第九十四話 私は忍者ではありません
私が中国に滞在していた1990年代、日本に関心のある外国人達によくこんな質問を受けました。
「日本には忍者はいますか?」
「忍者になりたいのですが、どうしたらよいですか?」
私が困った顔になって、『現代の日本には忍者はいません。もしかしたら産業スパイはいるかもしれませんが。だから、忍者を養成している場所もありませんね……(;^_^A』と言うと、本当にガッカリされます。
そんな彼らに日本のイメージを訊ねると、東京にはショーグン(将軍)が住んでいて、高層ビルの谷間をサムライが刀を差して歩いており、レストランには芸者がいて、街の平安を守るため、忍者が活躍しているというのです。そんなのファンタジーすぎるでしょ……。(=_=)
毎日のように教室やオフィスで会っている私が、彼らと変わらない現代的な服装や髪型をしているというのに、イメージとしての日本人は、相変わらずキモノに日本髪なんですよねー。本当に不思議です。
現代の日本文化に関心があるイギリス人留学生には、
「北野武は映像の天才だと思う。彼は日本でもトップクラスの映画監督なんでしょう?僕は日本に行って、タケシに会ってみたい。すごくファンなんだ。」
と言われました。私が、
「北野武さんは映画監督や作家としても有名ですが、本業はお笑い芸人ですよ。私が小さい頃は、彼の出演しているTV番組をよく見ていました。あなたは北野武さんのファンだと言いますが、日本人が聞いたら、”あぁ、日本のコメディが好きな外人さんなのね~”と思うんじゃないかしら。」
と言ったら、非常にショックを受けていました。
彼いわく、ヨーロッパでは、北野武さんは黒澤明と並ぶ世界最高の映画監督の一人であり、叙勲もされている偉大な芸術家だそうです。私がイギリス人留学生に、北野武が着ぐるみを着てはっちゃけている写真を見せたら、ようやく私が言っていることが本当だと、不承不承納得してくれました。
「いったい何なんだ、これは!なんでタケシのような偉大な芸術家がこんな真似をしなくてはならないんだ!金のためか?日本では映画監督は社会的地位が低いのか?(# ゜Д゜)」
と、何だかやけにプンプン怒っていましたが……。(かなりショックだったらしい(笑))
あなたの周りの外国人の目には、日本はいったいどのように映っているのでしょう?
最近では、日本政府主導で、”COOL JAPAN”のスローガンの下に、漫画やアニメーションなどのサブカルチャーを全面に推し出していますが、ほとんどの外国人には、日本と韓国、中国の文化の区別がついていないのが現状です。
せっかく税金を投入するのだから、きちんと効果が上がるようにして頂きたいものですね。少なくとも、現代日本には、忍者が生息していないことを周知して頂きたいものです。(;^ω^)