ。首輪をかけて俺の目が届く所に閉じ込めたいが、外で自由にしてほしくもある。あと彼女だけじゃなくもっといっぱい飼いたい。あっ今の聞いてた!? 嘘嘘、君だけだよ。みーたん待って」
「猫好き引くわ」
■受け継がれる詩人の血
机上の日暮と目があう。
虚しい蝉の脱け殻に、引き寄せられた私は、帳面を見つけた。
『ヌケガラガラガラ、ガランドウノ私』十二歳の字。
「自由課題はポエム?」
「ノート見たの!?」
「蝉の研究は、どうなったのかな」
「やだもう。ママ最低!」
八月末。
宿題も終わらせていない小娘が、ナニカイッテイル。
■甲子園、準々決勝
自治会は面倒だと思っていたが考えが変わった。
八月の祭の日。甲子園では地元校が準々決勝を行っていた。
「サヨナラ負けが怖い。あと一点や」
九回表。自治会の全役員が祭の準備をせずに、会館のテレビを囲む。
僕もその一人だ。
「打て!」淡海色のユニホームに叫ぶ。
近所一帯での高校野球観戦は、熱かった。
※2018年の甲子園準々決勝の観戦後に作成。
九回裏でサヨナラツーランスクイズが炸裂。淡海色のユニホームは負けました。
■甲子園、決勝
高校野球の決勝戦が終わった。
今年、優勝校は春夏の連覇を成し遂げた。
準優勝校は、百年を経ても優勝旗を持ち帰れなかったようだ。
わが地元校は、三日前の準々決勝で負けた。地元校を破ったのは、優勝旗を持ち帰れなかった高校だ。
空を見ると、雨上りに出た虹が、消えようとしていた。
熱い夏が終わる。
※2018年の甲子園決勝の観戦後に作成。13-2で試合が終了しました。