第一話「迎える目覚め」
顔にざらつく土の感触に嫌気が差して目を覚ましてーーー
ーーー自分が床に敷いた布がぐちゃぐちゃになっているのを見て自分が雑魚寝していた事を思い出した。
頭を掻いて辺りを見回すと、本、本、本。
夜を更かして自分が読破し積み上げられたそれが
永い時間を主張しているように見えた。
これまで彼女が過ごしてきた年月。
これから自分が過ごしていくであろう年月。
込み上げられる嘔吐感と目眩を無視、無人の家の中一人呟く。
「……ここは、異世界だ」
頭を二回程揺らし、目をぎゅっと瞑る。上を向く。
「二十才で、童貞で、転生者だ」
「いや、だった、だよな」
「………さて、と」
「行くか」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーー今でも覚えてる。あの事を。
「ーーーーーーーーーーーー」
「ーーーーーーーーーーーー」
「ーーーーーーーーーーえ?」
「おかしいな…こんなはずじゃ…」
一体なにがこんなはずじゃ、だと独り言に突っ込みを入れて状況を見た。
…足だ。足が見える。靴?ズボン?ああ、俺のか。
……腹がいたい。いや、下してるんじゃなくて、圧迫されてる感じの…
…………………………………………………………………ああ。干されてる。木の枝で。俺が。
「……はあぁ!?」
どう考えてもありえないてえぇ!!
…ちくしょう。落ちたのか…。ていうか、よくゼンコウクツみたいな体勢であんな木の枝に……俺引っ掛かってたのか。
ちくしょう…なんで俺が……いくら何でも森に捨てられるってのは……
……………………………………………………………………。
………………………………………………………………………………………………………………………。
え?森?なんで?
唖然として辺りを見渡して状況を
野獣だ
「…あああぁ死にたくない!!!!!」
全速力でとにかく走って…ふざけんなふざけんなふざけんなふざけんな!!!
こんな訳もわからず死ぬとかーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーその後の事だ。今でも鮮明に覚えてる。
俺が、死にたくないと思った日。
君が、俺を生かしてくれた。
俺が、生きる意味を知った日だ。