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胖姐看中国  作者: 胖姐
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第九十八話 謎の北朝鮮レストラン

北朝鮮から日本近海へミサイルが発射される事件が頻発し、戦争の危機が迫っています。

日本は北朝鮮と正式な国交はありませんが、中華人民共和国は北朝鮮と国交があり、北京には北朝鮮大使館があります。また、高麗航空(北朝鮮の国営航空会社)のチケットオフィスも北京市内にあります。


したがって、北朝鮮からの国費留学生も北京市内の有名大学に多数在籍しています。

彼らは政府高官の子弟であることが多いのですが、留学にあたり、家族のうち最低1名が人質として北朝鮮に残っています。もしも留学先で亡命したりしたら、この人質が即時処刑されるのです。

北朝鮮からの国費留学生は、中国の経済発展ぶりを目の当たりにしたり、西側諸国からの留学生達と交流することによって、①ノイローゼになって自室にひきこもる、②自由資本主義に完全に洗脳される、の2つに分かれます。でも②の人のほうが多いかな。言語がほとんど同じでコミュニケーションがとりやすい韓国人の留学生とつるんで遊んでいるのが目につきました。


日本でも知られていることですが、北朝鮮大使館員の重要な任務として、”外貨獲得のための経済活動”があります。

北朝鮮大使館は、中国国内で焼肉レストランチェーンを経営しており、儲けたお金を上納金として北朝鮮に送金しています。

北京にも上海にも北朝鮮政府直営の有名レストランがあります。

なんと働いているコックさんやウェイトレスに至るまで、北朝鮮から派遣されてきている国家公務員(?)です。ウェイトレスさんは若くて美人揃いですよ~。朝鮮語はもちろん、中国語もペラペラです。もしかしたら日本語も出来るかも。


上海で私が住んでいたマンションの近くにも、北朝鮮政府が経営する焼肉レストランがありました。

料理が安くて美味しくて、お米もピカピカで炊き方も上手、店内も清潔だったので、よく利用していました。

ある日、私と友人がこのレストランで、ちょっと遅めの夕食を取っていた時のことです。

閉店時間近くの店内にいた利用客は私と友人の2人だけ。壁際に立っているウェイトレスさんも何だか暇そうです。


「ねぇ、何だか大勢の人が、あの個室に入っていくんだけど……。」


野菜のナムルをつついていた友人が、突然、そう言いました。


「あら?本当だ?会食にしては時間が変だよね~。それに部屋に入っていく人の感じがバラバラ。老若男女いるし。」


不思議なことに、エリートビジネスマン風、OL風、学生風、出稼ぎ労働者風、乳児を連れた主婦風、ホスト風、ご隠居さん風など、様々な容姿であらゆる年齢層の人達が続々と、店内の大型個室に静かに吸い込まれていくのです。(彼らは別の入り口から店に入ってきたらしく、言われなければ気づかないくらい静かな動きでした)

しまいには、厨房からコックさんが出てきて、ウェイトレスさん達と一緒に個室に入っていってしまいました。そして、やけに静まり返る店内。


「ねぇ胖姐さん、ここって北朝鮮政府経営のレストランだよね?」

「うん、そうだね。」

「こんな遅い時間から会食なんて、しかもあんな多人数、集まっているのがあらゆる年齢層にわたっているなんて、ちょっと変だと思わない?」

「うーん……。(=_=)」

「あの人達、きっと北朝鮮人だよね。まさか工作員なんじゃ……((((;゜Д゜))))ガクガクブルブル」

「うーん、確かにあなたの言う通りかもしれないね……。きっと普段は中国国内のあらゆる階層に静かに忍び込んで普通に生活しているんだよ。もしかして、定期的に集まって情報交換をしているのかも。」


レストランの店内は、外から見ても中に入ってもそんなに広いと思えないのに、20人以上の成人男女が余裕で入れる不思議な個室があり、しかも全くドアの外に物音が漏れず、個室内で何をやっているのか分からない、あれだけたくさんの人がいるのに、料理や飲み物が運ばれていく様子が全然無い、集まっている人達に関連性がまったく見られないなど、おかしな点はいっぱいあります。

でも、その疑問点を追求していくと、自分の身の安全が脅かされるのではないかという気がしきりにするのです。友人も同じ思いらしく、


「胖姐さん、何だかヤバいよね……。早く出よう。」


とだけ言って、そそくさと席を立ちました。


あのレストランに集まっていた人達は、いったい何者だったのでしょうか?

単なるお客様だったのでしょうか?

それとも私達の推察通りに工作員だったのでしょうか?

20年近く経った今でも疑問に思っています。

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