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犯罪勇者と聖女が旅をするようになった訳

作者: やつれた人形

俺は勇者になった。

そして、勇者であることをやめた。



あれは俺が15歳になった日のことだ。

何の面白みの無い村で生活していて、毎日が退屈だった。

俺はいつものように森に狩りをしに出掛けていた。

俺は村の誰よりも強く、誰よりも賢かった。

狩りを終えて村に帰ると豪華な馬車が停まっていた。

騎士が数人と位が高そうなお嬢様がそこにいた。



お嬢様はこの国のお姫様で聖女と呼ばれているらしい。

この村には勇者を探しにきたそうだ。

何でもお告げとやらで勇者がここにいると神託で出たそうだ。

この村で一番強いのは俺だったので俺が勇者としてお姫様と一緒に行くことになった。

村の奴は渋ってたが王命には逆らえないらしい。



お姫様と一緒に王様のもとへ向かったあと、王様と少し話をして直ぐに魔王を倒すために旅に出ることになった。

メンバーは勇者である俺と聖女であるお姫様、次期王国戦士長と次期宮廷魔法師長の4人だ。

ほとんど他の3人は役にたたなかったが、それでも彼らからは色々なことを教えてもらった。

一応信頼できる仲間だ。

だからこそ、とても辛く、憎かった。



3年をかけ魔王を倒した。

お姫様は魔力切れで気を失い、俺はほぼ瀕死状態で指一本動かせない。

そんなときだった。比較的状態のいい二人が俺に剣を突き刺し熱の塊を押し付けてきたのだ。

俺が熱に押し潰されながら見たのは笑って罵倒してくる二人だった。



奴らがいなくなった後、俺は自身に掛けていた蘇生魔法で復活した。

聖女に教えて貰ったいた魔法を魔王と戦う前に掛けていたのだ。

もしもの時のためと隙を作る手段として使っていたが、ここで役にたつとは。

自身が憎悪に染まって行くのが分かる。

この感情は初めてでは無いがここまでのものは初めてだった。

俺は抵抗することなくこの感情に身を任せた。


俺は二人を殺しに行く。



王城がある都市に行くと俺は犯罪者扱いになっていた。

今まで親しかった者もひどく冷たい目で俺を見るようになっていた。

二人がこの都市にいないと分かると俺は自分の村に行った。

自身に起こったことを村の者に話しに行かなくては行けないと思った。


村に着いて、俺が抱いた感情は絶望。

村が焼かれていた。

急いで生存者を探した。

幼なじみの母親が瀕死の状態で瓦礫に挟まっていた。

何度回復魔法を唱えても発動しない。

自身の中にどんどん黒いものがたまっていく。

何故、何故、何故だ、どうして、魔法が発動しない。

幼なじみの母親が喋りだした。

もう、いい。と。

逃げてほしい。と。

そして、色々俺に教えてくれた。

この村に騎士団が来て俺の犯罪を訴えに来たらしい。

それをこの村の者は誰一人も信じなかった。

そしたら村を焼かれたのだ。

あるものは斬られ、あるものは焼かれ、あるものは犯された。

しかし、誰一人として騎士団には屈しなかった。

誰一人として俺を憎まなかった。

だから生きてほしい。

だから逃げてほしい。

そう言って、俺の大切な者は死んでいった。



俺は再び都市に戻ってきた。

騎士団を潰すためだ。

そして、元仲間の騎士も騎士団長として都市に戻って来ていた。

そして、元仲間もろとも騎士団を潰した。

途中から魔法師団も来たのでそっちも潰した。魔法師団には恨みはないので元仲間の魔法師以外は気絶ですんでいる。

これで俺の復讐は終った。



全てを失い復讐を終えた俺は死を選んだ。



自身に剣を突き刺す瞬間に元仲間である聖女の姿が見えた。

彼女には恩もある。目の前で死なれては目覚めが悪かろう。

この場を去ろうとすると聖女に呼び止められた。

つい止まってしまったが別に言うこと聞く義理はないので再び歩き始める。

生まれ育ったあの村で死のう。

転移魔法を唱えた瞬間に聖女が抱きついて来たので聖女も一緒に転移してしまった。


聖女を引き剥がすと聖女は泣いていた。

俺はここで死ぬつもりなので聖女に帰ってもらうように話をした。

怒られた。

騎士団を潰したこと、死のうとしたこと、聖女に相談しなかったこと、色々と言われた。

他にも俺の犯罪に異議を唱えて謹慎になったて騒ぎに紛れて出てきたら俺が本当に犯罪者になっているから凄く怒っていると言って泣いている。

この村の現状を見て理解したのだろう。

俺の動機については聞かなかった。

しかし、この人には知っていて欲しかったのか俺は自身にされたことをこと細かく話した。

予想どうり凄く悲しい顔をしていた。

そして回復魔法が使えない理由も教えてくれた。

勇者の回復魔法は特別で、憎悪や暗い感情をもってると発動しないらしい。



聖女は思いついたと明るい顔をして提案してきた。

旅をしようと。

今の俺は見てられないから人々を助ける旅を二人でしようと提案してきた。

俺は人を殺している。勇者なのに。人々を守る騎士団を潰した。

その罪は重たいだろう。

大切な人たちを殺されたとは言え、俺は彼らと同じようなことをした。

償いとは言わない。償う気はない。だから死のうとした。

けどそれはここにいる新しくできた大切な人に止められた。



人殺しの犯罪者が人助けの旅を聖女と共にするのは悪くないのかもしれないな。



そう思って目の前にいる輝かしい女性の手をとった。

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