第八十七話 タウナギにょろにょろ
先日、日本テレビ系の『鉄腕DASH』という番組で、日本で勝手に繁殖して困っている外来生物を捕まえて、美味しい食材にする、という趣旨のコーナーを放映していました。
その時、取り上げられていた食材は、タウナギ。
別名を、タイワンドジョウともいう、鰻に似た細長い体形の淡水魚です。
日本にはもともと住んでいなかった生物なのに、どこから入ってきたのか、今では西日本を中心に、用水路や水田に住みついてしまい、田んぼの畔に穴を開けてしまうので、有害生物として駆除対象になっているようです。
実は、このタウナギですが、日本では食べないのですが、上海では一般的な食材です。
上海の市場に行くと、大きな桶の中にたくさんのタウナギがウゾウゾひしめいていて、魚屋の店員さんが切り出しのような小型の包丁で、一匹ずつさばいているのを見ることができます。
タウナギは血液が非常に多く、しかも血液が人間みたいに真っ赤なので、さばかれているところが、結構グロい。ちょっとしたホラー。(~_~;)
魚なのにウロコがなく、見た目がぬるっとして蛇に似ているので、日本人男性は、『タウナギねぇ……気持ち悪いからイヤだなぁ。食べない。』という人も多いです。
タウナギは、鮎のように綺麗な水質のところに住んでいる生物ではないため、肉に淡水魚独特の泥臭さがあり、家庭で一から調理すると、かなり下ごしらえが面倒だと言われています。肉の臭みを消すため、ニンニクやタマネギを一緒に使ったり、揚げたり、濃い味付けにすることが多いです。
私が好きなタウナギの料理は、『响油鳝鱼』。
醤油味で炒め煮したタウナギの上に、ニンニクと浅葱のみじん切りを乗せて、食べる直前に、熱々の油を上からかけ、味以外にも、”ジューッ”という軽やかな音と香りを楽しむ料理です。
箸を取ると、まず油で熱せられたニンニクとネギの香りが鼻にぶわっと入ってきて、そして口に入れると、タウナギ独特のしこしことしたグミのような触感が伝わり、しかも日本人好みのちょっと濃いめの甘辛醤油味で、何というか、”ご飯が進むっ!”単独で食べるよりは、白いご飯に乗っけて、ちょっと下品めにわしわしと掻き込みたい料理です。中国語では、このような料理を”下饭菜”(ご飯のオカズ、メシ泥棒)と言います。
なぜ日本でこの料理が流行らないのか、本当に不思議なくらい美味しいです。
以前に、私が職場の先輩(横浜中華街出身の華僑2世)に、日本でタウナギが食べられるかどうか訊ねたことがあります。
「胖姐さん、たぶん日本でタウナギが食べられる中華料理店は無いよ。」
「なぜですか?」
「日本国内で流通していないんだ。食べる習慣がないんだよね。」
「ええーっ?美味しいのに……。」
「見た目が悪いからさ。」( ̄― ̄)
……日本では、魚も見た目が100%のようです。




